■愛を確かめるために傷を増やすよりも、愛の仕組みを学んで理解した方が良いかもしれません


■オススメ度

 

ほっこり系ラブロマンス映画が好きな人(★★★)

愛と契約について考えたい人(★★★)

 


■公式予告編

鑑賞日:2023.12.21(アップリンク京都)


■映画情報

 

原題What’s Love Got to Do with It?(愛と何が関係あるの?)

情報:2022年、イギリス、108分、G

ジャンル幼馴染の結婚のドキュメンタリーを作ることになった若手ディレクターを描いた恋愛映画

 

監督シェカール・カプール

脚本ジェマイマ・カーン

 

キャスト:

リリー・ジェームズ/Lily James(ゾーイ・スティーブンソン:ドキュメンタリー映画の監督、イギリス人)

シャザド・ラティフ/Shazad Latif(カズ・カーン:ゾーイの幼馴染、イギリス系パキスタン人の青年、腫瘍科医)

 

Mim Shaikh(ファルーク・カーン:カズの弟)

イマン・ブージュロウア/Iman Boujelouah(ヤスミン・カーン:ファルークの妻)

パキザ・ベイグ/Pakiza Baig(ナニ・ジャン・カーン:カズの祖母)

ジェフ・ミルザ/Jeff Mirza(ザヒド・カーン:カズの父)

シャバナ・アズミ/Shabana Azmi(アイシャ・カーン:カズの母)

 

Mariam Haque(ジャミラ・レヴィ:異教徒結婚をしたカズの妹)

Michael Marcus(デヴィッド・レヴィ:ジャミラの夫)

Daniyai Malik&Gabriel Malik(ジャミラの赤ん坊)

 

エマ・トンプソン/Emma Thompson(キャス・スティーブンソン:ゾーイの母)

 

Alexander Owen(オリー:映画プロデューサー)

Ben Ashenden(サム:映画プロデューサー)

 

アシム・チョードリー/Asim Chaudhry(モー:結婚相談所の仲介人)

 

アリス・オア=ユーイング/Alice Orr-Ewing(ヘレナ:ゾーイの親友)

Peter Sandys-Clarke(ハリー:ヘレナの夫)

Grace Askew(リリー:ヘレナの娘)

Lolly Askew(モード:ヘレナの娘)

 

サジャル・アリー/Sajal Ali(マイムーナ:カズの婚約相手)

Shaheen Khan(マイムーナの母)

Haqi Ali(マイムーナの父)

Ravi Aujla(ユセフ:マイムーナの兄)

Taj Atwal(スマイラ:マイムーナの妹)

Wasim Zakir(アリ:マイムーナの妹)

Shannon Shanthakumar(ハジラ・カーン:マイムーナの親族)

Naveed Khan(イマム:マイムーナの甥っ子)

 

オリバー・クリス/Oliver Chris(ジェームズ:獣医)

 

Luke McQueen(ピストルを撃つ格好をする男性、ゾーイの元カレ)

Dan Jarratt-Cook(喋りまくる男性、ゾーイの元カレ)

Joshua Collins(真面目な男性、結婚を申し込まれたゾーイの元カレ)

 

Michael Karim(婚活パーティの隣の男)

Hannah Khalique-Brown(ハンナ:婚活パーティーの参加女性)

Khalique-Brown(ヒジャブを被った可愛い女性、参加者)

Azan Ahmed(アラブの服を着た男、参加者)

Aaliyah Gohir(婚活パーティーの参加者)

 

Sindhu Vee(不妊治療の医師)

Graham Dickson(既婚男性、行きずりの相手)

 

Munir Khairdin(ラホールの仕立て屋)

Adil Akram(ラホールのアクセサリー店の店主)

Faraz M. Khan(ラホールのテラスカフェのウェイター)

 

Nosheen Phoenix(プッチ:マイムーナの友人)

Nikkita Chadha(ベイビー:マイムーナの友人)

Katie Anjuli Singh(ビンキー:マイムーナの友人)

Jamal Zulfiqar(タキ:マイムーナの友人、マリファナ男)

 

Rahat Fateh Ali Khan(スーフィー音楽の歌手、メインボーカル)

Wajahat Ali Khan(スーフィー音楽の歌手)

Farhat Ali(スーフィー音楽の歌手)

Ghulam Abbas(スーフィー音楽の歌手)

Ali Raza(スーフィー音楽の歌手)

Naveed Husnain(スーフィー音楽の歌手)

Muhammed Asif Ali(スーフィー音楽の歌手)

Rashid Ali(スーフィー音楽の歌手)

 


■映画の舞台

 

イギリス:ロンドン

 

パキスタン:バンジャジーブ

ラホール

https://maps.app.goo.gl/FJHdBbVPPk3YF6Es9

 

ロケ地:

イギリス:ロンドン

 

イギリス:

サフィーク/Suffolk

https://maps.app.goo.gl/3BYkZtEAcMn2MnZZA

 

オックスフォードシャー/Oxfordshire

https://maps.app.goo.gl/4zBJEhML529KuPkV8

 

パキスタン:

ラホール/Lahore

 


■簡単なあらすじ

 

ドキュメンタリーの映画監督として受賞経験もあるゾーイは、幼馴染の隣人カズと一緒にツリーハウスにて時間を過ごすのが習慣になっていた

カズはムスリムで戒律に厳しい家系に育ち、母からの勧めとして見合い結婚をすることになった

そこでゾーイは、「愛のない結婚」というテーマで「愛の契約」についてのドキュメンタリーを撮ろうと考え始める

 

最初は拒否していたカズだったが、ゾーイのしつこさに負けて撮影を許可する

カズの家族たちもインタビューに応じ、少しずつフィルムを重ねていった

初めは相手も決まっていない状況だったが、婚活パーティーやら、親族のツテなど駆使し、ようやく相手が決まる

 

お相手のマイムーナも両親の勧めで見合い結婚を進めていて、人権弁護士を目指す聡明な女性だった

スカイプを通じてお互いを語り合い、そして婚約へと結びつく

だが、二人の結婚の過程を傍で見てきたゾーイは、これで良いのかと悩み始めるのである

 

テーマ:結婚は契約?

裏テーマ:愛が先か、契約が先か

 


■ひとこと感想

 

いわゆる恋愛感情がなかったはずの幼馴染に色恋沙汰が舞い込むという内容で、最終的にはくっつくんだろうなあというのが約束されています

ゾーイがドキュメンタリーを作る中で、自分とは真逆の価値観に押しつぶされ、それで良いのかと自問自答していきます

イギリスの離婚率の高さを「恋愛結婚だから」と結びつけるようなシーンもありますが、結局のところ、お見合い結婚だと「演技」になって、実際には破綻している関係が多いとも読み取れてしまいます

 

映画では、物心ついた頃から一緒に遊んできた仲ですが、そのまま恋愛にいくことなく、ニアミスを繰り返して今日に至るという感じになっていました

異性を感じてきたのかどうかは分かりませんが、年相応のことはあったようで、それでも進む道が違ったことで、その接点はなかったように描かれています

 

パキスタンとイギリスと価値観の違いもあり、隣人だけど国境が存在するのですが、どちらが正解とかはないのですね

子どもを思う気持ちは同じで、それが束縛となるか自由となるかは親次第という感じになっていました

映画では「結婚に愛は必要か?」ということをテーマにしていますが、恋愛結婚の方にシフトしていく流れになっていたように思えます

 


↓ここからネタバレ↓

ネタバレしたくない人は読むのをやめてね


ネタバレ感想

 

どう考えても元鞘に収まるんだろうなあという感じなのですが、元鞘でもなかったのはビックリしてしまいます

ファーストキスの相手ということで、それがゾーイの枷になっていて、クズ男ばかり選ぶのは当てつけのようにも思えてきます

ゾーイとの関係をカズ一家が好意的に受け止めたかどうかは分かりませんが、宗教観の違いから、異教徒との結婚は考えられないものだったと言えます

 

ドキュメンタリーを作る中で、結婚について考えていくゾーイですが、とんとん拍子で進んでいく結婚話に、急速に離れていく哀愁というものを感じていたのでしょう

いわゆる「喪失感」が本当の気持ちに気づかせるというもので、二人を阻んでいたものが目に見えてくるという内容になっています

 

家族のために結婚を決めても、本人が幸せかどうかというところが重要で、そこに幸せがないと、母親の愛は一方通行になっていることになります

ラストでは、ゾーイはカーン一家のタブーにふれていきますが、愛ゆえに家族を悲しませたことを知ることで、子どもの幸せとは何かを考えるようになっていきます

それが理解に繋がっていくのですが、母の考える幸福感というものは、時代を経て変化するものなのだと思い知らされます

 


結婚とは契約なのか

 

結婚とは、配偶者と呼ばれる人々の間の「文化的、もしくは法的に認められた繋がり」のことを言います

配偶者同士とその子どもとの間に「権利と義務」が生じることになりますが、定義に関しては、文化や宗教、時間の経過によって変わるものとされています

結婚は「婚姻」と呼ばれ、これは配偶関係を締結するという意味になり、これを契約と考えるのが一般的であると言えます

 

昔の結婚は、教会や寺社などの宗教者または地域の権力者が秘跡や契約として許可する「宗教婚(儀式婚)」が主流でしたが、現在の主権国家体制の国家では、管轄する政府による「法律婚(民事婚)」というものが基本になってきます

これによって、主権国家の保護を受けることになるというのが現在の結婚で、この異性間だった契約を拡充しようというのが現在の流れになっています

 

ちなみに映画で言及される離婚率ですが、1000人あたりの離婚数は日本が1.7でアメリカが3.1、イギリスは2.05となっています

恋愛結婚の離婚率は40%、お見合い結婚の離婚率は10%などと言われていますが、離婚していない=夫婦関係が良好ということはないので、このあたりの数字に惑わされるのはどうかと思ってしまいます

 


愛情が覚める理由

 

恋愛は熱しやすく冷めやすいと言われますが、これは恋愛における脳の仕組みを理解しているとわかると思います

恋をするとフェニルエチルアミン(phenethylamine=PEA)という脳内物質が分泌されます

PEAはドーパミンの濃度を上昇させる働きがあり、これが恋愛状態の快楽を司っているとされています

これらは、チョコレートなどを微生物発酵した際にも多く見られるものとされています

 

このPEAは一時的に脳を麻痺させる事になるのですが、このPEAの分泌は期間限定であると考えられています

短くて3ヶ月、長くても3年という研究があり、特に3ヶ月のサイクルで「倦怠期」と呼ばれるものが訪れるのですね

人が誰かに興味を持ち、ある程度のことを知ってしまうのも3ヶ月程度で、そこから先には新たな刺激が必要になってきます

謎が多い人ほど興味を失わない理屈にも近く、逆に言えば「3ヶ月程度接していないとその先も続くかわからない」とも考えられます

 

この脳内物質の作用を超えるには、「PEAがない状態でも過ごせるか」というところにかかっていて、それは「二人の関係が生活に根付いているか」が試される事になります

何かしらの刺激がなくても、一緒にいても苦痛ではなく、何かしらの出来事で再度PEAの放出がなされる

これは二つの個体が持つ根幹の特性にも関わっていて、3ヶ月の間に波長を重ねることができれば問題ないのかなと考えられます

その方法は簡単なものではなく、「一緒にいてどうか」という「相性」の問題になってくるので、試してみるより他はないのかもしれません

 


120分で人生を少しだけ良くするヒント

 

本作は、幼馴染の婚活から結婚までのドキュメンタリーを撮る映画で、その過程で「元より恋愛感情が芽生えた瞬間がなかった」と感じるように作られています

それでも「ファーストキス」の相手にはなっていて、その後に付き合うなどの関係には進まなかったのは不思議でした

後日談のような形で、「ファーストキスを覚えているか否か」がゾーイの中で大きな問題になっていて、それはカズの方も同じだったことがわかります

 

二人の間でなぜか拗れた「ファーストキス後」ですが、考えられるのは、それまで友人として普通に接してきたことが、「一時的な興味本位のキス」で無くしたくないと考えたからなのかなと思います

若い二人がツリーハウスに二人きりという状況で、恋愛や性的なものに興味を持ち始めるのですが、その際に「過去を壊しても突き進めるか」という命題があるのですね

それをお互いが大切にしたいと考えた結果、何も起こさないまま経過し、3ヶ月が過ぎてしまったのではないでしょうか

 

その後、気まずさを起こさないようにそれぞれは自制し、それぞれの相手を見つけていくことになります

カズは大人になるにつれて、宗教がもつ結婚観と親との関係を学び、それがやがて両親や兄弟と同じ選択へと向かいます

ゾーイの方は、あの時に感じた高揚感を再度探すために、色んな男との時間を考えますが、総じて「クズ男ばかり」に執着していきました

このクズ男専門になっているのは、強い刺激を求めているからということと、長続きしないように選んでいるという二つの側面があると思います

 

彼女にその気があるならば、誰かしらと結ばれていたかもしれませんが、告白をされた相手を生理的に無理という感じに突き離していたのは、そうなるイメージをカズとの間に持っていたことの表れであると考えられます

ゴールを目前にして、本来の理想のゴールとは程遠いところに来てしまい、それが一番の拒絶で、理由なきものというのが特徴的だったように思えました

観客目線で観ると、誰もがこの二人が好き合っていることを知っていて、カズの母アイシャもツリーハウスの存在の意味をそう感じていました

でも、二人がその方向に向かわなかったのは宗教観としきたりがあって、ゾーイが改宗しない限り、家族間の結びつきである結婚へと向かうことができません

 

最終的に、ジャミラの結婚を家族が許すことによって、そのハードルというものがなくなるのですが、映画にジャミラを登場させたことは、ゾーイの中にあったわだかまりの代弁のようなものだったと言えます

問題提起として、このビデオでカズの家族が動くのかどうかという賭けに出ていて、それが伝わったと言えるのではないでしょうか

最後の祝祭には「家族」が揃うことが条件となっていて、それはカズ流のプロポーズのように思えます

あの場面にジャミラだけではなく、ゾーイとキャスを呼んだのは、これまでの「家族」という意味合いとは違っていて、その覚悟がカズにできたのかなと思いました

 


■関連リンク

映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)

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公式HP:

https://wl-movie.jp/

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投稿者 Hiroshi_Takata

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