■恋愛に向かうための夜明けは、濃く深いほどに純粋さを保っていく
Contents
■オススメ度
キャストのファンの人(★★★)
スイーツ映画が好きな人(★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2023.9.6(TOHOシネマズ二条)
■映画情報
情報:2023年、日本、100分、G
ジャンル:マスク女子と画家志望の高校生を描いた恋愛映画
監督:酒井麻衣
脚本:イ・ナウォン&酒井麻衣
原作:汐見夏衛『夜が明けたら、いちばんに君に会いに行く(スターツ出版、2017年)』
キャスト:
白岩瑠姫(深川青磁:茜を嫌いと発言するクラスメイト)
久間田琳加(丹羽茜:優等生を演じる女子高生)
箭内夢菜(沙耶香:茜の友人)
今井隆文(担任)
上杉柊平(岡崎:美術教師)
吉田ウーロン太(丹羽隆:茜の継父、喫茶店「サン」の店主)
鶴田真由(丹羽恵子:茜の母)
佐藤恋和(丹羽玲奈:茜の異父妹)
乾らいむ(本多瑠美:クラスメイト)
蘓武星香(屋代日奈子:クラスメイト)
織部典成(長谷川亮太:クラスメイト)
大友一生(相田英樹:クラスメイト)
幹大(内藤貴則:クラスメイト)
南田夏光(クラスメイト)
瀬戸芭月(クラスメイト)
朝比奈沙杏(クラスメイト)
井口妃菜(クラスメイト)
佐藤日向子(クラスメイト)
飯塚純音(めぐ先輩)
佐藤峻輔(文化祭のスタッフ)
藤光竜大朗(放送部員)
■映画の舞台
日本のどこかの地方都市(ロケ地は茨城県)
ロケ地:
茨城県:土浦市
茨城県立土浦産業技術専門学校
https://maps.app.goo.gl/LCFLr7Pfqpc6Un5j6?g_st=ic
東京都:国分寺市
カフェおきもと(喫茶サン)
https://maps.app.goo.gl/FxfpKnC293z2p4tA9?g_st=ic
栃木県:宇都宮市
宇都宮動物園
https://maps.app.goo.gl/ohNhBuNAAYCyQhub6?g_st=ic
東京都:渋谷区
White Balance
https://maps.app.goo.gl/bDh2RfuJo3ie9GVU9?g_st=ic
■簡単なあらすじ
ある時期を境にマスクを手放せなくなった高校2年生の茜は、初対面のクラスメイト青磁から「お前のことが嫌いだ」と言われてしまう
茜はいつも優等生のふりをしていて、学級委員を務めて内申を気にし、クラスメイトの顔色を窺い続けていた
それは家庭でも同じで、母の再婚相手とその間に生まれた妹との距離感を取りつつ、なんの問題もないように過ごしていた
ある日、授業の一環でグループのメンバーの良いところと悪いところを発表し合うことになった
そこで青磁と同じグループになった茜は、そつなく言葉を紡ぐものの、「俺の絵を見たこともないのに。そう言うところが嫌いなんだ」と念押しされてしまう
それからしばらく経った頃、茜は美術室の前を通りかかり、そこに飾られていた絵に心を奪われる
思わずマスクを外して絵に見入っていると、突然「俺の絵に感動したのか?」と青磁の声が響いた
青磁は茜を屋上に連れていき、彼のアトリエを披露する
そして、その日から、二人に妙な関係性が生まれてくるのであった
テーマ:心の解放
裏テーマ:愛する人と共有したいもの
■ひとこと感想
スイーツ系ラブコメで、学生生活の王道パターンの物語ですが、ビジュアライズが美しく、登場する絵の説得力が思った以上にありました
コロナ禍が題材なのかなと思いましたが、どうやらマスクをしているのは茜だけで、それも風邪を引いて登校した時に初めてつけたという感じになっていました
恋愛映画ではありますが、その障壁は意外なほど低く、それよりも茜が青春を取り戻す方にシフトしていましたね
優等生を演じているものの、それは本当の自分ではなく、マスクをしていることで本心が隠せると思っているところが若いなあと思ってしまいます
コロナ禍があったために設定がややこしい感じになっていますが、原作はコロナ禍以前に描かれているものなので、リアルが印象を変えてしまっていますね
現実がややこしさを加速させてしまっているので、いっそのこと「2015年、夏」みたいに「コロナ禍以前ですよ」を強調した方が良かったように思いました
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
恋愛映画としては、イケメン無罪の行動がたくさん出てきていて、「惚れてまうやろ」というシーンはたくさんありましたね
茜が青磁を思い出す流れが少々雑に感じてしまいますが、原作準拠なのかもしれません
そこまで印象が薄かったというのは残酷ではありますが、それでも好きなものは好きという感じになっていました
青磁としては、茜との恋愛よりも優先することがあって、それは「かつてヒーローだった茜」が戻ってくることでした
そして、ヒーローだからこそ、自分の迷いを断ち切ってくれるだろうと考えていたのですね
茜はその期待に応えることになりますが、同時に失恋を迎えるという感じになっています
エピローグは成人した二人の再会を描いていますが、それまでの数年間がどのような状況なのかわからないので蛇足っぽくも映ります
エンドロールで離れている時間を描いて、エンドロール後に再会を追加した方が良かったように思いました
■青磁が空を描く理由
青磁が描く絵のほとんどは「空」で、それは彼のアトリエが屋上にあるからだと思えます
でも実際には、絵の中に描かれるものは深層心理が投影されたもので、同じ空でも色使いなどによって、描かれている内容というのは違います
彼の物語上の設定は、小児の頃に癌を患い、現在はみなし寛解のような感じになっています
でも、癌というのはとても厄介なもので、目に見えない分、いつどこで再発をするのかは分かりません
彼が描く絵の多くはパステルカラーのような味わいで、境界線がぼやけたものになっています
美術スタッフが原作を再現したのか、映画の青磁のキャラクターを投影したのかはわかりません
おそらくは、原作本の表紙の感じだと「再現」なのだと思うのですが、そうだとしたら原作者の中にある青磁という人物像を映画は表していると言えます
境界線が曖昧な場合、それは共有や共鳴を欲しているという意味になり、それは自分からでも相手からでも、どちらからでもOKということだと思います
青磁はキツい言葉を茜に投げかけますが、それは彼の憤りやストレスが表現されているからであり、その原点となる欲求は茜と交わりたいということなのでしょう
彼女にあの時の自分を取り戻してもらうことで、青磁の望む関係へとシフトしていきます
その先にあるものが恋愛なのか友情なのかは分かりませんが、青磁サイドの感覚だと「尊敬を有する友情」なのかなと感じました
空というのは境界線のない世界で、流動的であり、普遍的なものであると言えます
彼が描く空の絵のテイストが似ているのは、彼の中にある空は「普遍性>流動性」というイメージに固定されているからでしょう
そんな中で彼が一番好きなのが「夜明け」というのは、彼の現在地が「夜明け前の最も暗い時間帯」であることを意味しているのではないでしょうか
■恋心と憧憬
本作は、恋愛映画なのか青春映画なのか微妙な感じになっていて、タイトルだけを見ると「大切な人と朝日を見たい」という意味で恋愛のように思えます
でも、映画内で恋愛が進展するということはなく、青磁のヒーローが帰ってきた、というテイストになっています
どちらにも恋心はあるし、おそらく両思いではあるものの、恋愛の成就よりも優先すべきことがあって、それが「本来の茜に戻る」というものでした
青磁の恋愛としても、茜が元に戻らないと進展しても意味がなく、まずはヒーローでいてほしいというものがあったと思います
茜の方は、そんなことは完全に忘れていて、単に気になるアイツとの距離が縮まってしまい、恋愛の方にシフトしていきます
また、自身の恋愛の成就よりも、青磁の夢を応援する立場になり、ヒーローとして彼の背中を後押しすることになりました
それは、青磁の時限爆弾を知ってしまったからで、彼の才能を伸ばすために自分が障壁になることを恐れているのだと言えます
本作は、学生同士の関係性なのに妙に大人っぽくなっていて、そのあたりが「らしくない」という感じになっています
青磁が外国に行ってからの5年間がどんなものだったのかは描かれていませんが、茜としては恋心を抑え込んだまま5年間を過ごしてきたように思います
青磁の夢が叶うことが茜の恋愛のスタートラインになっているので、ラストの彼女の笑顔の意味はようやく始めることができるという安堵なのでしょう
青磁がその気持ちに気づいているのかは分かりませんが、おそらくは恋愛モードに入った茜と過ごすうちに、脱ヒーローとなる瞬間が生まれると思うのですが、それはご想像にお任せしますという感じになっていましたね
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
本作は、これまでならジャニーズが主演になっていたタイプの映画で、てっきりそうなのかなと思ったら、違うアイドルグループのメンバーが主演になっていました
基本的な構造は同じですが、その門戸が開いてきたことを実感してしまいます
これまでにもジャニーズ以外のアイドルグループは存在していましたが、そこまでブレイクすることもなく、ある意味一党独裁のような感じになっていました
鶏口となるとも牛後となるなかれという精神もあったとは思いますが、人材の集中が起こっていたのは事実だと思います
そう言った構造が変わったのは事件や暴露がきっかけの一つではありますが、一党独裁に飽きてきたファンが一気に韓流に行った流れの方が大きかったと思います
様々なグループが乱立して個性があれば国内の需要を満たせたと思うのですが、一極集中したことによって、同じものばかりになってしまい、空白というものがたくさん生まれてしまいます
その感激を縫うことになった韓流と、その突破口に一緒に参入してくるグループというものも生まれてきました
そう言った流れが起き始めているのですが、それはうまい棒が100種類あっても所詮うまい棒ですやんという論理と同じで、違うものが食べたくなると、うまい棒以外を選ぶことになるのと似ている気がします
これまでは、「美少年ダンスグループはジャニーズ、ガテン系ダンスグループはLDH」みたいな棲み分けがあって、その第三波的なものが「ジェンダーレス系のグループ」であると言えます
いわゆる中性的な印象を持ち、それが潜在的な需要を掘り起こすに至っています
アイドル映画の流れにも同じようなものがあって、「騎士が美少女を守る系」「大人女子が年下をたぶらかす系」みたいなカテゴリーから、「恋愛に興味ない中道派」というものも生まれてきて、ニーズに対する細分化というものが生まれてきました
それらの恋愛の障壁はカテゴリーが違っても同じ属性があった(家柄、距離、こだわり)のですが、本作では「原点回帰」というものが障壁にあったのですね
いつの間にか変わってしまった関係性を「胸がときめいた瞬間に戻す」というもので、そこでときめいたものの正体が何だったのかを再確認することにつながっています
その上で、「恋愛よりも優先するもの」があって、それをクリアした先に恋愛のスタートラインに立つという流れになっていました
このような流れが生まれたのも、恋愛映画とはこういったものという独占志向があり、それが飽食になってしまった経緯に似ていると思います
そんな中で、意図したものかわからないけど、恋愛が第一ではない恋愛映画というものが生まれています
本作は、エンドロール後にようやく恋愛がスタートするという内容で、それ自体は斬新ではあるものの、従来の恋愛映画を期待していた層からすれば裏切られた感じになってしまうのも無理はありません
とは言え、このような恋愛というものも無きにもあらずなので、これからも「恋愛未満映画として、恋愛未満になっている障壁映画」というものが生まれるのかもしれません
■関連リンク
映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
公式HP:
https://yorukimi.asmik-ace.co.jp/
