■教育の連鎖性が国を豊かにしていく


■オススメ度

 

インド映画が好きな人(★★★)

スーパー30について詳しく知りたい人(★★)

 


■公式予告編

鑑賞日:2022.9.27(アップリンク京都)


■映画情報

 

原題:Super 30

情報:2019年、インド、154分、G

ジャンル:実在の人物アーナンド・クマールのプログラム「Super30」誕生秘話を描いた伝記的映画

 

監督:ビカース・バハル

脚本:サンジーヴ・ダッタ

 

キャスト:

リティク・ローシャン/Hrithik Roshan(アーナンド・クマール/Anand Kumar:「Super30」を開発し、貧しい学生にJEE  Advancedの試験対策を教えた数学者)

 (青春期:Adesh

 

ムルナール・タークル/Mrunal Thakur(スプリヤー:アーナンドの恋人、ダンサー)

Paritosh Sand(スプリヤーの父)

Simi Sahnan(スプリヤーの母)

 

ヴィーレンドラー・サクセサー/Virendra Saxena(ラジェンドラ・カムール/イーシュヴァール:アーナンドとパラナヴの父、郵便局員)

ナンディーシュ・シン/Nandish Singh(プラナヴ・カムール:プログラムを手伝うアーナンドの弟)

 (少年期:Ragan Sharma

サーダヤー・シン/Sadhana Singh(ジャヤンティ・カムール:アーナンドとプラナヴの母)

 

ヴィジャイ・ヴァルマー/Vijay Varma(フッガ・カムール:ロンドンで成功するアーナンドの教え子)

 (青春期:Ghanshyar Kumar

Ulhas Barre(フッガの父)

Raju Shree(フッガの母)

 

アーディティヤー・シュリーバース/Aditya Srivastava(ラッラン・シン:ラーム・シンの部下、予備校「エクセレンス」経営者)

パンカジ・トリパティ/Pankaj Tripathi(ラーム・シン:ビハール州文部大臣)

Sharat Sonu(ハディム・マリク:ラーム・シンの秘書)

 

アミト・サード/Amit Sadh(ラグナート・バーラト:アーナンドを追うジャーナリスト)

Anud Singh Dhaka(ラグナートの助手)

 

マナブ・ゴーヒル/Manav Gohil(プルショタム・シン:IASの役員、のちのスプリヤーの夫)

 

Merai Alam(ジャナルダン:ラージェンドラの同僚、郵便局)

Gopuu Ali(ビンハール:ラージェンドラの同僚、郵便局)

 

Vijay Kumar(BHUの図書館職員)

Sushil Pandey(アーナンドに論文のことを教えるBHUの図書館のアシスタント)

 

Rajesh Sharme(忠告する殺し屋)

Sanket Deshpande(裏口入学の医師)

 

Dharmveer Jakhar(社会活動家)

Chittaranjan Giri(人力車の男)

 

【Super30の生徒たち】

Aayush Kumar Shukla(ヴィノド:眼鏡男子)

Rahul Raj(キショア)

Deepali Gautam(クスム:踊る女の子)

Rajesh Sharma(バッキー)

Amit Raj(スレーシュ)

Abhishek Kumar(ケーシャヴ)

Vaibhav Gupta(ヴィッキー)

Abhishek Kumar(ブリジェシュ)

Abhishek Kumar Sharma(ラム・ラル)

Ajay Kumar(ラックスマン)

Ashwni Kumar(シャム)

Deepak Kumar Gupta(ニラニジャン)

Gopi Kumar(マノハール)

Krishna Kumar(ビア・バブ)

Laxmi Rajput(ビンディヤ)

Mansi Kumar(アジュ)

Mohammed Salman(ウトカーシュ)

Naveen Kumar(ウルミラ)

Nitish Kumar(ヴィカス)

Pradyuman Kumar(アンキット)

Prem Kumar(アザン)

Prince Kumar(チャンドゥ)

