■映画の内容がヤバいので、レビュー記事もヤバくなっている【閲覧注意です】


■オススメ度

 

ティモシー・シャラメさんが好きな人(★★★)

カニバリズムが大丈夫な人(★★★)

 


■公式予告編

鑑賞日:2023.2.23(MOVIX京都)


■映画情報

 

原題:Bones and All

情報:2022年、アメリカ、130分、R18+

ジャンル:人肉食の少女が同族と出会う中で生き方を模索していくカニバリズム満載のホラー&ヒューマンドラマ

 

監督:ルカ・グァダニーノ

脚本:デヴィッド・カイガニック

原作:カミール・デアンジェリス/Camille DeAngelis『Bones All(2016年)』

 

キャスト:

テイラー・ラッセル/Taylor Russell(マレン・イヤーリー:人肉食に苛まれる18歳の女性)

ティモシー・シャラメ/Timothée Chalamet(リー:マレンが旅先で会う同族の青年)

 

マーク・ライランス/Mark Rylance(サリー:マレンの同族で、彼女を執拗に追う不気味な男)

 

マイケル・スタールバーグ/Michael Stuhlbarg(ジェイク:キャンプ場で出会う同族のペア)

デヴィッド・ゴールドソン・グリーン/David Gordon Green(ブラッド:キャンプ場で出会う同族のペア、警官)

 

アンドレ・ホランド/André Holland(フランク・イアーリー:マレンの父)

クロエ・セヴィニー/Chloë Sevigny(ジャネル・カーンズ:マレンの母)

ジェシカ・ハーパー/Jessica Harper(バーバラ・カーンズ:マレンの祖母)

 

Anna Cobb(カイヤ:リーの妹)

 

Sean Bridger(バリー・クック:スーパーで絡んでくる酔っ払い)

Jake Horowitz(ランス:リーがカーニバルで出会う店員)

Marshall Jackson(ランスの店で遊ぶ少年)

 

Kendle Coffey(シェリー:マレンが指にいたずらする友人)

Madeleine Hall(キム:マレンのクラスメイト)

Ellie Parker(ジャッキー:マレンのクラスメイト)

 

Christine Dye(旅券販売店の女店員)

Marcia Dangertield(ミネソタのガソスタのクリーク)

Max Soliz(ミネソタのガソスタの整備士)

Burgess Byrd(ゲイル:母の担当看護師)

 


■映画の舞台

 

1988年、

アメリカ: バージニア州

 

ミネソタ&インディアナ&メリーランド&ケンタッキー&アイオワ&マイアミ

 

ロケ地:

アメリカ:オハイオ州

Cincinnati/シンシナティ

https://maps.app.goo.gl/XkN7qaYgR1z9rKc66?g_st=ic

 

Chillicothe/チリコシー

https://maps.app.goo.gl/opixzarTz7T8ebqc9?g_st=ic

 


■簡単なあらすじ

 

1988年、バージニア州のタウソン大学に通っていたマレンは、父の言いつけを無視して深夜に友人シェリーの家を訪ねた

クラスメイトが数人はしゃいでいる中、妙な雰囲気になったマレンは、思わずシェリーの指を噛みちぎってしまう

慌てて帰宅したマレンだったが、父は「すぐに荷物をまとめろ」と言い、警察が到着するまでに逃げ出した

 

それからメリーランドに来た二人だったが、朝目覚めると父はおらず、カセットデッキとテープと置き手紙が残されていた

それは度重なるマレンの食人癖による放蕩に耐えられないというもので、手紙と一緒に出生証明書が同封されていた

そこでマレンは単身、母ジャネルの出生地であるミネソタを目指すことになった

 

バス停に来たマレンは、そこで妙な視線を感じる

声をかけてきたのは高齢の男サリーで、「匂いで同族だとわかった」という

彼を追って、ある住居に入ったマレンは、そこで一夜を過ごすことになる

リビングには瀕死の老婆がいて、サリーは翌朝にそれを食べ始めた

マレンも同じようにそれで腹を満たすものの、サリーの存在が怖くて逃げ出してしまう

 

そして、インディアナである青年に出会った

彼も同族で、名はリーと言う

マレンとリーはお互いに惹かれあいながら時間を過ごすものの、決して平坦な道ではなかったのである

 

テーマ:完璧なる同化

裏テーマ:食の愉しみ

 


■ひとこと感想

 

カニバリズムと言うことだけ情報を入れて参戦

R18+なので覚悟していましたが、個人的にはマシな方だったかな(絶対に麻痺してる!)と思いました

カニバリズムに関しての素養はありませんが、食欲以外にも性欲も内包していて、その対象者に対するものとか、同族に対する思いなどが混同しているように思えました

 

映画はティモシー・シャラメさんで若い女の子を呼び寄せて、まさかのスプラッターで地獄に突き落とす変態性が全開ですが、マレンとリーのキスシーンの危うさと言うものを感じてしまいます

タイトルが意味深で、道中で同族男子2名との会話に登場し、その意味をラストで知ると言う流れになっています

 

本作は誰にも勧められない系ではあるものの、本日が祝日のためか半分以上入っていたのは驚きましたね

しかもカップルが多かったので、映画館の後に何を食べるんだろうと、余計な心配をしてしまいました

 


↓ここからネタバレ↓

ネタバレしたくない人は読むのをやめてね


ネタバレ感想

 

カニバリズムがテーマになっていますが、実質ラブロマンス映画と言って差し支えがありません

また、カニバリズムの流儀に関するお話でもあるので、より人間として人を食すかという内容にもなっていました

前半で登場するサリーは、作法として同族は喰わない宣言をしますが、彼がそうするのは「自分が弱いから(食べられる側になるから)」だと言えます

「食べた後も一緒にいてくれた」と彼は言い、それが執着になっていました

 

一方のリーは、家族(特に妹)を愛しているが故に距離を置き、それゆえに縛られているようにも見えます

サリーの蛮行は彼を狂気に変えますが、その代償はとてつもなく大きなものでした

 

ちなみに映画は章立てになっていて、「MD=メリーランド」「OH=オハイオ」みたいに続き、途中で「AUGUST=8月」みたいになっていました

地名の略し方が独特で、書き出してみると、「MarylanD」「OHiO」「INdiaNa」「KentuckY」「IowA」「MiNNesta」「MIamI」という不思議な箇所が大文字になっていました

これに意味があるのかはわかりませんでしたが、頭と最後か、隣り合う子音というつながりぐらいしかわかりませんでした

 


カニバリズムについて(内容がエグいのでダメな人はスルーしてください

 

カニバリズム(Cannibalism)とは、「動物同士の共食い」のことを言いますが、これが人間同士だと「ヒューマン・カニバリズム(Human Cannibalism)」と呼ばれます

カニバリズムの言葉の由来は「アンティル諸島にあるカリブ島」の17世紀頃の記録でした

この他にも、ニューギニア、ソロモン諸島で共食いの歴史があり、メラネシア地域(オーストラリア大陸の北側の諸島)には「人肉の市場」というものがありました

かつてのフィジーも「人喰い島」と呼ばれていて、コンゴ、アマゾン、ニュージーランドのマウリ族、歴史を遡るとネアンデルタール人なども共食いを行なっていたという記録があります

 

同じコミュニティ内の人を食うことを「End-Cannibalism」と言い、これらは亡くなった人の肉体を食うという儀式で、死者の魂を子孫の中に残しておく、という風習から来ています

アメリカの地理学者のジャレッド・ダイヤモンドJared Diamond)は著書『Guns, Germs and Stell』の中で、「伝統的なニューギニアの高地で共食いが起こった原因は、タンパク質不足による飢餓である」と記しています

これらの伝統的なものとは別に、19世紀の難破船エセックス号とメデューズ号の生存者は遠征隊と一緒に生存のために共食いをしたという記録もあります

これらは死亡した人の肉体を食べることで、「ネクロ・カニバリズム」という言い方をします

 

近い歴史では、第二次世界大戦中のレニングラードで起きた872日間の包囲戦にて、1941年から1942年の間に共食いが起きたという報告があります

また、ナチス支配下のソビエトにて、280万人の捕虜が死亡した際にも同様のことが起こったとされています

日本でも、1945年の父島での事件、ニューギニア地域での将校の指揮下で組織的な共食いがあった、という記録もあります

この時のオーストラリアの記録では100件以上もの共食いに関する資料が残っています

 

映画のような「人を食べないと生きていけない」という人種の記録はあまりありませんが、有名な猟奇的な食人と言えば、ウィリアム・ビューラー・シーブルック(William Seabrook)による研究のために、事故死した健康な肉体を調理して食べたとされています

映画の場合は、これらの実際の事例とは異なるのですが、マレンとリーの行為は、セックスの延長線上のように思える行為に見えますね

 


完全なる同化と寄り添いの意味

 

映画のマレンとリーは食人族という設定で、サリー&ジェイク&ブラッドを含めて「イーター」という言い方をしていました

ジェイクとブラッドは後天的のようですが、マレン、リー、サリーは先天的なイーターであると言えます

衝動のようなものがあって、それを抑えられないのですが、それは人肉による栄養素の補給というようには描かれていませんでした

ある種の暴力衝動に近い印象があって、人を食べなければ生きていけないというよりは、その衝動が突如現れる、という感じになっています

 

サリーの場合は、そこに「作法」というものが備わっていて、同族は食べないというルールと、死にかけている人を食うというものがありました

死にかけている人がわかるという嗅覚を持ち、イーターの存在も認知できる能力でした

もっとも、あんな食べ方をして血まみれだと、イーターでなくてもわかりそうなもので、普通に考えて数メートル先にいるだけでヤバい匂いが立ち込めるはずです

また、死体を全部食べるのかはわかりませんが、残したらバレるし、部屋も汚れるので、事件化していない理由がわかりません

特に、リーはその辺の男を捕まえては殺して食うので、行方不明になった人がいれば警察も動くだろうとは思います

 

この辺りの現実離れしたところは目を瞑るとして、映画の根幹は「異性を食うという行為は、同性とは意味が違う」というところでしょうか

劇中でわかる範囲だと、マレンは同性のシェリーの指を食おうとするし、リーが狙った二人は共に男性でした

リーからすれば、女性を狙う方が体力的にも楽だと思うのですが、異性は食べるという感覚にならない感じになっていました

食人衝動の正体が飢えならば、異性同性は関係なく、弱者を喰らう世界になります

そうすると、必然的に「子どもや女性」などが狙われる可能性が高いのですね

なので、異性に対しての場合は「性欲が優先される」のかなと思いました

 

セックスは結合ですが、凹凸が組み合わさるだけで同化には至りません

でも、共食いだと消化に向かうので、物理的な同化に近いような印象がありますね

なので、リーはマレンに自分を食べさせるのですが、それは従来の食人とは意味が違うのですね

ここまで来ると、ある種の性的嗜好の部分に入ってくるので、本作はホラーというよりはラブコメなのかなと思ってしまったりもします

 


120分で人生を少しだけ良くするヒント

 

恋愛が盛り上がる過程において、共通点が同じだと親密度が高くなるというのがあります

これを「類似性の法則」と言い、恋愛テクニックの主流であると思います

この他にも「相補性(無いものを補い合う)」「開放性(情報の開示の積極性)」などがあり、「秘密の共有」というのもかなりの効力を発揮します

 

この映画の場合は「イーターである類似性」「それを人に知られてはいけない秘密の法則」などが根底にあって、サリーはそこに「マレンが理解できない開放性」を持っていました

サリーの特殊な考えをマレンは理解できないのですが、それ以前に老人と若者というところで、経験値の分断が起こっています

サリーは同種は食べないけど、同種を感知する能力に長けているのですが、彼は常に孤独だったと思います

現に、彼は単独行動になっていて、それは彼が人から疎まれる要素が多かったから、であると推測されます

 

このサリーの苦悩はきちんと描かれていて、マレンに固執する理由が「食事の後に横にいてくれたから」というものでした

一見すると意味が分かりにくいのですが、これまでの食事仲間はさっさとどこかに行ってしまって、食後の一服みたいなものがなかったのかなと思いました

満腹時に感じる幸福感の共有というものがサリーには大切で、それがマレンならば大丈夫なのではと思っていました

でも、実際には「食事に疲れて横にいただけ」で、彼女には「食後の余韻を味わう」という概念すらありません

 

このあたりの感覚の違いは、人間同士(普通のね)だと「食後に一服(タバコ)するかしないか」という価値観に似ていますね(あるいはセックスの後儀など)

食事の味の余韻を消したくなくて吸わない人もいれば、食後の一服のおいしさがやめられないからという人もいます

私はこれまでに一本も吸ったことがないのでわからないのですが、ググったところ、「口の中が濡れていると、よりタバコを美味しく感じる」のだそうです

また、タバコの苦味(知らんかったわ!)が食事の中では味わえない味覚となっていて、それゆえにタバコで食事が完結するのだそうです

タバコを吸わなくてもコービーを飲む人がいると思いますが、これに似た感覚が味わえるかもしれません

 

話は逸れましたが、一つの欲が満たされることで、その欲を共有した相手というのは特別に感じるものだと思います

一緒に寝た、一緒に食べたなども同じことで、本来は隠したいものをオープンにして、それを共有したという事実は、より相手を意識させるきっかけを生みます

そこに「秘密」が絡んでくると鉄壁で、恋愛における至上のテクニックは「人に言えない欲求を一緒に満たすこと」だと言えますね

してはいけない人とセックスするとか、してはいけない場所でセックスするとか、色々とエロい方面で考えた人もいると思いますが、授業を抜け出して一緒に甘いもの食べた、みたいな健全に近いものもありますからね

映画の場合は、そのゲージを最大限まで振り切ったものになっていますが、イーターからすれば至福のアフタータイムだったのかもしれません

 


■関連リンク

Yahoo!映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)

https://movies.yahoo.co.jp/movie/385905/review/d5edfde7-c646-4625-89e2-34e3103e9650/

 

公式HP:

https://wwws.warnerbros.co.jp/bonesandall/

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投稿者 Hiroshi_Takata

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