■大人になって再会すれば、この恋愛は続くのかもしれません
Contents
■オススメ度
双子映画に興味がある人(★★★)
ほのかな純愛青春映画に興味がある人(★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2024.7.1(MOVIX京都)
■映画情報
原題:เธอกับฉันกับฉัน(あなたと私と私)、英題:You & Me & Me
情報:2023年、タイ、122分、G
ジャンル:一卵性双生児の姉妹と、彼女たちと交流を持つ青年を描いた青春映画
監督&脚本:ワンウエーウ・ホンウィワット&ウエーウワン・ホンウィワット
キャスト:
ティティヤー・ジラポーンシン/Thitiya Jirapornsilp(ユー:一卵性双生児の姉妹、中学3年生、ピンを習う)
ティティヤー・ジラポーンシン/Thitiya Jirapornsilp(ミー:一卵性双生児の姉妹、中学3年生、左頬にほくろ、数学が得意)
アンソニー・ブイサレート/Anthony Buisseret(マーク/ファラン:ユーとミーのクラスメイト、ピン教室の助手)
Supakson Chaimongkol(ニム:ユーとミーの母)
Natee Ngamnaewprom(イーク:ユーとミーの父)
Karuna Luktumthong(ユーとミーの祖母、ギフト包装店)
Nutwasa Srinudech(ユーとミーのボディダブル)
Kantapon Jindataweephol(トー:バスケが上手いクラスメイト)
Angsana Premprasert(トーの母の声)
Pratya Patong(キュー:ピン教室に通う少年)
Pasakorn Saisombut(ジョイ:キューの弟)
Yasaka Chaisorn(ピン教室の先生)
Tagsinapol Mahasinanont(料理店のウェイトレス)
Dawprakay Boonta(料理店のウェイトレス)
Yossawat Sittiwong(映画館のチケット販売員)
Pornphat Yaempho(ウェイン:数学の先生)
Chatthita Tile(ソイおばさん:雑貨屋の店主)
Renuka Boranmool(祭りの幽霊役)
Chantasin Chason(ソーセージ売り)
Jarinya Choo(蒸しパン売り)
Perapon Janpithak(債権回収業者)
Thanawat Jhongfakklang(トラックアナウンサーの声、祭りの宣伝)
Promphatsorn Ratchatanoppasit(水をくれるバス停の女性)
Sanan ‘Bas’ Thongpim(船頭)
Yiemyut Tungsomworapongs(新年イベントのアナウンサーの声)
■映画の舞台
1999年、
タイ:バンコク
タイ:ナコンパノム
https://maps.app.goo.gl/EVE15QzPCf7Jr4QF6?g_st=ic
ロケ地:
上記に同じ
■簡単なあらすじ
タイのイーサン地方に住んでいる一卵性双生児のユーとミーは、瓜二つであることを利用してきた
時には映画チケットを無くしたと言って一人分浮かしたり、レストランで大量に注文して、二人で平らげて驚かせたりしていた
ある日、数学が苦手なユーに代わりにミーがなりすまして試験を受けることになった
鉛筆を忘れてしまったミーは、追試参加者のマークから折った鉛筆をわけてもらい、試験に参加することになる
そして、そのお礼に答えを見せてあげたことで、追試を無事にやり過ごすことができた
ミーは鉛筆を弁償しようとマークの教室を訪れたが、彼は両親の事情で学校を辞めたと聞かされてしまう
その後、ユーとミーは両親の不和に巻き込まれ、夏休みの間だけ祖母の家にて暮らすことになった
ユーは幼い頃の写真を見て、楽器をもう一度習うために教室に通うことになった
だが、そこにはマークがいて、彼はユーをミーと間違えて話しかけていく
ユーは黙ったままマークに付き合い、次第に好意を抱いてしまうのである
テーマ:双子は似て非なるもの
裏テーマ:シェアできない感情
■ひとこと感想
一卵性双生児が同じ男の子に恋をする系のラブロマンスで、姉妹を一人二役で演じるという凄まじい内容になっていました
一応、映り込む時にはボディダブルを使用していますが、セリフなどがあるシーンは全て一人が演じていました
一卵性双生児よりもそっくりになっていて、髪の毛を耳にかけているとか、ほくろがあるかないかというのが見分けのポイントになっています
とは言え、物語が進むにつれて、二人の性格の違いが出てくるので、どっちがどっちなのかはわかるようになっていました
演じ分けはかなり難しいと思うのですが、ミーの方はしっかり者、ユーの方は甘えん坊という感じになっていましたね
どうやらユーの方が姉にあたるようですが、立場的には真逆になっていたように思います
映画は、身代わりになったことで起こる弊害を描いていて、それがマークにバレる過程は胸が締め付けられます
こうなることはわかっていたと思うのですが、それでも感情を止められなかったのかな、と感じました
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
ほくろがある方がミーということがわかっていても、同一人物が演じているので最初は混乱してしまいますね
それでも性格がわかるにつれて、それがなくてもこっちがミーで、こっちがユーというのは何となく察することができます
間に入ることになったマークは災難ですが、彼が最初に好きになったのがミーで、ユーをミーだと勘違いしていたことになります
ここでユーが嘘をついたために拗れてしまうのですが、この時点でユーはマークのことを好きになっていたので、それを否定はできませんでした
マークは自分の気持ちがわからなくなってしまい、ミーとデートをすることになりますが、ミーは姉妹の仲を壊したくないし、同時に家族がどうなるかという問題も浮上していました
ユーは両親の話を聞いてしまうのですが、その理由を聞くシーンなども、とてもキツいものがありましたね
このシーンまでに見分けがつけられないと厳しいですが、感覚的には捉えられるようになっていたと思います
■双子が見分けられる理由
本作は、一人二役なので同一人物なのですが、双子を演じていても見分けられるようになっていきます
当初は「ほくろ」「耳に髪をかけているかどうか」という外見の差しかありませんが、性格が顔に出ているので、自然体なのがユー(姉)、難しい顔をしているのがミー(妹)であることがわかります
しっかり者が妹で、天然なのが姉、という感じに演じ分けになっていましたね
実際に双子を見分けなければならない瞬間に遭遇したことはありませんが、わざと見分けられないように仕組んでいなければ見分けられるものだと思います
映画は、わかりやすく区別していますが、マークは全く気づいていなかったですね
これは、マークが双子であるということを知らなかったことと、ユーがついた嘘(ごまかし)に気づかなかったからでした
この段階でマークは、ミーのことが好きになっていて、それが目を曇らせた要因であると考えられます
意図的に混同させない限りは、それぞれが自己主張をするので、見分けてもらえるような努力をするものだと思います
映画でも、耳をかけるという仕草がポイント(人の話をよく聞くため)になっていて、制服の時点では校則もあるのでどうしても似てしまいますが、私服になるとわかりやすくなっていました
精神的な年齢が着る服にも現れていて、妹のミーは姉よりも年上に見られたいので大人っぽい雰囲気を出しています
ユーの方は自分可愛い路線で構ってほしい人なので、実年齢よりも下に見える妹キャラ的な雰囲気を出していました
恋愛に対して貪欲なミーと、そこまで重要視していないユー
二人が同じ男性に惹かれたのは偶然ではありますが、これはマークが二人を見る眼差しが同じだからだと思います
好意を持って見つめられると心が動くということもありますが、マーク自身が二人の中に自分の好きなミーを見ているというところがあって、それがミーに通じてしまっているのでしょう
なので、後半になると、ミーの方への視線の注ぎ方が特徴的になっていて、本能的には自分の好きなミーは妹の方だ、ということがわかっていたのだと思います
■マークが混乱した理由
マークは初めからミーのことが好きで、ユーが偽ったために、ユーと付き合うようになります
でも、ユーはマークがミーのことを好きだとわかっているので、二人だけで会うことに罪悪感を覚えていきます
