■この映画に出会えたことに「ありがとう」と言える人生を歩みたいものですね
Contents
■オススメ度
スティーヴン・キング作品が好きな人(★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2026.5.1(イオンシネマ京都桂川)
■映画情報
原題:The Life of Chuck(チャックの人生)
情報:2024年、アメリカ、111分、G
ジャンル:ある広告に登場する男の人生を描いたヒューマンドラマ
監督&脚本:マイク・フラナガン
原作:スティーヴン・キング『The Life of Chuck(チャックの数奇な人生 イフ・イット・プリーズ)』
キャスト:
トム・ヒルドストン/Tom Hiddleston(チャーリー・「チャック」・クランツ/Charles ‘Chuck’ Krantz:不可解な広告に登場する謎の男)
(青年期(17歳):ジェイコブ・トレンブレイ/Jacob Tremblay)
(少年期(11歳):ベンジャミン・パジャック/Benjamin Pajak)
(幼少期(7歳):Cody Flanagan)
キウェテル・イジョフォー/Chiwetel Ejiofor(マーティー・アンダーソン/Marty Anderson:中学の教師)
カレン・ギラン/Karen Gillan(フェリシア・ゴードン/Felicia Gordon:マーティーの元妻、看護師)
ミア・サラ/Mia Sara(サラ・クランツ/Sarah Krantz:チャックの祖母、ダンス好き)
マーク・ハミル/Mark Hamill(アルビー・クランツ/Albie Krantz:チャックの祖父、会計士)
Q’orianka Kilcher(ヴァージニア・「ジニー」・クランツ/Virginia ‘Ginny’ Krantz:チャックの妻)
Antonio Raul Garcia(ブライアン・クランツ/Brian Krantz:チャックの息子、10代)
Molly C. Quinn(チャックの母)
カール・ランブリー/Carl Lumbly(サム・ヤーブロ/Sam Yarborough:老齢の葬儀屋)
David Dastmalchian(ジョシュ/Josh:妻を亡くしたシングルファーザー、生徒の父、エロ動画)
Harvey Guillén(ヘクター/Hector:生徒エミリーの親)
Franklin Ritch(ブレント/Brent:ヘクターのパートナー)
Michael Trucco(ディランの父)
Amy Biedel(ディランの母)
Matthew Lillard(ガス・ウィルフォング/Gus:マーティの隣人)
Rahul Kohli(ブリ/Bri:フェリシアの同僚、看護師)
Violet McGraw(アイリス/Iris:ローラースケートの少女)
Saidah Arrika Ekulona(アンドレア/Andrea:サウスウェスト銀行の行員)
ザ・ポケットクイーン/The Pocket Queen(タイラー・フランク/Taylor Franck:路上パフォーマー、ドラマー)
Andrew Grush(マック/Mac:タイラーの友人)
Annalise Basso(ジャニス・ハリディ/Janice Halliday:失恋から立ち直ろうとする女性)
ケイト・シーゲル/Kate Siegel(リチャーズ先生/Miss Richards:チャックの小学校時代の先生)
Samantha Sloyan(ローバッハー先生/Miss Rohrbacher:ダンスプログラムの主任教師、高校時代)
Trinity Jo-Li Bliss(キャット・マコイ/Cat McCoy:チャックの片思いの相手、8年生)
Heather Langenkamp(ヴェラ・スタンレー/Vera Stanley:クランツ一家の噂好きの隣人)
Lily Lumpkin(クリーク/Clerk:異変に気付くマーティーの生徒)
Sauriyan Sapkota(ラム/Ram:詩を朗読するマーティーの生徒)
Mackenzie Gwaltney(マーティーの生徒)
Anne Russell West(マーティーの生徒)
Kyler Alan Collvins(ティミー/Timmy:ダンス教室の生徒)
Mike Flanagan(定例のセリフを言う弔問客)
Matt Biedel(ウィンストン先生/Doctor Winston:サラの主治医、弔問客)
ニック・オファーマン/Nick Offerman(ナレーション)
Carla Gugino(ニュースとコマーシャルの声)
Elan Gale(ラジオニュースのレポーター)
Eric Vespe(ラジオのパーソナリティ)
Scott Wampler(ラジオのパーソナリティ)
Hamish Linklater(アメリカ人レポーターの声)
Axelle Carolyn(フランス人レポーターの声)
Sandra Hess(ドイツ人レポーターの声)
Alexa Bolter(イギリス人レポーターの声)
Lauren LaVera(イタリア人レポーターの声)
Mikki Levi(日本人レポーターの声)
Raymond Garcia(スペイン人レポーターの声)
Bama Boy Buck(スーパーの常連客)
Ginger Cressman(遊歩道の歩行者)
Katelyn Dixon(遊歩道の歩行者)
Piper Guevarra(遊歩道の歩行者)
Nicole Haugdahl(遊歩道の歩行者)
Dee T. Washington(遊歩道の歩行者)
Whitley Hale(ダンスパーティーの参加者)
Trevor Macy(弔問客)
Mia Sesma(クラスの生徒)
Joey Shear(建設作業員)
■映画の舞台
アメリカ:アラバマ州
ロケ地:
アメリカ:アラバマ州
Downtown OWA
https://maps.app.goo.gl/dJdmZgvBdjLDMwQG7
モビール/Mobile
https://maps.app.goo.gl/EL1Jd2vi3fGsMN138
ボールドウィン/Baldwin County
https://maps.app.goo.gl/8AoPNtVLBnNgGgpe9
■簡単なあらすじ
世紀末が訪れたと噂されるアメリカのある街にて、中学教師のマーティーはホイットマンの詩を引用し、生徒たちに人生についてのことを教えていた
生徒たちは授業よりも外の世界のことが気がかりで、カリフォルニアで起きた大震災の余波に心を奪われていた
やがて、ネットも繋がらなくなってしまい、保護者面談を行うものの、その意味があるのかはわからなかった
ある日のこと、出勤途中に「39歳のチャック」を目撃したマーティーは、その話題を隣人のガス、道端で出会った老人サムとすることになった
誰もがその男が何者か知らないまま、世界はさらに歪な変化を遂げていく
マーティーには別れた妻のフェリシアがいて、看護師の彼女は自殺処理の日々に追われていた
世界の破滅を苦にした自殺が相次いでいて、医者も病院を逃げ出す
そんな折、彼女は不安になってマーティーに連絡を取り、彼は哲学的な話をしながら彼女に寄り添った
そして、完全にインフラが遮断された夜、マーティーは彼女の家を訪れ、「愛している」という言葉を掛けた
一方その頃、とある病院では、39歳の生涯を終えようとする男がいた
妻と息子に寄り添われたその男は、彼女らに反応することなく、そのまま息を引き取る
そして、妻は「ありがとう、チャック」と囁いて、彼を看取ることになったのである
テーマ:人生の方向性を決める瞬間
裏テーマ:去り行く時に見る景色
■ひとこと感想
謎の広告男の素性を探すミステリーっぽい感じの予告編で、原作がスティーヴン・キングということもあって、最後は宇宙人とか出てきちゃうのかな、と思ってしまいました
どんな謎が街を支配しているのかと思いましたが、これは映画の構造自体がネタバレになってしまいますね
なので、その部分を排除してレビューを書くことになるのですが、これがまたとても難しい、ということになります
映画は3章立てになっていて、第三章「THANKS CHUCK(サンキュー! チャック)」から始まり、第二章「BUSKERS FOREVER(大道芸人サイコー)」、第一章「I COUTAIN MULTITUDES(私の中には無数の人が存在する)」へと繋がっていきます
第三章の存在を説明するのが第一章と第二章なのですが、時間を遡るという構成になっていて、人生の指針の起点というものが物語のゴールとなっています
この強烈な体験は「人生における核を決めるエピソード」となっていて、チャックの場合はかなり早い段階で遭遇する、ということになっていました
人生を彩る名言みたいなものはたくさんあると思いますが、自分の価値観を示す大切な言葉を誰もが持っていると思います
チャックの場合は、ホイットマンの詩の言葉であり、第一章のタイトルになっているもので、それを胸に約30年を生きたことになります
第二章は成人のパートであり、その人生は祖父の影響が強かったことが示唆されています
でも、そんな中でも祖母から受け継いだものが人生の安らぎを与えていて、このバランスがチャックを構成しているのですね
そう言った意味において、幼少期の体験、成人期の判断というものは、その人となりを表していると言えるのではないでしょうか
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
映画を時系列の治すと、両親の事故死、祖父母に育てらるという流れになり、祖母の影響でダンスを覚え、それが青春時代を彩ることになりました
祖父は現実的な人間で、チャックに対して「ダンスで生計を立てられる確率は低い」と言い、数字は嘘をつかないと諭します
そして、自分の仕事は人助けであり、それが巡って自分を助けるとも解きます
この内容はチャックに現実的な判断を与え、彼はその道に進むことになります
一見すると、これだけだとチャックの人生は無機質に思えるのですが、彼があの場所で足を止めて踊り出した意味は見えてこないでしょう
その理由を説明するのが第一章であり、それは祖母にダンスを習ったとかではなく、あの秘密の部屋で見てしまったから、というものになっていました
あの部屋はおそらく自分の死の瞬間を見れるものなのですが、あの時のチャックには「あれが自分である」という確信は持てなかったのでしょう
でも、人生を素晴らしいものにしたいと強く思い、それが人生を彩らせる寄り道を生んでいくことになります
その生き方を踏まえた上で第二章を見ると、彼自身があの場所で留まって踊った理由というものはわかります
そして、テイラーとジャニスに出会いますが、トリオでパフォーマーをしようという提案には乗らないのですね
彼はこの時点で自分がもうすぐ死ぬとは思っていなくて、まだまだ現実的な人生を歩みつつ、その中に余白を持とうと考えていました
その後、彼は妻と会い、息子を授かるのですが、その死の際に際して、夢のようなものを見ていました
それが第三章の内容であり、マーティーはかつての小学校の先生であり、フェリシアは妻だったことがわかります
彼の人生の中に登場した人物が記憶となって残っていて、その記憶の中にいるそれぞれがチャックの最期を感じているという感じになっていました
でも、実際にはチャックの脳内で行われていることであり、実際のマーティーたちはチャックの死すら知らないでしょう
そこにいる誰もがチャックを知らないというのは、言い換えると「成人した後にチャックに会っていない人」という意味になります
チャックは死の間際でかなり深い記憶への旅をしていて、マーティーは彼を投影している人物のように思います
それは、彼の授業にてホイットマンの詩に出会い、そこで人生の教訓の一つを学んだのでしょう
彼を通じてフェリシアに愛を告げようとしたのは、描かれてはいないチャックと妻との関係性があるのかもしれません
■ホイットマンの詩について
映画で登場する詩は、「Song of Myself」の一節となります
The past and present wilt―I have fill’d them, emptied them.
And proceed to fill my next fold of the future.
(過去と現在は枯れ果てる。僕はそれを満たし、空に還した。そして、未来の襞を満たし始めていく)
Listener up there! what have you to confide to me?
(天上の聞き手よ、僕に何を打ち明ける?)
Look in my face while I snuff the sidle of evening,(Talk honestly, no one else hears you, and I stay only a minute longer.)
(夕暮れの気配を嗅ぎながら、僕の顔を見てほしい(正直に話してくれ。誰も聞いていないから。そして、僕はあと少しだけここにいる)
Do I contradict myself?
(僕は矛盾してる?)
Very well then I contradict myself, (I am large, I contain multitudes.)
(ああ、矛盾しているんだろう(僕は大きくて、無数のものを抱えているからね))
I concentrate toward them that are nigh, I wait on the door-slab.
(僕は近くにいる人たちに心を向けて、ドアの近くで待っている)
Who has done his day’s work? who will soonest be through with his supper?
(誰が今日の仕事を終えたのか? 誰が夕食を一番早く済ませるのか?)
Who wishes to walk with me?
(誰が僕と一緒に歩みたいのだろうか?)
Will you speak before I am gone? will you prove already too late?
(僕が去る前に話してくれるだろうか? もう手遅れだと気づいてしまうだろうか?)
この詩は「Leaves of Grass」という詩集に収録されていて、その12篇の無題の詩の中の最初の詩として知られています
そして、第51節として、上記の詩が収められることになりました
(日本語訳は筆者による意訳となっています)
■逆再生の章立ての意味
本作は、第三章から始まる構成となっていて、人生を遡る旅を続けていきます
これらはすべてチャックが死の間際に見た走馬灯(第三章)が生まれた理由を紐解いていく流れになっていて、第二章にて「現実的な人生を歩んだ理由」、第一章にて「どうして現実的な人生を選んだのか」というのがわかるようになっています
すべては、幼少期に出会った人、言葉などによって構成されていて、人生とは多くの人の影響を受けて続いていくものだということがわかります
逆再生のような感じになっているのは、観客が現時点の人生において、今死んだら何を思い出すか?とか、どうしてそれを思い出すのか?というものを手助けしようとしているように思えます
なので、ある程度の人生経験があって、あらゆる苦難を乗り越えた先に「自分の人生の舵取りを自分でした」という自覚のある人の方が刺さるのだと思います
まだ、過程にいる人、指示待ちの人、親の言いなりになっている人には意味がわからない話であり、そう言った人生でも「自分で選んだ」と認められる人ならOKなのだと思います
人生の最後には走馬灯を見ると言いますが、そこで観る映像も重要だけど、どうしてそれを観てしまうのかというのも同じくらいに重要だと言えます
チャックは第三章にて妻と子どもを思い出さない人生となっているように見えますが、実際にはチャーリーやフェリシアに重ねていたり、ローラースケートの少女に投影したりしていたと思います
それがある意味残酷ではあるのですが、それはコントロールできない、やむを得ないもののように思います
実際のチャーリーが離婚して再婚しているとかは描かれませんが、親を看取れなかったという過去も、そこに子どもが登場しない一因のようにも見えてきます
星々は細胞が死んでいく様子で、そしてその中に最後まで残っているのが「愛だった」のだと思います
妻の声が最後に聞こえてきて、そして「愛している」と告げて世界は終わる
そこに込められたものを考えると、チャーリーの家族に対する想いというものも見えてくるように思えます
幼い時に親を失くす悲しみは一番わかっていて、それでもそう言ったものは避けようがない
子どもには何を伝えることができませんが、それは彼がまだ「受容」の段階に至っていないからでしょう
なので、彼の息子は現実を受け止めて、これから彼自身の人生を生きていくのだと考えられます
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
チャーリーは幼い頃に「より良い人生を生きよう」と決め、そして死の間際において、その想いを完遂したように描かれます
39歳という若さで死ぬことと、人生を生き抜いたということは並行するものではなく、80年生きても何もないという人生も無きにしもあらずだと思います
結局のところ、自分の人生は自分で評価するしかないし、夢と現実の間において、能動的な選択があれば、それはそれで良いのでしょう
チャックの人生を横で観ていると、彼はどうしてダンスの道を選ばないのかと思ってしまうように思います
それが祖父の言う現実的な路線ではないと言うものだけではなく、彼自身を支配していたのは「数字は嘘をつかない」と言う部分のように思います
彼の中には相反する様々な自分がいて、それを抱えて生きています
無謀な夢に挑戦したがる自分もいるだろうし、手堅い人生を歩もうとする自分もいる
そんな中で彼が会計士の道を選んだのは、仕事というものは自己完結ではないと悟っているからなのでしょう
祖父の言葉には色んな含蓄がありますが、彼自身は他人とは違う視点で自分の職業を観ているし、きちんと言語化しています
また、人生には余暇が必要で、それを担っていたのが祖母のようにも思います
彼女が祖父を支えたからこそ、祖父の哲学が生まれていて、このようなバランスが取られたものは、人生にとってとても重要なもののように見えます
チャックがあの時道端で立ち止まったのは、あの瞬間にそれが必要だったからなのですね
あの時点で彼は「余命を知らない」とナレーションが入るように、彼自身は残りわずかだとは思っていません
でも、元々体の問題を感じていて、さらにストレスのようなものもあったと思います
ここで余暇を取らなければ体も心も悲鳴を上げるだろう
そうしたインスピレーションが体を動かし、そしてそれに感化されたジャニスが彼と一緒に踊ることになります
チャックにとっては、精神的な揺らぎを正すためのものとして機能していて、人生を預けるものではないのですね
このような人生の両輪をきちんと動かすためには、自分のストレスなどを逃す先が必要になります
それは、心から現実を忘れる瞬間を作れるものであり、歩んでいる人生を否定しないものであると言えます
そう言った意味において、チャックにはダンスがあったということになっていて、こう言ったものがあることが「私の人生は素晴らしい」と言い切れる背景になってくると思います
映画は、どんな人生であれ、それを肯定できた人間というものを描いていて、そして、それは観客への問いかけにもなっていると思います
そういった観点において、そろそろ荷物が重たいなあと感じている人にとっての、人生の指針として優れた映画だったのかな、と感じました
■関連リンク
映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://eiga.com/movie/104121/review/06452366/
公式HP:
https://gaga.ne.jp/thankyou_chuck/
