■理性的な人を操る、感情支配の構造


■オススメ度

 

一風変わった恋愛映画が好きな人(★★★)

輪廻転生を信じている人(★★★)

 


■公式予告編

鑑賞日:2022.12.2(イオンシネマ京都桂川)


■映画情報

 

情報:2022年、日本、128分、G

ジャンル:妻子を失った男と恋人を失った男が運命の輪廻に遭遇するファンタジーロマンス映画

 

監督:廣木隆一

脚本:橋本裕志

原作:佐藤正午(『月の満ち欠け(2017年、岩波書店)』

 

キャスト:

大泉洋(小山内堅:妻と娘を失った父親、建設会社→魚の卸業者)

 

有村架純(正木瑠璃:映画好きの訳あり女性)

 

菊池日菜子(小山内瑠璃:堅の娘、絵が好きな高校生)

 (幼少期:阿部久令亜

柴咲コウ(小山内梢:堅の妻)

丘みつ子(小山内和美:堅の母)

 

目黒蓮(三角哲彦:堅の前に現れる「瑠璃」を知る男、写真家)

寛一郎(中西:レコードショップ店員、三角のアルバイト仲間)

波岡一喜(レコードショップの店長)

 

伊藤沙莉(緑坂ゆい:小山内瑠璃の親友)

小山紗愛(緑坂るり:ゆいの娘)

 

田中圭(正木竜之介:正木瑠璃の夫)

 

安藤玉恵(荒谷清美:小山内の母・和美の介護士)

尾杉麻友(荒谷みずき:清美の娘)

 


■映画の舞台

 

東京都:新宿区

高田馬場

https://maps.app.goo.gl/VLV7cThMB8LsoE596?g_st=ic

 

青森県:八戸市

https://maps.app.goo.gl/nGRqpJGfypfq4eEs8?g_st=ic

 

ロケ地:

東京都:新宿区

早稲田松竹

https://maps.app.goo.gl/suGi2JBvusmYBkhv9?g_st=ic

 

東京都:中央区

銀座菊水

https://maps.app.goo.gl/paRZDXrUcf3gjB2fA?g_st=ic

 

東京都:新宿区

リーガロイヤルホテル東京

https://maps.app.goo.gl/hy1xrSKY8aneCViYA?g_st=ic

 

東京都:武蔵野市

ココナッツディスク吉祥寺店

https://maps.app.goo.gl/3mHPYfHWSKpZQTJC6?g_st=ic

 

東京都:多摩市

多摩大学附属聖ヶ丘中学高等学校

https://maps.app.goo.gl/RKnbGfa4c8GUzDFE9?g_st=ic

 


■簡単なあらすじ

 

青森県の八戸市の漁港で魚卸をしている堅は、かつて東京で幸せな家庭を持っていた男だった

ある日の事故で妻子を失い、介護が必要な母とともに実家に戻っていた

そんな彼の元に、哲彦という名の「娘・瑠璃を知る男」が現れる

 

27年前、堅と梢の間に瑠璃が生まれる前、哲彦は同じ名前の瑠璃という名の女性と付き合っていた

それは許されざる恋で、その行く末は瑠璃の死を持って閉ざされていたのである

 

それから8年後、堅の娘・瑠璃は高熱を出した後、妙に大人びいた印象を持つようになる

そして、高校になって描いた絵は、本人も会ったことがない男で、その男の名は「あきら」と言うらしい

 

親友のゆいは戸惑いながらも、頑なに何かを信じる瑠璃を否定することができなかった

そして、18歳の誕生日を迎えた瑠璃は、梢の運転する車でどこかに向かい、二人は事故に遭って死んでしまうのである

 

テーマ:輪廻転生は幸福を生むか

裏テーマ:幸福への渇望

 


■ひとこと感想

 

同じ名前の女性がたくさん出てきて、どやら転生ものっぽいぞ、というイメージだけを持って参戦

時系列が入れ替わりますが、回想録という感じで綺麗にまとまっていて、混乱するところはありませんでした

でも、一部の役者さんのビジュアルと設定年齢の乖離が激しくて、数字をきちんと追わないと少し混乱するかもしれません

 

この手の映画のどこまでがネタバレなのかの線引きは難しいのですが、転生自体はさほど問題ではないように思えます

むしろ、それを信じられるかどうか、というのが本筋になっていて、自分の娘の中身が別人になっていたというのは、受け入れ難い現実であるように思えます

 

転生による幸福は転生する本人にもたらしますが、周囲にとっては幸福とは限らないというのが本当のところでしょうか

自分もそうなることを望むとしたら、その人生が幸福ではないとも言えるような気がしてしまいますね

 


↓ここからネタバレ↓

ネタバレしたくない人は読むのをやめてね


ネタバレ感想

 

映画の中では何度も転生を繰り返す「るり」ですが、ラストでは「こずえ」も同じように転生するという意味合いになっていました

この流れだけを見ると、「死の間際に後悔が残る人生」だと、次の入れ物を探すという感じになっていて、周囲の人間からすると、それまでのその人物が奪われたという感覚になるのだと思います

 

この転生が受け入れられるのは、自分自身も転生しているという自覚のある人物だと思うので、そうでない人にとってはホラーのような感じになってしまいます

生まれながらに他人の記憶を有していて、それが高熱によって書き換えられるというようなイメージになるので、美談と捉えるのは一般的には難しいのではないでしょうか

 

映画は純愛で綺麗に描かれていますが、一歩間違えば、人格乗っ取り系のホラー映画ですからね

また、転生が何度も繰り返される「るり」ですが、彼女が乗り移るたびに事故で死ぬという運命を迎えるので、乗っ取られた方はたまったものではないですよね

三台目るりの運命が決まっているようにも見えるので、それはちとホラーかなあと思ってしまいました

 


輪廻転生とは何か

 

輪廻転生とは、「サンスクリット語のサンサーラ(संसार Saṃsāra)に由来する用語で、命あるものが何度も転生し、人だけでなく動物なども含めた生類として生まれ変わること(ウィキペディアより引用)」のことを言います

映画では、正木瑠璃の魂が小山内瑠璃に転生し、その後に緑川るりへと転生していました

また、小山内梢の魂も荒谷みずきに転生をしています

映画では「転生」ではなく、「前世の記憶を有したまま」という設定になっていて、その入れ替わりが起こるのが「七歳の高熱」となっていました

 

この映画では、男性陣の転生はなく、事故で亡くなった女性という共通点がありました

また、自らの幸福を手に入れようとした瞬間に起こっていて、正木瑠璃は「夫を捨てて三角のところに向かう途中」でしたし、小山内瑠璃も「三角と会いにいく途中」になっていました

なので、繰り返すならば、緑川るりは7歳で発熱で入れ替わり(済)、三角もしくは三角の転生先と会おうとして死ぬ、ということになります

三角側が転生するのかまでは分かりませんが、この流れだと緑川るりが会おうとした瞬間の三角の状態によるでしょうか

ただし、映画では緑川るりが47歳になった三角と会うことができた、というエンディングを描いているので、一応はこの転生は終わりを迎えることになるのかもしれません

 


転生は幸福追求の最終形態

 

転生は、いわば精神的呪縛霊のようなもので、想いが果たせなかったという事実が魂を強固にし、転生の際に記憶を有するという流れを汲んでいます

小山内瑠璃の遺品の中に『前世の記憶を持つ子供たち』という書籍があった、彼女自身が自分に起こっていることを見極めようと思い、そしてある結論に辿り着いたのだと思います

↑映画に登場したのはこの書籍の旧装丁版だと思われます

小山内瑠璃が下した結論は「前世の恋人の存在の肯定」であり、それはそのまま「前世の正木瑠璃の存在の肯定」に繋がります

彼女の中に二つの人格があるのかは分かりませんが、時折起こる正木瑠璃としての所作を紐解いていくうちに、その激烈な熱愛に憧憬を抱いていたのかもしれません

 

映画は美談にも見えますが、二人の人格を支配して自分の想いを昇華させた正木瑠璃の執念はホラー要素にしか思えません

この執念に対して、乗っ取られた子どもの母親がそれを受け入れているというのが不思議なところであると思います

当初、おかしくなったと喚いていた梢もいつの間にか受け入れているし、ゆいも話すべき時が来たとか言ってるし、清美も含ませニヤリ顔で受け入れているようにも思えます

人格を乗っ取った正木瑠璃の魂が周囲を洗脳していっているようにも思え、それらの圧迫に対して堅が最後まで抵抗していましたね

でも、最終的に「るり」が決定機になって、陥落していて「子どもの無垢な洗脳は恐ろしいなあ」と他人事ながら思ってしまいました

 

正木瑠璃がるりへの三回の転生を経て、47歳の三角と会うことができたのですが、精神的には大人の二人でも、見た目は47歳よ7歳なの「事案」にしか見えないのですね

それで良いのかは分かりませんが、ビジュアルのままだと親子になってしまうので、それをどう克服していくのか、の方に興味がありますね

おそらく二人の周辺にはリアルに見えて、二人だけがあの時のままの二人だと思うので、その精神的な繋がりのままリアルの接近を果たせば、普通に捕まるのではないでしょうか

 


120分で人生を少しだけ良くするヒント

 

本作はビジュアル的には美談になっていますが、本質的には宗教系ホラーに近い印象を持ちます

特に正木瑠璃と三角の情念が未来の人々を巻き込んで、2回転生の後に想いを遂げるという内容になっていました

本人同士の中では積年の恋愛の完結になりますが、7歳に転生した正木瑠璃と再会してどうするんだという感覚は拭えません

親子関係になりたい訳でもないでしょうし、47歳の三角と大人の関係になりたければ、るりが成人するまで待つということになり、三角は60歳くらいになってしまいます

そうなった時に「三角さんと結婚するの」をゆいが許容できるとは思えないのですね

 

この手の転生ものの恋愛の成就は、それぞれが同等の年齢ので転生をして出会うというのがデフォルトなのですが、本作ではそうではないところにおかしさがあります

ファンタジーをリアル目線で見るのもアレですが、このおかしな状況を信じ込ませるために「子ども」が使われているというところが結構不気味な印象を持ってしまいます

小説のように文字で読むのと、実際に子役が転生先を演じるのとではインパクトが違っていて、最後にるりが堅を落とす瞬間は「えげつないなあ」と思ってみてしまいました

この気持ち悪さがどこかにあって、すごい良い話に見えるんだけれど、同時に怖さというものが呼び起こされてしまいます

 

この映画を全面的に肯定できる人もいると思うのですが、要は「子連れの宗教勧誘」と構図が似ているのですね

でも、その宗教勧誘と違うのは「子どもの方が親を洗脳している」という点になります

なので、これらの構図に気付けずに感情移入してしまうと大変な目に遭うことになってしまいます

特に「妻子を失った」という状況の堅にそれを仕掛けるようになっていて、しかも自分の子どもの転生かもしれないと誤認できる構造にもなっていて、堅が最後まで抵抗できたのは理論的な考えができたからだったとも言えます

それでも、最後は許容することになるのですが、堅にとっては許容しようがしまいが、小山内瑠璃は死んでいるので意味はないのでしょう

ただし、梢がみずきとして転生しているというのは彼自身の問題になってきます

 

映画では描かれませんが、もしかしたら荒谷親子はシングルマザーの可能性もあって、梢に転生したみずきを堅が受け入れることになれば、母・清美との関係性が変化するかもしれません

清美の最後の笑みがすごく不気味だったのですが、ひょっとしたらそういうことを計画しているのかなと思いました

その後、どうなるか分かりませんが、るりを受け入れてしまった堅ですし、みずきは梢からの転生1回目なので、受け入れる可能性は高いでしょう

そうなった時、堅は親子としてみずきと接することになるのかは分かりませんが、いずれにせよホラーの世界なのかなと思ってしまいました

 


■関連リンク

Yahoo!映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)

https://movies.yahoo.co.jp/movie/381575/review/8a64901c-d5f9-49fb-8ebc-c88e7608acca/

 

公式HP:

https://movies.shochiku.co.jp/tsuki-michikake/

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投稿者 Hiroshi_Takata

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