■「シン」とつけるナンセンスでは、新しいものが生まれないのも仕方ないの加もしれません


■オススメ度

 

ひたすらグロいだけの映画が好きな人(★★★)

 


■公式予告編

鑑賞日:2024.10.31(MOVIX京都)


■映画情報

 

原題:Cinderella‘s Curse(シンデレラの呪い)

情報:2024年、イギリス&アメリカ、82分、R15+

ジャンル:継母と義姉、憧れの王子に蔑められた女が逆襲する様子を描いたスプラッターホラー

 

監督:ルイーザ・ウォーレン

脚本:ハリー・ボックリー

 

キャスト:

ケリー・ライアン・サンソン/Kelly Rian Sanson(エラ/シンデレラ/Cinderella:継母と義姉からいじめられる女性)

 

クリッシー・ウンナ/Chrissie Wunna(フェアリーゴッドマザー/Fairy Godmother:エラを助ける魔法使い)

 

ローレン・バッド/Lauren Budd(イングリッド/Ingrid:エラの義理の姉)

ナターシャ・トシーニ/Natasha Tosini(ハンナ/Hannah:エラの義理の姉)

ダニエル・スコット/Danielle Scott(ダイアー夫人:エラの継母)

 

サム・バレット/Sam Barrett(レヴィン王子/Prince Levin:シンデレラの想い人)

Charlotte Jackson Coleman(ミレドレッド女王/The Queen:レヴィンの母)

Peter Watson(トラッセル国王/The King:レヴィンの父)

Ivan Wilkinson(ジョン・ブラッドリー/John Bradbury:国王陛下の付き人)

 

Helen Fullerton(アーニャ/Anja:ダイアー家の家政婦)

Frederick Dallaway(モリッツ/Moritz:アーニャの息子)

 

Sam Byrne(ジェイコブ/Jacob:フェアリーゴッドマザーの被害者)

Sarah T. Cohen(フィル/Phil:ジェイコブの妻)

Kitty Sudbery(アテナ/Athena:ジェイコブの娘)

Joanna Raggett(近くに転がっている死体)

 

Evyn George(フェアリーゴッドマザーの手下/Terrorture)

Graeme Culliton(フェアリーゴッドマザーの手下)

 

Graeme Muncer(警官)

Mike Kelson(警官)

Harry Vinall(警官)

 

【舞踏会の参加者】

Jenna N. Wilson(人形の仮面を被ったゲスト)

Jane Buckle(引き裂かれるゲスト)

Mya Brown(メイド)

Daniel Eghan(ダンベリー卿/Lord Danbury)

Junior Wunna(王子)

Scott McGlynn(王子)

Andrea Soriente(王子)

Hemma Gulhane(プリンセス)

Emily Webber(プリンセス)

Amanda Jane York(プリンセス)

Jenny Miller(ブレア/Blair)

Christine Sullivan(スカーレット夫人/Lady Scarlett)

Megan Donohoe(ルシンダ)

Natasha Dobie

Rain Boyd

Daniel Boyega

Katie Holmes

Muna Hunt

Nina Romain

Dee Ramdeva

Kai Michael

Shashank Singh

Talula du Feu

 

【王室のゲスト】

Malik Pitt(マルセル/Marcel)

John Polivka(レオナルド/Leonardo)

Bill White

Nicholas G. Brown

Mirella Camillo

Lornaelle Duncan

Matthew j Dunn

Simon Ellis

Javi Ferrer

Evie Gao

Alyssa Haymor

Tania Hughes

Jasmine CL

Georgia Lalande

Angela Musso

Nazeku

Zhana Soltani

Angela Taylor

Stephen Stallone Thomas

Jarod Waldapfel

Katerina Timotheou

 


■映画の舞台

 

ドイツ:

ノイシュバイエルン城

https://maps.app.goo.gl/onZA783UEST6EHFX6?g_st=ic

 

ロケ地:

スコットランド

 


■簡単なあらすじ

 

ダイアー家の家政婦のような扱いを受けているエラは、継母と義姉二人から執拗ないじめを受けていた

エラの父は町に行ったきりになっていると聞かされ、召使のアーニャと共に苦境を耐え忍んでいた

 

ある日、怪我をしてしまったアーニャはクビになってしまい、晒し者になった挙句に殺されてしまう

アーニャの息子モリッツも行方不明となり、エラの屋敷での立場はますます悪くなっていった

 

そんな折、トラッセル国王とその子息であるレヴィン王子が屋敷を訪問しに来た

王子は妻となる女性の下調べをしに来ていて、そこでエラと偶然会うことになった

王子はエラを舞踏会に招待し、継母のイライラはますます募るばかりだった

 

テーマ:心から願うこと

裏テーマ:呪いの伝承

 


■ひとこと感想

 

パブリックドメインとなった古典をスプラッターにするシリーズの一環で、今度のネタは「シンデレラ」となっていました

童話では魔法使いのおかげで舞踏会に行って、そこで王子と結ばれると言うものでしたが、本作では「王子にもバカにされる」と言う展開を迎えます

夢物語はそこになく、さらに酷い仕打ちを受けることになって、そこから復讐が始まると言うテイストになっていました

 

