■愛してるの向こう側にある、純粋な絆の物語


■オススメ度

 

BL系映画に興味のある人(★★★)

 


■公式予告編

鑑賞日:2023.8.29(アップリンク京都)


■映画情報

 

原題Tell The World I Love You(愛していると、世界に伝えて)

情報:2022年、タイ、107分、PG12

ジャンル:トラブルに巻き込まれた高校生を中心とした三角関係を描いた青春映画

 

監督&脚本:ポット・アーノン

 

キャスト:

スラデット・ピニワット/Suradej Pinnirat(ケン・スデラート:母親を探すために勉学に励む青年)

タナポン・スクムパンタナーサーン/Tanapon Sukhimpantanasan(ボン:ケンが助ける麻薬の売人)

シラポップ・マニティクン/Siraphop Manithinkhun(タイ:ケンの友人、居候先)

 

クナティップ・ピンプラダブ/Kunatip Pinpradub(ニック:ブツを盗んだ犯人を探すチンピラ)

フィーガル・ワンチャイ・パワー/Fergal Wanchai Power(ファーギー:ニックの仲間)

エクワット・ニラトヴォラパンヤー/Ekawat Niratvorapanya(ベスト:ニックの仲間)

タワット・ポーンラッタプラサット/Thawat Pornrattanaprasert(アース:ニックの仲間)

ランサン・パンヤールアン/Rangsan Panyararuen(ソン:ニックのボス)

 

コラキット・ラオトラクーン/Korakrit Laotrakul(ジョン:ケンのクラスメイト)

Nunthaphuk Aranyakasemsuk(キティ:ケンのクラスメイト)

チェンナイ・タンティウィリヤーンクン/Chengnai Tantiviriyangkul(ボンの祖母)

サクシッド・ウォンサーロート/Saksit Wingsaroj(テーン:タイの兄、料理屋)

 

Chutcha Rujinanon(スダー先生:ケンの担任)

 

タナティップ・シートーンスック/Thanathip Srithongsuk(バンク:事件を追う刑事)

 

Toranin Manosudprasit(クラオ:いじめっ子)

Saksit Wongsarot(タン:いじめっ子)

 


■映画の舞台

 

タイ:バンコク

 

ロケ地:

タイ:バンコク

 


■簡単なあらすじ

 

母を探すために勉学に励む高校生のケンは、親友タイの家に居候をして、奨学金をもらうための勉強を続けていた

タイの兄ソーンはケンを疎ましく思っていたが、行く宛のないケンは肩身の狭い思いをしながら、ひたすらに耐えていた

 

ある夜、街角で暴行事件を目撃したケンは、その被害者であるボンを助けることになった

だが、ボンは麻薬の元締めソンのブツを盗んだ容疑で手下のニックたちにボコボコにされていて、ケンもその標的になってしまう

 

ニックたちはケンの居場所を見つけてソーンの店をめちゃくちゃにし、彼は放蕩を余儀なくされる

そんな折、ケンが助けたボンが現れ、彼の家に住まわせてもらうことになった

ボンの家には認知症の祖母がいて、そこから奇妙な共同生活が始まるのである

 

テーマ:友情と愛情

裏テーマ:譲れない想い

 


■ひとこと感想

 

タイ発のBL映画ということで、どこまで激しさを増すのかと思っていましたが、大人なシーンはほとんどありませんでしたね

優等生のケンがトラブルに巻き込まれることで行き場を無くし、そこで新しいバディの元で暮らすことになって、そこで三角関係というものが生まれていきます

そうした先にあった「認められたい想い」というものが描かれていました

 

物語は、チンピラの言いがかりに巻き込まれる流れになっていて、話を聞いてくれない相手なので収拾がつきません

逃亡生活の果てに新しい生活が始まっても、狭い世界なのですぐに見つかってしまうのですね

バイオレンス描写もそこそこありますが、そこまで激しい感じではありません

 

