■キツネの組織のロゴがメタマスクにしか見えないのは私だけだろうか
Contents
■オススメ度
コメディ調のSF映画が好きな人(★★)
■公式予告編
鑑賞日:202.5.16(T・JOY京都)
■映画情報
原題:Le visiteur du futur(未来からの来訪者)、英題:The Visitor from the Future(未来からの来訪者)
情報:2022年、フランス&ベルギー、101分、G
ジャンル:2555年の地球滅亡を救うために500年前の歴史を改変しようと目論む来訪者を描いたSFコメディ映画
監督&脚本:フランソワ・デスラック
キャスト:
アルノー・デュクレ/Arnaud Ducret(ギルバート・アルベール:原発誘致に関わるフランスの国会議員)
エンヤ・バルー/Enya Baroux(アリス・アルベール:ギルバートの娘、環境活動家)
Julie Farenc(キャシー:ギルバートの妻)
Manon Baudre(ギルバートの息子、6歳)
Lyne Becker(ギルバートの娘、14歳)
フローラン・ドリン/Florent Dorin(キツネ:2555年から来る訪問者)
ラファエル・デスクラック/Raphaël Descraques(ラフ:過去から連れてこられた青年)
スリマン=バプティスト・ベルフン/Slimane-Baptiste Berhoun(アンリ・カルタフォルテ博士:2555年の科学者)
マチュー・ポッジ/Mathieu Poggi(マテオ:時空警察)
オドレイ・ピロー/Audrey Pirault(ルイーズ:時空警察)
バンサン・ティレル/Vincent Tirel(ヴィクトール:時空警察)
Lénie Cherino(コンスタンス:時空警察の責任者)
Ludovik(リチャード:コンスタンスの助手)
Simon Astier(ミシェル・ミロー:コンスタンスの部下)
アサ・シラ/Assa Sylla(ベレット/イタチ:キツネの恋人、シェルターの管理者)
Marc Riso(フランシス:シェルターのバーテンダー)
Kyan Khojandi(ボリス:シェルターの住人)
Bruno Muschio(レジス:シェルターの住人)
David Marsais(ピクパス:シェルターの住人)
Swann Daniel(ムロト:シェルターの少年)
David Coscas(マクフライ:シェルターの住人)
Raphaël Carlier(カリート:シェルターの住人)
Monsieur Poulpe(シェルターの住人)
Davy Mourier(シェルターの住人)
Yves Yan(ムッシュ・ウォン:キツネに連れてこられる中国人)
David Coscas(ガラブローシュ:原発の管理者)
Raphaël Carlier(デフナックス:原発の管理者)
Alex Ramirès(ファビオ:ギルバートの専属運転手)
Fabien Fuhrmann(救命医)
Victoria Rolin(ジャーナリスト)
Bruce Benamran(ジャーナリスト)
Jenny Letellier(シャルリー:アリスの活動仲間)
Valentin Jean(リュシアン:アリスの活動仲間)
■映画の舞台
2555年&現在、地球
フランス:パリ
ロケ地:
フランス:
モーゼル/Mosele
https://maps.app.goo.gl/NoEJ8iQfbkNP2yEW7?g_st=ic
ムルトエモーゼル/Meurthe-et-Moselle
https://maps.app.goo.gl/jdhSYg4jg4otydPaA?g_st=ic
■簡単なあらすじ
2555年の地球では、絶望的な環境汚染が進んでいて、滅亡までカウントダウンを迎えていた
生存者はシェルターで生活をするものの、タイムトラベルを試みて、根本原因を解決しようと考える者も現れた
そのリーダーであるキツネは、単身で2000年代のパリを訪れ、メルトダウン寸前の原発に足を運んだ
そこでは爆発を食い止めようとする科学者たちが奮闘していたが、再起動のさせ方がわからない
キツネはトラベルを繰り返してヒントを与えるものの、歴史の改変を許さない時空警察が彼の前に立ち塞がった
メルトダウンは起こってしまい、キツネは別の手段を考えようと試みる
それが、フランスに原発を誘致したギルバート議員を阻止するというものだったが、再び時空警察の邪魔が入り、ギルバートとその娘アリスを2555年に連れてきてしまう
時空警察はキツネたちの逮捕に成功し、歴史を変えることはできなかった
だが、諦めきれない彼らは、次の手を打って出ることになったのである
テーマ:歴史を変えれば変わるもの
裏テーマ:歴史を変えても変わらないもの
■ひとこと感想
フランスのSF映画ということで、未来人が歴史を変えようとするという設定だけを知って参戦しました
パンフレットも作られておらず、データの収集は困難かと思われましたが、本編のラストに主要キャストが映像付きで紹介されていたので助かりました
映画は、フランスの原発で起きた事故によって500年後に地球滅亡の危機が訪れるというもので、それを阻止しようとタイムトラベラーがやってくる流れになっていました
役名は「来訪者」なのですが、映画内では「キツネ」と呼ばれていて、シェルター(地下組織みたいなもの)にキツネのロゴが貼り付けられていました
物語は、歴史をどう変えるかという命題があって、それを阻止しようとする時空警察が登場するという「いつもの」流れになっています
原発の事故を止めるのが無理なので、いっそのこと建設をやめさせようと考えるに至ります
その方法は予想通りの展開なのですが、時空警察の邪魔が鬱陶しいくらいに入り込んで、さらに陰謀があるという展開になっていました
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
冒頭のメルトダウン阻止のところからコミカルテイストになっていて、シリアスに見えるシーンにもところどころ間の抜けた会話劇が展開していました
面白さのポイントが合っているなら問題ないのですが、合わないと結構きつい感じに思えましたね
かなり間延びしている印象もあり、展開も遅めなので眠たくなってしまうシーンも多かったように思います
実質的な主人公は議員の娘・アリスで、彼女の選択がメインになっていました
議員が原発を誘致したことがきっかけとまでは言えませんが、昨今のフランスの原発問題を揶揄する部分は多かったように思います
解決策はそこまで真新しいものではなく、他の作品のネタバレをするのはアレなので控えますが、その 観た人なら「このパターンか!」と思うかもしれません
悲壮感漂う間も無く、心地の良いラストになっていましたね
■歴史改変で起こること
本作は、過去(おそらく2000年代)にて原発誘致がなされ、現在(おそらく2050年)にメルトダウンを起こし、未来(2550年)にて地球が滅びようとしているという感じになっています
タイムトラベラーのキツネは、メルトダウンを止めようとして何度も失敗していて、そこで原発誘致自体を無くそうと考えます
冒頭は今から少し未来の話で、理由は不明ですが、原発事故が起こっていて、メルトダウンを回避させるためのマニュアルが中国語だから読めないということになっていました
この時点でコミカルに振り切っているのは明白で、それだけ物語の帰結が悲惨なものになりかねないという暗示でもあったと思います
キツネが過去を変えることで何が変わるかというと、メルトダウンを止めると未来の組織形態が変わります
都市が壊滅したことで起こる国の在り方、体制そのものが変わっていて、それにより時空警察の下地のようなものができています
もしメルトダウンが起こっていなければ、化学研究の面でも変わっていた可能性があって、それはタイムマシンを作りだしたのがアンリ博士だったからなのですね
彼はいわゆるAI搭載のアンドロイドのようなもので、それによって人類が成しえなかったものを作り出してきたことになります
キツネがさらに遡り、フランスに原発が来なければという未来を描きますが、いずれは何らかの形で原発の誘致は行われていたと思います
問題は「他国製」でメンテナンスなどに苦慮している点で、自国の技術が追いついていない状況で手を出すのはダメだという警告のように思えます
映画では、ギルバートを説得することを考えるアリスと、それではダメだと考えるキツネがいました
最終的にアリスが生まれない世界というものを選択するのですが、それでもアリスの存在がないと未来が変わらないので、時空の間に落ちて存在し続けるというオチになっていました
これは反則技なのですが、このコミカルテイストに合わせるならこれしか落としどころがないように思えます
■勝手にスクリプトドクター
本作は、かなり雑多なところがあって、コミカル調は良いのですが、結局誰が主人公なのかわからないところがありました
エンドクレジットのトップはギルバートで、ポスタービジュアルに登場するのはキツネでクレジット上は「来訪者」として、ちゃんとした名前があるわけではありません
物語として見た場合は、「アリスの選択」が物語の核になっているので、ストーリーライン上で最も変化をしたという意味合いならば、アリスが主人公であると言えます
現在を変えようとして父に反発し、未来に行ってトラベラーたちの行動理念を知り、その中で自分の立ち位置を考えて行動するので、アリスを主人公にして物語を組み替えた方が良いように思えます
物語の冒頭は、未来からの来訪者が歴史を変えられないというもので、これはそのままで良いと思います
アリスが来訪者によって未来に連れてこられ、自分の父が原因で未来がヤバいことになっていると気づくのですが、そこからアリスが決断を下すまでの流れの中で、アリスの視点をどれだけ増やせるかにかかっていると言えます
物語の中盤は時空警察の暗躍になっていて、そこで付け狙われるのが反逆者であるキツネになりますが、彼らはキツネの思惑を察知して、アリスを取り込んでいく流れが必要になると思います
キツネはギルバートを殺せばメルトダウンは起きないと考えていて、それによってアリスと対抗することになります
アリスは時空警察側に付き、キツネの野望を阻止する側に回ってしまう
そんな中で、時空警察の狙いというものがわかり、アリスが苦悩することになります
人類の未来を取るか、自分の父(自分の存在)を取るか
そんな中で、自己犠牲を厭わないようになる中で、時空警察を裏切ることになると言えるでしょう
ラストの時空の歪みに落ちるというところも、さらっと言葉で説明するのではなく、アンリ博士との共闘の中で新しい技術に気づき、ギルバートとアリスの両方を現在の時空から消すという方法を取れば良いでしょう
現在からギルバートとアリスが消え、それによってフランス政府が推し進めている計画は暗礁に乗り上げることになり目的は果たせます
ギルバートとアリスを歪みに放り込むのが一番わかりやすいのですが、できればアリスが生まれる前の世界に行って、ギルバートと妻キャシーを時空の歪みに落とした方が良いと思います
そんな中でアリスは生まれ、彼女は時空の歪みの中で生まれた存在として、研究者となって、今の時空へと家族を連れてくることになる
現時空にきた時に記憶が消去されてしまい、それによってギルバートは本来の物語のラインに乗っていくことになりますが、キツネとの出会いによって、「アリスたちの過去が蘇る」という展開になる
そこで、現在の時空に来てはいけなかったことを知り、そこに戻ることになるというのでも良いでしょう
パラレルワールドっぽさが出てしまいますが、本作では歴史が変わったことでパラレルが生まれずに未来が変わってしまうというテイストになっているので、アリスたちの行動によって未来が変わりまくって大変なことになる、ということを描いても良かったのかな、と思いました
アンリを作ったのが時空のはざまに落ちたアリスというのが一番しっくりくるのですが、それを加味するとかなりシナリオを練り直さないとダメで、別の作品になってしまうような気がするので、この辺でやめておこうと思います
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
本作は、未来改変系の作品ではありますが、かなりコメディに寄せている部分がありました
冒頭のメルトダウンのところからコントのようなノリになっていて、このテイストを受け入れられるかを試していきます
中盤での時空警察とのやりとりもほぼコントで、それを楽しめる人ならOKだったように思えました
映画は、自分の存在を消すというもので、それに至る経緯などが描かれていて、それでも悲壮感を感じるというものではありません
最終的に未来を存続させるために、時空の歪みの中で存在し続けるという荒技になっていますが、そこまでSF性を追求していないので問題ないように思えます
時空の歪みという、SF的には反則の技になっていますが、アリスが消えてしまうよりはテイストに合っているのですね
なので、コメディ色を維持するためには、アリスをどのような形であれ、生かしておく必要があります
本作は、主人公が誰かわかりにくい作品で、主人公級のキツネには正式な名前がありませんでした
恋人のイタチには役名があるので、そのあたりが不思議な設定になっていましたね
時空を超えることができる組織で、その創設者かつリーダーに該当する人物なので「来訪者」というクレジットはどうなんだろうと思ってしまいました
意図的に名前を隠すのであれば、彼自身が名を持たない無機質的な存在なのかなと考えられますが、アンドロイドのアンリ博士に名前があるように、その辺の統一感はなかったように思います
そのへんを突っ込む映画ではないと思いますが、ちょっとだけ気になってしまいました
■関連リンク
映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://eiga.com/movie/101436/review/03826623/
公式HP:
https://klockworx-v.com/future/