■魂の繋がりは、文字よりも絵画の方が印象に残りやすい
Contents
■オススメ度
女同士の友情を描いた作品に興味のある人(★★★)
リメイク元を知っている人(★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2024.2.24(MOVIX京都)
■映画情報
原題:소울메이트(ソウルメイト)、英題:Soulmate
情報:2023年、韓国、124分、PG12
ジャンル:小学校からの腐れ縁と約束を描いたヒューマンドラマ
監督:ミン・ヨングン
脚本:カン・ヒョンジュ&ミン・ヨングン
原作:デレク・ツァン『ソウルメイト/七月と安生(2016年、香港)』
Amazon Link(字幕版)→ https://amzn.to/437CgPT
キャスト:
キム・ダミ/김다미(アン・ミソ:ハウンの破天荒な友人)
(幼少期:キム・スヒョン/김수형)
チョン・ソニ/전소니(コ・ハウン:ミソの親友)
(幼少期:リュ・ジアン/류지안)
ビョン・ウソク/변우석(ハム・ジヌ:ハウンの想い人、医師志望の生徒)
ナム・ユンス/남윤수(ギフン:ミソの恋人、ミュージシャン)
チャン・ヘジン/장혜진(ハウンの母)
パク・チュンソン/박충선(ハウンの父)
キム・ソホン/김서헌(アン・ハウン:ミソが育てている息子、7歳)
(2歳時:キム・ダユル/김다율)
(1歳時:ジェヒョク /제혁)
ホ・ジナ/허지나(ミソの母)
クァク・ジンソク/곽진석(ミソの母の元カレ)
チェ・ギョシク/최교식(ミソの母の今カレ)
キム・ドンイン/김동인(ジヌの父)
チャ・ドンシン/차동신(ジヌの母)
カン・マルグム/강말금(美術館の学芸員)
オ・ミナ/오민애(ヨンオク:ギャラリーのオーナー)
ヒョン・ボンシク/현봉식(ファンシーショップのオーナー)
イ・ヒョンギョン/이현균(小学校の担任)
パク・チヨン/박지연(高校時代の美術教師)
パク・ジンス/박진수(ハウンの担任、高校時代)
ファン・ウサン/황우상(ハウンの大学の教授)
シン・チヨン/신치영(ミソの美術学校の教師)
パク・セヒョン/박세현(ゴー・ストップをする学生)
ナム・ジュンギュ/남중규(ゴー・ストップをする学生)
パク・ハンウル/박한울(ゴー・ストップをする学生)
パク・チャヌ/박찬우(ゴー・ストップをする学生)
ユ・スンジュ/유승주(ゴー・ストップをする女学生)
ユ・フォヒョン/유휘현(ゴー・ストップをする女学生)
イム・ヨンジュ/임영주(ゴー・ストップをする女学生)
チョン・ウィジン/정의진(ゴー・ストップをする女学生)
チョン・スジ/정수지(受付の看護師)
キム・ジョンヒョン/김정현(ハウンの主治医)
リ・ウジン/리우진(安モーテルの受付)
ナム・サンベク/남상백(丘の上の部屋の管理人)
イ・グァンホ /이광호(ゲストハウスオーナー、ルームシェア)
パク・ソンヨン/박성연(ソンヨン:ミソのルームシェアの相手)
リュ・ヘジュン/류해준(ウェブオフィスのミソの同僚)
キム・セビョク/김새벽(獣医)
チョ・デヒ/조대희(レストランの盛り上がるリーマン)
オ・ソンウク/어성욱(レストランの盛り上がるリーマン)
キム・ナンユ/김나윤(投資話に耳を傾ける女性)
■映画の舞台
韓国:済州島
https://maps.app.goo.gl/TP4mNeJYzv1Co5UTA?g_st=ic
韓国:ソウル
ロケ地:
上に同じ
■簡単なあらすじ
韓国の済州島に住むハウンは、絵が大好きで、授業が退屈だと、いつも教科書の隅に担任の似顔絵を描いたりしていた
ある日、そんな彼女の元にソウルから転校生・ミソがやってくる
偶然、隣の席に座ることになったが、挨拶もよそにミソはクラスを逃げ出してしまい、その突発的な行動力を羨ましくも思っていた
ミソの置き忘れたカバンを介して仲良くなったハウンは、彼女を自宅に招き入れ、いつしか家族ぐるみの仲になっていた
その後、一緒に絵を習ったりしていたが、高校に入った頃、ハウンに想い人がいることが判明する
ミソはその相手ジヌのところに行き、「明日、あなたを好きな人が行くから、気持ちがあるなら彼女だけをみていて」と告げる
ジヌは破天荒なミソに心を惹かれながらも、ハウンの想いに応えることになった
時は過ぎ、ミソにもミュージシャンの恋人ギフンができたが、ある日、二人はソウルに行くと言い出す
名残惜しむものの、ハウンは地元に残って教育大に入り、両親の期待に応えるために教職を目指すと決めていた
だが、ジヌは医学の道を歩むためにソウルに行くと言いだしてから、ハウンの心に良からぬ考えが浮かび上がっていく
それは、大学受験合格祈願の山登りの出来事を起点としたもので、いつの間にかミソの胸元に飾られていたネックレスのことを思い出したからであった
テーマ:女の友情
裏テーマ:約束と復讐
■ひとこと感想
香港映画『ソウルメイト/七月と安生』の韓国版リメイクで、本作は「小説ではなく絵画」に設定を変えて、その作者ハウンを知るであろうミソが過去を想起する物語となっていました
小説の中に登場する人物ではなく、ミソの絵を描いたハウンという設定になっていて、ミソがハウンのことを思い出すために、彼女との思い出を「ハウンのブログ」で確認する流れになっていました
この改変がちょっと微妙で、たくさんの残された絵画を見て、過去を思い出す方が良かったように思えます
映画は、小学校時代からの腐れ縁のミソとハウンを描いていて、その仲にジヌが入り込んだことで、大きく運命が変わっていく様子を描いていきます
山頂の洞窟の出来事を起点として、ミソとハウンの想いがすれ違っていくのですが、最後の最後に「そこで起こった本当のこと」というものがわかるようになっていました
物語性としては、リメイク元の方が優れていますが、ビジュアル的な印象が強いのはkちらの方でしたね
壁面いっぱいのミソの絵は圧巻なのですが、その絵が完成されていく背景が描かれていく後半はとても良かったと思いました
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
リメイク元と同様に、手掛かりになる創作物の秘密が描かれていくのですが、その作品がいかにして生まれたのか、というものを丁寧に描いている印象がありました
文字から絵に変えたことで、余計な設定が増えてしまっていて、それが効果的になっているかは微妙な感じになっていましたね
いっそのこと、ミソの出展された絵から過去を辿る中で、ブログではなく、ハウンの描いた絵を追っていく方がメッセージ性は強まるように思えます
映画は、リメイク元と設定を変えてきているので比べる意味はありませんが、文字が紡いできたものと、絵になって残った瞬間という別の視点になっているのは良かったと思います
中盤にて、ジヌから「技術はすごいが心がない」とまで言われるハウンですが、あの瞬間に彼女の内なる魂が燃え上がっていきましたね
あの瞬間のハウンの表情はとても印象的なものだったと言えます
物語は、いわゆる「同じ人を好きになった系」のような感じですが、実際には好きのベクトルとその強さが普通の恋愛とは違う感じになっていました
すべての元凶はジヌにあるのですが、その仕返しとなる「秘密」は、かなり残酷なもののように思えてしまいます
妻となる予定だった人は姿を消し、残された子どものことも知らずに生きていく
この約束は残酷なものではありますが、ジヌとミソが一緒にはなれない以上、その約束は守り続けるしかないのかな、と感じました
■リメイク元との違い
リメイク元の『ソウルメイト/七月と安生』は、ウェブ上にある小説『七月と安生』を映画化したいという流れから始まっていきます
作者にはコンタクトが取れず、小説に登場する安生を探し出した映画会社が、安生と会うという導入がありました
その後は回想録になり、13蔡の時の初めての出会いから中学生活を描き、その後、七月は高校に行き、安生は専門学校に進むことになります
そこで七月は家明と出会って恋に落ちますが、家明は安生に秘めた想いを抱えるという流れになっていました
その後、七月と家明は結婚の約束をしてそれぞれの進路へと向かいます
同じ頃、安生は恋人と一緒に北京に引っ越しまうのですが、そこで安生の恋人は事故で亡くなってしまうのですね
そして、安生と家明が偶然出会い、慰めているうちに関係を持ってしまいます
でも、その関係が七月にバレてしまい、結婚式の当日に家明が姿を消して行方知れずになりました
それから幾星霜が経過し、安生は小説の存在を知ることになります(この時点で安生は七月が出産した子どもを育てていて、その娘が大きくなってウェブ小説を見た、という展開を迎えます)
こんな感じで流れはほとんど一緒で、アイテムが小説と絵画という違いになっています
本作では、前作と同じようなテキストを登場させていますが、絵だけならまだしも、ブログの日記まで更新していくというのはヘビーのように思えてしまいます
共作に至る過程の中で、それぞれが抱えてきたものが見えてくるというプロットは同じですが、絵画にしたことでより鮮明になっていたので、テキストの登場はテンポを削ぐだけのように思えてしまいます
■女の友情の強さの秘密
本作は、籠の中の鳥が野生の鳥を憧れるという内容で、その生き方をするための布石というものが強く描かれていたように思います
小学校時代からの親友が恋愛によっておかしくなってしまい、それが最後まで尾を引いている感じに描かれていました
最終的に、ジヌは自分に子どもがいることも知らなければ、婚約者がどうなったのかすら知りません
彼の若気の至りが二人の友情を壊してしまったことは事実ですが、その報復というものは思った以上に重いものになっていました
この報復を起こさせているのが二人の絆の強さになっていて、ジヌの子どもを出産した際に交わされる約束というものもとても重いものになっていました
映画では、「子どもが生まれたけど安静にすることもなく旅立つ」という幻影が描かれますが、あれは約束が見せたものだと解釈できるのですね
本当は叶えてあげたかったハウンの夢を自分の妄想の中でだけ生き存えさせることになり、それが文字として継続されていくのがリメイク元の骨子になっていました
本作では、それを踏襲しつつ「絵画も完成させる」のですが、その後も作者は一切登場しないけど、絵だけは世に出るということが続いていく流れになっています
女性同士の繋がりの深さが描かれていて、どうしてここまで結束が強くなるのかは不思議に思えてなりません
これは共通の敵がいるからとも言えますが、二人の大事にしていたものを蹂躙した罪の深さがそのまま跳ね返っているように思えます
ミソのことが好きなのにハウンとの関係を続けてしまい、そして結婚をすることになっても、おそらくその想いというものは消えなかったでしょう
ハウンがあの場を去ることになったのは、自分がしたい生き方ができないだけではなく、ミソの代わりに愛されるという疑念を拭えないまま時を浪費してしまう怖さを感じていたからだと思います
ハウンの心情としては耐え難き苦痛の連続で気がおかしくなってしまうし、人生も終わったようなものでしょう
出会った時に感じたときめきを再度取り戻すこともできないので、あの判断になるのは必然のように思えてきます
ミソとハウンの絆はとても強固なものですが、それは同時にハウンがミソを縛っている鎖も強固である、と言ってるようなものなのですね
子どもがいるというだけで身動きが取れなくなりますが、それが心の中で通じ合っていたはずのジヌを継ぐものというところも残酷なのですね
育っていけばどちらにも似てくるので、それがさらに重荷になっていくのではないか、と感じました
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
本作は、リメイク映画ではありますが、その骨子を変えることなく、映画的な印象を強める意味合いで「絵画」というものを登場させていました
これによって、二人の画性というものが見えて、それが人物を捉えやすくなっていたと言えます
写実主義のハウンは目の前にあるものを正確に捉えられるものの、それは「技術だけ」というふうに断罪されます
この言葉を発したのはジヌなのですが、この言葉が彼女の決意を固めることになりました
ミソとの関係などよりも、ジヌは自分自身を否定されたことに怒りを覚え、それは「約束」へと繋がっています
対するミソは抽象的な絵を描いていて、それは美術の先生に遠回しに受け入れられないかと思えば、教師が変われば長所だと言われる非常に不安定なものだったと言えます
ミソ自身が絵のように捉え所がないのですが、彼女は写実的な自分の肖像画をハウンの代わりに描くことができるので、彼女は技術無くして抽象画を描いているわけではないことがわかります
あの瞬間にハウンに成り切っているのかはわかりませんが、魂まで結びついた二人なので、言葉に交わさないこともコミュニケーションの中で共有し合っているように思えました
映画は、この絵画だけでなく、ウェブ日記というものが登場していて、こちらの方もミソが受け継ぐという形になっていました
原作リスペクトを感じる反面、不要にも思えてしまうのですね
なので、あの部屋で肖像画を見たあとは、彼女の絵だけを頼りに回想録を紡ぎ、その中でハウンが学んできた技法などを学び、彼女自身になりきれるという流れの方が劇的だったように思います
劇中でも、彼女の残した絵を見て回想する場面があったので、それを全編を通じて行う中で、「二人がキスしている絵を見つける」などのミスリードがあっても良かったのですね
彼女があのシーンを見たことを観客は知っていますが、ミソとハウンは気づいていない
それが誤解であることは最後にわかりますが、誤解であったことをハウンは知らないままだったりします
最終的には彼の子どもを産み、それをミソに託すことで二人に対する枷を作り出すのですが、それを踏まえても、あのシーンを絵画で再現するという意味はあったように思えました
■関連リンク
映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://eiga.com/movie/100746/review/03524264/
公式HP:
https://klockworx-asia.com/soulmatejp/