■日本で埋葬されるものを考えた時、その答え合わせが刻々と近づいているように感じます
Contents
■オススメ度
ブータンの選挙情勢に興味がある人(★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2024.12.17(アップリンク京都)
■映画情報
原題:The Monk and the Gun(僧侶と銃)
情報:2023年、ブータン&フランス&アメリカ、112分、G
ジャンル:ブータンの民主化に際し模擬選挙を行うことになった村を描いたヒューマンコメディ
監督&脚本:パオ・チョニン・ドルジ
キャスト:
タンディン・ワンチュク/Tandin Wangchuk(タシ/Tashi:銃集めを頼まれる若い僧侶)
ケルサン・チョジェ/Kelsang Choejay(ラマ/Lama:銃を必要とするタシの師匠)
タンディン・プブ/Tandin Phubz(プバ/Phurba:地元で活動する選挙委員)
ペマ・ザンモ・シェルパ/Pema Zangmo Sherpa(ツェリン・ヤンデン/Tshering Yangden:都市部から来る選挙委員)
Karan Bir Uruo(登録担当者)
Kinga(ツェリンの運転手)
ハリー・アインホーン/Harry Einhorn(ロン/ロナルド・コールマン/Ronald Coleman:アメリカ人観光客、アンティーク銃のコレクター)
タンディン・ソナム/Tandin Sonam(ベンジ/Benji:ロンの通訳)
Kunzang Wangmo(ラモ/Lhamo:ベンジの妻、透析患者)
チョイン・ジャツォ/Choeying Jatsho(チョペル/Choephel:ティンレー派の男)
デキ・ラモ/Deki Lhamo(ツォモ/Tshomo:チョペルの妻)
ユペル・レンドゥップ・セルデン/:Yuphel Lhendup(ユペル/Yuphel:チョペルとツォモの娘)
Tsheri Zom(アンガイ/Angay:ツォモの母)
Phub Dorji(ペンジョー/Ap Penjor:南北時代の銃を所有する老人)
Kuenzang Norbu(ノブ/Nobs:銃の密輸係)
Pusha Gallay(ノブの彼女)
Tshering Dorji(ティンレー/Thinley:出馬する政治家)
Lungten Wangchuk(ロドゥ/Lodro:出馬する政治家)
ウゲン・ドルジ/Ugyen Dorji(警官)
Pema Tenzin(警官)
Karma Geleg(ゲレック:ニュースレポーター)
Tsering Wangmo(店主)
Oddiyana Kanya Lai-Dorji(店員)
Karma Tshering Dorji(ドルジ/Ap Dorji:でっかいテレビを買う村人)
Meymey Tshering Dorji(ファルス/Phallus:村の老人)
Tharpala(店の外の老人)
Kunzang Wangchuk(学校のいじめっ子)
Jigme Thinley(店で飲み物を飲んでいる若者)
Kinley Wangchuk(ニュースのカメラマン)
Phuntsho Norbu(トラクターのドライバー)
Dechen Selden(クラブのダンサー)
Lopen Pem Samdrup(シュタン語のニュースキャスターの声)
Chime Metok Drrjee(英語のニュースキャスターの声)
■映画の舞台
2006年、
ブータン:ウラ村
https://maps.app.goo.gl/Mbfaw2ov4yRNfDd89?g_st=ic
ロケ地:
ブータン
■簡単なあらすじ
2005年のブータン王国では、ワンチュク国王のもと、立憲君主制へと移行することが決まった
選挙自体が初めてだったため、それを周知するために、選挙委員会が各方面へと出向くことになった
ブータン中央部に位置するウラ村では、選挙委員のプバが活動を続けていたが、選挙登録者が全く伸びず、本部からツェリンが派遣された
その報道がブータン全土に流れ、師僧ラマは弟子の僧侶タシに「銃を二丁用意するように」と告げた
タシは心当たりをたどりながら、ペンジョーという老人が所持していることを聞きつける
一方その頃、同じ銃を探しにアメリカからロンという人物がブータンを訪れていた
ロンはアンティーク銃のコレクターで、現地のガイドとして、ベンジという青年が仲介に入っていた
ロンとベンジはタシよりも先にペンジョーに辿り着き、銃を譲り受ける約束を交わしたものの、ペンジョーは後から来たラマの使いであるタシにそれを譲ってしまった
二人は慌ててタシを追いかけるものの、ラマに頼まれたと言って譲らない
そこでベンジは別の銃と引き換えるという提案をし、満月の日までに届けることになったのである
テーマ:政治がもたらすもの
裏テーマ:幸福度との相関関係
■ひとこと感想
ブータンに民主主義が導入された2005年を舞台に、立憲君主制への布石として、模擬選挙を行うという流れになっていました
模擬選挙では、赤青黄の3つの架空の政党を作り、それぞれ「自由と平和」「産業の発展」「伝統の保護」という政策が掲げられていました
映画では、ウラ村にて行われた模擬選挙を中心に描いていて、選挙委員が選挙登録を始めなければ前に進めない状態でした
いわゆる戸籍というものがないので、二重投票にならないように選挙登録をするのですが、生年月日をはっきり覚えていないとか、年齢すら曖昧という村人がたくさんいました
物語はいわゆる群像劇となっていて、僧侶のタシが銃を探し、同じものをロンとベンジが追っていきます
その動きを感知した警察も動き、その背景で選挙が行われるなど、全てが同時進行で動いていました
満月の夜の儀式までの4日間を描いているのですが、1日ごとにサクッと進んでいく感じに描かれていました
選挙に対するオチ、銃関連に関するオチも最後まで読めないもので、ブータンの風習に詳しいとニヤリとできるのかもしれません
このあたりの詳しいことはパンフレットで色々と書かれているので、気に入った人は購入してもOKだと思います
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
本作のネタバレと言えば、選挙の結果と銃がどうなったのかというものでしょうか
選挙は「国王の色」にほとんどの人が入れるという結果になっていて、国民から愛されている国王であることがわかります
銃に関しては、ラマによる儀式として仏塔のためにAK-47が埋められるのですが、さらにアンティーク銃まで埋葬されることになりました
その代わりにあるもの(ポーもしくはポ・チェン)をもらうことになり、呆然とするロンの表情はとても面白かったですね
銃の所持がアウトという国で、逮捕されるならばという感じで、流れに巻き込まれて銃とお金(返却されたかも)を失ったのは散々のように思います
映画は、村に政治が訪れたことで幸福度が下がるというテイストで描かれていて、選挙による政策を盾にして対立を煽る構造などもありました
また、家族内でも支持政党で険悪になるし、その影響を子どもたちが受けていることもわかります
これまでに3回の選挙が行われたようで、まだまだ民主主義というものがどのような影響を与えたのかを考察するには早い段階のように思えます
■ブータンの選挙
ブータンは長らく王制となっていましたが、2008年に制定された成文憲法により、民主主義体制が発足することとなりました
この時の国王はジグメ・ケサル・ナムゲル・ワンチュク国王(第5代)で、以降は「象徴的存在」として政治に関与することになりました
議会は下院と上院に分かれていて、下院(国民議会)は47議席で任期は5年、単純小選挙区制(1選挙区=1議席)となっています
対する上院(国家評議会)は25議席で、うち20議席は選挙、5議席は国王による任命となっていて、任期は5年かつ「政党所属は不可」となっています
ブータンの選挙は2段階選挙制という独特な方式で、「政党予備選挙」「本選挙」という流れになっています
政党予備選挙では、全政党が全国で得票を競い、上位2政党のみが本選挙に進むことになります
そして、本選挙では上位2政党が候補者を立てて、47の選挙区で直接選挙を行います
そして、最多議席を得た政党が政権を担当することになります
ブータンの選挙では、選挙管理委員会(ECB:Election Commission of Bhuran)が完全に独立した状態で選挙を監督します
公務員や僧侶は選挙活動・投票が禁止されていて、政教分離が明確となっています
2008年の選挙では投票率80%を誇り、民主主義への移行も「暴力なし・平和的・国王主導」という珍しい形で移行していました
また、ブータンでは「国民総幸福量(GNH)」という理念が政策の根底にあります
民主主義の導入の際に「選挙に対する無知な人が多かったため」教育と啓発が同時に行われた、という背景がありました
■政治は人を幸せにするか
政治が国民を幸せにするには、以下の要素が不可欠となっています
