■なりきりキャラが崩壊して、本当のスオミが出てきてドン引きでも良かったように思えます
Contents
■オススメ度
長澤まさみのファンの人(★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2024.9.13(イオンシネマ京都桂川)
■映画情報
英題:All About Suomi
情報:2024年、日本、114分、G
ジャンル:富豪の妻失踪によって集まることになった5人の夫を描いたコメディ映画
監督&脚本:三谷幸喜
キャスト:
長澤まさみ(スオミ:失踪した人妻)
遠藤憲一(魚山大吉:庭師、1番目の夫)
松坂桃李(十勝左衛門:Youtuber、2番目の夫)
小林隆(宇賀神守:警察官、3番目の夫)
西島秀俊(草野圭吾:刑事、4番目の夫)
坂東彌十郎(寒川しずお:詩人、5番目の夫)
宮澤エマ(薊:神出鬼没な女)
瀬戸康史(小磯杜夫:草野の部下、刑事)
戸塚純貴(乙骨直虎:寒川の世話係)
阿南健治(寒川を取材する記者)
操上和美(カメラマン)
梶原善(イタリアンレストランのウェイター)
ゆうたろう(コスプレする刑事)
長澤まさみ(時枝:スオミの母)
山本海成(寒川太郎:スオミの息子)
■映画の舞台
都内某所
ロケ地:
千葉県:千葉市
ティーエムアドヴァンス(寒川邸)
https://maps.app.goo.gl/6PRM5smPMFN7ioDj7?g_st=ic
神奈川県:横浜市
横浜ロイヤルパークホテル
https://maps.app.goo.gl/w12mxvP6gGVtL5wC8?g_st=ic
東京都:港区
Artis/Maristo 東京ショールーム
https://maps.app.goo.gl/a1MQBF4yrCHwuKPg9?g_st=ic
カフェ・ラ・ボエム(仮装パーティー)
https://maps.app.goo.gl/8W6fY6SaVuvefd8H7?g_st=ic
東京都:千代田区(イタリアン)
サバティーニ・ディ・フィレンツェ
https://maps.app.goo.gl/283CtsefX2UBUnsp9?g_st=ic
■簡単なあらすじ
大富豪の妻スオミが失踪したという相談を受けた刑事の草野は、現在の夫である寒川に会いに行くことになった
彼のもとには、書籍を書いて欲しくて何でも屋を買って出ている乙骨や、雑誌の取材記者、カメラマンなどがいた
寒川はそのうち帰ってくると思っていたが、乙骨は誘拐の可能性を考えていて、そこで草野は部下の小磯を引き連れて、秘密裏に邸宅に入ることになった
電話に逆探知用の機械を設置して、犯人からの連絡を待っていたところ、買い出しに出かけようとした乙骨は脅迫状のようなものを見つけてしまう
それでも、大ごとにしたくない寒川は警察に通報することを嫌がっていたが、そこに前夫を名乗る草野の上司・宇賀神までやってきてしまう
そこでスオミの話をし始める彼らだったが、どうしても人物像が噛み合わず、別人なのではと思えてしまう
そんな折、庭師として使用人をしている亀山は「自分が一番最初の夫だ」と言い出す
さらに、もう一人の夫がいることがわかり、スオミは5人の男と関係を結んでいたことがわかるのである
テーマ:5つの顔を持っている意味
裏テーマ:演じ分けと願望
■ひとこと感想
長澤まさみ演じるスオミという人物が「夫に見せていた顔が違った」という内容で、それによって、彼女がどんな人物だったがわかるようになっていました
5人の夫がマウントを取り合う流れは面白かったのですが、いかんせん出オチ感がすごかったですね
ミステリーっぽい作りになっていますが、これをミステリーだと言ったら怒られてしまうと思います
本作は、あくまでもコメディ映画として、長澤まさみの七変化を楽しむもので、そのテイストがOKなら貴重なセーラー服シーンなども堪能できます
問題は、十数年にわたる結婚生活だけど、どの時代の回想録も同じ年齢に見える点ではないでしょうか
面白いかどうかは人それぞれだとは思いますが、ネタバラシの後半は失速しまくっていたと思います
みんなの知るスオミは別人に思える、というところがピークだったように思えました
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
本作にネタバレがあるのかは何とも言えませんが、「犯人」「真相」に関しては想定内であると思います
それでも、彼女が無罪放免になってしまう流れは無理やりで、被害がなかったのでチャラみたいな感じになっていました
おっさん、イケメンの流れなので、6番目はイケメン枠だったのですが、思いっきり騙されて捨てられそうな男を選んだなあと思いました
映画として面白いかは何とも言えないのですが、長澤まさみが苦手だとキツい映画でしょうねえ
個人的には宮澤エマもツボだったので問題なかったのですが、彼女が黒幕で、二人がカップルなのかなとか思っていました
さすがにそこまでの濃い設定はぶっ込んでいませんが、その分、可もなく不可もなくという無難な映画になっていたように思えました
■相手によって人格が変わる意味
本作は、5人の元夫が妻の過去を語るというもので、スオミは相手によってキャラを演じ分けていました
彼女の「相手が喜びそうなキャラ把握力」は高く、それを高校生の時代からきちんとこなしてきました
とは言え、これまでになぜ関係が破綻したのかなどははっきりとなっておらず、突然消えたとかでもなかったのは不思議でしたね
そのキャラを演じ続けるのに疲れたとか、ある種の目的が達成されたのかはわかりませんが、誰とも子どもを作っていないというところに、夫婦間の性格の不一致があったのかな、と思いました
女子高生時代にはS的キャラ、十勝との時には活動的なハツラツ系、警察管理職の時は中国人のフリ、刑事の時には家庭的な妻という感じになっていましたね
最終的に、自由奔放な妻になるのですが、それは芸術家が彼女を置物のように思っていたからだと思います
本来のスオミは自由奔放な最後の妻で、そこに行き着いたのは色んなキャラを演じた末に「一番精神的に楽だったから」なのでしょう
芸術家は、彼女がそばにいればそれだけで良いと考えているので、うまくフィットすることになったのだと思います
一番素に近いのは女子高生の時だと思いますが、大人になったことで落ち着きが出て、目的のためにどのように振る舞えば良いかという所作が出てきたのでしょう
人は色んな人を演じながら自分探しをするのですが、居心地が良い自分を演じれる人は多くはありません
どこかで自分を騙しながら、人受けの良さそうな人物を演じることになっていて、そのストレスからの解放をどこに持っていくかで悩んでいると言えます
オンとオフで切り分けられる人は楽ですが、スオミのように人によって変えるというのは一番しんどいパターンでしょう
それを楽しんでいるならOKですが、ラストの百面相の流れを見ていると、かなり高ストレス状態になっているのかな、と感じました
■結局、何がしたかったのか?
本作は、舞台劇のような感じに作られていて、展開を飽きさせないようにキャラクターが登場する流れになっていました
とは言え、ほとんどのキャラが開始早々に登場し、解説役もいたりするので、ミステリーっぽさというものはあまりありません
映画のメインは、長澤まさみ扮するスオミのキャラ変化なので、それで十分という人は問題ない内容になっていると思います
物語の展開としては、スオミがどうして色んな男を渡り歩くのかというのがメインなのですが、彼女が男と切れる理由というのは釈然としないものがあります
かと言って、この夫婦関係で遺恨が残っているということもなく、円満に関係は解消されているように見えるのが不思議でしたね
庭師との付き合いは高校時代なので、卒業してから関係を持ったのか分かりませんが、早々にその関係は終わっています
次は人気インフルエンサーとの関係で、どうやらサバゲーで知り合ったのちに恋人関係になったように描かれていましたが、あまり夫婦だったという印象は薄いように思えます
3番目の警察はいわゆる偽装結婚のようなもので、中国人だとずっと思い込んでいて、帰化するためにペーパー結婚をしたように描かれていました
4番目の刑事とは結婚生活が描かれていましたが、スオミが彼から離れた理由は察してね、ぐらいのノリになっていました
それぞれの夫とされる人物と婚姻関係にあったけど、それは全て別人格を演じていたというものですが、その目的はあまりはっきりしません
常に神出鬼没な友人が登場するのですが、結託して金銭を得ようとか、そういったことは考えていない感じなのですね
なので、結局何がしたいのかがわからず、芸術家のような「富裕層」になりたかったとしても、回り道が過ぎるように思えました
最終的には、誘拐騒動を引き起こすことになっていて、それが目的のように描かれていますが、とても回りくどいような計画になっていましたね
芸術家も狂言誘拐だと思っているし、夫婦にまでなっているのなら、遺産相続の方向に持っていった方が早いような気もします
また、庭師は元夫であることは知っていて生活しているし、夫同士の関係性も知っているので、通報しなくても警察の耳に入ることはわかっていたと思います
最後のヘルシンキ音頭への展開もよくわからないし、本当に「物語として何を描きたかったのか」というのだけは最後まで分かりませんでした
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
本作は、最後のヘルシンキ音頭をやりたかっただけだと思っていますが、ヘルシンキっぽさというのもほとんど感じられません
それぞれのキャラの濃さとかは面白いのですが、壮大なコントを見ているようで、映画だったのか首を傾げてしまう感じになっていました
相手に取り入るのが上手いキャラで、それぞれの相手に対して演じ分けをしていて、そして気に入られて結婚に至っているのですが、彼女が演じてまで結婚をしたかった理由というのは分かりませんでした
高校教師と結婚しても得られるものはないし、インフルエンサーとはノリが合ったけど安定はしていません
偽装結婚は論外としても、家庭に収まるのかと思った結婚も続かず、この男性遍歴で子どもが登場しないのも不思議な感じがしましたね
そう言った生々しい話は無視しているのだと思いますが、それゆえに人間っぽさというものが失われてしまっているようにも思います
せめて、その男と関係が切れた理由がはっきりするとか、それぞれの結婚期間がどれくらいなのかとかが分かれば良いのですが、そう言った考察を映画内ではちょろっとしていたけど、はっきりと提示されていなかったと思います
次の相手ができたから別れたではなく、ひとつずつが切れていて、そこから出会いがあったという感じなのですが、スオミが理想の相手を見つけたという感じではないように思えます
あくまでもスオミに惚れ込んだ夫に付いて行って、相手の喜びそうな妻を演じてきたけど、疲れたので関係解消みたいな流れのように思えました
この5人をステップアップに使っていたとかの方がまた分かりやすいのですがそんな感じはしないのですね
裕福さが上がっているのでもなく、若くなっているのでもなく、イケメン度が上がっているわけでもない
そんな中で、離婚に関しては他人に丸投げしているところもなんだかなあと思ってしまいました
ご褒美のように刑事は捉えていましたが、そこでドヤってどうするんでしょう
あまり深く考えずに音頭を楽しむ映画ではありますが、それでは何にもならないので、つらつらと思ったことを書いてみました
■関連リンク
映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://eiga.com/movie/100900/review/04243957/
公式HP: