■血の結束を呼び起こすのは、リスクを伴わない愚行に対する、増幅された怒りであると思う
Contents
■オススメ度
インド映画を体感したい人(★★★★)
「これぞ、映画」を感じたい人(★★★★)
カッコいいアクション映画を観たい人(★★★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2022.10.21(イオンシネマ京都桂川)
■映画情報
原題:RRR(Rise=蜂起、Roar=咆哮、Revolt=反乱)
情報:2022年、インド、179分、G
ジャンル:実在の革命指導者の「邂逅IF」を描いたアクション映画
監督&脚本:S・S・ラージャマウリ
原案:V・ビジャエーンドラ・プラサード
キャスト:
NTR Jr./N. T. Rama Rao Jr.(アクタル/コラマム・ビーム/Komaroam Bheem:ハイデラバート州の解放のために戦うゴーンド部族の指導者)
ラーム・チャタン/Ram Charan(ラーマ・ラジュ/Alluri Sitarama Raju:大英帝国の警察官、のちのアーンドラ・プラデーシュ州の革命指導者)
(若年期:Varun Buddhadev)
アーリヤー・バット/Alia Bhatt(シータ:ラーマの婚約者)
(若年期:Spandan Chaturvedi)
アジャイ・デーヴガン/Ajay Devgn(ヴァンカタ/アルリ・ヴェンカタラマ・ラジュ:ラマの父、伝説の闘士)
シュリヤー・サラン/Shriya Saran(サロジニ:ラーマの母)
サムドラカニ/Samuthirakani(ヴェンカテスワルル:大英帝国の警察隊、ラーマの叔父)
Chakri(チンナ:ラーマの弟)
オリビア・モリス/Olivia Morris(ジェニファー/ジェニー:ビームが恋に落ちる優しい白人女性)
Chatrapathi Sekhar(ジャング:ビームの仲間)
Makarand Deshpande(ペッダイヤ:トラックで突っ込むビームの仲間)
Rahul Ramakrishna(ラチュ:下手こいて捕まるビームの仲間)
Kirron Ayra(ビームの母)
ラジーブ・カラカーナ/Rajeev Kanakala(ヴェンカット・アヴァダニ:スコットに忠告するニーザム藩国の特別顧問)
レイ・スティーヴンソン/Ray Stevenson(スコット・バクストン:冷酷な英国領インド帝国の総督)
アリソン・ドゥーディ/Alison Doody(キャサリン・バクストン:残虐非道な総督の妻)
Edward Sonnenblick(エドワード:スコットの部下)
Eduard Bhhac(ジェイク:ダンスで挑発するイギリス人)
Jason Yeboa(ダンスパーティーのドラマー)
Twinkle Sharma(マッリ:キャサリンに誘拐される少女)
Ahmareen Anjum(ロキ:マッリの母)
S. S. Rajamouli(本人役:「エッタラ・ジェンダ(Etthara Jenda)」を歌う歌手)
■映画の舞台
1920年:イギリス植民地時代
英国領インド帝国:デリー
南インド:アディラバード
https://maps.app.goo.gl/skLvbGGMUgL6s5qi9?g_st=ic
ロケ地:
インド:ビシャーカパトナム
https://maps.app.goo.gl/iPEmfKKwYCk5yb9u6?g_st=ic
インド:ハイデラバード
https://maps.app.goo.gl/DGWFmLku3M2W8kNc8?g_st=ic
ウクライナ:キーウ
マリア宮殿
https://maps.app.goo.gl/uNJQtCrbeAMRJpSLA?g_st=ic
■簡単なあらすじ
1920年代の英国領インド帝国では、スコット総督とその妻キャサリンがインド人たちを奴隷以下に扱っていた
ヘナアートをキャサリンに描いたマッリは彼女に気に入られ、そのまま硬貨2枚で買われてしまう
マッリの部族ゴーンド族には「羊飼い」がいて、仲間を助けるための執念が神をも恐れぬとされていた
その「羊飼い」の一人であるビームは、総督に近づくためにアクタルという名前でデリーに忍び込み、塗装業者をアジトに暗躍していた
一方その頃、思想犯の収容に怒りをあらわにする民衆が留置所を取り囲む事態が発生する
インド警察のラーマは、そこで暴動たちと戦いながら、投石を行った男を逮捕する
