■よく考えれば、生涯で一番悲惨な日は、これから起こるのではないでしょうか


■オススメ度

 

オムニバスっぽい構成の映画が好きな人(★★★)

伊藤沙莉さんのファンの人(★★)

 


■公式予告編

鑑賞日:2023.7.4(アップリンク京都)


■映画情報

 

情報:2023年、日本、116分、PG12

ジャンル:連続殺人事件が起こる歌舞伎町にて、人探しを依頼される探偵を描いたヒューマンコメディ

 

監督:内田英治&片山慎三

脚本:山田能龍&内田英治&片山慎三

 

キャスト:(わかった分だけ)

伊藤沙莉(石破マリコ:私立探偵、バー「カールモール」のママ)

   (幼少期:上杉美風

 

竹野内豊(MASAYA:マリコの彼氏、自称忍者「伊賀麻積新陰服部流」)

 

北村有起哉(戸塚六平:落ちぶれたヤクザ)

藤松祥子(瑞樹:六平の疎遠の娘)

 

宇野祥平(天本秀樹:異端の科学者)

 

久保史緒里(絢香:星矢に恋するキャバ嬢)

高野洸(星矢:ホスト)

円井わん(星矢を取り合うキャバ嬢)

 

松浦祐也(南部:歌舞伎町に潜むシリアルキラー)

中原果南(小金井茂美:区役所職員&殺し屋、姉)

   (幼少期:平原美鈴

島田桃依(小金井貞美:区役所職員&殺し屋、妹)

   (幼少期:川本結月

伊島空(石渡心:貞美が恋する映画監督)

島津健太郎(姉妹の父)

 

黒石高大(佐竹健一:ヤクザの若頭)

牛丸亮(佐竹の子分)

 

イアン・ムーア(ジェームズ:忍者好きのFBI)

ハーシェル・ペッパース(FBI)

真宮葉月(YUKA:FBIの通訳)

 

阿部顕嵐(潤:カールモールの常連客、バンドマン)

鈴木聖奈(神奈:カールモールの常連客、バンドマン)

 

石田佳央(石破康三:マリコの父)

真千せとか(マリコの母)

 

寒川綾奈(ビットコインキャバ嬢)

谷手人(ビットコイン買わされるキャバクラの客)

赤松新(消えるキャバ嬢の目撃者)

大友律(FBIに職質する警官)

 

幸将司(ホテルの管理人)

ジャイル・イェブラ(ホテルの清掃員)

 

福田温子(MASAYAの生徒)

 

六平直政(演劇の先生)

 

高陽子(依頼人)

太田緑ロランス(依頼人)

 

堂ノ下沙羅(バーの常連客)

 

岩男海史(AV撮影スタッフ)

矢田政信(ラーメン屋の男)

 


■映画の舞台

 

日本、

東京:新宿区、歌舞伎町

 

ロケ地:

東京都:新宿区

カールモール

https://maps.app.goo.gl/TXMsQHNDcHUgf1LBA?g_st=ic

 

北京飯店

https://maps.app.goo.gl/mUJRrPZqkUe2huJT8?g_st=ic

 

神奈川県:横浜市

SMホテル愛愛賓館

https://maps.app.goo.gl/Th3ttGVH6LsbmsFr9?g_st=ic

 


■簡単なあらすじ

 

新宿でバーを開いているマリコは、私立探偵としても活躍しており、数々の「探し物」を探し当てていた

その噂を聞きつけたFBIは、科学者とともに行方不明になった「あるもの」を探していた

マリコは無理だと思うものの、高額な報酬に釣られて引き受けてしまう

 

マリコには忍者教室を開いている恋人のMASAYAがいて、常連も癖の強い人たちばかり

ホストに入れ込んでいるキャバ嬢の絢香、新人映画監督に入れ込んでいる区役所職員・貞美などもいて、元ヤクザの戸塚なども顔を並べる

 

そんな新宿では、連続殺人鬼の出没とともに、不可解な失踪事件が頻発していた

バスケットに入った謎の物体から発せされる光によって消滅したカップルの目撃談などから、警察の厳戒態勢が広がっていく

そんな折、マリコは捜索人・天本教授と偶然にも鉢合わせてしまった

 

テーマ:色々ある人生

裏テーマ:カオスに潜む溺愛

 


■ひとこと感想

 

予告編の情報だけ仕入れて、あとは流れに任せて鑑賞

伊藤沙莉さんの映画は大概観ているので、今回も「ボソッと呟く本音」に痺れて参りました

 

映画はオムニバスっぽさがありますが、探偵マリコが「人探しの依頼を遂行する」という本筋があって、歌舞伎町で生きる人々の日常を切り取ったような印象も受けます

濃いキャラクターばかり出てくるで飽きはきませんが、何を見せられてるんだろう感というのは確かにありますね

 

探偵マリコは人探しをしていく中で、彼女は一体何者なのかを描いていく映画で、新宿で起こっていそうな非日常が切り取られて行きます

わかる人にはわかる特殊なワゴン車とか、リズミカルに動くピストンバイブとか、まあお察しという下品さが作風にあっていたと思います

 


↓ここからネタバレ↓

ネタバレしたくない人は読むのをやめてね


ネタバレ感想

 

映画は6つの物語から構成されていて、「歌舞伎町にいる」ではFBIからの依頼、「歌舞伎町の恋」ではキャバ嬢の溺愛、「鏡の向こう」では娘を探す元ヤクザの悲哀、「踏切を超えた時」ではマリコの過去、「姉妹の秘密」では常連客の恋煩い、「少女A」ではマリコの本当の姿、というものが描かれています

 

それぞれのエピソードはマリコを取り巻く人々の、主に愛の渇望に関する物語になっていて、うまくいかない人生を辿って行きます

そんな中、人探しをしていくマリコを中心に物語が動いて行きますが、キャバ嬢や姉妹の恋愛が直接マリコと繋がっているわけではないところが微妙なのかもしれません

 

映画は、新宿の下品さがコミカルに描かれていて、マジックミラー号とかピストンバイブのAV関連とか、場末のラブホテル、凌げないヤクザの顛末などが絡んでいきます

おそらく、新宿にいろんなイメージを持っているけど、実際の新宿を知らない人向けという感じで、本当の姿はここまでコミカルではないと感じます

あくまでも新宿に行ったことがない(1回だけあるけど、朝の5時だったので新宿感ゼロ)人の感想なので、違っていたら心の中でツッコんでおいてください

 


色々ある人生の終着点

 

本作には様々な人生の悲哀が描かれていて、それぞれが独立した章立てになっています

男性に入れ込んでいる女性として、マリコ&貞美&絢香がいて、マリコの場合は他の二人の「貢ぎ」とは様相が違います

傍目には同じように男に入れ込んでいるし、その先がなさそうに見えても、背景は全く違うのですね

同じように見える男女関係の中でも、追いかけている貞美&絢香と、受け止められているマリコが同じように見えているところがおかしくもあります

 

永続的な男女関係は、働きかけの必要度と相関関係にあって、必要度が高いほどに破綻の確率は増えていきます

関係の継続に対するエネルギー量の多さは、そのまま「躓き」において、逆噴射の力量を有します

貞美も絢香も貢いでいる額が多い分ヤバいわけで、納得しているとは言え、出口は違う感じになっていましたね

その違いは相手の裏切りというわかりやすいもので、石渡も対応を間違えれば地獄に行くのかなと思ってしまいます

 

映画の主人公はマリコなので、彼女の周囲との差が結果に結びついていきます

それがラストで明かされるのですが、マリコだけはMASAYAからの愛を受け取っていて、一方通行ではなかったことが示されます

でも、この二人の関係は単なる恋愛という域を超えていて、ある種の契りと覚悟の世界のように思えました

 


他人から理解されない愛

 

人と人との間にある「愛」というものは、様々な形があり、ほとんどの場合は理解されないものだと思います

理解や受容を求めたり、二人の関係を周囲に認めさせたい承認欲求の塊の人もいますが、それは二人の関係ではなく、愛されている自分アピールであることの方が多いですね

裏を返せば、誰かの承認無くして、自分と相手との愛情を感じられないとも言えます

これは、相手の本年が見えないことが原因で、二人の関係を客観的に見ている周囲からの評価というものが、ある程度の安息になっているからだと思います

 

これらの承認は、ほとんどの場合は心ないもので、「傷つけたいくないからいいね」レベルにもなっていません

そもそも、他人の恋愛に興味を持つ人の方が圧倒的に少ないので、一般人の恋愛はどうでも良い部類になってしまいます

また、その関係の変化に巻き込まれたくないので、その恋愛がヤバいと思っていても、そこまで深入りすることもなく、注意レベルが起こればマシな方に思えてきます

この映画でも、マリコ&貞美&絢香の恋愛に関して、苦言を呈しても、その関係を終わらせようと行動する人はいませんでした

 

恋愛はいわばトリップ状態のようなもので、瞬間的に熱が上がると、下がっていくのも早いものです

この冷静な感情に抗おうと、縋り付く人は関係性の維持に努めます

その短絡的なものが「お金」であり、「支えている感」「尽くしている感」を演出することで、自分自身の存在価値を作っていると言えます

本当に続く恋愛とは、間に何もなくても続いていくもので、それが空気感であるとか、価値観などのような「目に見えないもの」が二人を包んでいるのですね

なので、相手のプライバシーには干渉しないし、でも二人でいるときはその時間を大切にする

この距離感が本物の恋愛へと結びついていくと言えます

 


120分で人生を少しだけ良くするヒント

 

映画は、6つのオムニバスの要素の背景でマリコの物語が動いていくのですが、独立した物語になっているような印象を受けます

絢香と星矢の恋愛は、単なるキャバ嬢によるホストへの入れ込みで、マリコが介入する余地はありません

結局のところ、ライバル・キャバ嬢とのマウント合戦の結果、あの世で結ばれる、みたいな結末を迎え、ここにもマリコの入る余地はありません

貞美と石渡の関係も同様で、貞美の恋愛に加担するのは姉・茂美になっていて、姉妹で好きなものをシェアすることになっていました

 

マリコは「人探し」をメインに行なっていて、「宇宙人と天本」「戸塚の娘」ぐらいしか活躍の場所がありません

「戸塚の娘」は自分で見つけることもできず、マジックミラー越しの接近を笑いにしているところはブラックに思えます

天本探しに関しても、MASAYAの方が先に見つけていて、彼がガイガーカウンターに反応したのでわかったという感じになっていました

歌舞伎町で知り合いのツテを辿るようなシーンもなく、天本との邂逅は街角で偶然だし、と有能な探偵に見えないところも微妙でしたね

 

結局のところ、マリコとMAYASAはなぜ一緒にいるのかというのがメインの話になっていて、「マリコにとっての最悪」というのは「宇宙人探しをさせられること」でもなく、「常連客が自殺をしたこと」でもなく、「マリコ自身の過去が暴露される」ということになっています

これまで、マリコとMASAYAの関係は秘密でしたが、常連客の暴露によって全員が知ることになります

でも、全員に知られたということをマリコは知らないので、彼女にとっての本当に一番悲惨な日というのはこれから訪れるようにも思えます

このあたりのメインストーリーが各パートの根底にありながら絡んでいないというのが、評価を押し下げているように思えました

 


■関連リンク

Yahoo!映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)

https://movies.yahoo.co.jp/movie/384168/review/9567154d-7b3f-4201-8228-44e1407178ad/

 

公式HP:

https://detective-mariko-movie.jp/

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投稿者 Hiroshi_Takata

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