■映画のタイトルを「ニルマータ」にしなかった理由が最大の謎でしたねえ


■オススメ度

 

SF映画が好きな人(★★★)

 


■公式予告編

鑑賞日:2023.10.20(イオンシネマ京都桂川)


■映画情報

 

原題:The Creator

情報:2023年、アメリカ、133分、G

ジャンル:AIが核兵器を使用した未来を舞台に、人類の存亡を賭けた戦いを描くSF映画

 

監督:ギャレス・エドワーズ

脚本:ギャレス・エドワーズ&クリス・ワイツ

 

キャスト:

ジョン・デヴィッド・ワシントン/John David Washington(ジョシュア・テイラー:米陸軍の軍曹兼秘密工作員、軍曹)

マドレーヌ・ユナ・ボイルズ/Madeleine Yuna Voyles(Alpha-O /アルフィー:テクノロジーをリモート制御する機能を備えた少女)

 

ジェンマ・チャン/Gemma Chan(マヤ・フェイ・テイラー/ニルマータ:創造主ニルマータの娘、ジョシュアの妻)

 

アリソン・ジャーニー/Allison Janney(ハウエル:ジョシュアの上官、米陸軍の大佐)

ラルフ・アイネソン/Ralph Ineson(アンドリュース:ジョシュアの上官、米陸軍の将軍)

 

スターギル・シンプソン/Sturgill Simpson(ドリュー:ジョシュアのかつての同志であり親友)

ヴェロニカ・ンゴ/Veronica Ngo(カミ:ドリューの模擬ガールフレンド、アルフィーの見守り役)

渡辺謙(ハルン:ニューアジアの模擬兵士)

Leanna Chea(ダウ:ニューアジアの兵士、指揮官)

 

【アメリカ軍】

マーク・メンチャカ/Marc Menchaca(マクブライド:ジョシュアの分隊の一員の米陸軍兵士)

ロビー・タン/Robbie Tann(シプリー:ジョシュアの分隊の一員の米陸軍兵士、爆風の生き残り)

マイケル・エスパー/Michael Esper(コットン:ジョシュアの所属するチームの隊長)

Ian Verdun(ダニエルズ:特殊作戦の仲間の兵士、ラボ爆弾セット)

Daniel Ray Rodriguez(ハードウィック:特殊作戦の仲間の兵士)

Rad Pereira(ランバート:特殊作戦の仲間の女性兵士)

Syd Skidmore(ブラッドベリー:特殊作戦の仲間の女性兵士、見張り役)

 

Tawee Tesura(ヘリのパイロット)

Kulsiri Thongrung(ステルス機のパイロット)

Charlie McElveen(ワトキンス:救護兵)

Ron Weaver(戦車隊の長)

Maverick Kang Jr.(戦車の乗員)

John Garrett Mahlmeister(戦車の乗員)

Pat Skelton(アメリカ軍の司令官)

Eoin O‘Brien(ノマドの防衛担当)

 

【ニューアジア】

アマール・チャダ・パテル/Amar Chadha-Patelオムニ/セクオン/ブイ軍曹:ニューアジアの市民&戦士)

Sahatchai ‘Stop’ Chumrum(ガン:ニューアジアの農夫)

Teerawat Mulvilai(ブンミ:ジョシュアを村に連れてくるの村人)

Apiwantana Duenkhao(ブンミの息子)

Mariam Khummaung(アー・イン:シュミラントの女性)

Chananticha Chaipa(水牛のそばで怯える女の子)

Sawanee Utoomma(突入する村の女性、女の子の母)

Monthatip Suksopha(突入する村の女性)

Natthaphong Chaiyawong(チェックポイントのガード)

Anjana Ghogar(プリア:AIラボの技術者)

Molywon Phantarak(叫ぶラボの研究員)

Chalee Sankhavesa(アルフィーを見つける老兵)

Chalee Sankhavesa(寺院の僧侶)

 

【その他】

Karen Aldridge(タンキー:ジョシュアの主治医、脳外科医)

Jeb Kreager(フォアマン:グラウンド・ゼロの作業員)

Mackenzie Lansing(ハシミン:グラウンド・ゼロの女性作業員、同僚)

 


■映画の舞台

 

2055年〜2075年、

アメリカ:ロサンゼルス

ニューアジア:コナン

 

ロケ地:

タイ:

Suvarnabhumi Airport/スワンナプーム空港

https://maps.app.goo.gl/TudW46LYgmpiEjTS8?g_st=ic

 

Ban Mung/バンムン

https://maps.app.goo.gl/zXfcPEPpwhuytBGa7?g_st=ic

 

Sangkhla Buri/サンクラブリー

https://maps.app.goo.gl/F9L6bCHiQEdCjHJp7?g_st=ic

 

Chiang Dao/チェンダオ

https://maps.app.goo.gl/4zgshZJvQRzEprJn8?g_st=ic

 

Sam Phan Bok/サムファンボク

https://maps.app.goo.gl/RZ2Woqv7zCJsDFm66?g_st=ic

 


■簡単なあらすじ

 

2055年、先端技術として研究が進んでいたAIは、ロサンゼルスに核を落とすという暴挙に出てしまう

これに応じて西側諸国ではAIの開発禁止の措置が取られたが、アジア諸国はその流れに逆らって、AIとの共存生活を営んでいた

 

アメリカ軍は「クリエイター」と呼ばれる「AIの先駆者」探しをしていて、その先鋒として潜入捜査員のジョシュアがある村に潜伏していた

妻マヤとの生活を育みながら、この地のどこかにあるラボを探していたが、ある日、アメリカ陸軍が行動を開始し、先入捜査が無駄になってしまう

マヤもジョシュアの正体に気づき逃亡するものの、その一帯をノマドと呼ばれるアメリカ軍の兵器が爆撃を行った

 

それから10年後、ジョシュアは清掃員として働いていたが、アメリカ軍から特殊任務に招聘されてしまう

指揮官のハウエル大佐は、「あなた以外にあの場所のことを知るものはいない」と言い、記憶再生装置にて、あの時のミッションを再構築していく

そしてチームは結成され、AIラボの上に作られた村への捜索を行うことになった

 

現地に赴いたジョシュアは隠されていた記憶にふれ、ラボへの入り口を見つける

そして、中に潜入するものの、現地警察に察知され、銃撃戦が起こってしまう

そこでジョシュアはラボのさらに奥に進み、そこでAIと融合した少女を見つけるのである

 

テーマ:AIとの共存

裏テーマ:世界の覇権

 


■ひとこと感想

 

壮大な感じのSFという情報だけを入れて参戦

AIと同化した少女の正体を巡る中で、ジョシュア自身の過去が想起されていきます

 

アジアのとある場所(ロケ地はタイ)での戦闘が激しく、ノマドという宇宙ステーションからの容赦ない攻撃に晒されていきます

このビジュアルと世界観は好みではあるものの、AI少女の便利すぎる能力が地味でもう少し何とかならなかったのかなと思いました

 

AI少女の正体は簡単に想像が付きますし、そこまで難しい話ではないのですが、何が敵で何が味方なのかがごっちゃになってくる後半は雑な感じになっていますね

とりあえずアメリカVSアジアという感じになっていて、世界の覇権争いのために排除しようとする姿勢は強硬なものがありましたね

 


↓ここからネタバレ↓

ネタバレしたくない人は読むのをやめてね


ネタバレ感想

 

AIが核兵器を落としてから数十年後が舞台となっていて、その辺りを細かく描くのかと思っていたら、めっちゃ省略されていて笑ってしまいます

とにかく「AIとアメリカの戦争」という構図の説明でしかなく、AIがなんでロサンゼルスに核兵器を落としたのかはよくわからないまま話が進んでいきました

 

ニューアジアの全体像もざっくりとしていて、AIと共存しているというよりは、AI搭載のロボットと共存しているという感じになっています

このあたりの声を当てている人がクレジットに名前を連ねているみたいなので、クレジットだけを見ても「何の役をやっているのかほとんどわからない」という感じになっています

 

ジョシュアが潜入捜査をしていく中でマヤと恋仲になるのですが、このあたりの流れもサラッとしたものになっていますね

どうやって彼女に目星をつけたのかは分かりませんが、ピンポイントで目標と接近しながらも見えていないのは滑稽のように思えます

 

映画は、SF映画が好きでデッカい機械がドンパチやるのが好きならOKでしょうか

AIがノマドの攻撃に対して無力に見えているのが微妙で、どこかの大陸から強力な兵器が飛んでくることもありません

見た目は派手なのですが、戦況としてはかなり小規模になっていて、ニューアジアの核となる政府とか軍隊は何をしていたのかなあと思ってしまいます

 


AIはなぜ核を落としたのか?

 

本作では、アメリカとアジア(ニューアジア)のAIに対する考え方の違いを描いていて、アメリカは脅威となるから排除、ニューアジアは共存の可能性を模索する流れになっています

この違いが生まれたのは、グラウンド・ゼロの存在で、いわゆる核を落とされた国は、その根幹となるものを排除するという流れに向いていることを示唆しています

ニューアジアにとって核は脅威ではないという意味ではなく、AIがそれを行うかどうかとところに対して、その実行可能性は低いと見立てているのかもしれません

映画では、ロサンゼルスにどうして核が落とされたのかについての言及がなく、ただ被害があったから、その対策を講じているという設定に過ぎませんでした

 

ニューアジアがAIに対して、アメリカほど恐れていない理由も明確ではなく、ニューアジアのAIへの考え方は「道具の域を超えていない」と思えるのですが、実際にはAIロボットが死んだら悲しんで泣いたりします

その現実を見据えた上で、ニューアジアは共存という考え方になっていて、それは「役割分担」であるとも言えます

この構図の真逆になっているのがアメリカだとしたら、ロサンゼルス有事が起こった背景というものが見て来るように思えます

推測の域は出ませんが、道具を超える存在として認識し、その危険性を研究によって進めてしまった、ということになるのかもしれません

 

AIはプログラムで、人間の指示に従うのが原則で、心を持っているように見えても、それはプログラムされた反応に過ぎません

この反応をAI自身のコントロールで行うという技術が進むと、その反応というものはとても理論的なものへとなっています

そして、その理論というものは、かつて人間の反応を学習したものになっていて、その蓄積の結果、今があると仮定できます

そう言った意味において、AIが核を落とすという行動に出たのは、それが何らかの事象による「反応」ということになります

 

それを生み出した根幹的なものは不明瞭ですが、アメリカの駆逐という反応を考えると、AIの存在を否定しようとした、もしくはこの根幹を揺るがすようなプログラムが組まれたということになるのでしょう

AIの論理性はいうならば成功体験の積み重ねとなっています

なので、この「反応」もかつてのアメリカの成功体験に基づいていると仮定できます

これ以上書くと怒られそうですが、AIはかつての人類の歴史において、核を落としたことによる人類の反応というものを見てきたのですね

そして、あの時にアメリカが行ったことと同じことを、今回はAI側が行ったという見方ができるのかもしれません

 


勝手にスクリプトドクター

 

本作の主人公はジョシュアで、彼はアメリカ側の人間として、ニューアジアの偵察に来ていた人物でした

そして、アメリカが獲得したかった情報というものは、実はジョシュアが愛したマヤそのものであったことがわかります

これは、見方を変えれば、AI側がアメリカの接近を予知していて、その最前線を探っていたことになり、思惑の全ては理解されていたということになるでしょう

AIがこの事例で何を学びたかったかと言えば、おそらくは人類の愛情への理解であり、敵味方を超えた先にそれは存在し得るのか、という仮説になると考えられます

とは言うものの、映画はそこまで深い話ではなく、エンタメに特化したものになっていて、ここで描かれている愛は表面的なものに過ぎないと思います

 

本作を観ていて気になったのは、世界観の設定への説明がかなり不足しているため、現在の人類史の延長線上でそれを補完しても良いのかどうか、というところなのですね

前述のAIが核を落とした理由も、かつての戦争が同じように行われていたという前提になっていて、この世界ではあの戦争があったのかはわかりません

前提条件が崩れる仮説には意味がなく、それゆえに「映画の世界観」が現存地球の延長線なのか、まったく別の次元の「よく似た星の話」なのかははっきりとさせる必要があるのですね

ロケ地の関係もあって、映画内では「現実世界とリンクする世界」というものはわからず、現在から変化したのか、まったく別の進化を辿ってきたのかはわからない感じになっていました

 

冒頭のAIをロボットに搭載するダイジェストですら、現在の延長に見えるようで見えないというジレンマがあり、年号を無視するならば、まったく別の世界線のように思えてきます

この「混同」が起こっているためにややこしいことになっていて、それは価値基準をそのまま置き換えても良いのかどうかというところにつながるのですね

なので、もし別世界の出来事であるならば、落とされた兵器を「核」にしないほうが良かったように思います

ダメージの規模をわかりやすくするために現存する核兵器と同じスケールで描いていますが、ロスどころかカリフォルニア全域が示すした「未知の兵器」というものの方が、別世界であることを強調できたように思えました

 

それでも、まったく未知の世界線だと、造形は人間だけど中身は違うということになるので、感情移入はできないし、行動原理も理解できなくなります

そこまで攻めるとエンタメとして成立しないので、本作の場合は、現在の先にある未来とという感じにした方が良かったと思います

AIに対する概念は同じ、幸福論を含めた人類の思想も同じで、AIの進化だけが違うということになれば、人間の感情的な部分はそのまま転用することができます

そうなると、延長線であることを証明する必要があるので、ニューアジアができた経緯、世界情勢、ヨーロッパ諸国の状況などを描いていく必要があります

 

ニューアジアがアジアのどこかの国が覇権争いに勝った末にできた国家であると想像できますが、それがどの国なのかは想像できません

それは、ニューアジアの全体像が見えず、その主導している国家の核がわからないからなのですね

でも、AIを道具として割り切っている感じは、日本のように思えてきます

その一端が垣間見えるのは、自爆ロボットの存在になると言えるでしょう

このあたりをしっかりと描写し、かつての島国はAI技術の発展により、第三次世界大戦を生き抜いたという設定にする

アメリカもAIに頼った戦争をしてきたが、自国民を守るという原則のもと、合理的な判断で戦争を終わらせる決断をした

これがグラウンド・ゼロの正体であるならば、それはアメリカ史を学んだ末の、AI的な思考であるようにも見え、それによってAI禁止の方向に突き進むのは普通のように感じられます

物語の始まりに至る背景というのはとても大事なので、その辺りを「わざわざ映像で見せる必要はない」けれど、しっかりと作り込んでも良かったのではないでしょうか

 


120分で人生を少しだけ良くするヒント

 

本作における戦争は、アメリカVS AIのはずなのですが、どうみても「AI搭載のロボット」とその技術を作った人たちの駆逐というようにしか見えません

いわゆる国家間闘争にはまったく見えず、ノマドが別の国家の上空を堂々と浮かんでいるのに、ニューアジア側が領空侵犯に対する迎撃を一切行っていません

戦争というのは、領土の奪い合いのようなところがあって、本作における内密な上陸作戦までは戦争の範疇ですが、巨大な空母のようなものが他国内の領空に入っていて何も起こらないというところにリアリティを感じません

むしろ、圧倒的な武力差によって、ノマド迎撃に何度も失敗しているので、好き放題やられているという方が理解はできます

 

そんなノマドですが、映画ではたった一個の爆弾の爆発によって沈没することになっていて、侵入も楽だし、いろんなエリアを自由に行き来できるセキュリティの甘さが目立っていました

観た感じだと、両端の距離だけで数キロはあるはずなのですね

なので、普通の移動だけで相当な時間がかかります

結構な距離を瞬間移動のような感じで動いていましたが、中に入ってからの内部構造のしょぼさというものが際立っていたように思います

 

おそらくは巨大なものを登場させてインパクトを見せたかったのだと思いますが、ノマドの存在自体が映画の矛盾になっているのはコミカルになっていましたね

ノマドの火力よりも、倒れた時の被害の方が大きく、その割には二次災害も少なくて、どんな動力で動いていたのかも不思議な存在でした

ビジュアル的には良かったのですが、リアリティのないハリボテのような感じになっていて、このあたりに雑さというものを感じてしまいます

映像体験としては良いのですが、細かいところが気になるとノレなくなってしまうので、もう少し色々と詰めた方が良かったように思えました

 


■関連リンク

映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)

Yahoo!検索の映画レビューはこちらをクリック

 

公式HP:

https://www.20thcenturystudios.jp/movies/thecreator

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投稿者 Hiroshi_Takata

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