■最悪なクリスマス休暇に、過去の自分を置いて来れたのかもしれません


■オススメ度

 

クリスマス休暇に取り残される悲哀に興味がある人(★★★)

 


■公式予告編

鑑賞日:2024.7.2(イオンシネマ京都桂川)


■映画情報

 

原題:The Holdovers(残された人々)

情報:2023年、アメリカ、133分、PG12

ジャンル:クリスマス休暇に寄宿舎に取り残された生徒を任された先生を描く」ヒューマンドラマ

 

監督:アレクサンダー・ペイン

脚本:デビッド・ヘミングストン

 

キャスト:

ポール・ジアマティ/Paul Giamatti(ポール・ハナム:バートンアカデミーの考古学の教授)

 

ドミニク・セッサ/Dominic Sessa(アンガス・タリー:家庭環境が複雑な生徒)

 

ダバイン・ジョイ・ランドルフ/Da’Vine Joy Randolph(メアリー・ラム:寮の料理長)

 

Andrew Garman(ハーディー・ウッドラップ博士:アカデミーの校長、ハナムの元教え子)

 

キャリー・プレストン/Carrie Preston(リディア・クレイン:校長の助手)

Darby Lee-Stack(エリーゼ:クレインの姪)

Elaine Victoria Grey(クレインの母)

Reb Powers(キャシー:クレインの妹)

Lily Steven(クリスティ:エリーゼの妹)

 

ブレイディ・ヘプナー/Brady Hepner(テディ・クンツ:素行が悪い生徒)

イアン・ドリー/Ian Dolley(アレックス・オラーマン:両親がモルモン教徒の生徒)

ジム・カプラン/Jim Kaplan(パク・イェジュン:韓国の留学生、家が工事中で帰れない)

Michael Provost(ジェイソン・スミス:フットボールのクォーターバック、親が金持ちの生徒)

Greg Chopoorian(ジェイソンの父)

 

Naheem Garcia(ダニー:アカデミーの用務員)

Bill Mootos(エンディコット先生:母が病気と嘘をつく)

Dustin Tucker(ローゼンヴィーク先生:同僚)

 

Stephen Thorne(トーマス・タリー:アンガスの父、精神病院入院中)

ジリアン・カプラン/Gillian Vigman(ジュディ・クロットフェルター:アンガスの母)

テイト・ドノバン/Tate Donovan(スタンリー・クロットフェルター:アンガスの義父)

 

Juanita Pearl(ペギー・ラム:メアリーの妹、妊婦)

 

Alexander Cook(讃美歌を指揮する司祭)

Liz Bishop(アカデミーの職員)

Cole Tristan Murphy(歯磨きする学生)

Will Sussbauer(コブサラダを食べる学生)

Carter Shimp(ハリマン:マリファナ売る生徒)

 

Michael Malvesti(クリスマスツリーを作る男)

Dakota Lustick(クリスマスツリーを手伝う男)

Melissa McMeekin(街の売春婦)

Jonathan von Mering(救急医)

Rena Maliszewski(救命センターの看護師)

Osmani Rodriguez(薬剤師)

Oscar Wahlberg(ピンボールで遊ぶ男)

Dan Aid(ケネス:ベトナム戦争の退役軍人、ピンボール男の友人)

Mike Kaz(クレインのパーティの参加者)

Kelly AuCoin(ヒュー・キャバノー:ハーバード時代のポールの友人)

Colleen Clinton(カレン:ヒューの妻)

Alexander Cook(バーテンダー)

Fred Robbins(サンタクロース)

David J. Curtis(精神科の看護師)

Pamela Jayne Morgan(レストランのウェイトレス)

Davis Robinson(レストランの執事)

Joe Howell(「殺し屋」と声かける酒屋のレジ係)

Peter Krasinski(コーラスのリーダー)

Ian Lyons(クレインの恋人)

Kevin Fennessy(イライラしている映画ファン)

 


■映画の舞台

 

1970年冬、

アメリカ:ニューイングランド

 

アメリカ:マサチューセッツ州

ボストン

 

ロケ地:

アメリカ:マサチューセッツ州

グロットン校/Groton School

https://maps.app.goo.gl/o1xdb3AbWWPZThWy8?g_st=ic

 

ディアフィールドアカデミー/Deerfield Academy

https://maps.app.goo.gl/yy8PGPZaoCFLLfEV7?g_st=ic

 

フェアヘイブン高校/Fairhaven High School

https://maps.app.goo.gl/uRyVJm5qsaQcngVd8?g_st=ic

 

セントマークス校/St Mark’s School

https://maps.app.goo.gl/KHxnxnvFqqoGSva5A?g_st=ic

 

ノースフィールド・モント・ヘルマン校/Northfield Mount Hermon School

https://maps.app.goo.gl/wsY9MpySa7zjPWso8?g_st=ic

 

ウェイクフィールド

ウェイクフィールド・ボーリング場/Wakefield Bowladrome

https://maps.app.goo.gl/k3LnAg23XqUFnRb5A?g_st=ic

 

ボストン

オルフェルム劇場/Orpheum Theatre

https://maps.app.goo.gl/NYNN4iMRErLSDfqs5?g_st=ic

 

ウェスター・コモン/Worcester Common

https://maps.app.goo.gl/UkFim6yiwMdrgtfY9?g_st=ic

 

サマーヴィル

サマーヴィル・シアター/Somerville Theatre

https://maps.app.goo.gl/zBUjw7oxwDykVRHg7?g_st=ic

 


■簡単なあらすじ

 

1970年12月、ニューイングランドにある寄宿学校では、クリスマスに家に帰れない生徒の面倒を誰が見るかを押し付け合っていた

当番のエンディコット先生は母が病気と嘘をつき、ハーディ校長は生徒からも職員からも嫌われているポール・ハナム先生を指名することになった

 

残ることになったのは、素行の悪いクンツ、実家が遠いイェジュン、宗教的な理由のオラーマン、両親の都合ですぐに帰れないジェイソンの4人のはずだった

だが、母が再婚相手と新婚旅行するという理由で、タリーも残らされてしまう

 

兼ねてからタリーとクンツは犬猿の仲で、ポールも融通の効かない堅物で衝突してしまう

そんな彼らと共に寮のコック長メアリーと用務員のダニーが残ることになり、2週間を過ごすことになったのである

 

テーマ:子どもにとっての親の存在

裏テーマ:取り残される理由

 


■ひとこと感想

 

タイトルとポスターの情報だけで、どういう映画なのか知らずに参戦

クリスマス休暇に帰らなくなった生徒と、その監督者を押し付けられる先生の物語で、途中からモブの生徒たちがキレイにどこかに行く流れになっていました

 

任される先生は嫌われ者で、最後まで残る生徒もどちらかと言えば嫌われ者でしたね

この二人の緩衝材としてメアリーとダニーがいるのですが、メアリーは息子を亡くした悲しみが癒えていませんでした

 

そんな中、ジェイソンがクンツたちをつれてスキーに行ってしまい、ポールはタリーとサシで向き合うことになります

ここからの流れが面白くて、最終的には擬似的な親子のようになっていきます

ラストのポールの決断に至る過程が綿密で、彼が抱えていた秘密というものも悲しみに満ちたものだったと思います

 


↓ここからネタバレ↓

ネタバレしたくない人は読むのをやめてね


ネタバレ感想

 

映画のタイトルに意味は「残留する人」という意味で、文字通り「取り残された人」なのですが、彼らは全員「過去に縛られた人」でもありました

ポールは、かつて自分を貶めた男に再会することになり、そこで強がりを見せる場面もありました

タリーは両親の離婚によって傷つき、実父と会うことを望んでいましたが、父の病気が想像以上のものだったために、諍いを残すことになってしまいました

 

ポールはタリーを助けるために責任を全て背負うことになりますが、学舎にずっと縛り付けられてきた人生でもあるので、ようやく解放されたと言えるのかもしれません

それが解雇などではなく、自らが鎖を断ち切る格好になっていて、それが清々しくもあったように思えました

 

タリーも今後は大変だろうし、ポールも年齢を考えれば再就職も難しいかもしれません

貯蓄を切り崩しながら本を書く人生を送るのかもしれませんが、いずれはタリーと再会して、想い出話で花を咲かせるのではないでしょうか

 


クリスマス休暇について

 

アメリカでは、クリスマスを迎えるホリデイシーズンには特別な催し物が企画されます

流れとしては、感謝祭(Thanksgiving)が終わると、ウインターホリディに向けての準備が始まります

ツリーの用意、飾り付け、クリスマスクッキーを焼いたり、サンタクロースやトナカイに手紙を書いたりします

家をイルミネーションでコーディネイトしたり、ジンジャーブレッドハウスというものを作ります

 

このジンジャーブレッドハウスは、ヘクセンハウス、レープクーヘンハウスとも呼ばれる「お菓子の家」のことですね

ジンジャーブレッドは生姜を使った洋菓子のことで、これを固めに作って家の形にしていきます

クリスマスになるとクリスマスキャロルを歌い、近所の家を訪問したりします

また、プレゼント交換を行ったり、クリスマスの映画を見たりします

 

パーティーでは着飾ることも多いのですが、あえて「ダサいセーターを着る」というものもあります

基本的には家族や友人と過ごす時間になっていて、それが習慣化されています

休日にはしっかり休むのですが、同時に神様に祈りを捧げる時間でもあります

日頃の感謝をし、一年を振り返るという意味もあるので、とても大切な時間であると言えます

日本だと、大晦日に家族が集まるというものがイメージとして一番近いように思えます

 


登場書籍について

 

映画内で登場するポールが人に勧める本は、マルクス・アウレリウス(Marcus Aureius)の『自省録(Meditations=瞑想)』という本でした

ローマ皇帝の五賢帝であるアウレリウスが書いた哲学書で、全編ギリシャ語で書かれています

原題は『タ・エイス・ヘアウトン(Τὰ εἰς ἑαυτόν)』で、意味は「彼自身へのもの」となっていて、英題が『Meditations』となっています

かつては『瞑想』という名で出版されていましたが、今では『自省録』を用いているとされています

 

内容は、自分宛に書かれた短い散文の集合体で、一貫性がなく、同じことが何度も登場します

ひたすら自分の心に浮かんだものを書き留めたというもので、12巻と分かれていても、その区分はアウレリウスがしたものがどうかはわかっていません

自分が読み返すための日記のようなものなので、そもそも人に読ませるために書かれたものではないと言われています

 

ポール自身がこの本を他人に薦めるのは教育的な目的であると思いますが、別の側面では「ポール自身を理解する書」という意味合いもあると思います

人に本を薦めた経験があると人ならわかると思いますが、強烈なインスピレーションを受けた場合、それをシェアしたくなることがあります

それでも、ポールの場合は、教育的な側面が強く、これを読んで内省しろという意味合いの方が強いので、誰もが関心を寄せませんでした

 

ポール自身が受け入れられていないことを象徴している本でありますが、彼自身に興味を持ち、彼がどんな本を読んでいるかを気にするような人がいたら、その本に興味を示すかもしれません

それは、裏を返せば、ポールにはそこまでの魅力がない状態とも言えるので、彼自身の行動から何かしらの哲学を感じて、その思考の源泉はなんだろうと思われて初めて、『自省録』を薦める意味が生まれてくると言えるのではないでしょうか

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120分で人生を少しだけ良くするヒント

 

本作は、クリスマス休暇に家族と過ごせない人々を描いていて、その理由は様々なものになっていました

ポールは独り身であることと、他人から嫌われていたことで押し付けられています

アンガスは両親の再婚問題の煽りと食っていて、メアリーは家族を亡くした悲しみから遠ざける格好になっています

その他の面々も色んな理由がありましたが、リッチマンと一緒にスキー旅行に出掛けてしまいましたね

用務員のダニーはメアリーが心配で一緒にいるという感じになっていました

 

スキーに行けなかったアンガスを面倒見ることになったポールたちですが、当初は学校から一歩も出るつもりはなかったと思います

でも、さすがに一人だけこれでは可哀想だろうということで、「課外授業」という名目にて、外に連れ出すことになりました

そこでスケートをしたりして遊ぶことになりましたが、アンガスはかねてより自分の父に会いたかったので、隙を見て逃げ出そうと考えていました

何度かのトライの後、ポールは根負けして、彼を父のもとに連れて行くことになりました

 

この段階では、ポールもリディアに彼氏がいて放心状態だったので、そこまで深くは考えていなかったのだと思います

実の父の見舞いに行くことに何の制約があるのか、というところもあるので、あそこまでアンガスの両親がキレるとは想像もしなかったと思います

でも、アンガスはリディアの家からスノードームを盗んで、それを父に渡していたのですね

これが引き金となって、父は錯乱状態になってしまい、元妻へと連絡が入ることになりました

 

ポールは何も知らない状態でアンガスを行かせてしまったので、課外活動の責任は彼にあると言われても仕方がありません

とは言え、アンガスの贈り物が引き金になった経緯があるので、彼も処分対象になってしまいました

そこでポールは、アンガスを守るために全責任を負い、学校を去ることを決めます

アンガスを卒業まで面倒見たかったと思いますが、それよりは彼自身が今の段階で転校することの影響を重く受け止めていました

 

ポールにとっては散々なクリスマス休暇ではありましたが、彼自身の思想や行動を変える劇的な日々だったと思います

これは「自省録」を読んで内省を行うよりもはるかに重要なことで、それ以上の価値があるものだったと言えます

アンガス自身も自分が動き、自分のためにポールが動いてくれたことを深く考えることになり、これまでとは違った思考を持てたかもしれません

そう言った意味では、ほろ苦い思い出なのだけど、いずれは恩師と呼び、呼ばれる存在になるのかな、と感じました

 


■関連リンク

映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)

https://eiga.com/movie/100698/review/03996632/

 

公式HP:

https://www.holdovers.jp/#modal

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投稿者 Hiroshi_Takata

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