■自分の中で何かが完結する時、他人が起こす事象は全て想定外に変わってしまう
Contents
■オススメ度
閉鎖空間スリラーが好きな人(★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2023.9.1(TOHOシネマズ二条)
■映画情報
情報:2023年、日本、113分、G
ジャンル:夢のマイホームを手に入れた一家に訪れる不穏な日々を描いたスリラー&ミステリー映画
監督:斎藤工
脚本:倉持裕
原作:神津凛子『スイート・マイホーム(講談社)』
キャスト:
窪田正孝(清沢賢二:マイホームを手に入れた一家の主人、ジムのインストラクター)
(幼少期:𠮷田奏佑)
蓮佛美沙子(清沢ひとみ:賢二の妻)
磯村アメリ(清沢サチ:賢二とひとみの娘、長女)
演者不明(滝沢ユキ:賢二とひとみの娘、次女)
奈緒(本田:清沢家のマイホームを担当する不動産会社の社員)
松角洋平(甘利浩一:本田の同僚)
岩谷健司(菊池:本田の上司)
中島歩(柏原:街で起きた不可解な事件を追う刑事)
里々佳(原友梨恵:賢二の同僚、ジムのインストラクター)
吉田健悟(上林:賢二の同僚、ジムのインストラクター)
根岸季衣(清沢美子:賢二の母)
窪塚洋介(清沢聡:賢二の兄)
(幼少期:越山敬達)
竹中直人(賢二の父)
進彩子(不動産会社の社員?)
西村ミク(ひとみのママ友?)
野口聖古(ひとみのママ友)
今泉雄士哉(リョウタ:ひとみのママ友の息子)
■映画の舞台
日本のどこかの地方都市(ロケ地は宮城県仙台市)
ロケ地:
東京都:千代田区
カフェ・ビィオット
https://maps.app.goo.gl/N21SLQhCQeNMd7YU9?g_st=ic
宮城県:仙台市
錦ケ丘アーリー迎賓館
https://maps.app.goo.gl/6JmQ6GqzzAPuWMgo8?g_st=ic
■簡単なあらすじ
ジムのインストラクターとして家計を支えている賢二は、極寒の土地での生活から、住居を変えることを検討していた
妻のひとみ、娘・サチと一緒に住宅展示場を訪れた賢二は、そこで「まほうの家」と名付けられた多機能スイートホームをの内観をすることになった
担当の本田は丁寧に住居の説明をし、その機能に一同は驚きを見せる
本田も一児の母ということでひとみと盛り上がり、話は進んでいく
住宅の地下にはエアコンが完備されていて、そこからダクトを使って全部屋に暖房が行き渡る仕様になっていて
また、防犯カメラも設置されていて、タブレット一つで家のことを全てできる仕様になっていた
実家の母を訪れ、マイホームを購入することを伝えた賢二は、変わらずに何かが見えて怯えている兄・聡と再会する
聡はいつものように何かを警告するものの、その正体はわからずじまいだった
そして、夢のマイホーム生活が始まりを告げるのである
テーマ:幸せへの執着
裏テーマ:見えぬ脅威と見える脅威
■ひとこと感想
マイホームを購入したらおかしなことが起き始める系のミステリーで、その渦中の中で「犯人探し」というものが行われていきます
とは言え、警察や探偵が解決するというものではなく、賢二の過去が暴露されつつ、ある人物の執着というものが描かれていました
地下に何かある系ということで、某韓国映画を思い出してしまいますが、それとは構造が違う感じになっていますね
このミステリーを暴くのは至難の技ですが、マイホーム派の人が恐怖を追体験するという作品になっていると思います
原作だと、ある人物はもっと壮絶な人生を歩んでいる設定になっていますが、本作ではその辺りはオブラートに包んでいましたね
個人的には、もっとエグい方向に向かった方が良かったかな、と感じました
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
できるだけネタバレをしない方が良い作品で、マイホーム派の人はバーチャルで楽しむ感じになっていますし、賃貸派は自分の選択の溜飲を下げる格好になるのでしょうか
でも、賃貸でも起こり得る内容になっているので、むしろ「大家という監視存在がある方」が危険度は高いように思えます
本作では、犯人の背景や執念の根幹をスルーしているので、その恐怖感はそこまで強調されていません
むしろ、この事態によって壊れてしまったものの方が怖くて、それが目的だったのかはわからない感じになっていますね
擬似的に幸福を享受しているつもりになっていても、最終的には嫉妬に変わって壊してしまうと思うので、遅かれ早かれという印象は拭えません
あとは、賢二の兄がマイホームで見えていたものの正体はわかるのですが、実家で見えていたものは何かわからないまま終わってしまいましたね
同じ種類のものなのか、単なる気の所為のなのかもわからないままだったので、その辺りはモヤっとしてしまいました
■マイホームはリスク?
いつの時代も「マイホームVS賃貸」論争は勃発し、その極論で話題は尽きません
ローンの支払いと家賃はどっちが得かとか、近隣住民とのトラブルのリスクなど、どちらの言い分も通っているように思います
個人的にはマイホームで、単純に勤めていた会社に不動産部門があり、諸経費が安かったからと言うものがありますが、それまでに4回ほど賃貸物件を借りてきた歴史がありました
どちらが有利かは、その人の経済状況がもっと重要な指標で、勤務内容も影響を与えます
無論、非正規雇用が主体の現在では、マイホームを選べる人の方が少なく、職場が変わるリスクもあるので、これまでのマイホーム論争と同じ基準では話が進みません
非正規ならやむを得ず実家一択でしかなく、雇用が不安定な状態でのマイホームは、そもそもローン審査が降りません
経済的な側面だけを考えるなら、頭金を用意してローンを極力減らし、住宅ローン控除を受けられる10年間で組めるならOKだと思います
住宅ローン控除は確定申告の際に所得税が還付される仕組みで、私も10年間は所得税なしの状態になっていました(他の控除と組み合わせてでしたが、この控除が一番影響が大きかったですね)
そのお金は固定資産税への支払いに使っていました
現在の法改正だと、ローン残高の0.7%なので、上限2000万円だと14万円と言うことになります(私の時はもっと控除額が高い時期でした)
収入が500万なら、年間の所得税はおおよそ42万円で、その他の控除などを組み合わせることになります
私の場合は、新築2400万円の物件で、固定資産税が年間10万円くらいだったのですが、控除で賄える状況にありましたね
このあたりを計算して購入したのですが、そういった計算に長けているとか、シミュレーションができる環境にいるかの方は意外と重要だったりします
近隣住民に関するリスクは、個人的にはあまり変わらないように思います
賃貸だとしても最低1年はリスクと向き合うわけで、これもマンションか戸建てかで変わります
個人的には、賃貸での自由度の低さ、更新料などを加味した結果、戸建て購入に至ったのですが、マンション生活時代に別の棟の火事に見舞われた経験もあり、住人全てのリスクと共に生活せざるを得ないことを知りました
戸建てを賃貸と言う方法もありますが、それだと戸建ての恩恵は低いので、購入に至りましたが、ぶっちゃけ「一番家にいる人に合わせる」と言うのが最適解のような気がします
■兄には何が見えていたのか?
賢二の兄は引きこもりで、常に何かが見えて怯えていたように描写されています
そんな彼が賢二の新築で犯人を感知するのですが、実家で見えていたものと賢二の家で見えていたものは違うはずなのですね
実家で見えていたのは、幼少期の虐待によるトラウマで、妄想が入り混じった過敏な状況であったと推測され、些細なこと(物音など)から想像を膨らまして、常に「何か」を作り出していたのだと思います
この能力が賢二の家に行った時も発揮されていて、賢二が感知できないものを読み取ることができていたと考えられます
賢二もモルタルのような住宅の資材を不可思議な場所で見つけているのですが、そこから思考を巡らせることはしません
なんだろうなあと思いながら、ある程度の想像はしても、最悪のことまで考えないのですね
でも、兄はそう言ったものから「最悪の妄想」を導き出し、そこに父が来ていると錯覚していたのだと考えられます
実際には、父ではなく犯人がいたことで兄は殺されてしまうのですが、彼の鋭敏なセンサーと妄想、状況が絡まったことで、事態は動き出すと言う展開を迎えていました
幻覚が見える理由はたくさんありますが、兄の場合は「フラッシュバック」によって過去と現在が混同する状態になっていたのだと考えられます
彼の頭の中で過去が現在に具現化し、足音は父の足音に聞こえ、その他の生活音が全て「父の具現化」に向かっています
そうした精神構造の結果、実家では常に父の影が見えていたのですが、それは場所を変えても同じだったと言うことになります
結果として、犯人を感知するに至りましたが、このような些細な違和感からどう考えていくかと言うのは重要であるように思えます
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
本作は、わかりやすい家庭崩壊を描いていて、それはマイホームを購入したからではありませんでした
結果として、犯人の掌中に陥ると言う事態に繋がっていますが、賢二とすれば「身から出た錆」と言う感覚は拭えません
家族(特に家)にまつわる違和感が妄想化して、感知の中の視覚が暴走した結果、妻の暴走へと至っていきます
このあたりの流れが緻密で、犯人のネタバラシは陳腐ではあるものの、妻の豹変と言うのはある種のリアルを感じてしまいます
映画は多機能スマートホームを舞台にしていて、その機能の悪用というものが描かれています
監視カメラがある時点で「別の誰かが見ているパターン」というものは想像できるのですが、これはスリラー映画だからという前提があります
でも、実際には様々な盗撮被害なども含めて、用意周到な犯人はプライバシーの覗き見を行うために様々な仕掛けを施しています
今回の犯人は「幸せな家庭像」を作り維持するという目的があり、それが暴走した結果、想定外の方向に深刻化していったように思えます
生活を守るために様々な方法がありますが、本作から感じられる重要項目は、プライバシーの開示方法、すなわち隠し事をするか否かによると思います
賢二は良き父、良き夫という印象を与えていますが、この映画の中では犯人以上に狡猾な人物でもありました
象徴的なエピソードは、マイホームの購入を決めた後に実家に帰る件で、賢二は兄がいるにもかかわらず「実家を誰が継ぐのか」を話題にしています
これは、賢二の中にある兄の存在感覚が露骨に出た場面で、彼はすでに兄であることを認めていないし、自分の人生から排除しているのですね
この「自分の中ではすでに完結している」という精神構造は、彼自身の妄想癖にもつながっていて、それが顕著になっているのが「被害妄想で甘利に詰め寄るシーン」だったと思います
第三者目線で映画を見ていると、甘利の怪しさの演出によって、賢二の行動は普通に見えますが、実際に「賢二が知り得る情報だけ」だと、甘利を怪しむ人は少ないのですね
映画では、常に賢二が一番普通の人という描かれ方をしていたのですが、一番の異常者であることも仄めかせていたので、このあたりの演出はうまかったと思います
賢二の中で完結する正義というものを観客が共有する流れになっていて、そして彼の妄想の域を超えた現実が展開する
これが本作の特徴ではありますが、賢二に共感できた人ほど、ラストの妻の行動に恐れ慄くことになったのでしょう
妻の行動も賢二の完結性が生み出した結果なので、そう言った意味においても秀逸なラストになっていたと感じました
■関連リンク
映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
公式HP:
