■酸性雨にアルカリ成分を混ぜたらどうなるのかなとか、余計なことを考えてしまいましたねえ


■オススメ度

 

酸性雨パニック映画に興味がある人(★★★)

バカな人たちが右往左往するパニック映画が好きな人(★★★)

 


■公式予告編

鑑賞日:2024.9.4(TOHOシネマズ二条)


■映画情報

 

原題:Acide、英題:Acid(酸性)

情報:2023年、フランス、100分、G

ジャンル:酸性雨によって生きる場所を失う人々を描いたパニック映画

 

監督:ジュスト・フィリッポ

脚本:ヤシネ・バッダイ&ジュスト・フィリッポ

 

キャスト:

ギョーム・カネ/Guillaume Canet(ミシャル/Michal:工場への抗議で逮捕された男)

 

レティシア・ドッシュ/Laetitia Dosch(エリーズ・マザニー/Elise Mazany:ミシャルの元妻)

ペイシェンス・ミュンヘンバッハ/Patience Munchenbach(セルマ/Selma:ミシャルとエリーズの娘、寄宿学校の高校生)

 

マリー・ユンク/Marie Jung(デボラ/Deborah:ミシャルが頼る戸建ての女性)

マルタン・ベルセ/Martin Verset(ウィリアム/William:腎臓を患っているデボラの息子)

 

スリアン・ブラヒム/Suliane Brahim(カリン・ベッサード/Karin Besaad(ミシャルの恋人 )

Francine Champlon(シモーネ/Simone:カリンの母)

 

クレマン・ブレッソン/Clément Bresson(ブリス・マザニー/Brice Mazany:ミシャルの兄)

 

Pascal Parmentier(ベルティエ/Berthier:乗馬の先生)

Lorette Nyssen(ティファイン/Tiphaine:セルマのクラスメイト)

Blandine Lagorce(オーロレ/Aurore:セルマのクラスメイト)

 

Régis Maizonnet(クリスチャン/Christian:抗議を受ける工場長)

Soufiane Menouni(セリム/Selim:抗議するミシャルの同僚)

Michaël Perez(フランク/Franck:暴れ出すミシャルの同僚)

 

Maxime Tshibangu(オマール/Omar:ミヒャルの新しい職場の同僚)

 

Marie Bokillon(ポーリン/Pauline:エリースの同僚)

 

Mathieu Peralma(アクセル/Axel:?)

Frédéric Cuif(バーナード/Bernard:?)

Antoine Coesens(ティエリー/Thierry:?)

Eric Pfaff(エンツォ/Enzo:施設の利用者?)

 

【その他】

Thitsady Voravong(ボコられるCRS=フランス共和国保安機動隊)

Marie Elisabeth Cornet(カリンの看護師/Infirmière)

Adèle Sierra(カリンの看護師/Infirmière)

Nicolas Delys(介護士/Aide-soignant)

Armand Eloi(病院の老人/Vieil homme hôpital)

 

Vital Philippot(ラジオ局長の声/Préfet radio)

Marianne Viguès(運転手/Conductrice)

Christian Milia-Darmezin(道の案内人/Compagnon route)

Marc Wathelet(DDEの職員/Ouvrier DDE)

Clément Bertani(瀕死のフランス設備省DDEの職員)

Pierre Olivier(サイロの軍人/Militaire silo)

Youri Garfinkiel(通行禁止の谷の軍人/Militaire vallée impracticable)

Mohamed Kerriche(通行禁止を突破する父親/Père famille vallée)

Marc Kolodziej(倒れ込む少女の父)

Blaise Ludik(橋の誘導軍人/Officier pont)

Sylvain Begert(巡査/Gendarme RD1)

Vincent Do Cruzeiro(ピザをトラックで運ぶ若い男)

Valentijn Dhaenens(ベルギーの救助キャンプのボランティア/Volontaire secours)

Wito Geerts(ベルギーの救助キャンプのボランティア/Volontaire secours)

Sara Stuckens(ベルギーの救助キャンプのボランティア/Jeune volontaire)

Céline Groussard(ベルギーの救命キャンプの看護師/Infirmière belge)

 


■映画の舞台

 

フランス:

アラス/Arras

https://maps.app.goo.gl/tx3Y51NBNhipFGe1A?g_st=ic

 

ベルギー

シメイ/Chimay

https://maps.app.goo.gl/ad476C2GgLXzXm6U7?g_st=ic

 

フェルネルモン/Fernelmont

https://maps.app.goo.gl/1sByn4yhQqiJ6pvXA?g_st=ic

 

ロケ地:

フランス:エソンヌ県

ペクーズ/Pecqueuse

https://maps.app.goo.gl/3fhyMs4WbtR21Mdv9?g_st=ic

 

ベルギー:

ヴィゼ/Visé

https://maps.app.goo.gl/uxddpPQaefhhcTKf7?g_st=ic

 

ナミュール州

フォール・デミーヌ/Fort d’Emines

https://maps.app.goo.gl/mpVep56YUoKy2N3u9?g_st=ic

 

エノー州

ブレン=ル=コント/Braine-le-Comte

https://maps.app.goo.gl/xv9pLmNyV1HDaywc6?g_st=ic

 


■簡単なあらすじ

 

フランス北部のアラスに住んでいるミシャルは職場の労働改善のストライキにて機動隊を殴ったことで収監されていた

今は仮釈放中だが、妻エリーズとは離婚し、娘セルマとは時折会っていた

今のミシャルを支えているのは元同僚のカリンで、彼女は足の手術をするためにミュンヘンに向かう予定になっていた

 

ある日、エリーズから電話を受けたミシャルは、彼女と共に寄宿学校にいるセルマを探しに出かけた

それは、世界中で問題になっている酸性雨がフランスにも押し寄せているというもので、緊急の避難が呼び掛けられていたからである

 

ようやくセルマを見つけ出した二人は、ミシャルの兄ブラスの指定する場所へと向かおうとした

だが、ミシャルはカリンのいるアントワープへ向かいたいと思い、エリーズと口論になってしまう

そうこうしているうちに雨は徐々に彼等のいる方向に向かっていて、余談を許さない状況になっていくのである

 

テーマ:本音と建前

裏テーマ:生き残るためにすべきこと

 


■ひとこと感想

 

酸性雨と言う久々に聞いたワードが襲ってくると言う内容で、想像を超えるかどうかを楽しみにしていました

結果、想像以上に酷い映画になっていて、擁護すべきところがほぼ無いと言う内容でしたね

 

詳しくはネタバレ感想で書きますが、ディザスター系パニック映画の悪いところを凝縮したような映画だったと思います

とにかくワーキャー言っているだけで、理性的な行動がほとんどなかったですね

見どころの橋のシーンも思ったよりもスケールが小さくて、それで終わりなの?という感じになっていました

 

主人公はストライキで暴れて機動隊を怪我させて捕まっている犯罪者だし、元妻は何となく元夫の兄と良い感じだし、娘はクラスメイトにあれを食らわせて反省しないキャラでした

この三人が逃げる展開なので、全滅しても心が傷みそうに無かったですね

 

劇場の音響設備の影響なのかわかりませんが、肝心なところで劇伴がブツ切れになっていたのは気になってしまいました

また、後ろの二人組が上映中もずっと小言で喋っていて、いまだにこう言うマナーすら守れない人がいるんだなあと思ってしまいました

 


↓ここからネタバレ↓

ネタバレしたくない人は読むのをやめてね


ネタバレ感想

 

酸性雨に関しては、10年前くらいに社会問題化していて、それが様々な規制や技術革新によって、かなり緩和されてきたように思います

ちょうど光化学スモッグとかが問題になっていた頃の話で、久しぶりにこのワードを聞いたなあと思いました

とは言え、映画のタイトルは「酸性雨」ではなく、単なる「酸」だったりします

 

映画は、ツッコミどころしか無い映画で、車の性能を考えると「雨雲レーダー」をアプリで見て逃げたら良いのにと思ってしまうところですね

ひょっとしたら、フランスにはそう言ったものがないのかもしれませんが、ものすごくざっくりとした「この辺で被害出てますアプリ」は何とか存在していました

 

その他にも、車のボンネットが酸でやられてナビシステムが使えなくなるのに、ホイールとかは無事で普通に走り続けられていましたね

タイヤ自体は酸で溶けなくても、その他の金属部分はダメになると思うので、あんな荒い運転をしていたらタイヤが外れてしまうんじゃないかなと思ってしまいました

 


酸性雨について

 

酸性雨とは、水素イオン係数(ph)5.6以下の雨のことを酸性雨と言いますが、実際には雪や霧、粉塵などの「上空から地上に降りてくる酸性降下現象の総称」となっています

通常の雨は「やや酸性」で、それは純粋な水ではなく、二酸化炭素、火山活動によって生じた硫黄酸化物が溶け込んでいるから、とされています

酸性が強いのを「phが低い」と言い、大気中に二酸化炭素だけが溶け込んだ状態だとph 5.6になるとされています

日本の平均的なph値は4.8ですが、これは比較的酸性になっている状態であると言えます

 

原因については諸説ありますが、わかりやすいのは火山活動による二酸化硫黄や窒素酸化物の発生で、これらが大気中で硫酸や硝酸に変化下のちに、雨となって融解するとされています

また、アンモニアが待機中の水と反応して塩基性になり、それが酸性の降雨によって地上に降りた際に硝酸塩に変化するとも言われています

 

酸性雨が問題視され始めたのは、19世紀のイギリスで、この時期は産業革命真っ最中のことでした

マンチェスターのスモッグというR・スミスの論文にて、1878年の段階で言及がされています

また、イギリスの石炭・コークスの消費増大によって、排出ガス問題が浮上し、それが雨の酸性化進行させたこともわかっています

 

日本の場合は、1970年頃から酸性雨が降り出し、1980年代にはアジア諸国の経済発展に伴って問題視されるようになっています

中国大陸からの偏西風に乗ってくるものもあり、特にこの地域の石炭の埋蔵量が多いこともあって、北京をはじめとした内陸部の工業地帯ではかなりの大気汚染が広がっているとされています

ちなみに酸の強さを表すph値ですが、それによると硫酸・塩酸・スルホン酸>カルボン酸>炭酸>フェノール類となっているとのこと

人の皮膚の酸性度はph4.5〜6.0となっていて、これは弱酸性ではありますが、生物学的には中性と呼ばれています

アルカリ性に傾くと敏感肌になって細菌による炎症が起きやすくなり、酸性に傾くと脂性肌となり、肌がベタつくと言われています

 

映画の酸性度はもっと高いもので、硫酸、硝酸、塩酸などは皮膚に炎症をもたらします

また、水酸化ナトリウムや、水酸化カリウムなどのアルカリ性物質の場合は、皮が腐食することになるので、皮膚の酸性度と乖離する物質が付着した場合は、速やかに大量の水で洗い流す必要があるとされています

 


勝手にスクリプトドクター

 

本作は、大枠では「酸性雨から逃げる父と娘」となっていて、彼らが助かるかどうかという物語になっています

災害パニック系の物語で、そのパニックの源泉が「理由もわからずに降っている酸性雨」ということになります

彼らは民間人で、科学の知識もほとんどなく、ニュースなどの被害状況を見て、雨に打たれたらヤバいという感覚で逃げ惑うことになりました

政府の公式見解とか分析結果などは一切なく、あくまでも民間人の視点でいきなり殺人級の酸性雨が降ったら、というものになっていました

 

これ自体はよくある話で、どうやって逃げ続けるんだろうとか、どうやったら収まるんだろうかという推移を見ていくことになりますが、原因を特定できる人物とか、対策にあたる機関などは登場しないので、サバイバル要素だけが特化しています

その対象者が仲の悪い父と娘となっていて、それゆえに「生命よりも感情が優先」という訳のわからない展開になっています

父も娘も人としてどうなの?という行動が多く、助かって欲しい感はそこまで感じません

特に病気の親子の家に世話になるシーンなどでは、酸性雨よりもタチの悪い人間に絡まれてしまった感の方が強かったように思いました

 

このあたりを狙っているのなら良いのですが、映画的にはストレスマックスの内容で、それを解消するにはこの親子が無惨にも死ぬというパターンだったと思います

でも、映画はそのような展開にはならず、多くの人に迷惑をかけつつも生き残るという、この親子は擬人化された酸性雨だった、というふうにも思えてしまいます

人当たりなどは接してもないとわからないのですが、それは肌に酸性雨がふれないとわからないところに似ているようにも思えます

でも、それで面白いかは別のように思います

 

また、酸性雨が降ったことによる社会への影響の精査はほとんど行われておらず、インフラは無事、車は酸性雨の中でも走れるけど、なぜかナビとが先に死んでしまう

自動運転ナビが配備されている世界で、雨雲レーダーのようなシステムが起動していないのですが、これはフランスではそこまで進んでいないからなのかもしれません

土地によっては、雨の行方を心配する必要がない国もあるので、日本のように台風が来まくるような場所だと、そう言ったものの普及も急ピッチで、誰もが使える情報として浸透しているのかな、とも思いました

 


120分で人生を少しだけ良くするヒント

 

本作は、サバイバルロードムービー的なところがありますが、親子なのに行き先が違うというものがありました

母親に会いたい娘と恋人に会いたい父親

この二人が行動を共にして、さらにインセンティブは父親側にあるのでおかしな方向へと進んでいきます

おそらくは、おかしな行動をさせたくてこの設定にしているので、前述のように「迷惑な酸性雨の擬人化」というものが想定に入っているのかな、と感じました

 

この設定が裏設定のような感じになっていて、あまり伝わっていないところが微妙にも思います

また、映画的なビジュアルが弱く、途中の鉄橋などが崩落して、人が酸性化した川に落ちまくって死にまくる、ぐらいのインパクトのある映像があった方が良かったように思います

車に関しても、タイヤは問題なくてもシャフトなどが腐食して壊れるとか、動かなくなる過程にリアリティが欲しかったですね

タイヤのホイールのネジが緩むとか、車軸が傾くことによってコントロール不能になるとかの方が面白くて、ナビが死んで操作不能になるよりは、トップスピードに達した段階でコントロール不能になって、さらに人々に迷惑をかけるとかの方が良かったでしょう

 

最終的にこの親子がどうなるかというのがメインになりますが、やはり「安全圏に逃げてからの絶望的な死」が1番似合っているように思います

筆者の性格の悪さが露呈していますが、橋が崩落して母親が死亡、恋人の方にたどり着いたけど、そこも建物が悲鳴を上げていて、いつ何が起こってもおかしくないという状況になっている

そうした中で、酸性雨の擬人化が迎える末路といえば、自然的な作用によって消滅するという流れになるので、政府などの対策機関が動き出して、酸性雨の濃度を下げようと「アルカリ性」の成分の何かを空から撒くみたいなトンデモ対策が始まってしまうなどが面白いでしょう

その対策が裏目に出て建物が崩落するとか、人体に悪影響が出てしまうという最悪な展開の方がカオス感があるのかな、と感じました

「酸性度を下げよう」「よしアルカリ性の雨を降らそう」からの「やりすぎて人体に悪影響」という流れ

これによって、自然を痛めつけた罰を人間が自ら被るというメッセージが込められるので、単なるサバイバル映画とは一線を画せたのではないかな、と感じました

 


■関連リンク

映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)

https://eiga.com/movie/102046/review/04212719/

 

公式HP:

https://longride.jp/acide/

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投稿者 Hiroshi_Takata

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