■終わりを止めようが望もうが、自分が消えた瞬間に全ては無意味になるのですね


■オススメ度

 

終末系映画が好きな人(★★★)

セカイ系映画が好きな人(★★★)

伊東蒼さんの泣きっ面を堪能したい人(★★★)

朝比奈彩さんの美しさを堪能したい人(★★★★)

 


■公式予告編

鑑賞日2023.4.13TJOY京都)


■映画情報

 

情報2023年、日本、135分、G

ジャンル:いきなり世界を救う役割を与えられた冴えない女子高生の葛藤を描いた終末セカイ系ファンタジー映画

 

監督&脚本紀里谷和明

 

キャスト:

伊東蒼(志門ハナ:事故で両親を亡くした高校生)

 

毎熊克哉(江崎省吾:政府機関の男)

朝比奈彩(佐伯玲子:江崎の同僚)

高橋克典(是枝智史:官房長官)

 

増田光桜(ユキ:ハナの夢に出てくる少女)

夏木マリ(老婆:ハルに予言を授ける老婆、輪廻師)

北村一輝(無限:戦乱の世を支配する殿)

阿見201(シロ:戦乱の世でハナを助ける男)

柴崎楓雅(ラギ:戦乱の世に生きる謎の少年)

 

若林時英(タケル:ハナの友達)

前田悠雅(レイナ:ハナをいじめるクラスメイト)

中村守里(レイナの友人)

岩井俊二(物理の先生)

 

冨永愛(ソラ:宇宙服を来た謎の女)

又吉直樹(ソラのAI)

 

市井由衣(ケイコ:ハナの母)

竜のり子(ハナの祖母)

 


■映画の舞台

 

東京のどこか

 

ロケ地:

栃木県:足利市

旧足利西高校

https://maps.app.goo.gl/Wq9DYG63YhE8YpX99?g_st=ic

 

行道山

https://maps.app.goo.gl/9eBqZoarH1dVkxDM6?g_st=ic

 

浄因寺

https://maps.app.goo.gl/rVaMNQkfVB26LqLb9?g_st=ic

 


■簡単なあらすじ

 

事故で両親を亡くし、祖母も他界した高校生のハナは、高校でもいじめられて、彼女を支えるのは幼馴染のタケルだけだった

ある日、ハナは奇妙な夢を見た

そこは戦国時代のようなところで、そこで侍から逃げているユキという少女と行動をともにすることになった

 

その日の午後、学校から帰宅したハナの前にスーツを来た江崎と名乗る男と佐伯と名乗る謎の女性が現れた

2人はハナを奇妙な場所に連れて行く

そこには不思議な雰囲気を持つ落ち着いた老婆がいて、彼女は「見た夢の話をしろ」という

 

老婆は不思議な文字で書かれた本を読んでいると、ハナの夢の話と連動するように文字が変わって行く

その文字は少女ユキとともに逃げ込んだ洞窟の天井にあったものと同じで、老婆は「世界の運命が記されている」と言う

そして、ハナが夢を見ることで、崩壊する世界が救われるかも知れないと言い出すのである

 

テーマ:世界の存在価値

裏テーマ:崩壊させるもの、救うもの

 


■ひとこと感想

 

少女の行動が世界を救う、いわゆる「セカイ系」と言うことで、終末に対して、その運命を受け入れるのか抗うのかと言う内容になっています

この手の世界観は大好きなので鑑賞を決めたのですが、最寄りの映画館ではフライヤーすら置いておらず、パンフレットも作られていません

なので、気になるキャストを調べたくても情報が全くなくて困ってしまいます

 

映画は、主演が伊東蒼さんと言うことで、とにかく不幸な少女を演じさせたらハマり過ぎて心配になってしまいますね

彼女を支える政府機関の胡散臭さとか、占いで国を守れるのかなど、様々な要素が絡まっていて、その世界観に入り込むまでに苦労する作品のように思えました

 

映像的には、夢の世界がモノクロになっていて、勘の鋭い人ならば、この夢の世界が登場する意味は察すると思います

未来的な世界も登場し、これら一連の物語がどのように絡んでいくのかを楽しむ内容になっています

 


↓ここからネタバレ↓

ネタバレしたくない人は読むのをやめてね


ネタバレ感想

 

映画は情報がほとんど解禁されておらず、主要なキャストも関係性もどこまでがネタバレ扱いなのか分かりません

夢の世界が「過去」で、唐突に登場するのが「未来」になっていて、現在の世界を救うためにハナがどうすれば良いのか、と言うところはあまり説明されません

一応は、彼女が夢を見る(=過去とコンタクトを取る)ことで、現在に影響があると言う内容で、過去が現在に干渉する法則に則って、未来人に過去を変えてもらうように仕向けると言う内容になっています

 

ハナが夢を見ることで、現在パートで彼女が忘れていることが徐々にわかる内容になっていて、両親が何をしたのかと言うことがわかってきます

運命は決定されているものですが、未来が現在を超えて過去を改変する、と言う流れを汲んでいるので、未来人がそれを行う(=自分の消滅を許容する)と言う難題をどうクリアするのかなと思っていました

 

過去も未来も現在も、そこで世界を託される人は孤独なのですが、それが自分が選んだものではないところが切なくもあります

そうした中でひと重なりになったものが、この世界を救うことになったのだと思います

 


セカイ系で生き残るために

 

セカイ系とは、あるキャラクターの行動によって世界の行末が決まるというジャンルのもので、その世界に生きる住人として、選ばれた側かどうかを見極めることが重要になります

得てして、そんな力を持っていないようなキャラにその役割が与えられるのですが、これには明確な理由があります

この手の「持っていない主人公」が「実は選ばれし者」というジャンルでは「平凡ゆえの特別視される葛藤」が描かれます

「スーパーパワーを得た凡人」の設定として、「世界から爪弾きされている」という前提があり、自分の存在が世界の中でウェイトを占めることに恐怖を覚えます

これがこのジャンルの王道のパターンで、凡人ゆえに「状況を疑う」「力を試す」「失敗して、さらに落ち込む」までがテンプレートのようになっています

 

「スーパーパワーを得た凡人」には、能動的な性格をしているがためにパワーを乱用し、世界の寿命を縮めてしまうというパターンもあって、このパターンだとジャンルはコメディになりがちですね

悲壮感を漂う主人公の場合は、内観的で哲学的になることが多く、世界の問題と自分の問題が混同するという流れを汲みます

本作でも、「頑張っているのに攻撃の対象になる」という状況になり、ハナの中で「こんな世界、無くなっちゃえばいいのに」という自問へと繋がっていきます

これらはテンプレートのようなもので、自分を信じていないキャラクターが救世主に祭り上げられる時に陥る問題だと言えます

 

悲観的に物事を見るのは、これまでの人生において、行動と結果が結び付かなかったからであり、それによって「超常的な力を得ても結果は変わらないだろう」という思い込みが生じます

そうした流れの中で、「主人公を鼓舞するキャラ」が現れるのですが、これはそのまま作り手の願望を表していることが多いように思います

いわゆる「主人公=作り手」というマインドの中で、虚構の世界ぐらいは「自分を肯定してくれる人がいてほしい」というものがあって、それがシナリオに落とし込まれるパターンでしょう

得てして、この手のパターンは奇跡的な結末によって、これまでに否定されてきた自分が浮かばれる未来を描くのですが、本作ではさらに拗らせたような内容になっていました

 


世界と自分を繋ぐもの

 

世界と自分を繋ぐものについて考えを馳せた時、それは対人コミュニケーションによって形成される関係性の多さが取り上げられがちです

人との関わりが多い、もしくは濃いほど「世界と繋がっている感」を感じさせていますが、そのどれもが単なる幻想であることがわかります

世界との繋がりは実は一方的なもので、こちらがアクセスするだけで繋がるし、相手からのアクセスに応えるだけで繋がっていきます

この際に「双方向で同時」を求めるとしんどいことになり、自分の発信や受信に過度な期待を持つことで人は苦しんでしまいます

 

具体的に言えば、何らかのツイートをした時にバズるかどうかを気にする「受信信仰」を超えて、そこで「リプライを求める送受信信仰」へと繋がっていくパターンですね

実際にはツイート(送信)をした段階で世界と繋がっているのですが、レスポンスがないことが「送信が無視された」と考えてしまう人がいます

Twitterを例に挙げましたが、このSNSで発信したことがある人なら、意味のわからないタイミングで過去のツイートに反応があるという状況を目にすることがあると思います

この映画ブログでも、すでに公開も終わっている映画が「常にアクセスの最上位」で、そこが入り口になって新しいページを訪れている、ということがあります

 

これらの発信は数ヶ月前に行われたものなのですが、水面下でその発信が思いもよらぬ瞬間に受信されていたりするのですね

それぐらいに送信をしたという行為は、受信者のタイミングと環境によって、タイムラグを生じるもの、だと言えます

このブログでは、『左様なら、今晩は』という映画の記事がずっとトップを走っていて、その次が『RRR』なのですが、数ヶ月も『左様なら』が流入の1位になっている意味は私にもわかりません

 

もしかしたら、『左様なら』のページをブックマークして、更新をそこからトップページに移動するという人が多いのかも知れません

このように、送受信のカラクリが意味不明なものは多くあって、その繋がりの解明に力を入れるよりは、より多くの「発信」をした方がリアクションを生むような気がしてなりません

 


120分で人生を少しだけ良くするヒント

 

本作は、主人公の力が及ばずに未来(別次元)にメッセージを残すことで、未来人の受信と行動によって、現実が変わっていく様を描いています

いわゆる「スーパーパワーを得た凡人の敗北」があるのですが、彼女の発信というものが時を経て自分を救うことになっています

現実で起こりそうなことに置き換えるなら、忘れた親切が巡って返ってくるというもので、ハナの場合は数百年後?に受信され、本人へのリプなきままで自分の未来を変えてしまっていた、ということになります

 

10年前のTwitterが誰かに読まれて、そのツイートにはいいねも何もないのだけど、その内容に感化された人の発信によって、その反応が思いもよらぬ方向から巡ってきた、というような感じになると思います

あるいは、10年前にインスタに上げた写真が今頃になってバズって時の人になっているみたいな感じですね

すでにインスタ自体に投稿はしていなくて、でもIDを消去していないために投稿だけが残り続け、それを偶然見た人から受信の連鎖が起こっていく

そうしたものは送信の意図とは別次元の反応を得て、それが自分の元に返ってくるということになります

 

映画におけるハナは、悪意だけが剥き出しの世界にあって、行動が揶揄されたり反発を喰らっています

これは、ハナ自身が自分の行動に自信を持っていないために起こっていて、彼女自身が今いる世界の可能性を信じていない、ということに繋がっています

世界は自分が念じようが無視しようが勝手に流れていくもので、ハナの環境だと「守りたいものだけ守る」というものでOKでしょう

あの時点で彼女の中で守りたいものはそんなに多くはなくて、その行動を実践したのがタケルということになるのだと思います

 

映画は、現代に潜む悪意に攻撃されるハナを描いていて、これは誰にでも起こり得る問題のように思います

世界は、出る杭に対して厳しいのですが、その厳しさに対処するよりは無視する方が健全であると思います

そもそも論として、過去の発信に対するリプを気にしている暇があれば、次の発信に取り組んでいくことの方が建設的なのですね

なので、「次作の参考にさせていただきます」でスルーすればOKだと思います

 

世界が悪意に満ちているかどうかは解釈次第ですが、悪意を悪意と取るかはその人次第なのですね

相手が悪意を持って攻撃をしてきても、こちらが受け取らなければ、その悪意は相手の手元に残るだけ、という考え方があります

これは、発信の意味は受信者が決めるというものと通じていて、誰もが受信のタイミングとその解釈を自由に設定できるのですね

なので、その時の気分、時流、切り取られたものなど、様々な要因が重なって、送信というものの純粋性は失われてしまいます

 

これを正そうということの方が無理難題で、「ああ、そのように受け止める人もいるのね」ぐらいに考えていた方が良いでしょう

同じ人が同じものを違うタイミングで受信したら反応が変わるように、その受信は「その瞬間に置いた反応の一つ」に過ぎません

また、それを送信者はコントロールできないので、それを変えようとする意味はないと言えます

それは、この映画がハナの世界の人々に希望を見出せなかったのと同じ理屈になっていて、結局のところ「わからない奴には何を言っても無駄」ということに行き着きます

なので、「1000年後の誰かに届いたらいいな」ぐらいの気持ちで「この世界が滅んだっていいや」と開き直って、たった一つだけの大切なものを選んで、一緒に過ごせば良いのだと思います

 


■関連リンク

Yahoo!映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)

https://movies.yahoo.co.jp/movie/386628/review/71cc9696-c5bb-4f12-bbc2-ce625cf33e52/

 

公式HP:

https://sekainoowarikara-movie.jp/#modal

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投稿者 Hiroshi_Takata

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