■願いが叶う混沌と、管理された静寂と、どちらの方が物語として支持されていくのだろうか
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■オススメ度
ディズニー映画が好きな人(★★★)
■公式予告編
https://youtu.be/QSRgf2Q08SU?si=Rf_wfKKwuL0kexKf
鑑賞日:2023.12.15(イオンシネマ京都桂川)
■映画情報
原題:Wish
情報:2023年、アメリカ、95分、G
ジャンル:強欲な王に奪われた願いを奪い返す人々を描いたヒューマンドラマ
監督:クリス・バック&ファウン・ヴィーランスンソーン
脚本:ジェニファー・リー&アリソン・ムーア
キャスト:
アリアナ・デボーズ/Ariana DeBose(アーシャ:マグニフィコ王の従者志願の少女、17歳のツアーリスト)
クリス・パイン/Chris Pine(マグニフィコ王:ロサスを支配する王)
アンジェリーク・カブラル/Angelique Cabral(アマヤ王妃:マグニフィコ王の妻)
アラン・デュディック/Alan Tudyk(バレンティノ:アーシャのペットの子やぎ)
ヴィクター・ガーバー/Victor Garber(サバ/サビーナ:アーシャの祖父)
ナターシャ・ロスウェル/Natasha Rothwell(サキーナ:アーシャの母)
ジェニファー・久御山/Jennifer Kumiyama(ダリア:アーシャの一番の親友、パン屋の娘、モチーフは「白雪姫のと七人の小人」のドク)
ハーヴィー・ギレン/Harvey Guillén(ガーボ:いつも不機嫌な顔をしている少年、モチーフは「白雪姫と七人の小人」のグランピー)
ニコ・ヴァーガス/Niko Vargas(ハル:楽天的な少女、モチーフは「白雪姫と七人の小人」のハッピー)
エヴァン・ピーターズ/Evan Peters(サイモン:一足早く18歳になった無気力な青年、モチーフは「白雪姫と七人の小人」のスリーピー)
ラミー・ユセフ/Ramy Youssef(サフィ:アレルギー持ちのニワトリ好きの少年、モチーフは「白雪姫と七人の小人」のスニージー)
ジョン・ルドニツスキー/Jon Rudnitsky(ダリオ:ぼんやりしている心優しい少年、モチーフは「白雪姫と七人の小人」のドーピー)
デラ・サバ/Della Saba(バジーマ:内気で秘密を持っていた少女、モチーフは「白雪姫と七人の小人」のバシュフル)
Keone Young(登山家 /背の高い男/護衛)
Lucas Sigler(ウサギ/ベイビーキノコ)
Holland Watkins(ネズミ/登山家の妻)
Woody Buck(雄鹿/護衛/市民)
Efé(船長/愉快な男)
Nicole Lynn Evans(登山家の妻/母親)
Heather Matarazzo(空飛びそうな女性)
Nasim Pedrad(サニア:?)
Abraham Sigler(少年)
【日本語吹替版】
生田絵梨花(アーシャ)
福山雅治(マグニフィカ王)
檀れい(アマヤ王妃)
山寺宏一(バレンティーノ)
鹿賀丈史(サビーノ)
大平あひる(ダリア)
落合福嗣(サイモン)
青野紗穂(ハル)
竹達彩奈(バジーマ)
宮里駿(ダリオ)
蒼井翔太(ガーボ)
岡本信彦(サフィ)
■映画の舞台
魔法によって願いが保護されている王国「ロサス」
■簡単なあらすじ
17歳のアーシャは、マグニフィカ王の従者になることを夢見ていた
ある日、王と面談をすることになったアーシャは、そこでこの国の秘密を知ることになった
王は国民の願いを王宮に保護していたが、セレモニーで叶えられる夢は王にとって都合の良いものだけだった
アーシャは祖父の夢が叶えられないと知り、それを伝えるものの、その行為が却って祖父を傷つけてしまう
失意のアーシャは歌を奏で、その願いの強さはスターを呼び起こしてしまう
スターは飼いヤギのバレンティノを喋らせたり、森の植物を復活させたりしていた
だが、裏切り者によってアーシャはお尋ね者となってしまう
それでもアーシャは、王に囚われているみんなの願いを解放しようと作戦を練る
そして、ダリオたちと共に願い奪還のための作戦を開始するのであった
テーマ:願い続けることの大切さ
裏テーマ:心の中にあるスター
■ひとこと感想
ディズニー100周年ということで、記念的な意味合いが強い作品になっていました
白雪姫と七人の小人をモチーフにしたアーシャの友達が登場したり、スターそのものは「星に願いを」と一緒に登場するディズニーのオープニングそのものでしたね
この辺りの関連を楽しめるとOKかなと思います
アーシャが白雪姫をモチーフにしているかは分かりませんが、ペットの子やぎと共に戦っていく流れはコミカル度が高めになっていました
スターはどこかで見たことがあるような造形ではありますが。ディズニーっぽくない感じはしましたね
物語は、いわゆる悪政に対抗する市民という感じになっていましたね
テーマ曲でスターが登場し、そのリプライズが登場するシーンが本作のピークになっていましたね
このシーンのために中盤の中弛みを耐えられるかどうかという感じで、個人的には途中で寝落ちしてしまいそうなのを耐える感じになっていましたね
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
映画は、ディズニーの記念作品ということで、短編の方は「これまでのキャラが勢揃いして、記念写真を撮る」というものになっていました
懐かしいキャラも、見覚えのないキャラもいて、ちゃっかりとアーシャもいましたね
ディズニー映画は大体見ていますが、昨今のポリコレ事情を考えると、アーシャは現代的な白雪姫ということになるのだと思います
映画は、庶民が一致団結して悪政を潰すという感じで、アーシャの歌声に感化された国民が立ち上がって歌を歌います
いわゆる「民衆の歌」という感じの演出で、それによってスターの力が増大し、マグニフィカ王を打ち破ることになりました
最終的には女王陛下が統治する国になり、女王お抱えの魔法使いになるのがアーシャという構図になるのかなと思います
この辺りもガッツリとポリコレのような感じになっていますが、そこまで押し付けがましい感じにはなっていませんでした
■願いとは何か
本作では、マグニフィカ王が国民の願いを集めて保護しているという設定で、記念日にはその中から誰かの願いを叶えるという流れになっていました
その願いはマグニフィカ王にとって脅威とならないものが選ばれ、ほとんどの願いというものは叶えられないものだったことが後に判明します
それらは「生きる活力」のようなもので、自分で抱えている間も、王様に預けて叶うのを待つ間も、自分の心を支えるものとなっています
映画では、アーシャの祖父サビーナにも願いがあり、彼女はそれが叶わないことを告げますが、その際にサビーナは「叶わないことを何故言うのか」と怒りをあらわにしていました
王様に預けている間は「叶うかもしれない」と思えるものですが、それが叶わないとわかっても、信じている間は持ち続けられるものでした
王様はサビーナの願いを叶えないと言いますが、その心変わりがどこで起こるかもわかりません
なので、叶わないと言われることは絶望を突きつけられることになり、それをアーシャから聞きたくなかったと言うのが本音になるのだと思います
王様に預けて叶えてもらうと言う他人任せの願いに価値があるかはわかりませんが、それが国の安定をもたらすことに繋がっていると言う表向きの理由はあります
それぐらい願いには強い力があり、王様はその力の強さを知っていたのですね
それゆえに「保護と言うの名の管理」を行うのですが、それはある種、国の統制としては理に適っていると考えられるものでしょう
でも、この共産主義的な考えでは国は成り立たないと言うのがメッセージになっていて、それぞれの願いは持ち主の元に戻り、そして「自分の力で叶える努力をする方向」に向かうと言うのが、この映画における「願いのあり方だった」と言えるのではないでしょうか
■スターを手に入れられない理由
スターは願いを叶える存在ですが、その力は「スターの後には願いが叶う」と言うもので、願いを持つ本人の意思とは無関係なところにありました
無差別に叶えられる願いというものは「神様の配慮」によって成されるものの、その偏りというものは、全ての人の願いが叶うまで発生し続けるものだと思います
人は、ひとつ願いが叶っても、もっと欲しがる存在であり、強欲のままにスターから力を享受したがるでしょう
最終的には、スターを管理し、平等性あるいは恣意的にコントロールする必要があり、スターの存在だけでは、王国の行末が変わることはありません
誰かがその管理能力を有しても、自分以外の願いに対する責任を持てないので、誰もが最終的には手放してしまうと思います
そうなると、それを管理できる存在に託されるというのが世の常であり、結局のところはマグニフィカ王の元に行っていたのでしょう
でも、この時の王様は「自分以上の能力」に恐れを感じ、それを排除する方向に向かいました
この時に動揺をみせ、先走ったために王様は方向を見誤ることになるのですが、これも世の常のように思えて来ます
絶対的な権力保持者としてのマグニフィカ王は、臆病で愚かで内向的な人間でした
それ故に、自分の地位を守ることを優先し、状況を見定められないまま醜態を晒していきます
また、目的を持ったアーシャがスターを保持することによって、さらなる恐怖が襲っていたことでしょう
最終的には裏切り者のサイモンをうまく利用しますが、秩序と混乱を冷静に乗り切っていれば、状況が変わったようにも思えます
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
本作は、ディズニー100周年ということで、白雪姫と七人の小人をモチーフにした「アーシャと友人」を設定しています
ディズニー映画の『白雪姫』は世界初のカラー長編アニメーション映画で、1937年に製作されています
この映画から86年目ということになり、本作はディズニーの原点に立ち返るものだと考えられます
物語をさらっとおさらいすると、白雪姫が継母の魔女にこき使われていて、魔女は「この世で一番美しいのは誰?」と聞くのが日課になっていました
ある日、鏡は「白雪姫が一番美しい」と行ってしまい、狩人に白雪姫を殺すように命じます
でも、哀れに思った狩人は白雪姫を逃し、彼女は森で7人の小人と出会います
白雪姫が生きていることを知った魔女は、毒リンゴを持って小人の森にいき、そこで老婆を招き入れたために、毒林檎の罠にハマってしまうのですね
小人たちは危険を察知して白雪姫の元に戻り、魔女を追撃し、落雷によって魔女は谷底へと落ちてしまいました
でも、時すでに遅く、白雪姫は毒リンゴを口にして息絶えていました
その後、白雪姫の恋人で、彼女を探していた王子が彼女の棺を見つけ出します
そして、王子の口付けによって、白雪姫は生き返るのでした
超有名なお話なので知らない人はいないと思いますが、この白雪姫の設定が本作に引用されていることは意味が大きいと思います
それは、これまでに白雪姫シンドロームをも生み出した女性像のアップデートになっていて、本作のアーシャには恋人の影もなく、異性に助けられることもありません
でも、鏡が言うように、「第三者的には認められている」と言う存在があり、それがそのまま「魔法使いになって王妃の従者になる」と言う流れへと向かっていきます
ディズニーが100周年でこの女性像を打ち出したと言うのは、今後のディズニーが描く女性像を象徴しているものでしょう
それを観客がどのように考えるかは分かりませんが、個人的には迷走に向かうのではないかと感じています
■関連リンク
映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
公式HP:
https://www.disney.co.jp/movie/wish