このタイプの作品は、ほとんどが「スプラッタホラー」になってしまうのですが、その理由まではわかりません

中途半端に原作をなぞると反発を喰らうからなのか、設定の一部と名前だけを借りた二次創作が多いですね

それで良いのかはわかりませんが、単なるスプラッターよりはお客さんが入るのかもしれません

 

映画は、いわゆるB級ホラーというもので、とことんまでスプラッターという感じになっています

それでも、殺し方とか殺す理由などの部分に希薄さがあり、何も残らない作品でしたね

単に気持ち悪さだけを追求したらこうなるのかな、という感じになっていました

 


↓ここからネタバレ↓

ネタバレしたくない人は読むのをやめてね


ネタバレ感想

 

本作にネタバレがあるのかはわかりませんが、シンデレラが助けてくれた魔女を倒すというトンデモ展開を迎えます

せっかく復讐の機会と力を授けてくれたのに、手下になるのは嫌だから、女王になり変わるという感じになっています

それで倒される方もどうかと思いますが、歴代がどのような変遷を経てきたのかはよくわかりません

 

冒頭は、ジェイコブとその妻らしき人物がいて、そこに魔女がやってきました

魔女は女を殺したので、おそらくはジェイコブの願いを聞いたのだと思いますが、その後ジェイコブは自分の娘らしき女の子に殺されるという展開を迎えます

この流れを考えると、魔女は依頼主も標的も殺して、次の獲物を探すというタチの悪い魔女なのでしょう

 

それを察したのかはわかりませんが、力を得ている間に魔女を倒すという行動に出て、それが見事に成されてしまいます

魔女はその程度のものなのかと思いますが、肉体は仮初のもので、エラに取り憑いたのかもしれません

もっと若い肉体を欲して、その肉体に古い肉体を壊させる

そうすることで、宿主を変えられるのかもしれません

とは言え、あくまでも想像の範囲なので、あってるのかどうかすらわからないと思います

 


シンデレラのホラー要素

 

本作は、シンデレラの設定を借りた別物になっていて、大まかな物語の流れも「舞踏会に招待される」ぐらいしか使っていませんでした

エラ(のちのシンデレラ)はダイアー家の召使ですが、彼女の他にもアーニャがいて、彼女にはモリッツという息子もいました

レヴィン王子はイングリッドとすでに関係を結んでいて、家同士の結婚騒動などは意に介していません

ダイアー家を訪れた際にその家で情事に耽るなど、頭のネジが数本飛んでいるカップルだったように思います

 

シンデレラはホラー童話ではありませんが、魔女の登場、時限的な縛りがあるというところに、その要素を入れられる余地があると思います

魔法の代償とか、12時を越えてから起こることなどにホラー要素を加え、醜くなるとか、12時を過ぎると舞踏会が墓場に変わる(実は相手をしていたのは死者)みたいなものがわかりやすい例えでしょうか

でも、本作はそう言った既存の設定をほとんど使わず、魔女の連鎖(前の願い主のエピソード)、王子がヤバいやつだったという既存の物語を転覆される方法を用いています

王子がサイコパスで暴力的とか、シンデレラと同じように願いを持った人が魔女を呼び出して大変なことになったみたいな感じで、魔女をフェアリーゴッドマザーというよくわからないキャラに改変したりしていました

 

映画の冒頭では、フェアリーゴッドマザーが何者かの願いを叶えてジェイコブという男を殺しますが、この男が後の話と繋がっているのかはよくわかりませんでした

彼には妻と二人の娘がいたようですが、当初はそのどちらかがエラなのかなと思っていました

エラはフェアリーゴッドマザーを知っていて、それで力を得た段階で始末して、自分の両親のようにはならないという行動を起こしたと考えていたのですね

でも、実際にどう関連づいているのかはほとんどわからず、飛躍した想像になっているだけのように思いますが、本来ならばこのくらいの関係性の持続はあって然るべきのように思います

映画の設定にあっても伝わらなければ意味はなく、映画の印象だとフェアリーゴッドマザーは酷いやつだぐらいの印象しか残らないのは微妙だなあと思ってしまいました

 


勝手にスクリプトドクター

 

本作は、召使が王子様に抜擢されるという原作の設定を引用しつつ、その王子も最悪な人物だったという改変を行なっています

これ自体はアリだと思いますが、ラスボスをフェアリーゴッドマザーにしているのでおかしなことになっていますね

このキャラをラスボスに仕立てるために冒頭の過去パートがあるのですが、これがどのように本編と繋がっているのか全くわかりませんでした

 

あのシーンでは、ジェイコブという男性がフェアリーゴッドマザーに殺され、そこには妻らしき人物と娘が2人いました

フェアリーゴッドマザーを呼び寄せた人物が誰なのかわからないのですが、脈絡を考えるとジェイコブの妻ということになります

フェアリーