■シャワー派の私でも入りたくなるけど、今のスタイルだと確実に間違われる気がする
Contents
■オススメ度
銭湯が好きな人(★★★)
腰に手を当てて風呂上がりの牛乳を飲む人(★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2023.2.24(イオンシネマ京都桂川)
■映画情報
情報:2023年、日本、126分、G
ジャンル:銭湯を巡る人々の交流を描いたヒューマンドラマ
監督:鈴木雅之
脚本:小山薫道
キャスト:
生田斗真(三浦史朗:「まるきん温泉」を辞めたい兄、建築家)
(幼少期:長尾翼)
濱田岳(三浦悟朗:「まるきん温泉」を続けたい弟)
(幼少期:嶋崎希祐)
秋山いずみ(橋本環奈:「まるきん温泉」の看板娘)
小日向文世(横山正:「湯道」に魅せられた定年間近の郵便局員)
藤田朋子(横山雅代:正の妻)
生見愛瑠(横山舞香:正の次女)
米野真織(横山冴香:正の長女)
天童よしみ(小林良子:歌うのが好きな常連)
クリス・ハート(竜太:受刑者)
(幼少期:ジェイデン・アンダーソン)
戸田恵子(高橋瑛子:大作の妻)
寺島進(高橋大作:料理屋「寿々屋」の店主)
厚切りジェイソン(アドリアン:日本語堪能な外国人)
森カンナ(山岡紗良:アドリアンの婚約者)
浅野和之(山岡照幸:紗良の父)
堀内敬子(山岡由希子:紗良の母)
笹野高史(堀井豊:常連客)
吉行和子(堀井貴子:豊の妻)
吉田鋼太郎(太田与一:超辛口の評論家)
朝日奈央(植野悠希:太田の担当編集者)
ウエンツ瑛士(DJ FLOW:ラジオ「今夜も浸からナイト」のDJ)
梶原善(荒井正章:不動産屋の店長)
大水洋介(鎌田一彦:不動産屋の従業員)
角野卓造(ニ之湯薫明:「湯道」の家元)
窪田正孝(梶齋秋:薫明の業躰)
夏木マリ(秋山夙子:山奥に住む老婆)
柄本明(風呂仙人:謎多き白髪の老人)
酒井敏也(メガネをかけたヤーさん)
おかやまはじめ(循環温泉の支配人)
秋山ゆずき(細井幸恵:史朗の部下)
栗田芳宏(湯器を扱う骨董屋)
山寺宏一(ナレーション)
■映画の舞台
まるきん温泉
ロケ地:
京都市:下京区
叶匠寿庵
https://maps.app.goo.gl/5aBggS2jrg7wmNir5?g_st=ic
京都市:東山区
力餅食堂 加藤商店
https://maps.app.goo.gl/eXVMAtcz94QZkkPJA?g_st=ic
京都市:右京区
さがの温泉 天山の湯
https://maps.app.goo.gl/Ru6ggYEuAVL2GXFN9?g_st=ic
望雲亭
https://maps.app.goo.gl/66KEqZWwvyXTiXjr7?g_st=ic
京都府:京丹後市
丹後の湯宿ゑびすや
https://maps.app.goo.gl/TUeRbZajakVWTtgV8?g_st=ic
兵庫県:神戸市
月光園鴻朧館
https://maps.app.goo.gl/yZJEQ1WRJp2RWV3UA?g_st=ic
有馬温泉 月光園游月山荘
https://maps.app.goo.gl/c5cyhFTmxwT9YYSJ8?g_st=ic
兵庫県:豊岡市
喫茶 万作 第二楽章
https://maps.app.goo.gl/py6GriYnTma72qKz6?g_st=ic
和歌山県:田辺市
山水館 川湯みどりや
https://maps.app.goo.gl/nohJ5QVSBqG6vra18?g_st=ic
■簡単なあらすじ
東京で建築士をしている兄・史朗は、1年前に亡くなった父の葬儀にも出ず仕事に明け暮れていたが、結果を出せずにいた
相続に関する手続きも差しせまる中、実家に戻った史朗は、銭湯「まるきん温泉」を継いでいる次男の悟朗と再会する
悟朗は無愛想に兄を突き放し、その間に挟まれたアルバイトのいづみは、とりあえず史朗に銭湯のことを教え始めた
銭湯には多くの人が訪れ、仲良く訪れる老夫婦や、家の風呂が改装中の風呂マニア、歌うのが趣味の女性なども訪れる
また、「まるきん温泉」に薪を持ってくる風変わりな老人もいたが、利用者の高齢化に伴って、存在意義を無くしかけていた
ある日、史朗は意を決して、今後の「まるきん温泉」のプランを話すものの、それが原因で兄弟喧嘩が始まってしまう
そのはずみでガスボンベなどが倒れ、ボヤ騒ぎを起こした史朗は、数日ほど入院することになってしまう
臨時休業やむなしと思われたが、史朗は常連の風呂仙人の助けを借りて営業を始めた
一方その頃、温泉評論家の太田は、次なる執筆対象に「銭湯」を選んでいて、その視察として、「まるきん温泉」を訪ねて来るのであった
テーマ:湯道とは何か
裏テーマ:銭湯の効能
■ひとこと感想
お風呂の映画という情報くらいしかなく、ざっくりとしたヒューマンコメディなんだろうなあと思って参戦
読みはさほど狂いもなく、ほのぼのとした日常が繰り広げられていました
銭湯が結ぶ縁ということで、さまざまな人々のこだわりが見えてくる内容になっていて、つい「自分のマイルールはなんだろうか」と考えてしまいます
先代からの銭湯をどうするかという問題、存在意義と湯道の関わり、それらがうまくまとまった脚本になっていました
湯道を極めようとするマニアがいる一方で、妻との交流の場になっている夫婦がいたり、老若男女の事情がたくさん絡んでいきます
そんな中で、時代に取り残された銭湯はどうやって生き残っていくのか、というのが命題ではありますが、地元の銭湯愛だけで支えるのは限界があるように思えました
このあたりの未来地図はややぼやかした印象がありますが、風呂屋を残しつつ、他の要素を取り入れた改築をするというのはアリでしょう
映画はそこまで到達はしませんが、兄弟が一緒に歩もうと衝突しあうところは良かったように思えました
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
個人的には風呂に思い入れがなく、ほとんどシャワー派なので、湯に浸かることはあまりありません
普通の民家の風呂なので、足も伸ばせないし、管理は大変だしというのもありますが、そもそも「同じ場所でじっとしていられない」のですね
なので、一時期流行った半身浴をするのでも、Bluetoothスピーカーとスマホをつないで音楽をかけて、なんとか20分程度浸かることはできました
映画では「43度」が登場し、それは熱すぎやしないか論争がありましたが、そういえばウチの場合は「44度」だったなあと思い返していましたね
入りたては熱いですが、10分もすれば下がって来るので、追い焚きをせずにちょうど15分程度いられる温度だったように思います
物語は兄弟の諍いがアクシデントによって修復していく流れと、そこで働くアルバイトのいづみの秘密が絡んできます
予告編でネタバレしまくっていましたが、物語の展開がわからない編集になっているのは幸いでしょうか
とは言っても、ベタな展開を楽しむ映画なので、万事転がればOKなのかなと思ってしまいます
■「道」とは何か
日本のみならず、何かを極めたり、目的に向けて必要なステップを刻むことを「道」と称し、さまざまな学問などがあります
これらは中国思想の「道」の概念とは少し違って、古代日本における「学科」の意味になります
古代日本の大学寮(=律令制の式部省、現在の人事院)では「明経道(儒学)」「算道(算術)」「音道(漢音の発音=読み)」「書道(書き)」「紀伝道(中国史)」「明法道(法学)」があり、陰陽寮(=律令制の中務省)では「陰陽道(天文学、暦、占い)」「暦道(暦)」「天文道(天文学)」というものがありました
また、展薬寮(宮内省の医療機関)では、「医道」という物がありました
「道」とは、人や物が通るべきところであり、宇宙自然の普遍的な法則や根本的実在、道徳的な規範、美や真実の根元などを広く意味する言葉となっています(Wikipediaより引用)
道家(老荘思想、諸子百家)や儒家(儒教、孔子)によって説かれることになりました
これらは一人の人物によって体系されたものではなく、時代を変遷して、多くの人によって追記編集されていったものでした
老子道徳経の場合、「道」としての記述は以下の4つの思想及び人物に区別されるとされています
「老子」では、「道」「徳」という概念があり、「道は無為と同一視する」という普遍的な法則があります
「無為」とは自然のままで、作為的ではないという意味で、その言葉を当てはめると、自然に則った物」ということになります
また、「道は実在である」とか、「無私によって聖人としての私を成就する」とか、「民として、無知無欲であること」とか、いろんな物があります
次に「荘子」では、「自然ならば分散するのが当たり前」ということで、「集成はすなわち分散、破壊することである」という概念があります
それらを通じて、一つのことを知るという考えがありました
「孔子」では、「天道」を継承し、天地人の道を追求した歴史があり、『論語』などに書き記されています
また「孟子」では、「中庸」という概念があり、「天之道」「人之道」があり、「人之道は誠である」という基本概念があります
学術的な要素に加えて、中華思想の自然に対する考え方が取り入れられて進化したのが、現代でいう「道」のイメージに近いですね
この映画で取り扱われる「湯道」も、学術的なものもあれば、道徳的な教義も含まれているように思えました
■銭湯事情について
「銭湯」とは、「風呂屋」「湯屋」と呼ばれる「公衆浴場」のことを指します
現代では、スーパー銭湯というほとんどアミューズメントパークみたいな銭湯もありますね
ボイラーで大量の湯を沸かすため、高い排気用の煙突がありますが、中には自然の温泉を利用しているものもあります
銭湯は「公衆浴場法」という法律があり、「公衆を入浴させる」「物価統制令に基づいた金額を徴収する」という規定があり、適用には各都道府県の条例に則ることになります
この条例によって、「普通公衆浴場」と「その他の公衆浴場」に分類され、「普通公衆浴場とは、日常生活における保健衛生上必要な入浴のために設けられた公衆浴場」のことを意味します
なので、サウナ風呂とか、健康ランド、スーパー銭湯は「その他の公衆浴場」という定義になります
その歴史はかなり古く、仏教伝来の時代に寺院に設けられた浴堂に遡ります
鎌倉時代になって、一般人でも無料で入れる浴堂が出現しますが、荘園(奈良時代の律令制で始まり、太閤検地によって終わった権力者の私有地のこと)制度の廃止に伴って、入浴料というものが取られるようになりました
この形態が銭湯の始まりだとされています
その後、半身を湯に浸して上半身は湯気を浴びる戸棚風呂などが登場し、当初は男女を分けることができずに浴衣を着て入ったとされています
1971年に男女入込禁止令が出ても、遵守されなかったようですね
江戸になってから、時間による入れ替え制という形態が生まれたりもしました
2018年の段階で、日本に残っている銭湯は3535軒で、1996年から半減しています
料金は物価統制令の規定によって、各都道府県で上限が決まっています
年齢の区分けも「大人(中学生以上)」「中人(小学生)」「小人(未就学乳幼児)」の料金分けの形態になっていて、地域によっては「洗髪料」を取るところもあるようですね
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
本作は、「まるきん温泉」の存続問題と並行して、銭湯を利用する多くの客の物語があります
湯道にハマる郵便局員とその家族、受刑者の愉しみ、国際結婚で揉めている家族、近くの料理屋夫婦、温泉評論家とラジオDJなどがいて、それぞれが最終的にまるきん温泉に集うという流れになっています
入浴に関するこだわりが随所にあって、それを「湯道」という形で紹介していました
「湯道」はもれなく「道」ということですが、その内容は入浴に対する所作や心構えのことについての極みのようなものになっていました
個人的には生家から今まで自宅に風呂があったので、銭湯に行ったのは実家の風呂が壊れたとき、みたいな感じになっていました
ほとんど利用した記憶がなく、おそらくは2、3回程度だと思います
スーパー銭湯に属するものは、前職の社員旅行みたいな研修会で行った記憶がありますが、あまり人前で肌を露出する趣味はないので、どちらかと言えば強いて行かない派ですね
修学旅行などで温泉に行ったことはありますが、誰も入らない時間にサッと入って出るという感じになっていました
入浴効果については理解しているものの、狭いところでじっとしているのがダメで、5分も入っていられません
15分くらいは入った方が体の芯から温まることは知っているのですが、その15分が地獄なのですね
以前は浴室にテレビがあったので、それで紛らわしていましたが、地デジに変わって使えなくなってしまい、それからはBluetoothスピーカーで音楽を流すというので耐えていました
風呂を洗うのも面倒だというのもあって、毎日入れるならこまめに洗えるのですが、週に一度入るかどうかなので、習慣化しないとしんどい印象がありますね
湯に浸かるとリセットされるという感覚はよくわかるので、今では温水シャワーを頭から数分浴びるというので誤魔化していますが、本当ならお風呂に浸かった方が良いのでしょう
習慣化するきっかけがあれば良いのですが、こだわりが皆無なので何とも言えません
シャワー上がりの生ビールはめっちゃ旨いのですが、風呂上がりには勝てません
それは入浴時間もさる事ながら、汗によって失われる水分による枯渇のレベルが違うので、シャワーでそこまでの汗をかくのは無理なんじゃないかなと思います
ちなみに41度のお湯に15分間浸かった場合に失われる水分量は800ml、シャワーも同じ時間だけかかれば理屈は同じだそうです
流石にシャワー15分はやりすぎ(15分で浴槽一杯分になる)なので、5分程度だと400〜500mlぐらいになるのかなと思います
ビールや牛乳に限らず、水分補給はきちんと行いましょうね
■関連リンク
Yahoo!映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://movies.yahoo.co.jp/movie/384169/review/d9599786-06fb-404d-b8ed-064f6c58f689/
公式HP: