■セフレの品格は恋愛感情に負けてしまったということでOKなのか?
Contents
■オススメ度
『セフレの品格 初恋』を観ちゃった人(★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2023.8.10(T・JOY京都)
■映画情報
情報:2023年、日本、106分、R15+
ジャンル:セフレの関係を続けてきた男女が新しい相手との関係の中で、自分たちの関係を見つめ直すラブロマンス映画
監督&脚本:城定秀夫
原作:湊よりこ『セフレの品格(2016年、双葉社)』
キャスト:
行平あい佳(森村抄子:バツ2で高校生の娘を育てるOL)
青柳翔(北田一樹:抄子の初恋の人、産婦人科医)
片山萌美(新堂華江:一樹のセフレ&患者)
新納慎也(葉山:抄子の上司、元ストーカー)
髙石あかり(山田咲:一樹の患者、17歳)
石橋侑大(市原猛:抄子の職場の清掃員、駆け出しのプロボクサー)
大嶋宏成(猛の所属するボクシングジムの会長)
坂上梨々愛(森村遙:抄子の娘、高校生)
德留歌織(抄子の同僚?)
松本真輝(抄子を襲うチンピラ?)
麻木貴仁(路上の酔っ払い?)
湊よりこ(?)
■映画の舞台
都内のどこか(麻布のあたり)
ロケ地:
不明
■簡単なあらすじ
一樹とのセフレ関係が続く抄子だったが、激しいセックスも厳しくなる年頃で、このままの生活で良いのか悩み始めていた
一樹も思うところがあったものの、それを言葉にはせず、セフレの関係を続けている
ある日の午後、一樹に呼び出された抄子が彼の家を訪れると、そこには見知らぬ女子高生・咲が家に上がり込んでいた
若い女に入れ込んでいるのかと怒る抄子だったが、咲は親に隠れて中絶手術を行ったばかりで精神的に不安定だから保護しているという
だが、その出来事から関係性が変化し、二人の仲は急速に冷え、関係を切ることになってしまった
それから数週間経った日のこと、派遣社員のミスのカバーを手伝うことになった抄子は、オフィスの清掃を担当している猛と出会う
彼は駆け出しのプロボクサーで、今度の試合に見にきてほしいと言う
抄子は親友の萌美を誘って初めてのボクシング観戦をして、興味本位でボクササイズも始めることになった
テーマ:愛のないセックスの果て
裏テーマ:対話と本音
■ひとこと感想
前作『セフレの品格 初恋』は、思いっきりR18+寄りの作品でしたが、本作は方向転換したのか、昼ドラのようなドロドロした展開になっていました
一樹と抄子の関係がどうなるのか、という主軸の中、それぞれに若い男女が登場し、それによって掻き乱されていきます
一樹の元に現れる咲の背景は重すぎて、映画のテイストがまるっと変わったような感じになっていて、抄子の前に現れる猛はド直球の恋愛へと発展していきます
展開を読むのはほぼ不可能な感じになっていますが、結末だけはなんとなくわかってしまうのですね
この予定調和に向けて、どのようなストーリーを作るのかというところに全力を注いでいますが、それがうまくいっているかは微妙な感じになっていましたね
セックスシーンも一樹と猛では大差ない感じになっていました
そのあたりをもう少しテイストを変えた方が、心身ともに溺れている感というものが描けたのではないでしょうか
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
『決意』ということですが、映画を観る前は抄子の決意かなと思っていましたが、実質的には一樹の決意という物語になっています
同窓会再びからの流れは予定調和で、とにかく気取りまくるところがコミカルな感じになっています
映画では、咲のエピソードがかなりリアルに描き過ぎているのですが、実際にあんなことをする産婦人科医がいるのかは甚だ疑問でした
咲の背景を知りもしないで断罪するのはあり得ない話で、コンプラ的にもアウトの空気が漂っています
抄子と猛の関係の破綻は当て馬のような感じになっていますが、最後に咲と良い感じになるのはやり過ぎ感が否めないと思います
少ない登場人物の中で新しい人間関係を作ろうとすると無理が生じてしまいます
あの関係に移りたいのならば、試合後の抄子との顛末の後にでも、彼のベッドの横に寄り添っている誰かというものを仄めかしても良かったでしょう
ともかく、登場人物の行動と選択がおかしなところが多いので、「なんでそうなるの?」感は思った以上に強かったですね
■持続可能なセフレ関係とは何か
映画の中で言及される「いつまでも女でいられる」という女性側の視点がありますが、それだけでは男性側の持続というものは得られません
人間はいつしか年を取っていくもので、性欲も衰えるし、体も動かなくなります
映画のような激しいセックスができるのも40歳ぐらいまでなので、その後まで持続可能かどうかというのは、セックスの中身になってくると思います
男性側は若い女性を求め、女性側も若い男性を求めていきますが、その意味は少しばかり違うように思えます
残酷なことを言えば、若い女性を欲する男性も、若い男性を欲する女性も根っこは同じで、若さゆえに備わっている性欲の強さであるとか、行為の持続力などが満たしてくれるものが多いからだと思います
それでも、ただ強くても気持ちが良いとは限らず、それをリードしていける関係性、いわゆるセックスにおける主従関係というものが成り立ってくると、双方が満たされる瞬間はあると思います
でも、この関係によって培われた能力というものは、若い方が「他の個体で試したくなる」というところに繋がるので、そのままの関係が持続するかはわからない部分があると言えます
永続的に続くということがなくても、ある程度の長期間を維持するならば、「性への探究」という学問的な部分に向かっていくことで可能のように思えます
セックスに関しての研究は古来からたくさん行われていて、この数十年でも様々な進化を遂げていきます
生理学的な発展、身体学的な発展、道具の発展、心理学の発展など、様々な分野での探究というものが行われていて、それと同時に「性的趣向」というものの拡がりも物凄い勢いで増えています
いわゆる「フェチの細分化」ということが起こり、同じように見える性的趣向も様々な要素の組み合わせによって、微妙に違うとも言えます
これらの進化は大体がプロの人たちの「販売訴求の研究」によって具現化させていく傾向がありますね
前の職場で性的なものを販売していたことがあったので、黎明期からの発展というものと実際に購買されていくものとの相関を見てきました
それは様々な進化とともに起こり、特にネット文化が広がって、個々で宅配などで購入が可能になった環境の発展とともにさらに進化していったように思います
20年前にはバイブとローター、ローションぐらいしかなかったのが、ディルド、TENGAなどを経て、今ではウーマナイザーというものまであります
それぞれがどんなものかは書きませんが、検索履歴に残ってOKだったらググってみてください
これらの道具が性的趣向をさらに広げていって、表面化はしないものの、様々なジャンルというものが生まれていきました
そのあたりを駆使していくことで「開発」というものが起こってくるので、そっち方面に関係性がシフトしていくのならば、ある程度高齢になったとしても、続いていく可能性はあるのかな、と思ったりもします
■勝手にスクリプトドクター
映画は、前後編に分かれていて、前編はセフレになるまでの葛藤というものが描かれていました
後半は一転して、セフレへの葛藤を示しつつ、抄子と一樹の内面の変化を作り出すために、双方に若い異性というものが登場しています
一樹の前に現れたのは未成年の妊婦で、産婦人科医としての説教がメインになっていて、咲の誘惑に乗るということもありません
あくまでも、一樹と咲の関係性を見て抄子が誤解するというものがメインになっていて、不遇の咲が一樹を独り占めするために悪意を噴出するという流れになっています
抄子の方は、一樹と切れた後に心の隙間を埋める存在として猛が登場しているので、二人の関係性に直接的な影響を及ぼしません
こちらも猛の抄子への想いが通じるかどうかということが描かれていて、猛がセフレという関係を受け入れられるかどうかがメインになっていました
なので、どちらも元々の抄子と一樹の関係に影響を及ぼすものではないという特徴があります
でも、切れたとしても思い合っているというものが根底にあるので、間接的に「双方に現れた異性は自分を満たさない」ということを確認する、いわゆる当て馬的なものになっていました
映画は、後半でテイストが変わりすぎているのが微妙で、特に咲の中絶のシーンの説教はかなり異色のものとなっています
これは一樹の倫理観と優しさを表しているシークエンスなのですが、このシーンがなくても、彼が進んで中絶手術をする医師には見えないので、あまり効果がなかったように思います
話を全体的に暗くする役割しかなく、それが効果的に後半に繋がったかといえば、咲の性格と行動が悪すぎるので、なんとも言えない感じになっていましたね
改心したように見えるけど本当のところはどうなのかというものを引っ張っているだけになっているし、抄子が咲をあっさりと許せるのも微妙な感じに思えました
映画をどのように持っていくかは難しい部分がありますが、セフレの関係を維持できるかどうかというところがメインになっているので、咲が18歳になった時点で一樹がどう行動するかというのは必要だったように思えます
抄子としても、さすがに未成年をセフレにするとは思っていないものの、彼女が成人したらどうなるかわからない部分がありました
なので、咲が18歳になったと同時にセフレ関係が切られるということの方が、抄子の心を突き動かすことができたように思えました
また、猛はセフレの関係に悩むポジションにいますが、むしろ彼もセフレでOKなタイプで、同じように抱かれているけれど一樹とは違う、というようにしても良かったと思います
一樹はセフレでOKと思っているけど、抄子が他人のセックスと比べることによって、一樹の本音の部分が伝わっている
それが抄子をさらに突き動かすようになって、一樹の本音を確かめる、というシークエンスに向かっても良かったと思います
切れた関係の先にある本当のお互いの気持ち
観ている側には伝わっている相思相愛というものを、二人が理解していく物語でもあると思うので、そのためにお互いに新しい相手ができるという方が良かったように思いました
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
映画は、セフレの品格というタイトルがあるように、セフレ関係を肯定するものだと思っていました
でも、結局は普通の恋愛に落ち着いてしまっているので、それで良いのかは何とも言えない感じになっています
ある意味、タイトルの否定で映画が終わっているので、なんだかなあと思ってしまいました
セフレにも品格(プライド)があるということは、セックスだけの繋がりでも男女関係はOKということなのですね
なので、最後は普通のカップルになってしまうよりは、セフレとしてヨリを戻すという方が良かったように思えます
彼らがセフレとしてヨリを戻せるかはセックスの相性が良いというところに落ち着き、それはお互いに恋愛関係のパートナーがいてもOKという関係なのかなと思います
相手の背景に嫉妬しないというのがセフレの関係なので、それを強調するのならば、普通恋愛の復縁なら無い方がマシのように思えます
映画では、結局セフレの関係では男女関係は永続できないというところに落ち着いているので、それを否定しつつ、セフレの関係の良さというものを訴求することもできたと思います
でも、それをしないということは、その価値観が受け入れ難いものだと判断したことになるのでしょう
それが原作準拠なのかはわからないのですが、突き抜けても良かったかなあと思いました
とは言え、二人が恋人関係としてやり直したことは「仄めかし」程度でもあるので、明確に結婚などを前提にした結末になっていないところにもどかしさもありますね
映画は、新しい男女関係の提示という流れを汲んでいますが、落ち着くところに落ち着いたという印象はあります
それが良いのかは個々の感覚だと思いますが、良い話だなあと思う反面、それでいいのか?と思ったことも事実でしたね
なので、一樹側が徹底してセフレ関係を求めつつ、最後は抄子が彼を振るというのが、無難な落とし所だったのかなと思いました
■関連リンク
映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
公式HP:
https://sfriends-pride-movie.com/