■タイトルの意味を知ると、物語の特異性が強調されていないことがわかってしまいますね


■オススメ度

 

親子の関係修復の物語に興味がある人(★★★)

 


■公式予告編

鑑賞日:2024.5.15(T・JOY京都)


■映画情報

 

原題:Transfusion(輸血)

情報:2023年、オーストラリア、105分、PG12

ジャンル:妻の死によって全てが狂った父と子を描いたヒューマンドラマ

 

監督&脚本:マット・ネイブル

 

キャスト:

サム・ワーシントン/Sam Worthington(ライアン・ローガン:妻を亡くした退役軍人)

Edward Carmody(ビリー・ローガン:ライアンの息子)

   (8歳時:Gilbert Bradman

Phoebe Tonkin(ジュスティーヌ:事故死したライアンの妻)

 

マット・ネイブル/Matt Nable(ジョニー:ライアンの軍人時代の相棒、退役軍人)

 

Ben Hogan(デイヴ:イラク派兵軍人、ライアンたちの仲間)

JK Peralta(トミー:イラク派兵軍人、ライアンたちの仲間)

Richard Cotta(アルカイダ兵)

Laujine Yassin(アルカイダ兵)

Akram Joseph(アルカイダ兵)

Normie Daghel(イラク人の男)

 

Damian de Montemas(トニー・マクマノス:ジュスティーヌの事故相手)

 

Alison McGirr(ビリーの弁護士)

Susie Porter(ビリーを裁く治安判事)

Christopher Stollery(ドイル:ビリーの高校の校長先生)

 

Max Duffield(ブラッド:ビリーの同級生)

Jeremy Lindsay Taylor(ジム・ウッズ:ブラッドの父)

Tommy Nable(ジェス:ビリーの同級生)

Ethan Puse(ウィル:ビリーの同級生)

Trystan Go(アダム:ビリーの同級生)

 

Jessica Napier(ウィリアムズ:救急医)

Alex Malone(看護師)

 

Julian Maroun(ジェローム:酒屋の店主)

Sam Cotton(ライアンの上司)

 

John Whitehall(尋問を受ける男)

Sam Parsonson(ネッド:ヤクの売人のリーダー)

Damien Strouthos(ティム:ヤクの売人)

Jesse Rowles(ヤクの売人)

Darius Williams(レイ:ネッドの仲間の若者)

John Schwarz(狙撃手、ネッドの仲間)

Mike Duncan(銃を撃つ男、ネッドの仲間)

 

Michael Schwarz(ピザ屋の男)

Brad McMurray(モリー:事故の概要を告げる上級巡査)

Nick Cole(目撃するジョニーの隣人)

 

Aaron Nable(メルク:ジョニーの元妻?)

 


■映画の舞台

 

オーストラリア:クイーンズランド州

ブリスベン

https://maps.app.goo.gl/L5ZFQ9twzAp9Zwff7?g_st=ic

 

ロケ地:

オーストラリア:ニューサウスウェールズ

タマラマ/Tamarama

https://maps.app.goo.gl/JmhTwhYzDQRUCMnt5?g_st=ic

 

マルブラ/Maroubra Beach

https://maps.app.goo.gl/tGED77eXkEVE9wTd9?g_st=ic

 

Maroubra Seals Sports and Community Club

https://maps.app.goo.gl/VGSv9j7hfsYtwNXr8?g_st=ic

 

オーストラリア:シドニー

 


■簡単なあらすじ

 

アルカイダとの戦いにて前戦を生き抜いてきたライアンは、ある日赴任先にて妻・ジュスフィーヌの訃報を知らされる

二人には幼い息子ビリーと、妻のお腹の中に生まれくる命を授かっていた

ジュスフィーヌは信号無視をしてきた車に衝突され、脳の損傷が激しい状態だという

後部座席に乗っていたビリーも臓器内出血がひどい状況で、二人の血液型は稀な型であり、二人を輸血することは敵わなかった

 

それから数年後、ビリーは高校に上がり、ライアンは戦線から離れてひっそりと暮らしていた

定職に着くこともなく家計は不安定で、ビリーは学校で問題ばかり起こしている

学費の滞納もあり、校長からは「無理をせずに公立に行った方が良い」とまで言われてしまう

 

そんな折、イラク戦争でタッグを組んでいたジョニーが彼の元を訪れた

彼は「見張りをしてほしい」と裏仕事を匂わし、ライアンは一度は断るものの、相棒のよしみで手助けをすることになった

ジョニーは麻薬の密売に関わっていて、ライアンは危険を感じつつも、背に腹はかえられぬ状態で、徐々に裏稼業を頼るようになってしまうのである

 

テーマ:親子の絆

裏テーマ:生きる道は選べない

 


■ひとこと感想

 

映画のタイトルは「輸血」という意味なのですが、内容を考えるとあまりしっくりくるものではなかったように思います

「黄金の血」だという会話があっても、本編にはほとんど関係なかったりします

息子との関係が悪化しているのが全て父親のせいなのですが、ビリーは自分の方が生き残ったからだと思っていて、母の死後にどのような会話がなされてこうなったのかまでは描かれていませんでした

 

映画は、キャラクターの名前を把握するのがとても難しく、ライアンとは最後まで呼ばれません

ローガンさん呼びが何度かあるぐらいで、相棒すら名前を呼ばないのは意味がわかりませんでした

IMDBなどを見ると末端まで名前があるのですが、妻の名前も出てこないし、ビリーが関わることになる弁護士の息子の名前も出てきませんでしたね

 

物語としては、よくあるパターンで、普通の生き方ができない退役軍人が、結局のところ暴力の世界に戻るという内容になっていました

あの性格で酒販の営業をやろうと考えるのは意味がわかりませんが、ルックスと腕っぷしの強さを考えると、生きていける世界はアウトローにしか無いように思えてしまいますね

 


↓ここからネタバレ↓

ネタバレしたくない人は読むのをやめてね


ネタバレ感想

 

実のところ、映画のタイトルの意味を調べるのを忘れてしまっていて、ドラゴンボールのフュージョンのことばかり考えていました

なので、冒頭の戦闘シーンを見て、勝手に「このバディが戦場で無双するんや!」とかしょうもないことを考えていましたねえ

 

映画は、母親の死亡によって、生活が激変する様子が描かれていて、妻とビリーの血液型が特殊だったために「どっちを取るのか」と迫られていた背景が最後に判明します

この選択を後悔しているのかはわかりませんが、ライアンはずっと妻の幻影と話していて、それにビリーが気づいていました

ビリーは「亡き母」の代わりに生き残ったことに心を痛めていて、父は抜け殻のようにこの世にいない人間と話している

これでは荒むのも無理はないという感じに思えます

 

映画は、元相棒のジョニーの登場によってヤバい方向に進むという物語で、話の規模はかなり小さいものになっていました

ヤクザの金を奪って襲われるという頭の悪い展開になっていますが、狙撃手ならではの戦い方と、退役して訓練すらしていないのにあれだけ動けるのはファンタジーのように思えました

 


退役軍人の職業適性

 

本作は、意図しない退役を迫られた元軍人が主人公となっていて、それが妻の事故死の影響で、子育てに専念しなければならないと言うものでした

この段階で、妻の両親、ライアンの両親などを頼れなかった理由はわかりませんが、それでも「完全に軍から離れなければならないのか」と言う疑問は湧きます

映画は、配属転換なども行おうとしたけれど、あまりにもショックがデカすぎて仕事にならずに辞めたと言う感じになっていて、それゆえに「まともな職につかないまま」過ごしていたと言う流れになっています

金銭的にも苦労していて、私学に通わせる費用が捻出できないほどになっていました

 

その後、ライアンは「お酒の営業職」なるものを始めますが、全くのど素人なので、仕事のアポの取り方すらわからないのですね

そこで、相手に粗暴な応対をされたことであっさりとキレてしまい、結局は辞めてしまうことになってしまいました

彼には営業職の適性がないことがわかるのですが、これはもう、入り口から間違っているような感じになっています

体を使う仕事から、いきなり真逆の特性が必要な職種になっていて、どうしてその職業を選んだの?と思わざるを得ません

 

仕事には様々な適性が必要ですが、そういった適性よりも大事なのが、心理的な負担であるように思います

ライアンはこれまでに規律の厳しい軍隊に所属していて、それなりの訓練を受けてきました

時には上官からの厳しい仕打ち、理不尽に思えることに耐えてきたのでしょう

そんな彼が「取引先の横柄な態度」にブチ切れるのですが、おそらくは「相手から自分に対するリスペクトを感じないから」なのだと思います

でも、仕事関係や人間関係において、尊敬を得るまでには相当な時間を要します

なので、当初は立場の差による心理的抑圧というものは少なからず起きてしまいます

 

営業職に就いたことがある人ならわかると思いますが、あの程度でキレていては営業は務まらないのですね

規律が存在するのは組織内だけのもので、対外的なところだと、組織同士のパワーバランスによって、末端の扱いが変わってきます

今回は顧客の窓口に営業マンが挨拶に行くという構図で、しかも社会的な慣習というものを無視しているので、あのような対応になるのは無理がないように思います

このあたりは営業に関わる際に「社内教育」が成されるレベルのことで、雇用側にも問題があるように思えました

 

結局のところ、ライアン自身にどのような職業適性があるのかはわかりません

彼は特殊部隊の狙撃手として活躍してきたので、一般的な職業に適性があるとは思えないのですね

なので、彼の技能を活かせる場面は限られていて、軍隊が無理なら、警備会社などのフィジカルを活かせる場所でないと難しいと思います

彼がそれをしないのは、家庭を離れていたから妻が亡くなったと考えているからで、できるだけ息子のそばにいなければならないと考えたからだと思います

 


勝手にスクリプトドクター

 

本作のタイトルは『Transfusion』で、「輸血」という意味があります

妻ジュスティーヌと息子ビリーの血液型が特殊で、劇中では「黄金の血」と評されていました

ライアンの血液型は妻子のものとは違うので、いわゆる「Rh-」の型だったのだと思います

この「Rh-(Rh陰性)」は、A型で500人に1人、O型で670人に1人、B型で1000人に1人、AB型で2000人に1人とされています

ちなみに最も珍しい血液型は「Rhnull型」というもので、61種類あるRh抗原を一つも持たない方で、世界で43人しかいないとされていて、1億数千人に1人という確率で、O型のRhnullだと、誰にでも輸血できる「黄金の血液」と呼ばれています

 

映画では、この血液型の希少性ゆえに「輸血できるのが妻か子供かどちらかだけ」という状況になっていました

それゆえにライアンは「どちらかを選べ」と言われていて、「脳に損傷があって後遺症が残る妻」と「脳は無事で外傷がひどい息子」という選択肢を突きつけられます

ライアンは息子を生かすことを決めますが、その決断に対して息子にうまく説明できておらず、2人の間に軋轢が生まれていることになります

物語は、この選択がメインであり、そこでどのように関係が壊れて修復したのかを描く必要がありました

 

本作は、旧友ジョニーとの再会から、ヤバい展開になっていく様子を描いているのですが、その過程で「過去の選択を想起する」という形式になっています

なので、なぜライアンは息子と仲が悪いのかとか、そういった彼の背景にあるものがミステリー要素になっているのですね

動いていく物語(目の前のヤバい橋)と、それに至る経緯(過去の選択)というものが同時に動くことになっていて、これが非常に展開を遅くさせている要因になっています

 

これらをシンプルにまとめるとするならば、関係が悪い親子の日常を描き(起)、ジョニーとの再会で展開し(承)、過去に囚われて集中できない危機を描き(転)、ミッションをクリアする中で親子の諍いが解ける(結)という流れになります

双方があまり会話をしない中で生じた疑念というものが膨れ上がっていて、息子に対して「選択は両親の総意である」と伝える必要があるのですね

なので、ピンチに陥ったライアンが思い出すのは、「ビリーが生まれた時に交わした妻との約束」ということになります

これをビリーに伝えることによって、さらに希少な血液が母と息子を繋げている証であることを解くという流れになった方が良かったのではないでしょうか

 


120分で人生を少しだけ良くするヒント

 

本作は、希少な血液型の母と息子の危機に瀕して、その生存の選択を迫るというものになっていました

それ自体が設定に過ぎず、その後の展開に全く生かされていないのが難点で、ビリーが大怪我をして、輸血しなければならない状況に陥るということもないのが不思議でした

ライアンの過去の選択が「希少血液」が由来になっていて、現代パートでも同じような危機が訪れるというのは、物語上のお約束のようなものだと思います

なので、ライアンが何か悪いことに手を染めていることに気づいたビリーがそれに近づいてしまうというシークエンスが必要で、それによって、ライアンの父としての責任感というものが試される展開になると思います

 

映画は、そんなことはどうでも良い感じになっていて、なぜか元相棒のジョニーがジュスティーヌの事故相手に復讐を果たす展開があったりと、謎な展開の部分が多かったように思います

お金を得るためにマフィア(ドラッグの売人)の金をくすねたりする展開があるあるですが、あれだけ特殊部隊で経験を積んでいるのに作戦が疎か過ぎて引いてしまいます

ライアンも中途半端に手伝うことになっていますが、彼らの特殊技能を考えれば、もっと緻密な計画で、もっと大きな目標に向かって闇に落ちるという方がしっくりくると思います

そんな中でビリーが巻き込まれることになり、その代償を背負うことになると言えるでしょう

 

バッドエンドの展開だと、ビリーが流れ弾などに当たって大怪我をして、輸血をしようにもできない中で、見殺しにしてしまうというものでしょう

親として何もできず、過去に囚われ過ぎたことで日常が崩壊し、大切な息子も失ってしまう

ここまで悲劇的にするのを躊躇うなら、思いもよらぬ相手が同じ血液型で救われる、というものになります

その場合に誰を選定するかは難しいところですが、本作をそこまでいじらないのであれば、営業先でトラブルを起こした相手とか、高校生の同級生とかになるのかなと思います

あまり近いところで因果を絡めると陳腐になるので、本作のテイストだと悲劇的なバッドエンドになって、ライアンが絶望するエンドの方が印象的だったように思えました

 


■関連リンク

映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)

https://eiga.com/movie/101018/review/03824081/

 

公式HP:

https://klockworx.com/movies/transfusion/

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投稿者 Hiroshi_Takata

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