■この映画の父親を笑う人よりも、自分ごとだと思って分析できる人の方が色んなものを守れると思います
Contents
■オススメ度
人身売買の実態に興味のある人(★★★)
実話ベースのフィクションに興味のある人(★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2024.10.23(TOHOシネマズ二条)
■映画情報
原題:Sound of Freedom(自由の音)
情報:2023年、アメリカ、131分、G
ジャンル:児童人身売買を捜査する捜査官の海外での活躍を描いた実話ベースのクライム映画
監督:アレハンドロ・モンテベルデ
脚本:ロッド・パール&アレハンドロ・モンテベルデ
キャスト:
ジム・カヴィーゼル/Jim Caviezel(ティモテエ/ティム・バラード/Tim Ballard:アメリカの元政府職員、アメリカ国土安全保障省=HSI)
ビル・キャンプ/Bill Camp(バンピロ/Vampiro:エル・カルテルの元会計士、ティムの協力者)
ホセ・ズニーガ/José Zúñiga(ロベルト・アギラル/Roberto:テグシガルパ出身の貧しい二児の父)
クリスタル・アパリチ/Cristal Aparicio(ロシオ/Rocío:ロベルトの娘)
Lucás Ávila(ミゲル/Miguel:ロベルトの息子、テディベアと名付けられる少年)
Kurt Fuller(ジョン・ブライアント/John Bryant:ティムの上司)
Valerie Domínguez(ターニャ/Tanya:似顔絵を配布するHSIの女性職員)
Scott Haze(クリス/Chris:ティムの相棒捜査官)
ハビエル・ゴディーノ/Javier Godino(ホルヘ/Jorge:コロンビア警察の警部)
エドゥアルド・ベラステーギ/Eduardo Verástegui(パブロ・デルカド/Pablo:捜査に協力する地元の富裕層、不動産開発会社のCEO)
Kris Avedisian(アーンスト・オシンスキー/Oshinsky:小児性愛の容疑者)
【コロンビアの人身売買組織】
Yessica Borroto Perryman(ミス・カタルヘナ/カティ・ファレス/Katy:ミスコンの女王、ジゼルと呼ばれる児童売買加担者)
Gustavo Sánchez Parra(エル・カラカス/El Calacas:ナイトクラブの経営者、元エスコバルの護衛)
Mauricio Cujar(オソリオ/カルネ/Carne:ジゼルの知り合いの弁護士)
Hector Lucumi(ドーベルマン/Doberman:カルネの護衛)
Manny Perez(ドン・フエゴ/Fuego:ジゼルの仲間、児童売買仲介者)
Carlos Gutiérrez(アドルフォ/Adolfo:ジゼルの仲間)
Gary Basaraba(アール・バックマン/Earl Backman:少年を買うマダムの夫、モデルはアール・ブキャナン/Earl Buchanan)
Alina Lozano(テディベアと名付けるメキシコのマダム)
【反政府組織関連】
Gerardo Taracena(サソリ/エル・アラクラン/El Alacrán:FARCのリーダー)
Ariel Sierra(チェチョ/Checho:アルクランの手下)
Jaime Newball(バンバン/Bam Bam:アルクランの手下、川の監視人)
Jairo Ordoñez(ピラーナ/Piraña:アルクランの手下)
Gustavo Angarita Jr.(アルクランの護衛)
James Quattrochi(アルクランの護衛)
【被害者の子ども達】
Samuel Livingston(シンバ/Simba:誘拐された男の子)
Alanis Escobar(モデルとして誘拐された少女)
Alison Soto(モデルとして誘拐された少女)
Karen Cardona(モデルとして誘拐された少女)
Sharon Pérez(モデルとして誘拐された少女)
【ティムの家族】
ミラ・ソルビノ/Mira Sorvino(キャサリン/Katherine:ティムの妻)
Estela Monteverde(ミランダ/Miranda:ティムの娘)
Jerónimo Barón(カレン/Kalen:ティムの娘
María Fernanda Marín(フロール/Flor:ティムの娘)
Ethan L’Hoeste(ティムの息子、次男)
【その他】
Joseph Fuzessy(伝導団のメンバー)
Ali Landry Monteverde(伝導団の看護師)
Camilo Colmenares(伝導団の医師)
Matt Osborne(HSIの大使館のエージェント)
Thali Georges(HSIの特別捜査官)
Alejandro Muela(CTIのエージェント)
Eduardo Gomez Monteverde(カラカスのクラブの用心棒)
■映画の舞台
2013年、
ホンジュラス:テグシガルパ
https://maps.app.goo.gl/6mVwNvKQBoJ7MQG36?g_st=ic
アメリカ:カリフォルニア州
カレクシコ
https://maps.app.goo.gl/UrUTkSjgCGiSDNnX6?g_st=ic
ロケ地:
コロンビア:
カルタヘナ/Cartagena
https://maps.app.goo.gl/FMaPdZFzzUfF7GxK8?g_st=ic
バル島/Barú
https://maps.app.goo.gl/SzPb7taShzt5MGB78?g_st=ic
ボゴタ/Bogotá
https://maps.app.goo.gl/NkAZjVSyshTbnwD67?g_st=ic
アメリカ:カリフォルニア州
カレクシコ/Calexico
https://maps.app.goo.gl/UrUTkSjgCGiSDNnX6?g_st=ic
■簡単なあらすじ
2013年、ホンジュラスのテグシガルパにて、元ミスコンの女王ジゼルが、幼い姉弟に声を掛けた
二人の父ロベルトに「子どものモデル契約」を打診したジゼルは、契約を済ませて、ホテルのある一室に彼らを招待した
「撮影がある」と言って父を退席させたジゼルは、そこに集められた子どもたちの写真を撮り始めた
時間になって迎えにきたロベルトは、部屋がもぬけの殻になっているのを目撃する
子どもたちは大掛かりな組織によって誘拐され、人身売買のルートに放り込まれていたのである
一方その頃、アメリカのカリフォルニア州カレクシコでは、HSI(国土安全保障捜査局)のティムが相棒のクリスと共にある人物を追っていた
男は小児性愛者と噂され、ティムはそれとなく彼に近づいて、小児児童売買の尻尾を掴む
そして、彼の利用していた組織の情報を入手し、ミゲルという少年を救うことができた
だが、彼には姉のロシオがいて、彼女はどこか別の場所に送られたと言う
ティムはミゲルから得た情報をもとに、コロンビアで暗躍している児童人身売買組織にメスを入れることになったのである
テーマ:自分ごとの境界線
裏テーマ:現実を直視する意味
■ひとこと感想
児童人身売買組織から子どもを救うと言う話ぐらいしか知らずに参戦
冒頭のテロップで「Based On」と出ていたので、実話ベースで脚色マシマシの映画なのかなと思っていました
映画が始まる前に注意書きのようなものが表示され、エンドロールに主演からのメッセージがある、とお知らせが入っていました
どんなものなのかなと思っていたら、映画の内容が全部吹っ飛んでしまうような内容になっていましたね
これは観た人だけのお楽しみの部分もありますが、呆れる人がいても驚かないですね
物語は、ある姉弟に関わったことで、両方助けたいと国を超えて奮闘する主人公が描かれます
どこまでが実話かはわかりませんが、主人公のモデルの人は、この2013年に「OUR」という組織を立ち上げて、人身売買に対抗する動きを始めているようですね
その後、色々あったようですが、そっちの方もそのうち映画になってしまいそうな気がしてしまいます
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
映画は、人身売買組織のリアルを追いつつ、ある家族の児童誘拐を追っていく流れになっていました
弟の方を偶然見つけたことによって、姉を探し出すと言う流れになり、コロンビアへと赴くことになります
現地の警官ホルヘと協力しながら、かつてカルテルの資金洗浄をしていたバンビロに会うことになって、彼が児童を買っては解放している人物でしたね
その後、ある富豪のニュースを見つけたティムは、その富豪をも巻き込んで「おとり捜査」を始めるという流れで、これが実際にあったことなのかはわかりません
反政府組織のボスらしき人に姉の方が買われたことがわかり、ホルヘも手が出せなくなるのですが、そこで医師のふりをして潜入するという流れになっていました
そこから単身で少女を救い出して脱出するのですが、このあたりはどう考えても実話とは思えません
反政府組織のボスを殺していたら、その後コロンビア国内が大変なことになっていると思うのですね
組織総出でティム探しが始まり、隠れ蓑に使われた伝導団も壊滅に追い込まれてしまうでしょう
映画なので許容範囲だと思いますが、さすがにエンドロールのアレはどうなのかなと思います
映画を観て、人身売買に興味を持って、「観客の意思で語り手になる」というのならわかりますが、それを制作サイドが語り出したらダメだと思います
QRコードまで登場して、寄付してくれたらチケット?みたいな感じになっていましたが、さすがにスマホの電源を入れた人はいなかったように思いました
語る価値のある映画ならば自然と派生するもので、そう言った行動を示唆するというのは悪手のように思いました
■人身売買のリアル
「World Vission」によれば、世界では4300万人の人身売買が起こっている(2016年)とされていて、人身売買は「人身取引」とも呼ばれています
従来の「人身売買」は「女性に対する暴力や性的搾取」のことを意味し、「人身取引」は「国際組織犯罪防止条約の人身取引議定書」において「国際組織犯罪」として定義されています
それによると「性的搾取、強制労働、臓器売買」などを含んだ犯罪となっています
この人身取引のうちの25%が子どもとされていて、「パルレモ議定書」では、「18歳未満の人物を搾取する目的で勧誘し移動させることは、何らかの強制的な手段を伴わない場合」でも「人身取引」に該当すると定めて禁止しています
なので、うっかり未成年を家に連れ込んだりして、その内容に疑わしさがあるだけで嫌疑が掛かる可能性が出てきます
それ故に、もしそのような場面に遭遇した時は、まずは警察、児童相談所などに相談しないと、自分の身が危うくなるという可能性が出てきます
日本の政府広報オンラインでも、被害者らしき人を見聞きしたり、助けを求めてきた場合は、警察署もしくは外国人の場合は地方出入国在留管理局に連絡するようにと書かれています
日本でも、2022年で人身取引犯罪にて46人が保護荒れていて、以下のような具体例があるとされています
事例1として、出会い系サイトを通じて知り合った女性に対して、売春をさせるために暴行を加えて、売春をさせたというものがあります
また、事例2として、短期滞在の在留資格で入国させたフィリピン人女性を雇い入れた後に、渡航費用名目で借金を背負わせて、パスポートを取り上げるなどして、不法在留のままホステスとして働かせた、というものもあります
また、現在よく目にするのが「技能実習生」として受け入れた相手に対して、暴言を浴びせたり、違法な時間外労働をさせる、と言ったものもあります
これらに対する匿名の通報ダイヤルというものがあって、「(警察庁)0120−924−839」というものがあります
こちらでも人身取引に関する情報を受け付けている窓口になっています
事件の解決に役立った場合には、情報提供者に情報量が支給されるとされています
また、法務省の「みんなの人権110番(0570−003−110)」、外国語対応の相談ダイヤル(0570090911)などもあります
さらに法務省の「女性の人権ホットライン(0570−570−810)」、「こどもの人権110番(0120−007−110)」もありますし、児童相談所虐待対応ダイヤル(189)というものもありますので、こう言った相談窓口があることは知っておいた方が良いと思います
技能実習生に対するものは厚生労働省、性犯罪・性暴力に関する相談は内閣府男女共同参画局「性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター(#8891)というものもあります
これらの情報は政府広報オンライン「人身取引」のページにあるので、下記のリンクを参照してください
↓「政府広報オンライン「人身取引」は日本でも発生しています」URL
https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201111/3.html
■映画の語り手を得る方法
本作は、映画が終わった後に主演のメッセージが流れる仕様になっていて、QRコードを読み取ってくれたら、誰かをこの映画に招待できるというものでした
映画を啓発の材料として、人身売買への注意喚起をしようというものですが、本国でどれだけの効果があったのかは分かりません
さすがに、映画を使って振込詐欺をするみたいなことはないと思いますが、この手のメッセージは裏を勘ぐられてしまうように思います
日本では1年後の公開になっていますが、鑑賞した回でスマホで読み取っている人はいませんでしたね
このあたりは文化の違いという感じで、このような告知は「誰にも知られずに参加したい」というものがあるように思います
もっとも効果的なのは、QRコードのついたポストカードを配るとかになりますが、費用がかかるので難しいように思います
そもそも論として、映画に感銘を受けて口コミを広げようとしても、それは「映画が面白いから」に尽きるのですね
なので、映画の質が「誰にでもお勧めできるような作品」になっていないとダメで、本作の場合は訴求先がかなり限定されていると思います
親が子どもをどこまで守れるのかはわからず、相手は回数を重ねて手法をアップデートしていきます
そう言った相手側の進化というものをドキュメンタリー風に撮る方が効果があるように感じました
また、完全に子ども目線になる(視界の低さも加えて)とか、いっそのこと拉致側の視点で惨たらしく描く方が効果的なのですね
子どもに拉致の疑似体験をするとか、相手側の策略の変遷を暴露するなどとすれば、受け手側の知識が増えていくように思います
本作の場合は、本当にいつもの展開になる映画で、教訓になるようなものがほとんどありません
主人公は国家の政府関連の職員で、間の抜けた親が嵌められたというものになっているので、導入からして「あれは誰にも防げない」という説得力が欠けています
ミスコンの女王が加担している悪質な設定はありますが、それでも初めて行く建物で子どもから目を離すとか、初めて会った人を信用して預けるというのがあり得なく思ってしまいます
この映画が啓発されたとしたら、得られる教訓は「親がバカだと子どもは危険」というものなのですね
それを啓発する意味があるのかは分かりませんが、対岸の火事と捉える人の方が多いように感じます
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
本作は、エンドロールの告知のインパクトがありましたが、元ミスコンレベルの著名人でも人身売買を嬉々として行なっているところに驚きを隠せません
このような肩書きであるとか、相手が女性だからというのが不安要素を消しているのかもしれませんが、現在ではここまで警戒心を上げられないと巻き込まれるというリスクがあることを示しています
有名人の名前を借りた詐欺は普通にあるし、ある種の常套手段のように思えます
それぐらい、人は何らかのネームバリューを信用する生き物とも言えるので、この手の犯罪は無くならないのだと思います
被害に遭わないためには、中身をしっかり確認するべきと言われがちですが、それだけではダメなんだと思います
こう言ったものを避けるには「受動的な勧誘は全て断る」という信念を持つ以外にないでしょう
また、付き合いで渋々みたいなことことがあっても、そう言った人脈はそのために形成されている場合が多いので、お金の話が出たら距離を置くしかないと思います
個人個人が情報のアップデートをするために、様々なニュースを読んだり見たりして、犯罪に関するプロファイリングを自分で行うぐらいでないと防げないとも言えます
そんな中で大事にしたいのは「感性」であり、それを鍛えるために能動的に色んな情報にふれることだと思います
詐欺を警告しているサイトもあれば、野放しになっている詐欺情報もある
また、自分が守るべきものについてのリスクを広く学ぶ必要があります
今回の映画だと、芸能入りする子どもみたいな案件が入口でしたが、そう言ったものの体験談とか、リスク警告を同じ熱量で拾う必要があります
例えば、オーディション体験談が10個見つかったとして、オーディション詐欺の情報が1個見つかったとします
この時に「安心だ」と思う人は危ないと思います
この「危ない」「安心」の見極めに必要なのが「感性」の部分で、そう言った感覚を鍛えるには「詐欺をする側の思考」というものを学ばなければなりません
また、この時に「自分と相手の心理状態」を観察することで、その隙間を埋めていくことになります
今回の映画の設定だと、子どもと親を切り離すにはどうするかを考え、あらゆる可能性を探っていくことになります
そうすると、「被害者(自分)が油断する情報」が見えてくると思います
そして、自分が何の情報を得れば安心してしまうのかを知ることで、自分の隙を知ることができます
それは、これまでの自分の体験から想起できるものもあると思うので、「人は何度も同じ過ちを繰り返す」ということを念頭に置いて、自分はそこまで万能でも有能でもないと考えることで見えてくるものがあるのではないでしょうか
■関連リンク
映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://eiga.com/movie/99795/review/04398204/
公式HP: