■2ndに向けてのホップだったのかどうかは、のちの歴史が教えてくれる(期待して待ってる)
Contents
■オススメ度
原作のスラムダンクが好きな人(★★★)
アニメのスラムダンクが好きな人(★★)
■公式予告編
鑑賞日:2022.12.3(イオンシネマ京都桂川)
■映画情報
情報:2022年、日本、122分、G
ジャンル:亡き兄の死を乗り越えた高校生がインターハイにて高校生日本一のチームと戦う青春映画
監督&脚本:井上雄彦
原作:井上雄彦『スラムダンク(集英社)』
キャスト:声の出演
仲村宗悟(宮城リュータ:背の小さい湘北高校のポイントガード)
木村昴(桜木花道:入部して間もない素人、湘北高校のパワーフォワード)
三宅健太(赤木剛憲/ゴリ:日本一を目標に邁進してきた湘北高校のキャプテン、センターフォワード)
神尾晋一郎(流川楓:天才肌の無口な湘北高校のスモールフォワード)
笠間淳(三井寿:かつてチームに混乱を招いた安西先生を信奉する湘北高校のシューティングガード)
坂本真綾(赤木晴子:花道の想い人、赤木剛憲の妹)
瀬戸麻沙美(彩子:リュータの想い人、湘北バスケ部のマネージャー)
宝亀克寿(安西光義:湘北バスケ部の監督)
岩崎諒太(小暮公延:湘北バスケ部の副キャプテン、赤木の親友)
遠藤大智(角田悟:湘北バスケ部員)
櫻井トオル(潮崎哲士:湘北バスケ部員)
阿座上洋平(安田靖春:湘北バスケ部員)
村田太志(桑田登紀:湘北バスケ部員)
堀井茶渡(石井健太郎:湘北バスケ部員)
星野佑典(佐々岡智:湘北バスケ部員)
園崎未穂(宮城カオル:リョータの母)
梶原岳人(宮城ソータ:リョータの兄、海難事故で他界)
久野美咲(宮城アンナ:リョータの妹)
小林親弘(水戸洋平:三井のダチ)
こばたけまさふみ(高宮望:三井のダチ)
松田健一郎(野間忠一郎:三井のダチ)
福西勝也(大桶雄一:三井のダチ)
稲田徹(堀田徹:三井のダチ)
かぬか光明(河田雅史:山王工業バスケ部、センターフォワード、赤城がライバル視している男)
武内駿輔(沢北栄治:山王工業バスケ部、ガード・フォワード、日本一のプレイヤー)
長谷川芳明(松本稔:山王工業バスケ部、ガード)
奈良徹(山王工業バスケ部、ポイントガード)
鶴岡聡(野辺将志:山王工業バスケ部、センターフォワード)
岩城泰司(一乃倉聡:山王高校バスケ部、スッポンディフェンス)
かぬか光明(河田美紀男:山王高校バスケ部、雅史の弟)
真木駿一(堂本五郎:山王工業バスケ部の監督)
■映画の舞台
広島県:
インターハイ2回戦
沖縄県(回想)
■簡単なあらすじ
沖縄出身の宮城リョータは、幼い頃から兄ソータの背中を追いかけてきた
母カオルは女手ひとつで子ども三人を育ててきたが、リョータはそんな苦労も知らず、わがまま放題を続けている
そんなある日、バスケの練習よりも友人との漁を優先したソータを、リョータは恨んでいたが、ソータはそのまま帰らぬ人となってしまった
それから時が過ぎ、リュータはソータが立つはずだったインターハイのピッチに立っていた
広島で行われるインターハイの2回戦の相手は、高校No.1の山王工業高校
無名の湘北にとって、その試合は山王がどのような圧勝劇を見せるかだった
キャプテン赤木にとっての最後のインターハイ、かつて夢見ていた相手とのマッチアップに心が躍る
そして、運命のゲームのホイッスルが鳴り響いた
テーマ:勝利への執念
裏テーマ:友情
■ひとこと感想
原作漫画を連載当時に読んでいた世代ですが、アニメに関してはほとんど見たことがありません
ちょうど、社会人になった頃で、忙しくてそれどころではなかったのですが、音楽番組は好んで見ていたので、OP&ED全曲歌えるという不思議な関係性になっています
本作はどの立ち位置になるのかなと思っていて、予告編の解禁もさらっとしたもので、なぜか映画のチラシがないという不思議な宣伝になっていました
少しだけ流れる予告編から感じた印象は、「原作の絵をそのまま動かそうとしている」というもので、デジタルコミックのような印象を受けました
映画に関してはネタバレも何もなく、どのエピソードを取り上げるかがネタバレみたいな感じになっています
「あの絵が動いた!」という感じになっていますが、やはり回想シーンが死ぬほど多くて、かなり体感時間が長い作品になっていましたね
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
映画の予告編はひとつしか用意されておらず、その映像からは「山王戦」であることは分かりません
でも、原作を知っている人ならば、あのアングルで「山王戦」であることは分かります
それぐらい、原作のアングルを再現しようとしているように思えました
本作の主人公は宮城リョータで、彼の家族のエピソードがメインになっています
原作でどこまで語られていたか覚えていませんが、追加されている情報のように思えましたね
それが良いかどうかは置いておいて、ともかく「回想シーンが異様に多くて長い」という感覚は拭えません
体感的には半々ぐらいで「試合と回想」という印象があって、回想の半分はリュータ絡みになっていました
この内容が意図するところは、コミックの続きを映画で描こうとする「土台」なのかなと感じました
■回想録の必要性
映画のシナリオの回想録の必要性は「物語を前に進めるかどうか」であって、「キャラクターの内面の補足」に使うとリズムを阻害します
本作の回想録は「ほぼ全ての回想録がキャラクターの説明」になっていて、それによって、ゲームどころか物語も止まってしまっていました
リョータの過去を掘り下げるのが悪いとは思えないのですが、試合中にリョータが過去を思い出しているとしたら、あんなに長々と思い出している余裕はないはずなのですね
なので、「またここで物語(試合)を止めるの?」と思いながら鑑賞していました
試合のシーンとか、オープニング映像とか、音楽に入りなど、その他の要素は完璧で、これぞ「SLAM DUNK」という映像化だったのですが、そのクオリティをずっと見ていたかったというのが本音でしたね
回想録を用意するためには、ある程度の情報を回想録の前に描いておく必要があります
今回の場合だと、試合に入るまでに「リョータが沖縄から湘北に入るまでの過程」をすべて描く必要があるでしょう
そうなると、既存のファンからすれば「リョータの入部からいきなり最後の山王戦なのか」と混乱を招くので、リョータの過去と山王戦は相性が悪かったと言わざるを得ないでしょう
映画は「1st」ということで、いわゆるポイントガードのことを意味するし、トップクレジットがリョータだったので、今回がリョータをメインにしたかったのはわかります
そこで山王戦を選んだ理由まではわかりませんが、個人的な感覚だと山王戦は5人全員の集大成なので、リョータだけを特別視することに違和感はありました
原作を知っているという前提で映画を作るのなら、花道が気絶している時に「花道の入部から現在」の回想録も要りますし、三井の騒動と「バスケがしたいです」はいると思うし、空回りしているゴリの過去も要りますし、流川と安西監督のやりとりも必要になります
それぞれをうまく挿入しつつ、少しだけリュータの話を混ぜていくというのが良いバランスだったのではないかと思いました
■勝手にスクリプトドクター
この映画でシナリオ的に直す必要があるとしたら、リョータのドラマパートを前半において山王戦までの試合を描き、後半は試合の映像に集中させ、インターバルでリョータの過去の補足をして、後半も試合映像を切らずに突っ走ることだったと思います
そして、エピローグにリョータと母の和解を描き、彼の思いが昇華するという内容でよかったと思います
簡単な流れだと、
【オープニングイメージ】
映画の通り、湘北と山王の選手が会場に向かう
【起】
リョータの過去(現在軸)で話を進める
兄ソータとの関係性、父の死と母の苦悩
湘北に転校することになった要因(これが映画でわからない)
【承】
湘北に入学し、ゴリ&三井との出会い
そこから湘北高校に五人が集結する様子を描く
予選の試合を混ぜ合わせながら、リョータと母の関係を描く
二人の距離感がどれほど開いているのかなどの細かな描写が必要
山王戦に入る前に母と話すシーンを描き、それで距離感がわかる
リョータがバスケを続けている理由が明かされる
【転】
山王戦の試合開始
ほぼノーカットで前半終了まで描く
インターバルにてリョータの回想、母との距離ができた理由、兄との約束など
後半もほぼノーカットで描き、個々の選手の名シーンをセリフなしで「瞬間的回想」で描く(脳裏によぎる程度)
三井なら、安西先生の前で跪いているシーン
流川なら、安西先生と話しているシーン
など(原作ファンなら何のシーンかわかる程度でセリフなし)を挿入する
【結】
試合が終わり、それぞれの道を提示する
リョータは母と向き合って和解をする
【エンディングイメージ】
海外のユニフォームを着ているリョータを映す
(沢北は流川関連なので出さない)
になると思います
あくまでも、素人のさいつよシナリオですが、「左手は添えるだけ」のような脳内補完をファンができればOKで、それがなくても「三井と流川がチームにいる理由」「ゴリの目標」「桜木の力量」などが把握できればOKではないでしょうか
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
週刊誌連載当時からのファンで、単行本もオリジナルを揃えて一回も売らずに本棚に陳列しています
アニメ版がやっていた時期は仕事も多忙でそれどころではなく、でもOP&EDが全部歌えるというマニアックな側面はあります
今回は原作者が監督も脚本もするということで「期待度MAX」で鑑賞に至ったという「高すぎるハードル設定」というものも酷評の要因になっているかも知れません
映画の予告編などから山王戦をすることはアングルからわかったし、おそらくは「山王戦を1stで描いて、コミックの第二部を映画で展開するのかな」と思っていました
今後、どのような展開になるのかはわかりませんが、続編があるなら必ず観に行くと思いますし、個人的には「試合のシーンは何度も見返したいなあ」という思いはあります
映画は緩急の激しい作風になっていて、それが勢いを阻害しているのが残念でなりません
また、事前情報が要か不要かが微妙なラインになっていましたね
おそらく「初めてスラムダンクを観る人にはわからんだろう」という小ネタが結構満載になっていました
それ自体が映画の流れを損なうことはなかったですが、このあたりの微妙な匙加減は苦労されたのだと思います
個人的にはもっと面白くできただろうなあと思うのが正直なところですが、これで良いという人もダメだという人も色々あっても良いと思います
何せ「監督初作品で完璧なものを作ったら」それだけで恐ろしいことでもあります
原作自体が心半ばで終わった感があって、いつか続きが見られたらなあと思う反面、過去を美化している自分としては目も当てられない展開になっても困るという心理が同居しています
それほどに、一度完結したものを復活させるのはハードルが高いのだと思います
今回はその禁を破ってでも、新しい何か、足りなかった何かを描こうという意志を感じますし、映像表現の処理などがあの時に描けなかったものを描けるようになったという背景もあります
映画的には賛否が分かれて、そこまで評価が上がらないかも知れませんが、スポーツのゲームをCGであそこまでリアルに描いたという快挙は歴史の残る1ページだったと思います
だからこそ、その歴史のページを堪能したかったというのが思うところでした
「2nd」があることを期待して、その日を待ちたいと思います
■関連リンク
Yahoo!映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://movies.yahoo.co.jp/movie/375424/review/b9bf62af-526d-4bd5-b924-fd9a96c3e5ea/
公式HP: