■ゾラの顔芸を愉しみながら、Xの女性の扱いを勉強する映画だったのかもしれません
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■オススメ度
SNSが出自の実話系が好きな人(★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2022.8.31(MOVIX京都)
■映画情報
原題:Zora
情報:2020年、アメリカ、90分、R18+
ジャンル:ストリップダンサーとしてフロリダに行った女性が素行の悪い連中の一悶着に巻き込まれるスリラー映画
監督:ジャニクザ・ブラヴォー
脚本:ジャニクザ・ブラヴォー&ジェレミー・O・ハリス
原作:アザイア・ウェルズ・キング(Aziah Wells King)のツィート&デヴィッド・クシュナ『Zora Tells All : The Real Story Behind the Greatest Stripper Saga Ever Tweed』
*現在「@Zolarmoon」は削除されている模様です
キャスト:
テイラー・ペイジ/Taylour Paige(アザイア・キング/ゾラ:デトロイトの「フーターズ」のストリッパー)
ライリー・キーオ/Riley Keough(ステファニ:初対面でゾラを誘う女性、元ネタはジェシカ・レイ・スィアトコウスキーさんと言う女性)
Amelia Rose Monteagudo(ステファニの娘)
ニコラス・ブラウン/Nicholas Braun(デレク:ゾラのボーイフレンド、元ネタはジャレット・スコットさんと言う男性)
コールマン・ドミンゴ/Colman Domingo(X:ゾラのルームメイト、ポン引き、元ネタはナイジェリアの売春斡旋業者「Z:ルディ」)
ソフィー・ホール/Sophie Hall(ベイビー:Xの無口なパートナー)
アリエル・スタッチェル/Ari’el Stachel (ショーン:ゾラの恋人、元ネタはショーン・キングさんと言う男性)
Nelcie Souffrant(ゲイル:ゾラの同僚、やる気のないウェイトレス)
ナシール・ラヒム/Nasir Rahim(ジョナサン:ステファニと一緒にゾラの店に来る中年)
ジェイソン・ミッチェル/Jason Mitchell(ディオン:デレクと仲良くなるフロリダのアウトロー)
Jarquale Stewart(CC:ディオンのヤバい仲間)
Ts・マッドソン/Ts Madison(ハリウッド:宗教的な掛け声をするフロリダのダンサー)
Ben Bladon(カイ:クラブでゾラに付き纏うガリガリの客)
Tony BeMile(ジョー:デリヘルの一人目の客、レイシストの白人)
■映画の舞台
アメリカ:デトロイト
アメリカ:フロリダ州
タンパ
https://maps.app.goo.gl/ULtXBKdCtTcdQ2G57?g_st=ic
ロケ地:
アメリカ:フロリダ州タンパ
■簡単なあらすじ
ストリップダンサーとレストランのウェイトレスを掛け持ちしているゾラの元に、中年男性を連れた一人の白人女性・ステファニが客として訪れる
彼女はなぜかゾラを一目で気に入り、一緒にストリップダンスの劇場で踊ることになった
息のあった二人は、初対面なのに翌日には旅行に行くこと取り付けていたが、待ち合わせ場所にはステファニ以外にも、彼女の恋人とルームメイトの男性と言う奇妙な取り合わせになっていた
危険を感じながらもフロリダに来たゾラだったが、ダンスで稼ぐのではなく、売春行為を主体としていて、同行したルームメイトのXは、かつてステファニのポッ引きだった人物だった
体を売る気のないゾラは、マッチングアプリにステファニの際どい写真を載せ、金額も150ドルから一気に500ドルに上げて見せた
その作戦は功を奏し、ステファには一晩で8000ドルを稼いでしまうのである
だが、そんな彼らを付け狙う影が、着実に近づきつつあったのである
テーマ:甘い話は基本、罠
裏テーマ:人間関係はゆっくり構築しよう
■ひとこと感想
ポスタービジュアルがキラキラで、ツイッターの発信が元ネタで、A24と言うことで参戦決定
R18+でしたが、女性よりも男性のアレがたくさん登場する映画になっていました
セックス描写はそれほどではありませんが、色々とヤバい展開になっていましたね
映画は「ゾラ」が巻き込まれて見てきたものをツイートした内容が話題になって書籍化されたようですね
描かれている内容は地味に映りますが、実際に遭遇したらたまったではありません
冒頭から一歩半ぐらい引いているゾラの距離感が秀逸で、友達選びは大事だなあと思ってしまいますねえ
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
店に来た客はやっぱりヤバかった系で、いきなりキッチンに侵入してきたり、平気で嘘をついたり、嘘がバレたときはしれっとメイクしていたり、となかなかのクレイジーなキャラでしたね
セックスでもオーラルになんでも応えちゃうけど、自分の値段を安く見積もって損をしている
そんな彼女の人生を大きく変えることになるのですが、ゾラは一刻も早く帰りたかったのではないでしょうか
映画はロードムービー的な側面はありますが、どこをどう走っているかわからないぐらいにロードムービー感がなかったですね
一応デトロイトからフロリダまで移動している割には隣町に来たぐらいのイメージ
実際には丸1日かかる1200マイル程度の距離感はあったはずでしたが、全くそれを感じさせません
物語性はあってないようなもので、4人でフロリダに来たら、留守番が地元の悪に目をつけられて、最終的には怖いおっさん(多分兄貴かな?)と対決するハメになる
そこでいざこざが起きて重大事件になるのですが、捕まる気配がなかったのは笑ってしまいます
デリヘルシーンで局部がドアップと言う嫌がらせの激しい映画ですが、唯一ハートマークがついたイチモツには度肝を抜かれてしまいましたねえ
■映画が生まれた経緯
ツイッターアカウント「@Zolarmoon」にて、アザイア・ウェルズ・キングと言う女性が148の投稿をおこなったことが発端になっています
一連のツイートがバズり、デヴィッド・クッシャーの記事にて一連の流れがまとめられました
その記事が2015年11月17日の「Rolling Stone」に掲載されたのですね
↓該当記事リンク(英語です)
記事によると、初発に当たるツイートは2015年の10月27日のもので、
「Okay listen up. This story long. So I met this white bitch at Hooters」だったそうですね
日本語に訳すると「いいよ、聞いて。でもこの話は長いよ。私はフーターズでこの白いビッチに会ったの」みたいな感じです
この「白いビッチ」はジェシカさんと言う女性で、彼氏はジャレッド、ナイジェリアの売春斡旋は「Z」だったとのこと
映画では少しずつ変えてありますね
この一連のツイートには「#Story」がつけられていて、世界中で流行しました
各方面からツイートで参戦が相次ぎ、ツイートのフォロワーは一時期10万人を超えたとのことです
ちなみに内容についてステファニ(ジェシカ)は反論をしていて、「私は売春をしていない」と言っていますし、デレクの自殺騒動とか銃撃事件は「装飾である」とされています
実際には「クレジットカード強盗に巻き込まれた」とかの事件はあったようですね
フーターズにジェシカが来て、そこで仲良くなったとか、一緒にダンスをしようと誘ったことは事実のようでした
彼らがフロリダに向かったのは同年の3月26日のこと、タンパの安モーテルは映画以上にヤバかったようですね
その後、タンパのゴールドクラブに行き、そこでダンスを披露しました
タンパはデトロイトよりは規制が緩くて、どちらかといえば誰でも踊れ(ライセンスは不要)、ゾラは数時間で800ドルを稼いだそうです
元記事が結構面白いので、翻訳機能を駆使して読むことをおすすめします
一応、今のところは無料で閲覧できます
■未来型エンタメの変遷
エンタメのネタ元というのはたくさんありますが、昔から「都市伝説系」とか、「ネットの掲示板発」みたいなものはありました
ある種の狭い空間でバズったものが展開し、そういった嗅覚のある人が見つけると企画になると言った感じでしょうか
「電車男」なども、多くの人の存在認知は書籍化とかドラマ化だったと思います
こういったものが今回は「個人のツイート」というところが時代性を反映しています
ゾラの一連のツイートのような短文でも読者を魅了する時代になっていて、昔ながらの手法だと「小説か何かの形にすること」が求められましたが、現在ではツイートが拡散されていく中で、読者が獲得され、現在進行形で「作品」が仕上がっていく過程に参加するという現象が起きています
私自身も一時期、小説サイトなどで連載的なものをしていましたが、それはガチの小説なので一話あたりの制作に時間がかかります
なので、ある程度仕上げた段階で投稿する形になっていましたね
これが短文のツイートならリアルタイムでも可能ということになります
これらのリアルタイム系は特質上、口語体になる可能性が高く、また情景や心理描写などよりは「セリフの連発」になると思います
この作品にしても導入は「私の話を聞きたい?」みたいなノリで、そこからステファニとの流れを紐解いていくみたいな感じになっています
口語体主体だと背景描写とか過去描写が意外と難しく、リアルタイムの語りが主軸になります
途中で時系列をイジると大変なことになりますし、途中参加前提の作品になっているので、時間の進む流れは基本的には一方通行でしょう
また登場人物のセリフも全て「語り手の主観」が入ることになり、セリフの絶妙な掛け合いといったものは難しいように思えます
実際にやったことないのでアレですが、ネタを仕込んでツイートしても、それにどれだけの人が興味を示すのかはわからないので、ある程度フォロワーがある人以外には成功しないような気がしてしますね
ちなみに私が昔書いた連載は→https://novel.daysneo.com/works/526c20c022e5bf61fd7eb5999f60f8d4.html
その他の短編はこちら→https://novel.daysneo.com/author/Dr_hawk-2020/
お暇なら足跡残してあげてください
サラッと読み返してみましたが、表現とか稚拙で誤植が多いですなあ
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
本作の内容の信憑性はアレですが、人を簡単に信用するとヤバいよというメッセージはヒシヒシと伝わってきます
Xが暴力的に無理やり売春をさせるというところがなかったのも、ゾラが機転を利かせたからで、Xの欲求をうまく満たすことに成功していました
いわゆる「指示以上の成果を出した」というもので、ゾラは自分が当事者にならないけど、セックスをしても良いステファニを利用し、Xの金銭欲を満たすことに成功します
その後、単純に分け前をステファニの前で投げつけますが、その後ステファニのいないところでXは大金をゾラに渡しました
このあたりのXの巧妙さというものが光っていて、金の使い方、見せ方をわかっているのだなあと感心しました
実際には褒められた行動ではないのですが、女性のタイプごとに接し方、お金の渡し方などをシチュエーションごとに変えていくXは、相当女性慣れしていて熟知しているといえます
ちなみに上の記事では、女性を飲みに連れて行って、その中で「一番頭の悪い女性」をターゲットにしたそうです
今回はXが見つけた訳ではないので想定外の賢い女性が来たのですが、彼女はXの暴力性を刺激しないように立ち回り、そして彼の欲望を満たし、彼の暴力性が及ばないところに行きます
これをXは「尊敬(Respect)」と表現していて、Xは全ての女性を下に見ている訳ではないのですね
このあたりの処世術には学べるところがあると思います
映画の顛末はディオンとCCの乱入からの銃撃事件に発展し、ゾラの48時間の冒険は終わりました
予期せぬ48時間でしたが、ゾラは危険と引き換えに貴重な体験をしたといえます
でも、それが後の人生に寄与するかは本人次第なのかもしれません
これらの体験の語りで面白いのは、常にゾラが客観的に物事を見ている点でした
雰囲気に呑まれることなかったのですが、最初にトイレ休憩をしたあたりから、その冷静さが見えていましたね
この時はトイレを上から覗くショットになっていて、わざわざステファニがドラッグをやっていることを仄めかすように黄色い尿を見せていました
その直後にヤバめのハイテンションになって、その際にゾラが思いっきり引いていたのには笑ってしまいました
これら一連のゾラの引き攣った表情を見るのがこの映画の醍醐味なのかもしれません
■関連リンク
Yahoo!映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://movies.yahoo.co.jp/movie/382611/review/b17ebd71-8859-4ff2-9992-2c8acd72a295/
公式HP:
https://transformer.co.jp/m/zola/