そこには、ミーのことが好きだと思うけど、私も悪くないでしょうという比較をさせて自分を選んでもらいたいという欲求があったように思えました
このユーのいたずらがマークを混乱させていて、ミーを好きな以上、同じ見た目のユーにも魅力を感じているのを否定できません
この段階で、ミーになりすましているユーのことを本気で好きになっていて、でも心のどこかで何かがおかしいと感じている
どちらにも好きという感情が芽生えていることで、どちらかを選ばなければならないと考えているマークは、自分の現在地を知る必要があったと言えます
人は二人を同時に好きになることもありますが、二股のような状態を好ましいと思ったり、それを維持したいと考える人と、相手のことを尊重して、二股はダメだと思う人もいるのですね
マークは誠実な人間なので、この中空のような状態は心の負荷になっているので、それがラストの決断に至っていると言えるのでしょう
彼がもっと狡猾な人間で、どっちも得たいと思えば可能だったでしょうが、それをすると姉妹の仲はさらに混乱してしまいます
マークは相手を傷つけたくないという思いが強いので、それによって、自分が身を引けば丸く収まるのではないかと考えたのだと思います
どちらかを選べば、選ばれなかった方は傷つく
これは至極真っ当なことではありますが、同時に次に行く機会となり得るので、気持ちを切り替えられるほどの恋愛の終わりがあった方が良いように思えました
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
本作は、なりすましでいたずらをしてきた双子が、どうしても分け合えないものと遭遇する瞬間を描いています
ユーの他愛のない嘘が大きな事態になってしまったのですが、あの状況で「試験に出たのは私ではなくユー」とは言えないのですね
試験の不正の発覚になってしまい、最悪退学処分の可能性も出てしまいます
なので、その場を取り繕う必要があったのですが、それを早めに修正しなければならなかったと言えます
ユーとしては、あの時点でマークがミーのことを好きになっているということがわかり、ミーに成り切ることの影響もわかっていたと思います
自分が傷つくと同時に、ミーのことも傷つけることになるし、その恋愛を奪ってしまったことにもなります
それでも突き進んでしまったのは、ユー自身がマークに一目惚れをしてしまったからなのですね
なので、何もない状態で出会い、マークがミーに会う前にユーと会っていれば何かが変わったかもしれません
恋愛における直感的な好きという感情は、実はかなり奥深いものであり、瞬間的の多くのものを相手の中に見ています
ミーを好きになったマークは、彼女の中にある彼女の知らない部分も感じ取っていて、それらの要素の集合体に好意を持っています
個人的な感覚だと、マークがミーを好きになった一番の要因は自分(マーク)と似ているところだと思うのですね
それは、相手のことを第一にして尽くすという精神性で、ミーは文句は言いつつもユーや家族のために自分を犠牲にする部分がありました
冒頭の試験のなりすましでも、バレたら退学処分になるリスクはミーも同じなのですね
それでも、無邪気で可愛いユーのためにそのリスクを犯している
マークの感覚は、そう言ったところまで感じ取っていたのですが、実際に自分が巻き込まれたことは「自分のことしか考えずに人を傷つけるユーの無神経さ」でした
なので、その不和を受け入れられるようになるまでは、二人には向き合うことができず、それゆえに全てを捨てるという決断に至ったのではないでしょう
マークの年齢だと、これ以上思考を巡らすことは難しい
でも、完全にミーへの好きは消えていません
なので、大人になってから、ミーと再会することになれば、恋の炎が再び燃え上がってしまうでしょう
今後のマークの恋愛にも大きな影響を与えているので、ユーはとんでもないことをしてしまったんだな、と改めて思ってしまいます
■関連リンク
映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://eiga.com/movie/101035/review/03993714/
公式HP:
https://www.reallylikefilms.com/futago