Rohit Kumar(バンケ)

Roshan Raj(リテッシュ・ランジャン)

Sunny Kumar(ビノダナンド)

Suraj Prakash(リンク)

Vikas Kumar(プラカシュ)

Vinod Kumar(ヴィシュワ・カルマ)

Vishal Kumar(ラデ・モハン)

 

【エクセレンスの生徒】

Mihir  Ahuja(エクセレンスを辞めるアーナンドに学びたい生徒)

Ali Haji(プラダ:「Super30」の生徒を馬鹿にしている裕福な生徒)

Krithi  Shetty

 


■映画の舞台

 

インド:ビハール州

パタナ

https://maps.app.goo.gl/Cbk459uR6oftzu2U9?g_st=ic

 

バナラス・ヒンドゥ大学

https://maps.app.goo.gl/VZPAbhP8djrgNzy98?g_st=ic

 

ロケ地:

パタナ&バラナス

 


■簡単なあらすじ

 

インドのビハール州に住むアーナンドは数学の天才として名を馳せていた

大会で優勝したアーナンドは、その場でラーム・シン文部大臣から「いつでも支援してやる」と言われていた

 

アーナンドはバラナスヒンドゥ大学の図書館に忍び込んで本を読む日課を過ごしていたが、とうとう見つかってしまって追い出されてしまう

彼が読んでいた本は論文を提出して掲載されればタダで送ってくると聞かされ、ある難問の論文を作成することになったのである

 

それはまだ誰もが解いたことのない問題で、その論文はイギリス・ケンブリッジ大学のリチャード教授の目に止まる

教授から推薦状をもらったアーナンドは資金集めに回り、大臣の元にも訪れる

だが、大臣は約束はリップサービスとばかりに反故にしてしまい、アーナンドたちは自力でお金を集めるしかなかった

 

そんな折、父らージェンドラが心臓発作で急逝してしまい、アーナンドはイギリス行きを諦めることになった

パーパドを売って生計を立てる毎日を繰り返していたが、ある日街角で予備校の経営者ラッラン・シンに拾われる

 

アーナンドの評価は高く、瞬く間に金銭的に裕福になっていったが、父の言葉「能力のあるものが王になる」が頭から離れず、貧困や階級によって教育機会を奪われている現実に心を痛めていく

そして、とうとうアーナンドはラッラン・シンの恩を仇で返すように予備校を辞め、「無料塾」を始めてしまうのである

 

テーマ:機会の均等

裏テーマ:教育の波及

 


■ひとこと感想

 

受験のノウハウ系とか、生徒たちと熱い戦い系かなと思っていましたが、さほど印象に残らない映画になっていましたね

この映画で「Super30」というのがどんなプログラムなのかを理解するのは無理で、ともかく「どういう選抜理由賈わからない30名」を教えて、インドの工科大学の受験を受けさせようとしていることだけはわかりました

 

アーナンドの思いつきで始まった無料塾ですが、予備校CEOのラッラン・シンがちょっとかわいそうに思ってしまいますね

父が死んで路頭に迷いかけていた時に拾い上げて、経済的な自由を与えたのに裏切るという流れになっていて、無料塾と並行することができなかったのかとか疑問が残りました

 

後半は生徒VSマフィアみたいな戦いになっていて、試験そのものへの戦いよりサバイバルになっているのはどうかと思いました

実際に襲われたという事実はあるようですが、映画のメインがそれなのかは微妙に思えましたねえ

 


↓ここからネタバレ↓

ネタバレしたくない人は読むのをやめてね


ネタバレ感想

 

「Super30」は年単位で限定30名だけ教えるみたいなプログラムで、インド工科大学の入試の特化したプログラムのようでした

そもそも試験がどのようなものかわからず、映画のイメージでは物理&数学をメインに教えていて、アーナンドもそっち方面の能力が高いという印象を受けました

 

人物が多すぎて、アーナンドの周辺だけでも相当人数がいるので、途中から弟ぐらいしかわからん感じになっていました

彼女も突き放しているのに協力的だったりと、スプリヤーの旦那さんも聖人すぎて、逆にアーナンドが無茶苦茶な人物に思えてしまいます

 

映画ではいきなり30人全員合格していますが、実際には当初は20人前後だった模様

でも、その後本当に30人全員が合格し続けるという異例の私塾になっているようですね

父親の思想が色濃く反映されていて、偉大なる父の先見の明がアーナンドを偉大な人物に押し上げたように思います

 


実際の「Super30」とはどんなものか

 

Super30」はアーナンド・クマール(Anand Kumar)氏が提唱した教育理念に基づくもので、インドのパトナの数学学校で行われたプログロムのことです

アーナンド・クマールとビハール州の元DGP(警察庁長官)アバヤナンド(Abhayand)氏によって開発されました

アバヤナンド氏はIPSオフィサーで、IPSとは「インドの警察」のことを意味します

ちなみにスプリヤーの夫はIASで、こちらは「インドの公務員(役人)」なので、彼が共同開発者というわけではありません

 

「Super30」は文字通り「1年間で30人だけを教える」というもので、活動は2003年からとなっています

ウィキペディアによると、2003年から2019年までのべ18年間で540人を教え、IIT-JEE(インド工科大学の試験)をクリアしたのは427人で、合格率は79%となっています

2008年から2010年までの3年間と、2017年で「30人全員合格」という偉業も成し遂げていました

 

「Suoer30」の公式ホームページによると、参加するためには「試験の合格」「経済的背景が貧しい」などがあります

テストは30問で、ジャンルは「物理・化学・数学」から均等、試験時間は1時間となっています

 

インド工科大学(ITT)は全国にたくさんある大学で、インド全土の定員は1万人に対して、受験者数は100万人を超えます

通常の合格率は1%未満となっていて、いかに「Super30」が優秀なのかがわかりますね

具体的に何を教えているとか、どのような方法なのかはシークレットですが、映画を見る限りは「スキルではなくマインド」のように思えました

常に「自分の周りにあるものから問題を作る」というもので、物理法則で成り立っている世界の中で、「自分がわからないものを探し出す」という過程を踏みます

また、試験に対する心構えなども教えていて、映画ではかなり脚色度の濃い芝居のシーンがあったりもしました

 

基本的には「貧困層」で「独自の勉学」があり、「Super30の試験に合格できる能力」があるので、通常教育の塾よりは「勉強に前向き」「向上心がある」「独学力」などが優れています

誰しもが受験できれば良いのかも知れませんが、「Super30」の理念は「教育機会のない人々の救済」で、「一人を教えることでその家族の教育機会の向上を目指す」という側面があります

なので、富裕層が「Super30」に関わる意味はないでしょう

ある意味、閉鎖された空間で伝承されるノウハウがあって、背景が貧困層ということもあって、一般国民からのヘイトが受けにくい状況になります

それでも、「Super30」を疎ましく思う層(富裕層、不合格者)はいるので、映画の公開に先立った「ネガティブキャンペーン」などが展開されることになってしまいました

 


アーナンド・クマール氏についてのあれこれ

 

アーナンド・クマール氏は1973年生まれのインドの数学者で、ビハール州パトナにて「Super30」を開設した人物です

父親は郵便局員のラジェンドラ・プラサドさんで、母はジャヤンティ・デヴィさんで、リトゥ・ラシミさんと結婚してジャガットさんという息子さんがいます

高校卒業後に数論の論文を提出し、ケンブリッジ大学の入学を確定させましたが、父の死と経済的状況によって断念しています

 

1992年になって、アーナンドは「ラマヌジャン式の数学」の学校を始めます

ラマヌジャンとはインドの数学者で、多大な貢献をした人物で、多くの恒等式(A=B、みたいなもの)と方程式(A*Xの2条+B*X+Cーy=0、みたいなもの)の新しく斬新なものを3900ほど生み出したとされています

私は数学が大の苦手なので、それぞれのウィキを読んでみましたが、何が書いてあるかよくわかりません(笑)

ざっくりと、世の中にある様々な出来事を数学的に解明しようとしたという理解で良いのかなとか適当なことを思っています

 

彼が凄いのは、彼自身が数学の才能があるということよりも、貧困層に教育の機会を与えるという信念によって、最終的に国力を上げるというところに結びついていることでしょう

映画ではその方針を打ち出すラーム・シン文部大臣に感銘を受けながらも、国が貧困者への支援を行わなかったことを暗に批判しています

自分自身の境遇を重ねながら、それを打破するために無料塾を開設するのですが、映画では拾ってもらった相手を裏切ってという展開になっているのが微妙でしたね

ラッラン・シンがアーナンドの裏切りを許せないのはわかりますが、年間に30人しか顧客を奪われないので、経営自体が揺るぐとは思えません

顧客層も丸かぶりしていないわけですし、国の教育の根幹を揺るがすみたいな感じで、暗殺者まで駆り出していくというのは、フィクションだとしてもやりすぎ感は否めませんでした

 


120分で人生を少しだけ良くするヒント

 

映画ではフィクションが満載のようですが、色々調べてもどこがフィクションかまでははっきりしません

おそらくは対立構造となっている「ラッラン・シンとの諍い」であるとか、それに波及する「暗殺騒動」なのかなと感じています

彼自身が狙われる可能性は普通にあって、同業のみならず「Super30」の不合格者というもののヘイトは溜まっていくものでしょう

映画を機に起こったネガキャンなども含めると、単純に成功者に対する妬みなどもあり、それはいつの時代にも起こりうることだと思います

 

映画はそのあたりを物語の牽引力に使っていて、実際に「Super30」がなんだったのかはあまりよくはわかりませんでした

特にアーナンドの教え方の特殊性として、予備校の先生が教えているシーンもなく、インドのデフォルトの教育方法というものが提示されません

なので、インドの一般的な教育との違いが他国の観客にはわからないのですね

映画を世界的に展開するという思惑があれば、インドの日常と非日常の対比を入れるのはセオリーであると思います

 

映画の構成は生徒であるフッガーが回想録として語るというもので、「Super30」の発足から20年くらい経過した現代ということになっています

彼自身は途中で一旦逃げ出したみたいなエピソードがありましたが、それが必要だったのかよくわかりません

アーナンドに振り回される人々がかわいそうでもあり、劇中では「ラッラン・シン」が一番かわいそうなキャラだなあと思いました

拾って裏切られて、フェアな試験は策略でおじゃんなので、殺意が湧いてもおかしくはありません

でも、彼自身はそこまでする気はなくて、父親っぽい感じのラーム・シン大臣の命令で泣く泣く暗殺部隊を送り込むという内容になっています

 

真の悪役は自分の手を汚さない大臣なのですが、彼が言っていることとやっていることが真逆というところが、アーナンド先生の無料塾を生む土壌になっているのかなと邪推してしまいます

インドは人口がずっと増え続けている国で、単純に「人を増やす」ということではなく、「人財を増やす」という考え方があるので、母数が多ければそれだけ優秀な人財が生まれる可能性はあります

経済的困窮があっても、教育の機会の平等性を維持することは必要で、ある意味「経済的困窮」という背景は武器になるとも言えますね

教育機会を欲するもの、放棄する者など様々なものが蠢くのが現実ではありますが、なんのために教育があるのかに立ち返ることはポジショントークよりも必要なことだと感じました

 


■関連リンク

Yahoo!映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)

https://movies.yahoo.co.jp/movie/383619/review/c7d65f66-a384-4fcc-8d94-1a34d375a2cc/

 

公式HP:

https://spaceboxjapan.jp/super30/

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投稿者 Hiroshi_Takata

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