昇進が叶うかと思ったものの、ラーマは選出されず、怒りだけを溜め込む
そんな折、ゴーンド族の「羊飼い」がデリーに潜伏しているとの情報が総督の元に届いた
そこでキャサリンは「死体なら報奨金、生捕りなら昇進」をちらつかせ、それにラーマが名乗りを上げることになったのである
テーマ:友情と大義
裏テーマ:血を避けずして勝利なし
■ひとこと感想
3時間超えのインド映画で評価が異様に高いこともあって、少し身構えていましたが、3時間があっという間に終わってしまいましたね
ダブル主演の立ち位置をきちんと説明して、そこから友情を育ませてからの絶望という、観客を揺さぶるのがうまい脚本だったと思います
一応は実在の人物が「もし出会っていたら」という史実系フィクションのカテゴリーですが、神話的な要素もかなり強かったと思います
エンドロールまで楽しい映画で、普段ならすぐに帰っちゃう人でも最後まで観ちゃいそうですね
でも、膀胱の圧迫に耐えられずに、そこそこの人が途中でレストされておられました
テーマは「友情」ですが、「大義」という視野の違いを突きつけて、最後は「神さま」みたいな扱いになっていましたね
章立てになっていましたが、本編に入ってからは「インターバル(あえて日本語表記)」を挟みますが、息を着く暇もないという感じで最後まで突っ走っていました
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
伝説の革命運動家二人が「もし同じ時代に同じ場所にいたら」という着想になっていて、敵がこれでもかというぐらいに絶対悪として描かれていました
時代は英国領インド帝国の時代なので、インド人の命は銃弾よりも安いという価値観が蔓延っていました
マッリの値段も硬貨2枚ですからね
もう徹底的に悪を貫いたという感じになっていて、逆に役者さんのメンタルが心配になってしまいます
昔の少年漫画のようなノリで熱い友情があって、そしてすれ違いがあって、という流れで「恋愛にほとんど時間を割かない」というのは徹底していました
勧善懲悪ものとして、総督夫婦の異常さを際立たせていて、周囲がややドン引きしているというのは絶妙なバランスだったように思いました
本作では「観客側に提示される情報」を登場人物たちが後で知ることになるのですが、そのタイミングが神がかっていました
心の弛緩ができて、ちょっとホッとしたところで、「実は」をぶっ込んでいて、そこでシーンを切って次の展開に移っていました
このあたりに連載漫画のような「引き」というものを感じてしまって、その「実は」の余韻を残したまま、物語を牽引していくのは見事だったと思います
■歴史背景あれこれ
映画の舞台は「英国領インド帝国」で、1858年から1947年まで続いた体制でした
1877年からヴィクトリア王が統治し、映画の時期である1920年はジョージ5世(George V)の時代になります
1858年にインド大反乱を鎮圧したイギリス政府は、インド統治改善法を可決し、イギリス東インド会社が保有していた権限は全てイギリス国王に移譲されることになりました
インド担当国務大臣が新設され、インド参事会が設立されます
そして、1858年の11月からチャールズ・カニング(Charles Canning)が初代の副王になりました(1862年まで)
その後、2代目副王にエルギン伯爵ジェイムズ・ブルース、サー・ジョン・ローレンス準男爵などが歴任していきます
1910年になって、第13代副王のハーディング卿が就任し、ジョージ5世とメアリー王妃がデリーに訪問したりもしました
この時点で、カルカッタからデリーへと首都が遷都されることになっています
この時期にはバルカン戦争が起こっていて、1914年には第一世界大戦が開戦します
大戦の間はインドで重税と徴兵が問題になっていて、自治連盟(Home Rule Leagues)などが革命的な活動を展開していきます
この動きを受けて、インド全土で革命の火が灯り始めます
また、ヒンドゥーとムスリムの宗教対立も二大勢力化して団結していくことになり、イギリスはこの動きを重く受け止めていました
そして、14代副王にチェムズファドが就任し、映画の年に突入していきます
チェムズファドはエドウィン・サミュエル・モンタギューとともにモンタギュ宣言を発表し、改革を推進していきます
1919年にはローラット法が可決され、反英主義の弾圧も行われるようになっていきます
これまでインドの独立運動の中心にはティラクがいましたが、彼が死亡し、そしてモハンダス・カラムチャド・ガンティーが南アフリカから帰国することになりました
1920年にはセーヴル条約が結ばれ、第一次世界大戦後の世界地図というものが生まれてきます
オスマン帝国の解体が行われ、トルコ共和国の設立が起こります
これらの歴史を背景にして、ゴーンド族出身のコマラム・ビームが税金の搾取に対して、高官のシディケサーブ殺害していました
ビームは逮捕を逃れるために逃亡し、紆余曲折を経て、劇中でも登場するニーザム藩王国への武装革命を企てることになります
インド共産党と秘密結社を結成し、多くの支持を取り付けます
1928年にはゴーンド地域で蜂起が始まり、その後ニーザムはビームを反逆者のリーダーとして交渉を始めました
交渉はお互いの要求を拒否する形で武力衝突を生み続け、ゲリラ戦が展開していきます
ビームは1940年までそれらの活動に従事し、最終的には武装警官によって殺されています
ゴーンド地方では彼は反乱の象徴として持て囃されるようになり、命日とされる1940年4月8日は記念日になっています
対するラーマことアルリ・シタラマ・ラージュは、1882年頃から活動を開始し、1922年にランパの反乱を起こします
彼の勇敢な行動は讃えられていて、「Manyam Veerudu(ジャングルの英雄)」というふうに呼ばれていたそうです
ランパの反乱では500人の部隊を率いて各警察署を襲撃し、銃器や弾丸を手に入れていました
1924年、イギリス軍はようやく彼を捕まえることに成功します
アルリはガンジーとは相容れなかったようでしたが、ガンジー自身は彼の勇気と犠牲に敬意を表すると述べたと言われています
■エンドロールの人々解説
※ 詳細は【 】内の名前をクリックしてください
※ カタカナは日本語ウィキ、英語は英語Wikiが開きます
※ 名前の後ろの( )は活躍した土地のことです
【スバース・チャンドラ・ボース/Subass Chandra Bose(カルカッタ)】
ベレー帽を被ったメガネの男性
インド国民軍の第2指導者、インド国民会議の議長として活躍
その後、ナチス・ドイツに逃亡し、協力関係を築きます
日本占領下のアンダマン・ニコバル諸島にて自由インド臨時政府の主宰になったりしていました
1945年に日本統治下のファルモサ(現在の台湾)にて飛行機が墜落した際に志望したとされています
【ヴァッラブバーイ・パテール/Vallabhbhai Patel(グジャラート)】
非暴力っぽい感じに見える高齢の老人
インド国民会議を経て、ジャワハルラール・ネルー初代首相の副首相、内務大臣を歴任しています
インド・パキスタンの分離独立に際して、多くの藩王国をインドに帰属させた人物でした
別名は「インドのビスマスク」で、2018年に世界最大のインドの立像として、グジャラード州に「統一の像」という名前で立っています
【キットゥール・ラニ(王妃)・チェンナンマ/Kittur Rani Chennamma(キットゥール)】
馬に乗った勇敢な女性
1770年代後半のキットゥール君主国の女王
英国東インド会社に対する武力抵抗運動を主導し、一度は成功しますが、2度目の運動で捕虜となって殺されています
英国植民地時代の数少ない女性統治者でした
【V.O.チダンバラム・ピッライ/V.O.Chidambaram Pillai(ティルネルヴァリ)】
ターバンを巻いた口髭の精悍な男性
1920年頃のインド国民会議の指導者で、スワデシ蒸気航行会社(SSNC)と提携してインドとスリランカの間で海運サービスを開始しています
インド国民会議のメンバーだったことで、イギリス政府から扇動罪で起訴されて、終身刑となっています
【バガト・シン/Bhagat Singh(パンジャーブ)】
ハットを被った口髭の男性
インドのカリスマ的革命家で、デリーのハンガーストライキに参加しています
ヒンドゥスタン社会主義共和党協会のメンバーで、英国警察官のジョン・サンダースを殺害しています
本来は警察署長のジェームズ・スコットを殺害する予定でしたが、間違ったとされています
23歳の若さで絞首刑となりましたが、英雄視されていて、フサイワニラ国立公園に記念碑が建てられています
【タングトゥーリ・プラカーシャム/Tanguturi Prakasam(アーンドラ・プレデーシュ)】
メガネをかけた政治家っぽい中年の男性
半植民地主義者でマドラス大統領時代の首相を務めています
「アサンドラのライオン」と呼ばれていて、サイモン委員会(インド法廷委員会)がインドに訪問した際にデモとボイコットを行い、発砲の脅しに屈せずに、胸を突き出して前に出たとされています
アンドラ・プラデーシュ州では彼の誕生日である8月23日が週の祝日となっています
【ケーララ・ヴァルマ・パラッシ・ラージャー/Kerala Varma Pazhassi Raja(ケーララ)】
剣を突きたてる精悍な男性
1750年頃のコッタヤム王朝の王子として、英国東インド会社と戦い、その戦いは「コティオーテの戦い」として知られています
その強さから「ケーララのライオン」と呼ばれていて、最終的に反逆者によって殺されています
英国との反乱の中で「最長の戦い」を行ったとされています
ターバンを巻いた顎髭が立派な男性
1630年代頃のマラーター王国の指導者で王国の初代君主でした
ビジャプール王国と戦い、独自のヒンドゥー政権を樹立しています
2016年からムンバイ沖の島で巨大像の建立が始まっていて、完成すると世界最大(192m)の像になると言われています
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
本作はエンタメの良いとこ取りになっていて、まるで少年漫画のような「友情・努力・勝利」が展開されていきます
前半はビームとラーマの友情物語になっていて、家族を取り戻そうとするビームと、大義のために彼と戦う葛藤が描かれていました
大義を前にして、銃を必要としない革命の可能性をビームから教わることになり、その時にビームは民衆の前で歌を歌います
民衆の目の色が変わり、これは冒頭のデモと同じ構図なのですが、そこには女性もたくさんいるのですね
デモでは男ばかりが集まっていましたが、鞭打ちのシーンでは女性もたくさんいました
そんな中、ビームの歌に触発されて、老若男女の目に命が宿っていきます
民衆の蜂起に必要なのは、武器よりも行動に命と意味を与えることだと思います
武器は戦いに必要なのですが、それを使う意味が身に染みていないと、その効力を発揮できません
そんな中、ラーマは父の言葉を思い出し、行動に意味が乗り、命が宿る行程を反復していきます
銃弾に込められるものは感情なのですが、その感情の背景にあるのが単なる怨恨なのか、それ以上の何かが宿っているのかはとても大事であると思います
映画では、それぞれの想いを尊重し合い、近しき人を守るための方法が違い、それによって行動も変わってきます
根本を変えようとするラーマの大きさをビームは知り、犠牲を厭わないビームの奥深さをラーマは知ります
それでも無血で成し得られるほど、革命というものは甘いものではありません
エンドロールではたくさんのインドの偉人が登場しますが、誰もが「血を伴う革命」に従事した人たちばかりでした
なので、あの中にガンジーがいないのは、映画のテーマ性としては当然であり、それこそが時代性であると言えます
本当ならば、血を伴わないものが高潔に思われがちですが、それは単なる理想論とか、言葉遊びに終わるでしょう
相手の血の結束を呼び起こす愚行が蔓延る限り、結束と犠牲の連鎖は続いていきます
でも、その愚行を主導する人々は安全圏にいるのですね
本作では、血を求めて棘付きの鞭を渡したキャサリンは鉄条網に裂かれて死に、スコットには「銃弾」が打ち込まれます
ある意味、因果応報を明確に描いていて、人類の最小単位が血族であるという所以に繋がるのかなと感じました
最終的には2人が強すぎて、相手が瞬殺されてしまいます
爽快感は少ないエンディングになっていますが、それほどまでに「怒り」というものは大きかったと言えるのでしょう
3時間の長丁場ではありますが、効果的な演出、目を引く映像など、細部に魂が宿っている作品なので、あっという間に時間が経ってしまいます
近場でIMAX上映がなかったのは残念ですが、興行収入が伴うなら動くのが映画館なので、その動きが起こることを祈りたいと思います
■関連リンク
Yahoo!映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://movies.yahoo.co.jp/movie/383964/review/79043ad0-4e3b-40cb-b2c1-af1c77a71fe5/
公式HP:
