■母親が緑の騎士を召喚した改変理由とは何か


■オススメ度

 

叙事詩的な作品が好きな人(★★★)

中世の雰囲気が好きな人(★★★)

 


■公式予告編

鑑賞日:2022.12.15(京都シネマ)


■映画情報

 

原題:The Green Knight

情報:2021年、アメリカ&カナダ&アイルランド、130分、G

ジャンル:キングアーサー王の甥であるガウェインが緑の騎士と交わした約束を果たそうとするロードームービー

 

監督&脚本:デビッド・ロウリー

原作:『サー・ガウェインと緑の騎士』

↓数ある中の一番有名な本

 

キャスト:

デヴ・パテル/Dev Patel(ガウェイン卿:アーサー王の甥、騎士になれないならず者)

アリシア・ヴィキャンデル/Alicia Vikander(エセル:ガウェインの恋人、娼婦)

 

ラルフ・アイネソン/Ralph Ineson(グリーン・ナイト/緑の騎士:首斬りゲームを提案する騎士、原作のベルティラック・ド・オードデザート卿)

 

サリタ・チョウドリー/Sarita Choudhury(モルゴース:緑の騎士を召喚するガウェインの母、アーサー王の妹、原作のモーガン・ル・フェイの役割を担う)

 

ショーン・ハリス/Sean Harris(アーサー王:ガウェインの叔父)

ケイト・ディッキー/Kate Dickie(ギネヴィア妃:アーサー王の妻)

 

アリシア・ヴィキャンデル/Alicia Vikander(奥方:ガウェインが旅先で会う恋人に似た女性、原作のベルティラック夫人)

ジョエル・エガートン/Joel Edgerton(城の主人、原作のブレッドベッド卿)

Helena Browne(目隠しの老婆)

 

バリー・コーガン/Barry Keoghan(盗賊)

Emillie Hetland(盗賊)

Anthony Moriss(盗賊)

 

Erin Kellyma(ウィニフレッド:ガウェインが旅先で出会う女性)

 

Atheena Frizzell(ギネヴィア妃の妹)

Nita Mishra(モルゴースの妹)

Tara McDonagh(モルゴースの妹)

 

MeganTriranan(ガウェインの娘)

 

Adam Karim(ガウェインの息子、17歳)

 (7歳時:Sam Uppal Lynch

 (6歳時:Rose Patel

 (4歳時:Ruth Patel

 

Emmet O‘Brien(魔術師)

 

Brendan Conroy(娼館の主人)

Donncha Crowley(司教)

 

Anaïs Rizzo(ヘレン:スパルタ王妃、冒頭の若者)

Joe Anderson(パリス:トロイの王子、冒頭の若者)

 


■映画の舞台

 

14世紀のイングランド

 

ロケ地:

アイルランド:ティペラリー群

カヒアー城/Cahir Castle

https://maps.app.goo.gl/E3hssLGfanhCu5qS6?g_st=ic

 

オファリー群タルモア

チャールビル城/Charleville Castle

https://maps.app.goo.gl/VbXJdha6qyUBmuKV9?g_st=ic

 


■簡単なあらすじ

 

アーサー王の甥でありながら騎士になれずにいたガウェインは、娼婦のエセルと逢瀬を重ねるならず者だった

ある年のクリスマスの日、ガウェインはアーサー王のパーティに呼ばれ、自分の隣に座れと言われてしまう

そして彼は「余興か見せ物を見せろ」と臣下たちに命令する

 

その頃、ガウェインの母オークリーは魔術師たちと共に「あるもの」を召喚しようとしていた

そして、「あるもの」はアーサー王の前に姿を現す

 

「あるもの」は「緑の騎士」と言い、「私と戦え」と吠える

そして、「私に与えた傷と同じものを来年のクリスマスの日に受けよ」と挑発する

 

その申し出に名乗りを挙げたガウェインは、緑の騎士の頭を切り落とす

だが、その後もうだつの上がらない1年を繰り返したガウェインは、病弱のアーサー王から「約束を果たせ」と旅に送り出される

そして、ガウェインは一人、緑の騎士の待つ廃墟の礼拝堂を目指すことになったのである

 

テーマ:騎士になる試練

裏テーマ:自立と覚悟

 


■ひとこと感想

 

アーサー王の英雄譚は少しだけ知っている程度で、ほぼ頭をまっさらにして干渉することになりました

映像のクオリティ、世界観は申し分ないのですが、何せ「暗い!」のですわ

キャラの顔を辛うじて判別レベルの暗さなので、なかなか目が疲れる案件になっていました

 

物語はアーサー王の甥だけど騎士にもなれない半端者が、緑の騎士と剣を交えたことで騎士道に向かうというもの

原作は知らないのですが、そこそこ改変があるようで、そのためか「マザコンからの脱却」みたいな印象を持ってしまいます

 

テーマはわかりやすい自立ですが、ラストの畳み掛けが駆け足すぎて驚いてしまいます

エンドロールの後にもワンシーンあるので、お見逃しなきように最後まで雰囲気に酔いしれましょう

 


↓ここからネタバレ↓

ネタバレしたくない人は読むのをやめてね


ネタバレ感想

 

実在の騎士をモチーフにした古典創作が出自となっていて、どこまで本当かという議論は無意味になっています

原作を知っていると楽しめるのかどうかはわかりませんが、さほど混乱することはないと言えます

 

一応、章立てのようになっていますが、起承転結のはっきりした物語で、御伽噺のような展開を迎えます

ともかく中世ヨーロッパの雰囲気と美術を楽しむ映画になっていて、物語は二の次という印象がありますね

 

ガウェインが一人前になる中で、さまざまな誘惑があるのですが、それらを超えた先にある覚悟というものが、緑の騎士の最後の台詞を導き出しています

それにしてもカッコいいですねえ「Now, Off with your head(それでは、首とともに去れ)」

 


時代背景サラッと

 

ガウェインは「アーサー王伝説」に登場する人物で、アーサー王の妹オークニー女王モルゴースとロット王ロージアンのとの間に生まれた息子でした

いわゆる円卓の騎士の一人で、映画のような「半人前」ではないのですね

彼には弟のアグラヴェイン、ガヘリス、ガレスがいますが、映画には登場しません

また、妹は悪名高いモルドレッドで、こちらもおそらくは出ていなかったと思います(それっぽい人が一人いたけど、記憶が定かではない)

 

アーサー王伝説は「5世紀後半〜6世紀前半」を描いていて、ローマ帝国崩壊後が舞台になっています

本当にいたのかもちょっと微妙な感じで、12世紀頃にできたフィクションであるとも言われています

アーサー王が最初に登場したとされているのは、600年頃のAneirinが書いた「Y Gododdinア・ゴドズィン)」と言う詩でした

その後、様々な文献にその名前が出てきて、Geoffrey of Monmothジェフリー・オブ・モンマス)が「The History of the Kings of Britain(Historia Reaum Britaniniaeブリタニア列王史)」の中に描かれているとされています

内容はトロイア戦争後の物語で、有名な「トロイの木馬」もこの本の第一巻に所収されています

この本の9巻から登場するのがアーサー王で、ここではサクソン人を打ち負かし、北ヨーロッパの多くを征服した人物でした

これらの書物は歴史を記したものだと考えられていましたが、近年では歴史を正確に記したものではないと結論づけられています

 

時代区分的には「中世前期」とされていて、ローマ・ペルシャ戦争後にあたります

東ローマ帝国が527年頃にでき、ユスティニアヌス1世が帝の時代が始まります

この時期のブリテン諸島にて、ローマン・ケルトを率いてサクソン人の侵略から守ったのがアーサー王でした

 

アーサー王は「円卓の騎士」「エクスカリバー」の数々の伝説を残しているとされる人物ですが、本作はその登場人物のスピンオフ的な位置どりになると言えます

ちなみに原作となっている『ガウェインと緑の騎士Sir Gwain  and the Green Knight)』は、1930年頃に書かれたとされる作者不詳の韻文でした

作者が不詳になっているのは、当時の「神の前でみな平等」と言う精神から「名を轟かせることに抵抗があった」とされています

それゆえに、現在でも作者は不詳で、有力な説が「John Massey  of Cotton」だそうです

 

物語は4部構成になっていて、

「新年の宴で緑の騎士と首斬りゲームをする」

「緑の騎士を探して、ある城を訪れ、狩りで得るものを交換しようと約束する」

「城主と狩りに出たりする中で、城主の后から誘惑を受けるものの、后から受けたキスを城主に返す」

「緑の礼拝堂にて、返しの一撃の約束を受ける」

と言う流れになっています

 

原作とされるものと違う結末になっていて、緑の騎士の正体は城主として登場した「ベルシラック」だった、と言うネタバレがあります

ベルシラックはガウェインの器量を試すために緑の騎士になって、首を斬り落とさなかったのは、后のキスを礼儀正しく固辞し、交換に応じたから、となっています

この正体に関しては映画ではふれませんが、一連の出来事が「ガウェイン」にとって必要なものだった、と言うところは同じになっています

 


騎士になるためにすべきこと

 

騎士とは、キリスト教圏において、「教皇もしくは王室から授与される勲章」のことを意味します

イギリスでは「公・侯・伯・子・男」の貴族の身分制度ではなく、世襲権を持たない純貴族とされています

騎士になると、王室設立の勲爵師団への入団を表し、勲章は団員証の扱いになります

 

イギリス臣民でナイトとなったものは儀式に参加して、「Sir」と呼ばれるようになります

夫人は「Lady」と敬称をつけて呼ばれるもので、女性でナイトに相当する勲章を受けると「Dame」と言う敬称がつけられrます

 

ナイトになる方法はいくつかあって、有名なマルタ騎士団では敬虔なカトリック教徒から選抜されます

その後、修練期間などを得てナイトに就任することになります

映画では明確なナイト昇格のシーンは描かれませんが、カトリック教徒である証明を司祭から受け取り、指導者として目される人物」が抜擢されます

マルタ騎士団ではナイトには称号があって、

「ナイト・オブ・ジャスティス(最上級騎士)」

「ナイト・イン・オヴィディエンス(上級騎士)」

に続いて、第三階級として

「ナイト・オブ・オナー・アンド・デヴォーション(名誉と献身の騎士)」

「ナイト・オブ・グレース・アンド・デヴォーション(慈愛と献身の騎士)」

「ナイト・オブ・マジストラル・グレース(主の恩寵の騎士)」

の3つの階層があります

最上級騎士だと、独身であり、私有財産の放棄、神への従順などの条件がありますね

映画は、緑の騎士との約束を果たすかどうか、と言う点が「騎士になる資格」と言うふうに描かれていました

 


120分で人生を少しだけ良くするヒント

 

映画は叙事詩的な感じで、原作を「ほぼ」なぞっていると言えます

大きな違いは「モーガン・ル・フェイ(緑の騎士を召喚する人)」の役目をガウェインの母親が担っている点でした

原作の場合は、城主が緑の騎士で、その目的は「ガウェインを成長させるため」と言うものがあります

本作では、母親が息子の成長を促すと言う改変がなされていました

 

この設定に関しては、監督自身が自分を投影されているようで、母親からの自立というものがテーマになっていることは頷けます

ガウェインのキャラクターも勇ましく頼り甲斐のある男から、欲望に自堕落で騎士になれないことをそこまで深刻に受け止めていないキャラになっています

かつての若かりし頃の自分を投影させたのか、あるいは現役世代の若者に向けたメッセージなのかはわかりませんが、改変に大きなメッセージが隠されていることは間違いないのかなと思いました

 

ガウェインが騎士として生きるために必要だったのは、内省と覚悟であり、それらのステップをわかりやすく展開させたのが本作だと思います

騎手というのが「大人」の暗喩のようになっていて、まずは「母親の覚悟」が必要で、大人になる過程で「仲間」「誘惑」「目的」「覚悟」などを少しずつ覚えていきます

そうした先にある緑の騎士との約束というのは、自分自身との約束であり、そして、それを破った先にある未来というものを見ることになりました

この走馬灯のような未来を見せたのが緑の騎士なのか、自分自身なのかはわかりませんが、おそらくは後者であると思います

自分自身の決断が波及する未来を想像することで、自分の弱さというものが生まれてくる子どもたちにも受け継がれていく様子が描かれます

 

性格的なものは遺伝しないと思いますが、子どもは親を見て育つというように、かつて大事なことから逃げたという体験がもたらす現在軸の選択というのは、それそのものが「生きている」と言えるでしょう

なので、ガウェインはそれを見ることによって約束を果たす道を選び、それは生き永らえて末代に悪い影響を残すくらいなら、その道を自分で絶っても良いという覚悟へと繋がります

この生命の繋がりについての走馬灯があるからこそ、母親にモーガン・ル・フェイの役割を与えたではないでしょうか

より問題をわかりやすくするために「母親からの自立」を描くことで、よりメッセージ性が単純化されて伝わりやすくなったのかなと感じました

 


■関連リンク

Yahoo!映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)

https://movies.yahoo.co.jp/movie/384277/review/d56ccea5-5abd-4135-a7db-e696fee7fa1c/

 

公式HP:

https://transformer.co.jp/m/greenknight/

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投稿者 Hiroshi_Takata

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