■いずれ卒業するとしても、体験はいつまでも色褪せない
Contents
■オススメ度
ちょっとおバカなバイオレンス映画が好きな人(★★★)
ちょっとお下品な映画がOKな人(★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2023.2.3(TOHOシネマズ二条)
■映画情報
原題:Violent Night
情報:2022年、アメリカ、112分、R15+
ジャンル:ある富豪の家に紛れ込んだサンタクロースが自分を信じる子どものために戦うアクション&バイオレンス映画
監督:トミー・ウィルコラ
脚本:パトリック・ケイシー&ジョシュ・ミラー
キャスト:
デビッド・ハーバー/David Harbour(サンタクロース:酔っぱらってある富豪の家に紛れ込むサンタクロース)
ジョン・レグザイモ/John Leguizamo(スクルージ/ジム・マルティネス:サンタクロースを忌み嫌う強盗犯)
アレックス・ハッセル/Alex Hassell(ジェイソン・ライトストーン:富豪の長男)
アレクシス・ラウダー/Alexis Louder(リンダ:ジェイソンの妻)
レア・ブレイディ/Leah Brady(トゥルーディ:ジェイソンの娘、サンタクロースを信じている7歳)
ビバリー・ダンジェロ/Beverly D‘Angelo(ガートルード:ジェイソンとアルバの母、大富豪)
エディ・パターソン/Edi Patterson(アルバ・ライトストーン:ジェイソンの妹)
アレクサンダー・エリオット/Alexander Eliiot(バート:アルバの息子、YouTuber)
カム・ジガンディ/Cam Gigandet(モーガン・スティール:アルバの恋人、アクションスター)
André Eriksen(ギンガー・ブレッド:執事のふりをしたスクルージの仲間)
Brendan Fletcher(クランプス:イカれた殺人狂のスクルージの仲間)
Mitra Suri(キャンディ・ケイン:紅一点のスクルージの仲間)
Can Aydin(フロスティ:スクルージの仲間、お星様で燃える男)
Phong Giang(ティンセル:スクルージの仲間、氷の氷柱とダンスする男)
Finn McCager Higgins(ジングル:スクルージの仲間)
Raw Clements-Willis(ペパーミント:スクルージの仲間)
Stephanie Sy(シュガー・プリム:スクルージの仲間、金庫破り担当)
Mike Dopud(ソープ隊長:ガートルードが所有する殺人部隊のリーダー)
Robert Borges(ライトストーン家の門番)
Marina Stephenson Kerr(バーの主人)
John B. Lowe(サンタに酒を奢るおっさん)
■映画の舞台
アメリカ:
コネチカット州グリニッジ
https://maps.app.goo.gl/fkM3bAvqZ5bYBjmd9?g_st=ic
ロケ地:
カナダ:マニトバ州
Winnipeg/ウィニペグ
https://maps.app.goo.gl/3MUCyPMHmUHY5YbZ9?g_st=ic
■簡単なあらすじ
アメリカのコネチカット州グリニッジに住む富豪の長男ジェイソンは、クリスマスのために母ガートルードの邸宅にお邪魔することになった
妻リンダとは不仲になっていて、両親の関係を7歳のトゥルーディは心配していた
その日、ジェイソンの他にも妹のアルバとその息子バートも来る予定で、アルバは恋人のモーガンも一緒に連れてきた
屋敷は厳戒態勢で警護がついていて、それぞれは緊張感のある時間を過ごしている
そんな彼らの邸宅にバーで酔っ払ったサンタクロースがやってくる
煙突から2階に入ったサンタクロースは、そこで眠ってしまうものの、銃声が鳴り響いて覚醒する
そして、銃声に驚いたトナカイたちはそれを合図と思ってどこかへ行ってしまった
サンタクロースは恐る恐る下の階を覗き込むと、そこには武装した集団がいて、邸宅の家族が人質になっていることがわかる
そして、サンタクロースは見回りにきた犯人の一味と交戦することになったのである
テーマ:良い子のためにしてあげること
裏テーマ:信じたゆえに燃え上がる憎悪
■ひとこと感想
サンタクロースが暴れると言う情報だけを入手して、なんで2月にクリスマス映画なんだ?と思いながら参戦
クリスマスより寒い天候に恵まれたせいか、さほど違和感がなかったと思います
映画は迷い込んだ屋敷の中に自分を信じる少女がいて、彼女を助けるためにサンタクロースが奮起するのですが、まさかの肉弾戦&そのへんの不道具で戦うと言うアクションコメディに仕上がっていました
おそらく続編がありそうな感じで、数百年前の回顧とか、1100年続いた夫婦生活みたいなフリがありましたね
中身はスッカスカですが、コミカルでグロい映画がOKなら楽しめるかもしれません
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
サンタクロースが実在するかどうかはわかりませんが、その実証不能なおとぎ話が実際にあったら、と言うテイストで描かれています
なので、信じている子どももいれば、信じていたけど裏切られた過去を持つ男もいるし、実際に遭遇したことで信じていく人々もいたりします
映画のテーマは、かつて良い子だった子どもたちが大人になって悪者になってしまうのですが、幼少期のトラウマがあったとしても手段が結構悪烈だなあと思います
コードネームで呼び合うバカっぽさから、倒され方がギャグになっていて、随所に下品なネタが挿入されています
サンタクロースが出てくる映画なのに子どもには見せられない内容になっていて、「R15+」は納得のレートでしょうか
一応の対象年齢は「サンタクロースを信じなくなった年頃」と「その年頃の子どもを持つ親」と言ったところでしょうが、子どもに関しては「その層には見せられない内容」になっています
また、教育には悪いと思うので、親子連れが見ても「子どもの質問」に苦慮してしまうかもしれません
■サンタクロースとは何者か
サンタクロースと言えば、「屋根裏から侵入してくる怪しいお爺さん」で、年齢の割に運動神経が良いことで知られています
移動はもっぱらトナカイで、トナカイそれぞれに名前がついていて、それは1823年のクレメント・クラーク・ムーア(Clement Clarke Moore)が発表した子ども向けの詩『クリスマスのまえのばん(A Visit from St. Nicholas)』とされています
8頭のトナカイは「ダッシャー、ダンサー、プランサー、ヴィクセン、コメット、キューピッド、ドナー、ブリッツェン」で、映画内でもサンタクロースはその呼び名を使っていました
サンタクリースの起源は諸説あり、「聖ニコラス」と言うキリスト教の司教である説が有力で、彼が活躍していた時代は270年から352年ぐらいとされています
彼が最初に行ったのは、敬虔で貧しいキリスト教徒の3人の娘に対し、売春婦に鳴る必要がないように持参金を送ったと言う伝承があります
ヨーロッパ各地で同じような伝承はあり、そのほとんどが赤と白を基調とした「もふもふのローブ」みたいな格好をしていますね
現代のサンタクロースの姿は、聖ニコラス、イギリスのサンタクロース、オランダのサンタクロースなどの民間伝承が基になっています
映画の中で挿入される回顧録では「戦士のようなサンタクロース」が登場し、それは「Nicomund the Red」と自身で呼んでいましたね
これの由来は映画では明かされませんでしたが、色んなレビューを散策すると、「Erik the Red」と言う「赤毛のエイリーク」と言うものが見つかりました
950年から1000年頃のノルウェー&アイスランドの首領で、エイリーク・ソルヴァルズソン(Eirikr Poravaldsson)と言います
彼はヨーロッパ人として初めてグリーンランドに入植した人物で、あごひげが赤いことからそう呼ばれています
映画内で、サンタクロースが「妻と1000年連れ添った」と言うセリフがあり、エイリークが生きていた時代からちょうど1000年ぐらい経っているところも「もしかしたら」を匂わせているのかもしれません
ちなみにサンタクロースが愛用していた武器はスカル・クラッシャーと言う武器で、主にヴァイキングが使用していたものでした
そして、彼にはタトゥーが彫られているのですが、パンフレットによると「古代スカンジナビアのシンボル」とのことで、それぞれの印には意味があると書かれていました
あくまでも噂レベルの話なので、ネタ程度として書き残しておきます
■敵がスクルージを名乗る理由
敵であるスクルージですが、サンタのデジタル巻物には「ジミー・マルティネス」と書かれていたように記憶しています
「スクルージ(Ebenezer Scrooge)」は、1843年のチャールズ・ディケンズの小説『クリスマス・キャロル』の主人公で、「クリスマスを軽蔑する冷酷な男」と言うキャラクターになっています
なので、「クリスマスキャロル」を知っている人ならば、彼がスクルージと名乗った瞬間に、サンタクロースとの因縁があると勘づいたかもしれません
実際にスクルージことジミーは10歳の頃に貧しさを経験し、隣の家にはすべてが揃っていた事を妬んで「クリスマス」を恨んでいました
「クリスマスは人生を台無しにした」とまで言い、その恨みをサンタクロースにぶつけています
この時のサンタクロースは「プレゼントはあげられるけど、人生には関われない」と言います
それは裏を返せば「プレゼントをどう捉えるかは本人次第」であり、サンタの魔法の袋から出てくるプレゼントは、本人に今必要なものが出てくると言う逸話に由来があります
ちなみに「クリスマスキャロル」は、3つの精霊がスクリージを正しく導くと言う物語ですね
もっと詳しく知りたい人は、「クリスマス・キャロル」を読んで見てください
本作のサンタとは違うアプローチでスクルージが変化していくのを見ることができますよ
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
本作はこれまでにないサンタクロース像を作ると言うことで、次作を仄めかしながら、かつて戦士だったと言う設定が加味されています
戦士がいかにしてサンタクロースになったのかと言うのが、おそらくは次作以降で明かされるのでしょう
これまでのサンタクロースのイメージは「優しそうなお爺さん」なのですが、優しさと行動に乖離のあるキャラクターを作るのは面白い試みですね
ハンマーを振り回すサンタクロースのビジュアルは斬新で、その凶暴性は意外とコントロールの効くものだったと言えます
キャラクター造形の醍醐味は「何と何を掛け合わせるか」が決め手となっていて、本作のように既存のキャラクターにトッピングをすると言う手法は昔からあります
でも、これらの改変は緻密に行わないと炎上案件になってしまうのですね
本作の場合は、子どもと話せる本当のサンタクロースで、自分を信じてくれる存在ゆえに助けようと行動を変えていきます
この行動の前提として、冒頭のバーでのやぐされシーンがあって、サンタクロースが「子どもたちに幻滅している」と言うメッセージを訴求していました
そんなサンタクロースが考えを改めるために登場したのがサンタを信じているトゥルーディで、サンタ自身も彼女が大人になってもずっと信じてくれるかはわからないと思っています
でも、この映画では、「サンタはいない」と断言するジェイソンを登場させ、彼が実際にサンタクロースを見たことで考えを変えるのですね
これがトゥルーディを肯定する動きになっていて、大人の中では「聞いていた話とは随分と違うけど」と言う枕詞がつく流れになっていました
実際に目の前にサンタクロースが来たとして、何を見れば信じるかと言う命題があると思います
本作では「袋からプレゼントを取り出す」「煙突の中に瞬間移動」「かつて贈ったものを覚えている」と言う3つの要素を信用の材料にしていました
これらは「大人も聞いたことがあるサンタクロース像」に一致するもので、子どもだけでなく大人の認識も変えていくところが本作の魅力であると思います
そして、かつての思考を変えていくのが、親と言う存在に固執し、母の影響下から逃れられずにいたジェイソンと言うキャラクターだったことが説得力を増しています
ジェイソンとガートルードの母子関係は良好とは言えず、心が荒む方向へと進みます
妻のリンダはその状況に嫌気を差していて、夫が母離れできていないことで距離を置こうとしていました
そして、トゥルーディの欲しいものというのが、両親の不仲の解消であって、それは「人生には関われないサンタ」が与えられないものでした
物語とキャラクターの親和性、変化、テーマ性などにおいて、かなり細かな設定がされていて、その動きが自然なものになっています
そう言った意味において、シナリオを学ぶ上での良質な教科書のような作品だったのかな、と思いました
■関連リンク
Yahoo!映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://movies.yahoo.co.jp/movie/385960/review/aa6becb2-3224-4d06-874b-7d20968a6319/
公式HP:
http://www.universalpictures.jp/micro/violentnight