■コンサート会場内で完結できたら神映画だったけど、さすがにそれは想定していなかったのかな、と思った


■オススメ度

 

プロファイラーが活躍する映画に興味がある人(★★★)

 


■公式予告編

鑑賞日:2024.10.25(MOVIX京都)


■映画情報

 

原題:Trap(罠)

情報:2024年、アメリカ、105分、G

ジャンル:ライブ会場に紛れ込んだ切り裂き魔を追うスリラー映画

 

監督&脚本:M・ナイト・シャマラン

 

キャスト:

ジョシュ・ハーネット/Josh Hartnett(クーパー・アボット/Cooper:フィラデルフィアの消防隊員)

アリエル・ドノヒュー/Ariel Donoghue(ライリー/Riley:クーパーの娘、レッド・レイヴンの大ファン)

アリソン・ピル/Alison Pill(レイチェル/Rachel:クーパーの妻)

Lochlan Miller(ローガン/Logan:クーパーの末っ子)

Marcia Bennett(クーパーの母)

 

サレカ・シャマラン/Saleka Shyamalan(レディ・レイヴン/Lady Raven:超人気のアーティスト)

Kid Cudi(「The Thinker」:レディ・レイヴンと共演するアーティスト)

Hailey Summer(「The Thinker」のアシスタント)

Russ(パーカー・ウェイン/Parker Wayne:レディ・レイヴンと共演するアーティスト、コラボ楽曲提供者)

 

Mateo Arias(オープニングバンド「Papa’s Boots」のボーカル)

 

ヘイリー・ミルズ/Hayley Mills(ジョセフィン・グラント博士/Dr. Josephine Grant:FBIのプロファイラー)

 

Jonathan Langdon(ジェイミー/Jamie:会場のグッズ販売員)

 

Mark Bacolcol(スペンサー/Spencer:地下室に監禁されている被害者)

 

Harley Ruznisky(ジョディ/Jody:ライリーのクラスメイト)

Marnie McPhail(ジョディの母)

 

Vanessa Smythe(ツアーマネージャー)

M. Night Shyamalan(コンサートのスポッター、レディ・レイヴンの叔父)

Joseph Daly(ジェレマイア/Jeremiah:レディ・レイヴンの専属運転手)

 

Steve Boyle(SWATの主任)

Michael Brown(SWAT、リムジン)

Luke Charles(SWAT、ステージ)

Abbas Wahab(SWAT、従業員エリア)

Sare Thorpe(SWAT、指揮官)

Joshua Peace(襲われるSWAT隊員)

Nicholas DeCoulos(SWAT隊員)

Aaron J. La Fleur(SWAT隊員)

David D’Lancy Wilson(スナイパー)

James Gomez(スナイパー)

Nadine Hyatt(スナイパー)

 

John Andrews(警官)

Carl Hines(警官)

Kristi Woods(FBIエージェント)

 

Milan Deng(通路で踊るファン)

Ajanae Stephenson(通路で踊るファン)

Khiyla Aynne(通路で踊るファン)

 

Olivia Barrett(看護師)

Allison Ference(火傷の被害者)

Bobby Manning(ダフ屋)

Evan Stern(ホットドッグストアのマネージャー)

Brandon Young(ホットドッグストアの販売員)

 

Maya Lee O’Connor(叫ぶファン)

Lauren Brady(叫ぶファン)

Valentina Theresa(Tシャツのブッキングファン)

Erica Wilson(転落する少女)

Leeyarah Belle Barcia(転落する少女の連れ)

Mia Yaguchi-Chow(酔っ払い女性の友人)

Dominique Brownes(路上の女)

Lara Zaluski(路上の女の友人)

Timilehin Olusoga(「Lady Raven」のファン)

Marlon Masimba(「Lady Raven」のファンの父)

Andrea Caldarise(「Lady Raven」のファン)

Jessica Konkle(コンサートの客)

 

Elizabeth Victoria Wong(メインストリートの歩行者)

Josh Stone(メインストリートの歩行者)

Piper Hook(リムジンを取り囲む人)

AJ Nadeau(リムジンを取り囲む人)

Michael Cox(リムジンを取り囲む人)

Jarrod Clegg(リムジンを取り囲む人)

Jennifer Ashleigh Lloyd(リムジンを取り囲む人)

Iliya Kovler(リムジンを取り囲む人)

 


■映画の舞台

 

アメリカ:ペンシルバニア州

フィラデルフィア

 

アメリカ:ジョージア州

イーストダブリン

 

ロケ地:

カナダ:オンタリオ州

トロント/Tronto

 


■簡単なあらすじ

 

フィラデルフィアの消防隊員のクーパーは、娘のライリーを連れてレディ・レイヴンのコンサートにやってきていた

娘の成績が良かったことに対するご褒美のようなもので、多くのファンが駆けつけていた

会場に入った二人だったが、クーパーはやけに多い警備の数に何かを感じ取っていた

 

無事に会場に入り、コンサートも絶頂を迎えた頃、トイレのために抜け出したクーパーは、さらに増え続ける警備と警官に嫌な予感を感じる

そして、休憩時間にグッズを買いに出たクーパーは、そこで販売員のジェイミーからここで何が起きているのかを聞き出すことになった

 

ジェイミーは「このコンサート会場に切り裂き魔が潜入している」と言い、FBIはトラップを仕掛けているという

クーパーは会場に戻り、次々と連行されていく人々を見つける

クーパーは色々と理由をつけながらも会場を隅から隅まで観察し、逃げる場所がないかを探し始めるのである

 

テーマ:投影される母親

裏テーマ:主導権争い

 


■ひとこと感想

 

映画の紹介記事の段階でかなりのネタバレになっていますが、映画の日本版予告編では「親子がコンサートに行った」ぐらいで情報を止めていましたね

クーパーが何者かはかなり初期の段階で分かりますが、それをわかった上で観るのと、何も知らずに観るのとではかなりの違いを感じます

基本的には「コンサート会場に殺人鬼が来ている」というところで情報を止めておいた方が良いでしょう

 

シナリオは結構ガバガバですが、最後までどうなるかわからない感じは面白かったですね

映画の端々で「謎の老女」が主人公をじっとみているのですが、その人物の正体が最後にわかるようになっています

 

どうしてレディ・レイヴンがあそこまでするのかは分かりませんが、被害者と何か関係性があるのかなと思っていましたね

また、FBIのプロファイラーが有能でしたが、てっきり実は母親とか姉とかいうのかと思ってしまいました

それにして、犯人のボロの出方がなかなか巧妙だったように思えました

 


↓ここからネタバレ↓

ネタバレしたくない人は読むのをやめてね


ネタバレ感想

 

映画は、いわゆる「主人公が逃走犯とわかった上で観る」という内容になっていて、彼がどのように「トラップ」から逃げるのかというものが主軸になっていました

ただし、彼が猟奇殺人の犯人であることは隠しておいて、とにかく「何かをしたけどわからない」という方が不気味だったように思えました

 

犯人がライブ会場に来る過程とか、それがFBIにバレる流れは面白くて、人は人をコントロールできないものだと感じさせます

妻が夫の行動に違和感を感じ、そしてその先にあったのが「女ではなく犯罪だった」というもので、悟られずに事を運ぶのが上手いなあと思ってしまいました

 

映画はかなり特徴的な内容で、有能なのは全て女性、男は短絡的で独りよがりという一面が強調されていましたね

このような内容になっているのも、クーパー自身が母親から恐怖を感じ取り、それが全ての女性に通づるものであるという強迫観念を抱いたからのように思えました

 


彼を罠に陥れたもの

 

映画は、コンサート自体が「トラップ」となっていて、その発端はクーパーの妻が「夫が隠れて保持していた別の住処にチケット購入の領収書が落ちていたから」というものになっていました

この手がかりから「レディ・レイヴンのコンサートを行えば犯人が紛れるのでは?」という無茶な作戦になっていて、それにレディ・レイヴン自身も協力するという流れになっていきます

レディ・レイヴン目線だと、この観客席のどこかに猟奇殺人犯がいることを知っていてライブを行っているので、相当な精神の持ち主であることがわかります

言い換えれば、自分のファンの誰かが猟奇殺人犯ということになるので、アーティストとしては複雑な思いを有していたと言えます

 

クーパーの妻レイチェルの疑問が警察を動かし、そこから大規模な作戦が展開されるのですが、クーパー自身は別荘近辺に警察の姿を見ていたので、その場所を避けるようになっていました

なぜバレたのかわからないものの、警察が近くまで来ていると感じていたのですね

この嗅覚がありながらも、自身の臭いに気づかないところがおかしくもあります

 

映画は、コンサート時代が罠であるとクーパーが認知しないと意味がないので、販売員ジェイミーが内情をほぼバラすという無茶な展開になっていました

それ以前に、クーパーは異常な数の警備とか、カメラの増設に気づいていたので、何かしらの異変を感じていたのでしょう

彼は消防士でもあり、この手の施設の設備に関しての知識を有していて、その常識から外れるところに違和感を持っていたのでしょう

レディ・レイヴンの人気が凄いことはわかっても、ここまであからさまに警備が強化されるのはなぜか

このあたりは「追い詰められているクーパーの反撃」が映画の骨子なので、その設定を説明しているだけに過ぎないとも言えます

 

結局のところ、本作におけるクーパーは「女性の勘」に追い詰められていて、妻、娘、プロファイラー、アーティストが全員女性という構図になっていました

この構図になっているのが偶然なのか、わざとなのかはわかりませんが、間抜けな男性が失態を演じるというあたりは一貫していたように思います

俯瞰してみると、「女性の勘VS男性の理屈」という部分があって、この組み合わせに親和性があったように思います

クーパーは自分が罠にハマった理由も理論的に分析できないのですが、妻に言われて納得できる部分があるところに彼の弱さがあるのですね

ある種の完全犯罪を為そうとする完璧主義者は、他者の心理をコントロールしている錯覚を生みますが、それは拉致してきた人物が男性だったから可能だったと言えるのかもしれません

 


強調される男女の描かれ方

 

前述のように、本作では「男VS女」という構図になっていて、女性側は「勘+プロファイリング」という2つの武器があって、男性側にも「理論的思考+行動力」という2つの武器がありました

クーパーは状況を分析するために現地の声を聞いて、リスクを承知で踏み込むのに対して、プロファイラーは外部から俯瞰して蓄積された情報をもとに分析を行っていきます

この知能対決に関してはクーパーの勝利であり、彼が負けたのは別の理由であることがわかります

 

プロファイラーは蓄積された情報の分析に長けていますが、そこから情報を実像化するのはとても難しいことなのですね

映画では、「何歳くらいの男性で」みたいなざっくりした分析になっていて、会場に来ている年相応の男性を片っ端から尋問するという方法を取っていました

この絨毯作戦はいずれは辿り着くと思いますが、とても時間のかかるもので、それがクーパーの猶予になっていました

 

クーパーの方は実に行動的で、無茶な妄想をしながらも、論理的にひとつずつ積み上げていきました

このあたりは監督の性格も出ているようで、可能性と実用性を合理的に判断しつつ、無理のない範囲で逃げ道を用意していたように思います

事態を把握する能力に長けていますが、コミュニケーション能力もさることながら、ギリギリのラインに踏み込む度胸もありました

警察の間近まで行って、捜査の進展具合を確認するのですが、安全圏を知るためとは言え、かなりの領域にまで足を突っ込んでいきました

 

一般的に男性と女性の脳の構造に性差はないのですが、脳の働きや思考パターンには違いがあるとされています

男性脳の思考パターンは「論理性を重視し、行動には常に目的が伴う」のですが、女性脳だと「感情に基づいて行動し、共感や気持ちの共有を優先する」とされています

プロファイラーは女性ですが、かなり男性脳に近い描かれ方をされていて、それは職業的思考が顕著に出ているからだと思います

これらは訓練の賜物であると言えますが、実際には監督がキャラクターを作り上げているからでしょう

 

映画では、理論的かつ行動的な男性が「女性の勘に負ける」という構図になっていて、女性の勘の部分を論理的に構築できないからだと思います

この感情の揺らぎを逆手に取ることができても、理論的に明文化することはとても難しいのですね

でも、行動パターンなどから、このような性格だとこのような行動になるという経験則があるので、ある程度の予測はつきます

とは言え、レディ・レイヴンが見知らぬ監禁された若者を命懸けで助けようとする、というのは、少しばかりおかしな行動に思えます

 


120分で人生を少しだけ良くするヒント

 

本作は、主人公が犯罪者で、彼を取り巻く包囲網が敷かれていると言う状況から物語は始まります

骨子としては、どのようにクーパーがプロファイラーを出し抜くかと言うものですが、外に出られてからは蛇足のような感じもしてしまいます

クーパーとしては、自分を窮地に追いやった者の正体を知ると言う展開が待っているのですが、いっそのこと「劇場内に妻がいて、プロファイラーと一緒にいる」と言う展開でも良かったと思います

 

逃げるだけでは映画は面白くはならず、逃げられる段階になって逃げないと言う選択ができることの方が面白いのですね

いざ、レディ・レイヴンに犯人だと告白して逃げる算段ができたところで妻が会場にいることを知る

ここで一種の思考停止が起こってしまい、家に帰る=危険であると感じるのですね

クーパーの論理的思考をショートさせる方が面白くて、アジトもダメ、家もダメと言う展開になって、でもレディ・レイヴンには正体をバラしてしまっていると言う八方塞がりになってしまう

娘は最高の思い出を手にして家路を急ごうとするし、クーパーは誰にも悟られずにどうしたら警察の手から抜け出すのかに必死になるでしょう

 

妻の仕掛けが原因となっているトラップでしたが、妻自身は夫の浮気を疑っていただけでした

彼女がプロファイラーといるのは別の理由であり、単にクーパーに繋がりを勘違いさせるだけで良いと思います

妻は夫と娘のことが心配で現場に来ていて、ステージに娘が上がったことを知るとかでも良いですし、いっそのこと家族3人でコンサートに来たというものでも良いでしょう

それによって、妻とママ友あたりが鉢合わせて、それを聞きつけたスタッフが「ステージの娘の母親だと知ること」で、裏口へと案内すると言うのもありだと思います

娘と夫が関係者エリアに来ているので、そこに妻も誘導すると言う流れで、そこで彼女は大規模な捜査が行われていることを知ります

妻自身も何かしら思う所があって、彼女自身も何かしらの探りを入れることになって、その場面を偶然にも目にしてしまうのですね

全てがコンサート会場で起こると言うのが映画の醍醐味だと思うので、夫の告白も含めて、会場で完結すれば良かったのに、と思いました

 

映画は、シャマラン監督作品なのでどんでん返しが期待されて気の毒ですが、この映画で大どんでん返しというのはかなり難しいと思います

それこそ、妻がプロファイラーと繋がっていたみたいな話だと、最初からピンポイントで一本釣りすれば良いだけのように思えるので、こんな大規模な仕掛けは必要なくなってしまいます

なので、あくまでもプロファイラーとは無関係だけど、現場に何故か妻が来ているというシチュエーションを作り出せれば、もっと濃密なものになったのかな、と感じました

 


■関連リンク

映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)

https://eiga.com/movie/102219/review/04403758/

 

公式HP:

https://wwws.warnerbros.co.jp/trap/

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投稿者 Hiroshi_Takata

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