■市民による一撃は、相手の急所を軽く叩くだけで良かったりするものなのですね
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■オススメ度
仕返し系映画が好きな人(★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2025.1.23(MOVIX京都)
■映画情報
原題:용감한 시민(勇敢な市民)、英題:Brave Citizen(勇敢な市民)
情報:2023年、韓国、112分、PG12
ジャンル:ある生徒の暴力に支配された高校に赴任した非常勤教師を描いたアクション映画
監督:パク・ジンピョ
脚本:ヒョン・チュンヨル&ヨ・ジナ
原作:キム・ジョンヒョン『용감한 시민(2014年)』
キャスト:
シン・ヘソン/신혜선(ソ・シミン/소시민:新しく赴任してきた非正規の教師、元ボクサー)
(幼少期:シム・ハウン/심하은、写真)
イ・ジュニョン/이준영(ハン・スガン/한수강:クラスを牛耳る生徒、財閥の息子)
パク・ジョンウ/박정우(コ・ジニョン/고진형:スガンにいじめられる生徒)
ソンスク/손숙(ジニョンの祖母、キンパ売りのおばあさん)
パク・ヒョックォン/박혁권(ソ・ヨンテク/소영택:シミンの父、ジム経営&チキン屋バイト)
イ・ナジン/이나진(シミンの母、写真)
チャ・チョンファ/차청화(イ・ジェギョン/이재경:シミンの同僚教師、生活部長)
イ・チャンヒョン/이찬형(イ・グォンジュン/이권중:シミンの友人の警察官)
ペ・ヒョンジュン/배현준(イ・ビョンジン/병진:チキン屋のバイト、ジニョンの前にいじめられていた生徒)
イ・ジュンオク/이중옥(ソ・サンウ/서상우:チキン屋の店長)
チャ・ウォンミン/차우민(イ・ムンギ/이문기:スガンの連れ)
キム・サンウ/김상우(パク・ジョンホ/박중호:スガンの連れ)
イ・テヒ/이태희(キム・ジョンギュ/김정규:スガンの連れ)
イ・テギュン/이태균(ビョン・ジェヒョク/변재혁:スガンの連れ)
カン・アンナ/강안나(ソン・ユンギョ/송은교:スガンの彼女)
イ・ギュフェ/이규회(教頭)
キム・ソジ/김수지(イ先生:同僚教師)
ドン・ヒョヒ/동효희(英語教師)
ハ・ガンミ/하강미(体育教師)
ナム・ジョンウ/남정우(数学教師)
キム・ユル/김율(国語教師)
チャン・ヘジョ/장혜조(フランス語の教師)
キム・ギョンリョン/김경룡(校長)
キム・ソヒ/김소희(ドフィ/도희:反抗する女生徒)
イ・ドウン/이도은(ヘギョン/혜경:反抗する女生徒)
キム・ジョンホ/김정호(ヤン・ウホ/양은호:オリンピックの候補選手)
ド・ウンハ/도은하(ヤン・キョンジン/양경진:ウホの父、ボクシングのトレーナー)
キム・ヘファ/김혜화(ソガンの母)
キム・ドンヒョク/김동혁(ソガンの弁護士)
チェ・ドング/최동구(路上の悪態つく男)
イ・スンミン/이승민(ミンスン/민승:スガンに絡む男)
カン・ミンジ/강민지(ミンジ/민지:最強高校の金持ちの生徒)
■映画の舞台
韓国:釜山
ムヨン高校
ロケ地:
韓国:釜山
■簡単なあらすじ
元ボクサーでオリンピック候補にまで上り詰めたソ・シミンは、今では教師になるためにムヨン高校の非常勤講師として働き始めていた
その高校は、校内暴力がない優秀校だったが、実際には財閥の息子・スガンがやりたい放題している学校で、誰もが見て見ぬふりを続けていた
スガンは特定の対象を徹底的にいじめていて、今はキンパ売りのおばあちゃんの孫・ジニョンをターゲットにしていた
ある日のこと、ジニョンから相談を受けたシミンは、その内容を教育庁にリークした
だが、母親が弁護士を連れて乗り込んでくる騒ぎになり、シミンは土下座を強要されてしまう
スガンはさらに調子に乗り、シミンをも対象にし始めた
我慢の限界を突破したシミンは、街角で見知らぬ男に因縁をつけられたことでスイッチが入ってしまう
シミンは猫の被り物をしてスガン一味を蹴散らす
それが話題となり、スガンの猫狩りが始まってしまった
テーマ:罪と罰
裏テーマ:正義の執行
■ひとこと感想
元ボクサーが猫の被り物で悪人を成敗するという物語で、相手は金持ちの息子でやりたい放題というわかりやすい設定になっていました
勧善懲悪もので、いじめっ子にお仕置きをするという内容になっていて、どれだけ相手を巨悪に描くかという感じになっていました
とにかく徹底的に悪魔という感じになっていて、その描写が容赦ないので引いてしまいます
韓国映画は綺麗な女優さんでも顔が変形するぐらいの特殊メイクを披露していますね
このあたりのリアリティ描写というものがしっかりしているので、事務所の意向とか中途半端な描写で逃げる人々に見せてやりたくもなります
映画は、本格的な格闘映画で、ストーリーテリングもとてもわかりやすいものになっていました
でも、完全なる素人と格闘技経験者なので、かなりのハンデ差があると思います
フィジカル面ではスガンが圧倒していますが、プロレス的なところがありましたね
女とすぐにわからないのはアレですが、猫らしい動きがふんだんに取り入れらていて見どころがあったように思いました
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
映画は、漫画らしい展開となっていて、素性を隠したヒーローが悪と戦うというものになっていました
か弱く見える女性が悪党を成敗するというもので、とにかく悪い奴は容赦なく悪いという感じに描かれていましたね
路上でぶつかっただけで殴りまくる男とか、実際にいたらヤバいなあと思ってしまいます
映画は、かなり予定調和の部分がありますが、だからこそ面白いというもので、どこまで俳優さんが体を張って、リアリティを見せるかというのが鍵となります
本作は、その辺りをクリアできているので、安心して見れますが、いじめの描写が本当にえげつないので、経験がある人は避けた方が良いかもしれません
ラストでは、大人のけじめをきちんとつけるのですが、猫を被って富裕層の高校に面接に行くのは面白かったですね
おそらくはあるお方からのオファーなのかもしれませんが、あの人がシミンの父とどうなったのかも気になってしまいますね
あと、警察官のグォンジュンとの関係性は「姉弟」で良いのでしょうか
韓国の「兄さん、姉さん」呼びは特別なので、その距離感は微妙だなあと思ってしまいました
■格差いじめに遭ったらどうする
本作は、学校内ヒエラルキーから派生したいじめ問題が描かれていて、それに対抗するためにマスクをつけて成敗するという流れになっていました
教師として赴任したシミンはプロの格闘家なので、身バレすると犯罪行為になってしまうと思います
そのあたりも踏まえての覆面お仕置きでしたが、格差的なものが背景にあって、それに守られている相手に対峙した時には、その攻略というものは難しいと思います
一般的に、金も知恵も人脈もあるのが上級で、様々な行為を合法的に処理してきた経緯があると思います
そんな過程で育ったボンボンというのは親族がヒヤヒヤするほどの脱法行為を行うもので、それをどこまで擁護できるのかという問題に行き着きます
なので、ボンボンの行為をどこまで容認するのかを見極める必要があるのでしょう
さらに、多方面に影響力を持っていても、対抗組織というものは存在するので、彼らが知られたくない相手にリークするというのがわかりやすい対策のように思えます
上級はいろんなことを有耶無耶にできますが、それでもSNS時代だと拡散という武器からは逃れられません
それでも、世論が動くまで炎上するかはわからないもので、そういう時はいじめに関する動画などを然るべき急所に放り込むのが良いと思います
その決定的なもので「何を汚されるのを嫌うのか」というところが肝要で、それが見えるまで接近することを目的とした方が良いでしょう
仲間のふりをしつつ核心に入っていくので、被害者からすれば自分をいじめている奴に見えるでしょう
でも、大義があるのなら、一時的な批判はスルーして、その目的に向かえば良いのだと思います
今回のケースだと、そういった方面には行かず、直接的な報復を行なっていくことになりました
その方法が良いとは思えませんが、衆人環視でボッコボコにすることが「相手の屈辱」であるとするならば意味はあるのかもしれません
とは言え、相手は余力十分な組織でもあるので、無鉄砲としか言いようがないのは事実のように思います
■権力者の失墜のさせ方
本作では、権力者に挑む勇敢な市民が描かれていましたが、実際にはマスクマンで鉄槌を下すというのは不可能なように思います
それでも、権力というものはやがて廃れるし、わずかな力によって崩壊するものであるとも言えます
権力者が失墜するパターンにはいくつかありますが、大きく分けると内的要因と外的要因であることがわかります
内的要因とは、権力者そのものが崩壊を生むというもので、そこには「長期権力による傲慢と自己正当性」というものがあります
これは実際に起きていることへの反応の遅れや判断ミスへとつながって行くことになります
また、長期権力は組織を硬直化させ、誰もが本当に必要なことを言わなくなってしまいます
これによって情報の精度が劣化し、権力者は「裸の王様状態」になってしまいます
さらに、当初掲げられていた崇高な理念は朽ち果て、その権力維持のために力を注ぐことになり、この変化に対して支持者が離れていく、ということが起きます
外的要因としては、権力を権力たらしめている社会構造の変化が起こることでしょう
選挙などの民主的な制度があったとしても、それを支える人々の生活に影響が出ると造反、離反というものが起こります
さらにメディアやSNSなどによって、離反者による暴露というものが起こり、権力構造の腐敗や欺瞞というものが可視化されていきます
それが更なる離反者を産んでいくという構造が出来上がります
権力というものは一人では維持ができず、必ずといって良いほどに「支援層」というものがあります
それらは損得勘定で動いている部分があるので、それが離れることで支持基盤というものを一気に失っていきます
また、権力に対する恐怖というものが薄れることで、民衆の固定概念が崩れ、それが一気に崩壊していくことになります
これらのことを念頭に本作における権力構造の分解を考えるなら、権力者の支援層の中に造反に至る内紛があるかどうかを見極めることでしょう
支配構造にもヒエラルキーはあって、厚遇を受けているものもいれば、冷遇されているものもあります
その冷遇を刺激することになるのですが、それを引き抜くのはナンセンスなのですね
引き抜くのではなく、そのままの状態にしておいて、冷遇に対する理不尽さを刺激していくことを続けます
あくまでも距離を取りながら、その人物に対しての価値を高めていく
そうすることによって、自然と冷遇者たちの感情の昂りというものが生まれ、外部から崩すよりも簡単な亀裂というものが生まれていきます
スガンに対する支援者たちの感情を見ていくことで冷遇というものは見えてくるものなので、よほどの人格者でないと「公平さを保つ」ということは難しくなります
特に、このような支配構造を維持しようとするものほど、平等性を欠き、ヒエラルキーを恐怖で抑え込む構造を好むので、隙が多いように思えてしまいます
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
本作では、覆面をつけたシミンが強敵をバッタバッタと倒していく系の爽快さを描いていて、特に学校内ヒエラルキーを崩壊させていく様子を切り取っていました
学校も利益を追求する組織であり、権力構造の一端を担うものでもあり、その組織の維持に対する根源的な欲求というものがあります
当初は高い理念性を持って生まれたものも、やがてはそれを守るためにより強力な盾を欲しがるようになりますが、その盾は同時に自分に向いている剣であるとも言えます
そうした癒着構造はどのような組織でも生まれるもので、それを自浄できるかどうかで組織の寿命というものが変わっていきます
このような支配構造があったとしても、そこにはヒエラルキーを維持するための行動というものが必要になっていきます
当初は支援層の外側に対する圧力で維持できたものも、やがては飽和し、絶対的な距離ができてしまうことで興味が薄れてしまうのですね
感覚の麻痺はやがて刺激を求めるようになり、それが新たな火種を作っていくことになります
また、自分自身の立場を維持するために他人を貶めるという行為に及ぶものがいて、そう言ったところからヒエラルキーというものが生まれていきます
どのような組織であったとしても、政治学の権威主義体制論(ティモシー・フライ、バーバラ・ゲディスなど)が掲げる「支援エリートが離脱する閾値」というものがあります
独裁体制や王政などは、民衆の不満よりも「支配連合の離反」が致命的とされていて、これらは体制を維持する軍部、官僚、財界、与党幹部、宗教指導者などの動向に依ると考えられています
ケースとしては、「支援層の期待利益」が「体制維持コスト」を下回った時に集団離脱が起こると考えられています
こうした離反が起こると、「勝ち馬に乗る」から「沈む船から逃げる」というマインドに変わり、体制が一気に変化していきます
そして、これらはそれぞれの利益と直結するので、指数関数的に広がり、その崩壊というものを止めることはできなくなります
これらの最初の一歩というのは意外と単純なもので、支援層の受ける恩恵の均衡化が崩れた時、強いて言えば「報酬の相違を認識した時」に起こると言えます
支援に対する報酬というものは金銭とは限らないもので、そこには忠誠に対する褒賞というものもあるし、承認欲求というものが直結しています
なので、無力に思える非支援層が革命を起こそうとするならば、相手をよく見て、そこにある不遇に目を向けることが最もローコストな対応ということになると言えるのではないでしょうか
■関連リンク
映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://eiga.com/movie/102642/review/04696605/
公式HP:
