■日出男が地球で何を学んで、どのように土星が変化したのかを描いてほしかった
Contents
■オススメ度
コントみたいな映画が好きな人(★★★)
キャストのファンの人(★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2023.5.24(TOHOシネマズ二条)
■映画情報
情報:2023年、日本、117分、G
ジャンル:23年間宇宙人であることを隠していた次男と、その家族を描いたヒューマンコメディ
監督&脚本:飯塚健
キャスト:
日村勇紀(真田夢二:兄弟の親代わりの長男、焼肉屋「SANADA」の店長)
中村倫也(真田日出男:23年家族になりすました宇宙人、次男)
伊藤沙莉(真田想乃:DV彼氏から離れられない妹、リサイクル工場勤務)
柄本時生(真田詩文:高校時代の同級生から復讐される三男、ガソスタ店員)
関めぐみ(中野あかり:想乃の同僚)
千野珠琴(中野ゆめ:想乃の心が読めるあかりの娘)
細田善彦(宍戸博文:詩文の元クラスメイト)
平田貴之(神内雅也:想乃の彼氏)
山中聡(望月:夢二の友人、常連客)
井上和香(ビッグ鰻/ビッグマミィの声)
設楽統(テレビ番組の司会者の声)
山里亮太(日出男を監視するジャガイモ・ジャガの声)
傳谷英里佳(ヨンソ:「SANADAの店員)
牛嶋裕太(ミゲル:「SANADA」の店員)
森安彩火(沼田:ボウイが通じない夢二の見合いの相手)
大谷由梨佳(映画マニアの夢二の見合い相手?)
尾碕真花(宍戸の彼女?)
■映画の舞台
高知県:土佐市
ロケ地:
高知県:高知市
串カツ田中 高知店
https://maps.app.goo.gl/aiqjLEopeibEaUdR6?g_st=ic
セントラル 帯屋町店
https://maps.app.goo.gl/xwMrL5hWgnu9Jay68?g_st=ic
高知城
https://maps.app.goo.gl/2iFjDDAJun9z6Ntt9?g_st=ic
高知県:高知市(「SANADA」の外観)
https://maps.app.goo.gl/eP6QUQ6s5cPkz86w5?g_st=ic
高知県:須崎市
鳴無神社(決闘場所)
https://maps.app.goo.gl/AGVMAdUiGgRNgAGRA?g_st=ic
高知県:土佐市
北原クリーンセンター(想乃の職場)
https://maps.app.goo.gl/A8yfbd75BY6As9aE6?g_st=ic
高知県:津野市
星ふるヴィレッジTENGU
https://maps.app.goo.gl/WmLLM1CuFJortTQ67?g_st=ic
■簡単なあらすじ
海辺の町で焼肉屋を営んでいる真田一家は、両親の死別後に長男・夢二が跡を継ぎ、次男・日出男がサポートしていた
長女・想乃はリサイクルセンターで働き、DV彼氏との関係に悩んでいて、末っ子の詩文はガソスタで旧友に出会って嫌がらせをされていた
ある日、夢二は「真田サミット(家族会議)」を開催し、そこで日出男が「土星から来た宇宙人であること」を告げる
日出男は土星から探査のために地球に来ていて、もうすぐ帰らなければならないことがわかる
当初は困惑していた想乃と詩文だったが、これまでに撮った記念写真に日出男が一枚も写っていないことを確認し、納得せざるを得なかった
日出男には家族には言えないもう一つのミッションがあって、それをどうするか悩んでいた
出発日が刻々と迫る中、家族たちに様々なトラブルが起こり、日出男はそれを特殊能力で解決していく
そして、出発24時間前を迎えることになったのである
テーマ:家族とは何か?
裏テーマ:家族のためにできること
■ひとこと感想
中村倫也さんが実は宇宙人でしたというコントのような設定で、主演が日村勇紀さんだったので、そっち方面だろうなあと思っていました
それは正解で、本当にコントの延長線上にあるような作品でしたね
ガチのコメディ映画よりは軽めで、ヒューマンドラマとして楽しめる要素もほとんどありません
好きな人は好きだろうなあという感じで、深みがなくて、起承転結もさほど凝っていません
テーマもあるのかないのかわからない程度の家族の絆が描かれますが、テーマの提示の仕方も洗練されておらず、ラストのオチで否定しているようにも思えてきます
クスクスと笑えるシーンがありますが、それは日村勇紀さんの日常(芸人として)がそのまま登場しているから面白いのであって、登場するお笑いテイストが面白いわけではありません
あくまでもキャラとアドリブっぽさのある「+@」の部分はおかしかったと思います
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
映画のテーマは「離れていても家族」みたいな感じでしたが、最後は想乃の子どもとして転生した、みたいな感じになっていました
戻ってくる可能性はありましたが、転生に5ヶ月なので、刑期は「土星時間で9年程度」で済んだということになるのでしょうか?
このあたりの設定があって無いようなものなので、真剣に考える意味はないのかもしれません
映画は、家族会議が起こるたびに、家族一丸で助けるという流れになっていて、「言い出すまでの苦悩に費やす時間」と「家族に迷惑をかけたくない」という思いに挟まれているように思えます
それぞれの問題は軽いものではないのですが、詩文のトラブルは家族を巻き込んでいるので、一人で抱えている時間が長すぎます
想乃も「自分の中から神内の記憶を消してもらう」という申し出があったので、日出男が転生しても問題ないと思いますが、個人的には日出男と想乃が良い感じになる路線になってもよかったかなと思います
このあたりの物語の流れは直すところがたくさんありますが、それよりも「テーマ」がざっくりとし過ぎていて、物語の方向性がブレブレになっていましたね
「自分をおざなりにしてでも助ける」とか、家族の絆に対するものを「セリフで主演が話す」というものになっていて、まるで素人が書いたようなシナリオになっていると思います
これならば、心が読める少女が「真田一家とふれあう中で家族を理解する」という流れになった方がマシのように思えました
■家族という煩雑すぎるテーマ性
映画のテーマは「家族」なのですが、あまりにも範囲が広すぎて「何にフォーカスをしているのかわからない」という感じになっています
「離れていても家族」「家族のために犠牲になれる」「擬似家族」などがわかりやすいもので、その一つ一つを深く掘り下げている感じはしません
もっとも、深く掘り下げたところで、これまでに何度も使い古されたものを再燃させる意味はないでしょう
なので、「日出男が土星人でも家族になれる」というものが意味を持つと言えます
土星人であることがバレても家族はさほど驚かず、それは見た目が地球人と変わらないからだと思います
彼の見た目が地球人に見えるのは、土星人が同じ姿をしているのか、実はそう見せている科学技術があるのかはわかりません
日出男を監視していたジャガを見ると、おそらくは後者である「ジャガ姿を人間に見せている」というラインになりそうに思えます
土星では家族の形態が違い、「女王蜂と働きバチ」という関係になっていました
絶対的な君主がいて、その他は平等という感じになっていて、その王国は滅びつつあるのですね
そして、土星の滅亡を救うために「家族」というものを学ぶのが日出男の役割でした
彼が何を学んだのかはわかりませんが、「離れていても家族」では土星の状況を改善することはできません
擬似家族であっても、血脈の維持に関して役立ちそうな教訓は「どんな親(配合相手)であれ愛情を持って接するべし」とか、「特殊な環境で育っても、みんなで親代わりになろう」みたいなことなんですね
ですが、それが物語全体のテーマと合致するかと言われれば微妙なんだと思います
あくまでも、産むか産まないかを選べるという状況なので、滅亡に瀕している土星の問題との関係性はありません
■勝手にスクリプトドクター
日出男の土星設定とその状況、「家族」というテーマとの関わりを考えた時、もっとも効果的なシナリオは「命の繋ぎ方」であると考えます
劇中で想乃の妊娠発覚があり、相手はクズ男でも「産む」という判断をしています
この「出産するか否か」というテーマを土星の状況に置き換えると、「女王蜂が選んだ雄がクズ」というものになって、それによって「クズ雄のグループ」と「それに反発するグループ」が生まれたという状況になると考えます
土星では、これまでの女王蜂中心体制に反発する層が生まれるのですが、これを「クズ雄ハチ」の出現によって、「優遇されるグループができた」と仮定します
女王蜂は複数の雄と交配することで近親相姦を避けるのですが、平等だったはずの交配相手とそこから派生したグループが権力を持ってしまうと言う構造になります
そして、交配相手との間にできたいくつかの集団が「女王蜂のえこひいき」によって分断され、これまでの「平等性」と言うものが失われてしまう
そんな中において、特定の雄との交配が重なってきて、派閥同士にヒエラルキーが発生してしまう
これまでは平等に接してきた働きバチに格差が生まれ、それによって機能してきた集団の特異性というものが機能しなくなって、女王蜂に仕えてきたものたちが「別の雄の血族のために働く」という状況が生まれるのですね
人間社会に置き換えると、「異なる父との間に生まれた腹違いの兄弟」という構造になっていて、それでも家族としてうまく行くのか?という命題が生まれている状況になります
この土星の問題を日出男が地球社会で学ぶとしたら、想乃が「クズ男」との子どもを産みたいという状況とリンクさせます
なぜ想乃は相手がクズ男なのに子どもを産みたがるのか?
これが土星で起こっている派閥闘争と絡んでいくことによって、女王蜂(=母)の思考というものを日出男が理解していく流れになります
そして、土星の中で起きたヒエラルキーの構造の原因に辿り着き、優遇に対する嫉妬構造こそが「土星を滅亡に向かわせている」ということに気づくという流れになります
元々、土星で築かれてきた平等精神による統治というものが壊れることは、女王蜂に新しい男ができたら権力構造が変わるというところに繋がるので、このマインドからの脱却を図ることになります
そうして、ヒエラルキーの頂点にいた働きバチの部族が心を入れ替えていく、という流れを生み出していきます
母(=女王蜂)の愛情は等しかったが、働きバチたちの嫉妬心によって優遇と不遇の概念が生まれていたのですね
これは「想乃がなぜ産もうとするのか」というマインドと直結し、日出男が想乃を理解することで土星の中で起こっていたものが可視化されるという流れになります
難しい書き方になっていますが、夢二のセリフにもあるように「新しい家族が増えることは良いことだ」というものにつながるのですね
日出男が母の気持ちを理解することで、彼自身が生まれた時に母親からもらった愛情に気づくことになります
そして、母は変わっていない、変わったのは子どもたちの中にあった嫉妬心である、と気づくのですね
この概念が土星の中で浸透し、そして日出男は地球に戻ってくることを許される、という流れになると考えます
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
この流れになった時、日出男は誰を連れていくのか?という問題に行き着きます
答えは明白で、土星の人々が「母親の愛情」について学ぶということになるので、「妊娠した想乃」以外には考えられません
土星で子どもを無事に産めるのかという不安はありますが、そもそもが地球よりも進化しているので、そのような不安は杞憂になると思います
問題は、想乃が土星に行きたがるか?というところなのですが、想乃が土星の状況を知り、「母とは何か」を学ぼうと考えるならば、「多くの子どもを産み育てた女王蜂」に興味が湧くという流れも可能でしょう
日出男がそばについていることで不安が和らぎ、そして土星での出産を終える
そうした先に「母の思いの概念」が土星の中で浸透し、想乃は土星の救世主になります
そこで、女王蜂は日出男にある贈り物をします
それが「日出男を地球に住まわせる」というもので、それによって日出男と想乃は地球に帰ってくることができます
1年間の出張を経て、日出男はすっかり地球人のマインドになった
それを踏まえた上で、女王蜂が配慮をして、恩恵を与えるということになります
この流れで、想乃が日出男を見る目が変わってしまうのは蛇足になるので、恋愛は排除したまま、夢二たちのもとに戻ることになるという流れになるのがベターかなと思いました
以上、素人の考えた「さいつよシナリオ」でした
映画としての楽しさはあるし、緩さも嫌いではないのですが、もう少し物語に深みであるとか、現代の「家族問題(母と子の想いのすれ違い)」がリンクすれば、もっと良い映画になったのではないかと感じました
■関連リンク
Yahoo!映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://movies.yahoo.co.jp/movie/386648/review/576c70f5-ef4d-4d93-8ae4-16d1d7ad6489/
公式HP:
https://happinet-phantom.com/uchujin/