■物語の深みとは、過去と現在の人物の関連性によって形成されていくものではないだろうか
Contents
■オススメ度
ワンシチュエーションホラーが好きな人(★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2022.9.27(イオンシネマ京都桂川)
■映画情報
原題:The Deep House
情報:2021年、イギリス、85分、G
ジャンル:水中に沈んだ廃墟を探索するユーチューバーカップルを描いたワンシチュエーションホラー映画
監督&脚本:ジュリアン・モーリー&アレクサンドル・バスティロ
キャスト:
ジェームズ・ジェガー/James Jagger(ベン:廃墟マニアのYouTuber)
カミーユ・ロウ/Camile Rowe(ティナ:ベンの彼女)
エリック・サヴァン/Eric Savin(ピエール:二人を案内する地元の人)
アレクシス・セルバース/Alexis Servaes(モンテニャック氏)
アン・クレサン/Anne Classens(モンテニャック夫人)
キャラライナ・マッシー/Carolin Massey(サラ・モンテニャック:モンテニャック夫妻の娘)
Marie Caffier(スキューバダイビング女性)
Marie Bernard(スキューバダイビング女性)
■映画の舞台
フランス南西部
フレー湖(架空?)
ウクライナ:ヴィーンヌィツャ(廃墟の診療所)
https://maps.app.goo.gl/i7A7ahQmam9wq8LT8?g_st=ic
ロケ地:
フランス:オシタニエ
アルジュレス=シュル=メール
https://maps.app.goo.gl/DkTm5i434S12QUsz6?g_st=ic
サン=ペール湖
https://maps.app.goo.gl/CYfzz5E88Em4bguKA?g_st=ic
ラヴィエージュ湖
https://maps.app.goo.gl/ZGRyNLiqbqeuBbGB6?g_st=ic
■簡単なあらすじ
廃墟探索系ユーチューバーカップルのベンとティナは、ウクライナにある「事件が起きた診療所」を訪れていた
そこは患者7人が看護師に毒薬を盛られて殺害された事件で、閉鎖されて廃墟になっていた
それから3ヶ月後、二人はフランス南西部のフレー湖に廃墟があると聞いて、そこで湖底にあるとされる屋敷を探索しに訪れた
だが、そこは観光スポットになっていて、ベンは落胆してしまう
ティナは「旅行を楽しみましょう」というものの、現地人のピエールと話し込んだベンは、「奥地にある湖の底に廃墟がある」と言い出す
二人は再生回数稼ぎのためにピエールを案内人にして奥地に向かう
小高い丘を徒歩で越えた二人は絶景スポットに思える湖に到着
ドローンや潜水用具のチェックをして、30分間潜るという計画で湖底を目指すことになった
テーマ:生贄
裏テーマ:過信
■ひとこと感想
最近定番になりつつある「ユーチューバーが危険なところに行く系のホラー」で、今回のシチュエーションは「湖に沈む訳ありの屋敷」になっていました
セットを組んで水中で撮影したというのが売りになっていて、確かに臨場感はあります
それでも、やはり単調な感じは否めず、狭い屋敷を行ったり来たりするだけになっているので、面白味に欠けるなあと思いました
物語はあってないようなもので、撮影を続けるという目的を持たすためだけのユーチューバー設定はもはや古典と言っても良いでしょう
そんな彼らは「立入禁止区域」に入り、呪われた屋敷で「○○」に遭遇するとなっています
閉鎖空間ホラーは「その場所に入ることになった理由に気づくと出られる」というセオリーがありますが、今回はちょっと変化球になっていましたね
それによってエンディングも変わっているので、それが唯一のサプライズになるのかなと思いました
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
冒頭のウクライナの診療所と関連づけているとは思うのですが、それはざっくりと説明されただけで、本当に関連があったのかはよくわかりませんでした
エンドロールで「2名ほど所在不明の女優さんがいる」というのがわかり、それがエンドロール後に登場する「次の生贄」になっていましたね
キャスト名もフルネームだとネタバレになるのでぼやかしましたが、屋敷と男の関係性は誰が見てもわかるので、サプライズですらありません
ポイントはピエールの思惑がどこにあるかで、祖父母?の解放が目的だったのか、彼らを生贄にしたかったのかがよくわかりませんでした
マスクを取れば覚醒するというのは基本中の基本で、それによって囚われから解放して復活するのかと思いきや、まさかのよくわからない理由で殺されるだけになっていたのは微妙でした
冒頭の診療所との関連を考えると、罪によって幽閉されているということになり、末代がその幽閉を解くために生贄を捧げるというのが一般的でしょう
覚醒自体は意味がわかるのですが、二人が犠牲になる必要性があったのかなかったのかはよくわかりませんでした
操り人形から覚醒したベンは刺殺ですし、逃げたティナは海面に届かずに溺死になっています
前半で息を止める練習で「1分ちょいしかできなかったのに3分とか嘘ついていた」のでやらかすとは思っていましたが、それよりはあのマスクをつけられて沈んだまま溺死の方が良かったように思いました
■廃墟マニアについて
廃墟といえば、かつて人々が住んでいたけれど、何らかの理由で長期間使われていない建物などを指します
現在は少子高齢化による人口減少の影響と、建物の老朽化によって人々が住むのを諦めた場所はたくさんあります
団地などは取り壊して新しく何かを建てるということはありますが、そのままの形を残して文化遺産になったり、観光地として再利用されることもあります
観光のために「廃墟の状態を維持する」なんてこともあって、手入れを怠ったから廃墟になっているのに、と妙な胸騒ぎを覚えたりもしますね
人が廃墟に惹かれる理由は様々ですが、映画の二人、特に彼氏のベンの方は「再生数稼ぎ」のYouTuberとして、自身の行動力を承認欲求に転換することを優先していました
自分自身が充実していることを、ティナのいけない映像を盗み撮りしたりしながら行っていて、彼女自身もそんな彼氏と一緒にいる時間を堪能していましたね
でも、一線を越えてくると状況は変わっていて、怒りと不安のどちらを優先するか見たいな展開になってきます
マニアというのは言うなれば自分主義で、これまでは内にこもって「自分だけが良ければOK」だったものが、現在ではSNSの発信などを含めて、自分の認知がお金に成ることを知った人々が承認欲求を満たしなら経済活動を始めていきます
このブログも現代的マニアの一種で、これまでは自分の中でいろんなこと考察や議論をしてきたもの(自問自答)が、SNSなどを通じて、問いかけによる存在認知、共感などを呼び起こします
これまでにそう言ったムーブメントが起きづらかったのは、自分と同じ趣味の人になかなか現実世界で出会えないことでしょう
また、マニアは極端に自分の領域に踏み込まれることを嫌ったりするので、そこで細かな差異があれば同族嫌悪などが起こる妙な生き物だったりします
映画ではベンに従順なティナの存在が彼を持ち上げていて、その持ち上げている感に酔っている(充実していると思っている)のですが、それは生命の危険に晒されないというのが最低条件と言えるでしょう
マニアは暴走を繰り返す生き物ですが、本作では承認欲求と顕示欲がさらに暴挙を産んでいます
でも、こういうキャラ設定でないと、映画としては奥に進まないので、無謀で馬鹿なキャラという設定は捨て難いと言えるでしょう
■勝手にスクリプトドクター
映画は湖底にある廃墟に向かうというもので、冒頭の診療所が基点となって、抑圧された人々の墓というものに足を踏み入れる二人が描かれています
そのエリアはかつて犠牲者が住んでいたところで、今ではその霊魂的なものが棲んでいるという解釈になります
なので、そこに生身の人間がいくとどうなるか、というホラーの基礎があって、そこから無謀なバカ設定で踏み荒らしていくという構図になります
この手のバカは自分の感情が行動の原点で、それによって様々なアクシデントを呼び起こしていきます
映画では、ベンの無鉄砲さのハードルとなるのがティナの臆病ですが、あまりベンが寄り添わないために、一方的に物事が進んでいきます
それ自体は悪くないのですが、このベンの相手を置き去りにするという行為が、過去の残虐な事件と結びつき、それによってベンは制裁を喰らうという流れが必要になってきます
映画では一応ベンは制裁を喰らうのですが、それは彼の行動が原因でというよりは、呪いの自己都合だけというふうに見えます
ティナも同じように最終的に制裁を喰らいますが、彼女自身もその理由を理解せぬままに死んでしまっていました
この手の「閉鎖空間ホラー」というのは、その領域に踏み込んだ理由があって、侵入者がそれを理解しないまま進んでいきます
そして、中で行われてきた過去の出来事を知り、それによって「自分がそこに招かれた理由」というものを知り、そこで浮上する問題(呪いを解くなどの行為)を侵入者が解き放つという流れを汲みます
映画でも、過去の行動によって囚われたモンテニャック夫妻を解放するという役割がベンとティナにはあって、それを目論んだのが生き残りのピエールという構図になっています
なので、ベンとティナは「助からない状況」になって、初めて「ピエールの思惑に気づく」という流れが必要になってきます
この映画はいわゆる絶滅エンドで、モンテニャック夫妻は二人によって束縛から解放されています
なので、その代償として、ベンとティナという生贄が必要だったわけですが、そうなると、夫妻に変わって彼らがあの場所に囚われる必要があるのですね
でも、実際にはあの場所に囚われたままの人物はおらず、ピエールが「バカを誘致して両親を助け続ける理由」というものが消えてしまっています
最後のシークエンスで「新たな生贄」が用意されるのですが、この生贄の必要性は「ピエールの思惑が失敗した」あるいは「継続的に必要」という意味が必要になるはずなんですよね
なので、それを考えると、ベンとティナによる生き残り(=ピエールのミッションの失敗)か、ベンとティナの魂を喰らうことで夫婦が湖底で肉体を維持し続けることができる、というどちらかがふさわしいのではないでしょうか
となると、夫婦は二人の生体エネルギーを食糧にするということになり、物理的に捕食するか霊的なものを吸い込んで亡骸を捨てるというような描写が必要になってきます
ティナが湖面に浮上する前に死んだのは体力が尽きたからですが、それよりは追いかけてきたモンテニャックに囚われて、魂を吸われるか捕食されて湖底に引き摺り込まれるというシーンになった方がわかりやすいのかなと思いました
映画はバッドエンドになる過程において、バッドエンドになる理由というものがボヤかされています
単純に「YouTuber、バカだよね」で終わっているので、せっかく廃墟という舞台設定があり、そこで囚われた過去の犯罪者とその末裔という構図があるので、もっと練り込むことができたのではないかと思いました
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
映画のタイトルは「ディープ・ハウス」で、端的に「深いところにある館」という意味があります
でも、意外と浅い湖底にあり、そこで起きたこともそれほど深いものではなく、呪いも浅ければ、解決策も浅くなっていました
それに輪をかけて、今では「アホな人の象徴になっている迷惑系YouTuber」が主人公になっていましたね
単純に、彼らのアホな行動を見るだけになっていて、わかりやすくいえば「彼らが怖がっているのを見る」という俯瞰的な映画になっています
この手のホラーで重要なのは、「もしかしたら自分があの立場になるかもしれない」という共感性と、「人知を超えた存在の籠絡さなどにより絶望感」というものが最低限必要でしょう
でも、廃墟に行くマニアに共感する人は少なく、映画全体が「YouTubeのひとつのチャンネルを見ている」という構図になっているのですね
なので、この状況をあえて作り出しているのであれば、最後は「その映像を見ていた第三者」というメタ構造を作った方が効果的だったと言えるでしょう
映像を見た第三者が映像を見終わったあとに「コメント欄」を見て、そこに死んだはずの二人の書き込みがあるとか、そもそもこの映像はどうやって編集・公開されたのかに踏み込んで「投稿者:ピエール・モンテニャック」になっているとかでしょう
得体の知れないものの絶望感はある程度描かれていますが、その絶望感の終着駅はやはり「ベンとティナが鎖に繋がれて死ぬ」か、「ベンとティナが食糧になる」というどちらかだと思います
せっかく息ができない設定なので、夫婦を解放してしまった二人の魂を捕食する「館に潜む被害者の霊的存在というラスボス」があった方がよりリアルかも知れません
また、館が湖底に沈んでいるのですが、それもモンテニャックを捕らえたまま生きて水没させた第三者というものがいるはずなので、その思惑がベンとティナを取り込むという構図になるかと思います
館がそのままの形を維持できているのは、「罪人の魂」であると考えられるので、そうなると「ベンとティナには何かしらの罪人である」というものが必要になってきます
彼ら自身の罪をどう定義するかは難しそうですが、冒頭の診療所にもあるように「犠牲者を見せ物にして金を稼ぐという卑しさ」というものがあるので、その行動を「罪であると認定すること」が必要となり「罪人の連鎖」になっていくでしょう
そうなると、ティナのキャラは彼氏に従順なキャラではなく、もっとわがままでベンを凌ぐ狡猾性を持ち合わせるとか、実はモンテニャック夫妻を湖底に沈めることになった末裔ぐらいのインアクトが必要だったと感じました
■関連リンク
Yahoo!映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://movies.yahoo.co.jp/movie/383724/review/0958b096-4189-43c2-8236-62792b8d1676/
公式HP:
https://the-deep-house.com/