基本的に暗いシーンでの殴り合いが多く、少ない割にも人間関係が複雑なので、わかりづらい部分もありました

パンフレットには人物相関図があるのでわかりやすいので、気になる方は購入されても良いと思います

 


↓ここからネタバレ↓

ネタバレしたくない人は読むのをやめてね


ネタバレ感想

 

タイの事情はほとんどわからない状態で見ていましたが、奨学金制度を利用して大学に行こうと考えているようで、その行き先が中国ということになっていました

BLということですが、どうやらケンはストレートのようで、過去に「女のようだ」といじめられたことがトラウマになっています

タイもボンもそっち系ですが、その想いが叶ったのかは何とも言えない感じになっています

 

映画は、トラブルに巻き込まれたまま追われるだけになっていて、その解決には至っていません

そのあたりがモヤモヤする感じになっていて、ミステリーとして引っ張っている部分でもありましたので、決着をつけて欲しかったように思いました

 

物語はいじめられた過去を背負ったケンを中心に、彼に想いを馳せる二人が「想いの強さを競う」という感じになっていますが、ボンの想いは重すぎて受けようがないですね

ケンとしても、友情ならば受け入れられても、愛情を返すことはできないので、タイの想いは成就しようがないと思います

 


友情の先に愛情はあるか

 

本作は、いわゆるLGBTQ+の映画で、ケンを巡る三角関係というものが描かれています

ケンがゲイであるという明確な表現はなく、感覚的にはクイアのように思えます

タイはゲイであることはわかりますが、ボンの方はなんとも言えない感じになっていました

なので、ゲイの三角関係ではなく、入り混じった関係性になっていて、ケンはタイの想いに応えないという結論に至っているように見えました

 

ケンは友情だと思っていたけど、タイは愛情を有していて、ケンとボンはともに友情で結ばれています

ケンは「女の子みたいだ」という理由でいじめられていましたが、その雰囲気=同性愛者とは限らないのですね

人間関係は短絡的なものではなく、それぞれに「自分の知らない一面」があったりするので、ケン自身にその素養があればわからないかもしれません

 

タイの兄テーンは、弟のことに関しては気づいていると思いますが、ケンの存在はそれを増長させると考えているので、一緒に住むことには反対の立場になっていました

表向きは居候が鬱陶しいように見せていますが、彼自身が同性愛には寛容ではないのだと思います

実際には、懸念されたものとは違う問題が浮上し、トラブルメーカーとして去ることになりますが、距離ができたことで、タイの執着というものが強くなっていきました

 

タイ目線だと、ボンは自分の恋愛の障壁であり、二人の時間を潰した原因になっています

タイはケンとの関係の成就よりも、一緒にいられる時間を優先していたので、彼自身の想いは秘められたままになっていたように思えました

 

ケンが銃を手にしたことで、ボンを守ることと、いじめっ子への復讐を思いつくのですが、それを阻止したのがタイでした

タイは、その銃でケンの代理を果たすものの、その行為に至る愛というのは重すぎたように思います

客観的にみると、ケンにもその素養はあるのですが、彼自身は自己認知をしていないのですね

仕草がどことなく女性っぽい部分が露見していて、恋愛気質としてはクイアでも、トランスジェンダーの可能性があるのかなと感じました

映画内では明確な表現はありませんが、ゲイの受け役というよりは、そちらの方の可能性が高いのかなと思いました

 


勝手にスクリプトドクター

 

映画は、BL風味の青春映画となっていて、優等生が悪い奴らに巻き込まれるという流れになっています

これまでに遭遇したことのない危険な出来事に遭遇するのですが、結局どうなったのか分かりにくい内容になっていました

ケン&タイ&ボンのBL風三角関係が主軸となっていて、ケンを奪われたタイが嫉妬に駆られて取り返しのつかないことをしてしまいます

それだけ、ケンに対する想いが強かったということなのですが、この恋愛関係がどうなったのかは正直なところわからないのですね

ケンが「タイの想いを受け止められなかった」ということがタイに届いているのかわからず、ケンとボンの関係性が今後どうなっていくのかもわかりません

 

タイ目線でも失恋になっているのかわからず、彼の満足そうな顔をみると、自己完結しているように思えます

ケンとボンの関係に関しては、二人の強烈な結びつきを知って身を引いたように見えますが、そこまでケンに入れ込んでいたのかも微妙な感じなのですね

ボンの祖母が二人の関係を勘違いしていましたが、それは余興のように思えました

 

本作は恋愛映画ではないので、その決着をつける意味はあまりないようにも思えますが、タイの想いが物語を動かしているので、それを察してねではキツいと思います

ケンが中国にいくのは、タイの願いでもあるし、ケンを応援するのが彼の心の拠り所でもあったので、その流れを汲んでいくことになります

元々、ケンが中国に行けば離れ離れになることは必須でしたが、一緒に行くあるいは追いかけるという選択肢は残っていたのですね

でも、タイが刑務所に入ったことでそれは叶わない夢となり、中国に行ったケンがタイの元に戻るのかもわからない感じになっています

 

結局のところ、ブツ(麻薬)が誰の手に渡ったのかもわからないし、ソンを疎ましく思う部下たちが反旗を翻したのですが、ニックをよく思っていない人物もあの中にいたはずなのですね

その黒幕が最後までわからないし、単にソンがニックをいたぶりたかっただけなのかも微妙な感じになっています

なので、広げた伏線が悉く投げっぱなしになっていたので、意味のわからない帰結になっていると感じました

 

おそらくは、生意気なニックを懲らしめようとソンが自演した線が濃厚で、グループを抜けようとしたボンを利用したのだと考えられます

ニックはNo2のような存在だったので、彼を締めることでグループの安定は計れると考えたのでしょう

でも、ソンが思う以上にニック以下のソンへの反発は強く、それが反乱へと結びついているように思えました

この辺りをサクッと提示したのちに、三角関係の終焉をきちんと描いていれば、混乱するようなことにならなかったのではないでしょうか

 


120分で人生を少しだけ良くするヒント

 

映画のタイトルは『Tell the world I love you』というもので、直訳すれば「愛していると世界に伝えて」という意味になります

誰が誰に伝えるのかとか、誰の想いなのかは明確ではなく、もっともしっくり来るのは「タイのケンへの想い」ということになると思います

タイは見返りのない愛を持っていて、それを世界に知らしめるために行動を起こしています

ケンの明確な返答がないのが微妙ですが、その想いを受け止めることになったのはボンなのだと言えます

 

あのままだと、ケンは中国行きを諦めたと思うのですが、ボンはそれを良しとせず、予定通りに中国に行かせます

タイへの想いに応えることはできなくても、彼自身の誠意に応える必要はあるのですね

それは、「失われなかった人生を生きること」でしか恩返しはできません

ボンはタイと同じ気質を持っていて、それが理解できたので、タイの代わりに彼の背中を押すことになったのでしょう

このあたりの無償の愛というものがもう少し上手く表現できていたら、本作の評価はもっと高いものになっていたのかもしれません

 

映画では、残酷な結末だなと感じさせる一方で、これ以上ないハッピーエンドにも見えてきます

どの関係性も成就しなかったのですが、関係性よりも重要なことが成就されたのですね

それがケンの中国行きであり、彼の人生のやり直しに寄与することができたことで報われることになったのだと思います

卒業というのは、文字通りに学校からの卒業ではありますが、それ以上に「恋愛からの卒業」でもあるので、絆というのは短絡的な愛憎の向こう側にこそあるのだなと感じました

 


■関連リンク

映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)

Yahoo!検索の映画レビューはこちらをクリック

 

公式HP:

https://gaga.ne.jp/telltheworldiloveyou/

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投稿者 Hiroshi_Takata

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