■ビジネスも恋も、温泉に浸かってまったりした方が進んでいく
Contents
■オススメ度
ビジネス映画が好きな人(★★★)
モンタナの景色を堪能したい人(★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2024.6.26(アップリンク京都)
■映画情報
英題:Tokyo Cowboy
情報:2023年、アメリカ、118分、G
ジャンル:異国の地でビジネスの基礎を学び直すビジネスマンを描いたヒューマンドラマ
監督:マーク・マリオット
脚本:藤谷文子&デイブ・ボイル
キャスト:
井浦新(坂井英輝:モンタナで和牛ビジネスを始める商社マン)
藤谷文子(増田けい子:三輪ホールディングスの副社長、英輝の恋人)
苅田裕介(佐野:英輝の部下)
岩松了(三輪:三輪ホールディングスの社長、英輝の上司)
國村隼(和田直弘:モンタナの和牛ビジネスのパートナー)
ロビン・ワイガート/Robin Weigert(ペグ・シャムウェイ:モンタナの牧場「レイジー・リバー」の社長)
ゴヤ・ロブレス/Goya Robles(ハビエル・メディーナ:案内役を任される牧夫)
Stephanie Hernandez(べロニカ:ハビエルの恋人)
Gabriel Clark(レオン・ダラハイド:牧場の管理マネージャーのアシスタント)
Jeff Medley(フィル・ウェイド:牧夫)
Zac Thomas(ブレイス・フィルモア:牧夫)
Scout Smith(シンディ:モーテルの受付)
有福正志(松山:チョコレート工場の社長)
重松愛子(チョコレート工場の工場長)
坂口沙由理(東京の不動産屋)
Liliana Antunes(15歳の誕生日を迎える少女、ハビエルの姪っ子)
Luis Jose Lopez(少女の父)
George De Vries(ラリー・ヴァージル:仕立て屋)
Marisilda Garcia(イルマ:ファーマーズ・マーケットの売り手)
Jenna Ciralli(和田の担当看護師)
Scott McCauley(バーの客)
Gerald Penn(バーテンダー)
Jocko Hendricksen(雑貨店の店員)
Rob Story(雑貨店の客)
Duncan Vezain(牧場の使用人)
Cara Wilder(空港の職員)
Steven Harris(レンタカー屋)
Anthony Antunes(バンドリーダー)
Joel Garcia(バンドメンバー)
Emilio Huerta(バンドメンバー)
Fernando Flores(バンドメンバー)
Robert Quintana(バンドメンバー)
■映画の舞台
アメリカ:モンタナ州
ロケ地:
アメリカ:モンタナ州
■簡単なあらすじ
東京にて、チョコレート工場の買収に成功し、工場の稼働率を飛躍的に上げることに成功したビジネスマンの坂井英輝は、今度は閉鎖寸前の牧場の再生を視野に入れていた
アメリカのモンタナ州にある牧場で和牛を生産しようと考える
英輝と和田はモンタナに飛ぶものの、初見の飲み会にて、調子に乗った和田はロデオマシンに挑戦し、大怪我をして入院するハメになってしまう
通訳を介さずに牧場と話をすることになった英輝だったが、牧場主のペグたちはまともに話を聞こうともしない
そして、その背景では、本社は土地を開発業者に売る算段を始めていて、その猶予は少ないと思われた
英輝は郷に入っては郷に従えとばかりに、彼の懐に入ろうと試みる
そんな折、案内役になっていたハビエルのある秘密を知ってしまうことになったのである
テーマ:ビジネスの本懐
裏テーマ:立ち止まる必要性
■ひとこと感想
井浦新がビジネスマンとしてモンタナで奮闘するという情報だけを入れて鑑賞
他にも日本人キャストが多かったので、邦画なのかな?とか、余計なことを考えてしまいました
映画は、やり手のビジネスマンが潰れかけの牧場を再生させようとするお話で、それと同時に彼には恋人兼上司(副社長)がいる、という設定になっていました
交際歴の長い二人だけど、結婚には至っていないという微妙な関係で、モンタナの件に関して部下が突っ走るのに巻き込まれる副社長という構図になっていました
現地に行って、自分の行いが正しいのかどうかを知るというもので、数字では見えないものがそこにはある、という感じになっています
冒頭ではチョコレート工場の効率を上げたという功績が描かれますが、それがどうなったのかとか、結局彼は何を成し得たのかなどがわかるシーンが転換点になっていましたね
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
ビジネスマンとしての側面と、恋人としての側面を試される内容になっていて、彼があえて見なかったものがモンタナにはたくさんある、という感じになっていました
現地を見ることで「長く培われてきたものの価値」というものを発見し、誰にとっても最も効果的な方法というものを考え始めます
これまでは、自分の会社が利益を上げればOKだったものが、それが間違いだったと気づくという物語になっています
映画では、相手の話をよく聴くことというものが重視され、言葉が通じない国でも懐への入り方は似通っているところがありました
和牛を推し進める中で騙されたり、副産物にあやかったりという顛末があって、ここを守ってきた人たちとどうやって共存できるかを考える旅になっていました
また、恋人関係にある二人の進展というものも描かれていて、言って欲しいことを言わなかった過去が枷になっているようにも思えました
「遅い」と言われた後に続く言葉など、女性が脚本に入っている故の細かな女心が反映されていたいましたね
■ビジネスとは何か
本作は、アメリカのモンタナ州で和牛を育てようというもので、一応「日本以外で育っても和牛」にできるカラクリはさらっと紹介されていました
英輝は経営コンサルタントのような立場で、冒頭ではチョコレート工場の効率化を推し進めたことを自慢気に話していました
数字を追う世界ではそれでも良いのかもしれませんが、結局はそのチョコレートも品質が落ちて、業績が下がっているように描かれていましたね
これまでに培ってきたものを全て壊したということになっていて、モンタナの牧場でも同じことが起ころうとしていました
ビジネスとは、ある資源を何かに変えて購買に繋げて利益を産むというもので、その資源には「人材、材料、技術、思想」などの様々な様子があります
働き手の視点でも、会社に寄与している限りは何らかの資源というものを財産化していることになります
わかりやすい技術だけでなく、チームとして会社が動く以上、潤滑油のようなポジションで最大限の力を発揮させるような人材もいるし、方向性がブレないようにひたすら旗を掲げているという人もいます
それぞれが適材適所で効果的なコラボレーションが実現すると、それは様々な財産へと変わります
でも、会社側が究極を極めても、その生み出した財産なるものには受け手がいないと、流動性のあるものにはなりません
ここに市場のニーズというものがあるのですが、この市場のニーズと同じ視点で「チームに対するニーズ」というものがあるのですね
この相関関係の直視と理解、修正が上手い人がビジネスマンと呼ばれるのだと思います
■モンタナが彼を変えた理由
当初の英輝がゴリゴリのビジネスマンで、数字の裏付けのあるものを信用してきた人間だったと思います
ビジネスの評価が数字で表される以上仕方のないことではありますが、その無機質さというものは、見えてしまうと逆効果になるものだとも言えます
それは、最前線は数字のために働いているわけではなく、その上の階層が現場を数字で見ているだけなのですね
そこには「現場で起こることを全て数値化できない」というものがあって、単純作業ですら、全てを数値化はできないと言えます
チョコレート工場などは「成分を分析して、その通りに再現すればできる」とはいうものの、製品を作る環境を全てコントロールできるわけではありません
全てが機械によるオートメーション化をすれば可能かもしれませんが、人間が関与した途端に、何かしらの余剰に思えるものが発生してしまいます
工場などでは、従業員のプライベートの余波による生産性の低下などがあり、それがリスクになる場合もあります
これらを全て数字化するのは、プライバシーを無視しても無理だと思うのですね
それくらい、人間の活動というのは「再現性がなくデータ化できないもの」のように思います
モンタナの牧場では、そういった数値化から最も遠い場所にあるもので、動物たちの生育に必要な牧草の生え方などをデータ化しようとすると、自然のあらゆる要素をデータ化しないといけなくなります
365日、24時間のどこでどれだけの雨量と光量があったかで生育環境が変わるし、動物たちの移動場所(通り道)などによって外的要因に晒されるものも生まれてきます
それらを可視化することは膨大なデータを取れば可能だと思うのですが、それ以上に「現場感覚で瞬間的にわかること」の方が圧倒的な精度があったりします
熟練された経験則には、個々の理解度、視野、思想などが反映されていて、同じ景色を見ているのに違うものが見えている人もいます
映画では、動物を育てる場所では植物は育てられないという定義があり、それは農業界での一般常識的なものだったと思います
でも、動物たちが行かない場所というものがあって、そこには農業を行うスペースがあったりするのですね
それがハビエルが行っていたものなのですが、彼は牧場のルールに逆らって、自分の生活の向上のためにそれを行っていました
風紀的にはアウトでしょうが、ビジネスというものは、そういった個人の感情が起源になっているところがあり、それがあのチョコレート工場にもあったことを思い出します
そして、今自分が作らせているものは何なのかと向き合うことで、英輝は方向転換ができるようになったのかな、と感じました
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
本作は、俯瞰してみると、日本とアメリカの精神的な交流の末に、新しいビジネスを生み出すという下地を描いていきます
そんな中で、結婚そっちのけで仕事に傾倒する英樹を描いていて、キャリアウーマンのけい子との溝ができている状態を描いていました
前半の不動産見学のことを忘れている英樹は、そこにいても心そこにあらずと言った感じになっていて、聞いていないわけではないけど、プライオリティが低いという状態になっていました
彼の中では、もっとキャリアアップをして、けい子に追いつきたいという願望があって、そこに行かなければ結婚には辿り着けないと考えていました
男女の年収差があるとうまく行かなくなるという典型的なものですが、彼らの場合は最初からけい子が雲の上の存在で、英輝は少しでもその場所に最短ルートで行こうと考えていました
けい子は会社の副社長で、様々な案件を抱え、GOサインを出せる立場にある人間です
英輝としては、その位置と同等なものを目指していたのだと思いますが、現実的には同じコミュニティにいては一生無理なものであることは明白なのですね
英輝がキャリアを積むたびに、けい子の評価も上がるので、そこに近づきさえしても、乗り越えるには「けい子のコミュニティ」から抜け出さなくてはいけません
最終的に、英樹は企業し、けい子とB to B(会社と会社)の関係になろうと考えます
それによって、これまでに英輝ができなかったことが実現できると考えたのだと思います
ビジネスの世界において、現場感覚を掴んで経営に活かすには、自分自身が現場の人間である、もしくはその経験則というものが必要になってきます
それは「現場の権限の設置」において、最も効果的な思考を生み出し、その余力を用意することができます
この際に経営的に必要なのは、現場が企業が目指す顧客満足度に即しているかどうかを管理することではないでしょうか
そこには、短期的な数字もあれば、長期的な視野に基づく経営計画というものが存在します
それでも、最も重要視されるべきは、商品に対する顧客の満足度なのですね
この反応の強さというものは、全てを変える力があるので、まずは多くの人に繰り返し使われ、影響力を強めるというところにシフトしていく必要があります
英輝はここで日本流の「パッケージに生産者の写真を印刷する」という作戦を採択しますが、これは同時に商品に対する覚悟というものを対外的かつ内向的に宣言していくことになります
そうしたものがやがて顧客の発生につながり、それが倍数的に増えていくチャンスを生むことになります
まずは、本当に作りたいものを作り、それが市場でファンを獲得できるイメージを経営的に見せていく
そう言った先にあるものというのは、やはり現場感覚なくしては作れないものなのかな、と感じました
■関連リンク
映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://eiga.com/movie/101199/review/03974047/
公式HP:
https://www.magichour.co.jp/tokyocowboy/