■インドの憧れが凝縮された作品は、いずれ天下を取るのだろうか
Contents
■オススメ度
シリーズのファンの人(★★★)
ボリウッドアクションが好きな人(★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2024.5.8(イオンシネマ四條畷)
■映画情報
原題:Tiger 3
情報:2023年、インド、156分、R15+
ジャンル:インド・パキスタン紛争の暗躍に巻き込まれるスパイを描いたアクション映画
監督:マニーシュ・シャルマ
脚本:シュリダール・ラガヴァン
キャスト:
サルマン・カーン/Salman Khan(タイガー/アヴィナシュ・シン・ラソール:RAWのエージェント)
カトリーナ・カイフ/Katrina Kaif(ゾヤ:ISIのエージェント、タイガーの妻)
(若年期:Gurket Kaur)
【ISI:パキスタン軍統合情報局】
エムラーン・ハシュミ/Emraan Hashmi(アーティシュ・ラフマーン:元ISI副支局長、ゾヤの師匠)
リディ・ドグラ/Riddhi Dogra(シャヒーン・ベーク:アーティシュの妻、ジャベードの妹)
デンマーク・バット/Danish Bhat(ジャベード・ベーク:シャヒーンの弟)
ゲイビー・チャハル/Gavie Chahal(アブラル・シェイク大尉:ISIのエージェント)
デンマーク・フサイン/Danish Husain(リアーズ将軍:ISIの長官)
Gaurav(ISIのエージェント)
【RAW:インド調査分析局】
レヴァティ/Revathi(マイティリ・メノン:RAWの長官)
ランヴィル・ショーリー/Ranvir Shorey(ゴーピー・アリヤ:タイガーの元ハンドラー、タリバン内偵中に行方不明)
クムド・ミシュラ/Kumud Mishra(ラケージ・プラサド・チャウラシア:RAWのエージェント)
アナント・ヴィダート・シャルマ/Anant Vidhaat Sharma(カラン・ラオ:RAWのエージェント)
チャンドラチョール・レイ/Chandrachoor Rai(ニキル:RAWのエージェント)
Abhraj(RAWエージェント)
シャー・ルク・カーン/Shah Rukh Khan(パターン:タイガーを助けるRAWのエージェント)
【家族関連】
ヴィシャール・ジェスワ/Vishal Jethwa(ハッサン・アリ:タイガーとゾーヤの養子)
サルタージ・カッカール/Sartaaj Kakkar(ジュニア:タイガーとゾーヤの息子)
アミール・バシール/Aamir Bashir(レハン・ナザル:ゾーヤの父)
【パキスタン関連】
シムラン/Simran(ナスリーン・イラニ:パキスタン首相)
シャヒド・ラティフ/Shahid Latief(イムティアズ・ハク:パキスタンの将軍、陸軍参謀長)
サンディープ・クルカルニ/Sandeep Kulkarni(ラミズ:パキスタン首相の主席秘書)
ヴァリンダー・シン・ゴーマン/Varinder Singh Ghuman(シャキール:パキスタンの刑務所看守)
Kabeer Khan(刑務所のガード)
Bronwin October(パキスタン空軍の砲手)
Bravin(パキスタン空軍パイロット)
Armando De Leca(パキスタン空軍パイロット)
Anish(パキスタンのシェフ長)
Saad(パキスタンのシェフ)
Abber(パキスタンの少年)
Abhishek Dwivedi(パキスタンの兵士)
Hina Kalia(パキスタンのニュースアンカー)
Samihan(パキスタンのニュースアンカー)
Rajendra(パキスタンのニュースレポーター)
【インド関連】
アニッシュ・クルヴィラ/Anish Kuruvilla(インドの首相)
デンジル・スミス/Denzil Smith(インドの国務長官)
ビマル・オベロイ/Bimal Oberoi(リビエロ将軍、インドの陸軍参謀長)
ミシェル・リー/Michelle Lee(ジモウ将軍:PALレコード保管)
【その他】
エドワード・ソネンブリック/Edward Sonnenblick(ホフマン先生:ジュニアの主治医)
ニーラジ・プロヒト/Neeraj Purohit(ジブラン・シェイク:ロシアの武器商人、ゴーピーの伝言)
Farrukh Gafurov(イスラムの殺し屋)
Brandon October(イスラムの殺し屋)
Anvar Nurmukhamedov(イスラムの殺し屋)
Natalya Mahajan(トルコ風呂のスタッフ)
Siddharth(ニュースアンカー)
Iftikar(ニュースアンカー)
Vedika Jethwa(ニュースアンカー)
Rchard(外国のニュースアンカー)
【エンドクレジットで登場】
リティク・ローシャン/Hrithik Roshan(カビール・ダリワル少佐:元RAWのエージェント)
アシュトーシュ・ラナ/Ashutosh Rana(スニル・ルスラ大佐:インドの将軍)
■映画の舞台
1999年&現在
インド:ニューデリー
パキスタン:イスラマバード
ロシア:サンクトペテルブルク
ロケ地:
トルコ:イスタンブール
トルコ:カッパドキア
オーストリア:ウィーン
インド:マハラーシャトラ州
ムンバイ
■簡単なあらすじ
インドの調査分析局(RAW)のエージェント・タイガーは、新しく着任した長官メナンから、タリバンに内偵に入ってから音信不通になったエージェントのゴーピーの救出を任命される
単身で乗り込んだタイガーは彼を救出するも、瀕死の状態で助かる見込みはなく、ゴーピーは「二重スパイがいて、それは女だ」と言い残した
仕事を終えたタイガーは帰宅し、妻ゾヤと息子ジュニアと再会する
ジュニアは感染症に罹っているようで、医師のホフマンから抗生物質を投与されていた
ゴーピーの遺言に半信半疑のタイガーだったが、「死の間際に言うことは真実よ」と言うゾヤの言葉を受けて、ゴーピーが名指しする女を調べ始める
監視の対象は、複数のエージェントと会っているようで、カモフラージュで買い物に出向いたりしていた
そして、あるミッションへの参加を確認したタイガーは、その作戦を阻止しようと動き始める
変装して相手に近づき、ミッションを阻止したタイガーは、二重スパイを鎮圧することに成功する
それが妻ゾヤだったのである
タイガーは始末に戸惑いを見せていると、いきなり背後からタイガーを襲う者がいた
それがゾヤとつながっている元ISIの副長官のアーティシュで、彼はゾヤをエージェントに育て上げた育成者でもあったのである
テーマ:正義の代償
裏テーマ:政治的傀儡
■ひとこと感想
『タイガー2』が日本で未公開(どうやらBSで観られるらしい)と言う状態で強行公開となっていました
スパイシリーズとしては『パターン』の続きのようなもので、それゆえにこの連続公開には意味があります
『タイガー2』を『パターン』の前に公開していれば良かったのですが、こうなるとは思ってもみなかったのかもしれません
映画は、『タイガー 伝説のスパイ』さえみておけば何とかなると言う感じですが、インドとパキスタンのエージェントが入り乱れていて、どっちがどっちなのか非常にわかりにくい感じになっていました
キャスト欄を頑張って作ってみたけど、完全に合っているのか自信がありません
物語としては、裏切り者を殺せないタイガーの弱い部分があり、それを見越して利用したのか、単に偶然なのかはわかりません
敵の交友関係もかなり複雑なものになっていて、最後は裏切りに次ぐ裏切りとなっていましたが、初見で全部理解できるかは何とも言えない感じになっていました
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
映画は、スパイアクションということですが、移動地域はそこまで多くはありません
インド・デリー、パキスタン・イスラマバード、ロシア・サンクトペテルブルクぐらいが主要地で、タイガーは主にパキスタン内で色々とやらかしていたのだと思います
黒幕であるアーティシュはISIのエージェントとしてミッションに参加し、そこで「パキスタン内でクーデター」を起こそうと考えていました
ゾヤが非協力的かつインドのエージェントであるタイガーに情報を流したことによって作戦は失敗し、その恨みを抱えていたという発端がありました
このクーデターの失敗によってアーティシュの妻シャヒーンが亡くなってしまうのですが、彼女の弟(兄かも)にあたるジャベードはアーティシュのそばに潜入していたことがわかります
彼自身は姉を殺された恨みを抱えていて、タイガー陣営はアーティシュがジャベードを重宝することを見越して潜入させていたように思えました
本作の見どころはまあ、トルコ風呂の決闘になってしまうのでしょうねえ
違う意味でハラハラしてしまいました
■『タイガー2』はどんな話だったのか
本作は『Tiger Zinda Hai』の続編で、いわゆる「タイガー2」と呼ばれる前作がありました
2017年にインドで公開され、YRFスパイユニバースの2作目という立ち位置になっています
物語は『タイガー 伝説のスパイ』の8年後の2017年のイラクにて、アメリカ人ジャーナリストが殺されるところから始まります
首謀者が看護師の訓練センターに逃げ込み、CIAは病院の爆撃というものを視野に入れ始めます
その猶予は1週間しかなく、そこでタイガーに声がかかるという流れになっています
タイガーはゾアと結婚して、息子ジュニアがいる状況で、隠れ家を転々としていました
そんな彼の元に、「看護師救出ミッション」が降りかかり、スナイパーのアザーン、爆弾処理のプロ・ナミット、ハッカーのラケシュとともにシリアに向かうことになりました
このミッションにてその後に養子となるハッサンを救出するミッションが課せられます
本作の冒頭でハッサンを救出し保護するシーンがありますが、それが前作のラスト付近となっています
ちなみに、前作から引き続き登場したのがRAWのエージェントシェノイとラケーシュになっていて、今回のミッションの途中から参加するという演出になっていました
また、1作目にてゴーピーはタイガーのハンドラー(仲介役)として登場し、シェノイはRAWのチーフというポジションにいました
なので、可能であるならば、前2作は観ておいた方が良い作品になっています
物語の直接的なつながりはありませんが、シリーズを通じたキャラの続投というのは、特別なエッセンスが含まれていると言えるでしょう
■ネタになりつつある「インド・パキスタン問題」について
インド映画のあるあるとして、インドとパキスタンの紛争問題があります
この問題の発端は1940年代に遡り、当時のジャム・カシミール州を巡る問題による対立となっています
ジャム・カシミール州は藩王国の一つでしたが、1947年のインド独立法の制定により、インドまたはパキスタンへの帰属を自由に決められるようになりました
住民のほとんどはイスラム教でしたが、藩王はヒンドゥー教だったために、インドへの帰属を決定することになりました
これによって、パキスタンの支持を受けた部族民がカシミールに侵攻し、インドへの帰属は違法であると主張をするようになります
このような問題が根深くあるのですが、背景にはイスラム教とヒンドゥー教の宗教対立もあって、これによる紛争というものが続いています
発端は帰属問題ですが、長引いているのは宗教の影響なのですね
映画では、この対立構造をそのまま引用し、エージェントが暗躍する下地となっています
また、本作では、パキスタン政府の弱腰政策に嫌気を指したアーティシュが軍部を牛耳ってクーデターを企てていて、紛争のみならず、両政府の動きというものがネタにされつつあります
映画は、インド映画なのでインドが主役なのですが、複雑な問題が絡んでいるので、パキスタン自体を悪というふうには描かないのですね
なので、今回のように「パキスタンとしても敵である」という組織の暗躍を利用して、両国間の政治情勢を物語の展開に利用するというようなことが起きます
実際にインド映画がパキスタンで上映されているかは知りませんが、映画は創作なので反応することもないでしょう
でも、悪の枢軸国というふうに描かないことで、余計な波風を立てないようにという配慮はあるのだと思います
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
本作は、ボリウッドのスパイシリーズとして、『パターン』『WAR!』と並行して描かれていく世界線になります
いずれはMCUのように揃い踏みで難敵に向かいそうに思いますが、敵をどう設定するのかに興味がありますね
世界の危機に立ち向かうRAWというポジションからすれば、現在進行形の戦争をなぞる形になるのかもしれません
映画は、ともかく派手な爆発演出、肉体、ニヒルな恋愛というひと昔前の感覚が強いですが、エンタメとしては、これくらい軽い方が見やすいと思います
昨今は敵にもいろんな過去を背負わせていて、相手も悪くないとか、ヒーローが暴れたら犠牲者が出るでしょ、みたいなリアルテイストを組み込みすぎているように思います
核兵器が使われるかもという一刻を争うときに、通行人が怪我をして立ち止まる正義の味方はいないのですが、逆に「細かな善行」によって、世界が崩壊したとう話を作っても面白いかもしれません
助けられた人が世界中からバッシングを喰らって病むとか、自分だけが助かれば良いと思う人々の悪意によって傷つく主人公とか、観ていて面白いのかはわかりませんが、一定の需要を見込めそうな気がします
このシリーズでそこまで負の感情に満たされた作品が作られるとは思いませんが、いずれはネタに困るわけで、単純なヒーローの話が飽きられる未来というのは、MCUを見ていれば避けられない未来のように思います
それでも、筋肉は正義を貫いていくことでシリーズの価値を保てるならすごいことなのかもしれません
■関連リンク
映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://eiga.com/movie/100700/review/03780097/
公式HP:
https://tiger3-movie.com/