「基本的な生活の保障」としての「安定した食料、水、住居、安全の提供」「医療や教育へのアクセス」「インフラ整備」
「公平な制度づくり」としての「法の下の平等」「社会的弱者への支援」「不正や汚職の抑制」
「国民の声を反映する仕組み」としての「選挙・政治参加」「言論の自由と報道の自由」「少数意見の尊重」
「未来に向けたビジョンの提示」としての「持続可能な社会への転換」「成長と分配のバランスをとった経済政策」
これだけを見ると、今の日本の政治にできていることはほとんどないと思います
そして、政治が国民を不幸にするパターンとしては、「独裁や腐敗政治による弾圧」「無策・無責任な政策で経済悪化」「分断や対立を煽る政治手法」「少数派の排除、人権の弾圧」などがあります
こちらは満額回答に近い感じで、今度の選挙は日本の政治の分岐点になると言えます
ブータンがうまく行っているのは、「国民総幸福量」を政策の中心に置いていることが挙げられます
経済成長よりも「心の豊かさ」「文化の保護」「精神的充足感」を重視し、実際に国民が「幸せ」と感じているとされています
今の日本がこのようになっていないのは、政治の悪い部分が凝縮された状態になっているからでしょう
「答弁を差し控える」と言った段階で議員は失格だし、「所管外で答弁拒否」も大臣失格でしょう
日本国民は穏やかで平和ボケだと言われますが、過去の歴史を見ると「キレたら手をつけられない」という部分があるので、その道に向かって突き進んでいるようにしか見えません
抜本的な解決というものの先に国民が何を望むのかを突き詰めれば、いずれが国外に逃亡せざるを得ないような社会情勢になってしまうのではないかと危惧してしまいますね
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
本作では、銃を埋葬するという行動に出るのですが、これは仏教的な観点からの行動であると考えられます
破壊するのではなく地中に埋めるという行為は「浄化と調和を意図したもの」であり、「無効化」を強調する行為であると言えます
これはブータンが民主主義に移行する段階で「暴力ではなく精神的な強さと非暴力を重んじる選択だったこと」を強調する意味合いがありました
また、これらの銃は元々ブータンにあったものではなく、外から持ち込まれた物質主義、軍事文化への抵抗という意味もあると考えられます
もし、ブータンが外国から輸入された政治を導入していたら、このような映画が作られたのかは分かりません
王制がクーデターによって倒れ、民主主義の時代が来ていても同じことのように思います
この特殊性から学ぶべきことは、多くの民主主義国に欠けているものがあるというメッセージに繋がっていると思います
その国文化に根付いた民主主義と政治を導入することで弊害を減らすことができるのですが、そこから学んだとしても、今の政治体制が変わるためには流血が避けられないように思います
そもそも流血によって民主主義に移行した国というのは、その前の体制が国民にとって負の効果しかもたらさなかったからなのですね
なので、政治体制の移行が起こるときというのは、国民のフラストレーションがピークに達した段階であり、そこには民族主義というものが根底にあると言えます
今ではグローバリズムと多文化共生というものがもてはやされていますが、最終的には民族単位の政治体制というものに回帰してしまうのだと思います
結局のところ、思想の根底にあるものというものは否定できず、日本に帰化をしても根底の部分を変えて同化できる人の方が少ないのですね
なので、そう言った同化できないものに対する反応というものが生まれ、それが今日の政治不信を招いていると言えます
今後、どのような政治体制になるかは分かりませんが、日本は日本民族とそれ以外の民族のどちらのための政治を行うのかという分岐点に差し掛かっていると言えます
そういった意味において、今の政権が国民に向いていない根本的な理由は明白なのでしょう
それを考えると、今の政権がやろうとしていることに気づく人が増えている今は、抜本的な転換へと突き進む時期に差し掛かっているのかな、と感じました
■関連リンク
映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://eiga.com/movie/102560/review/04568745/
公式HP:
https://www.maxam.jp/obousama/
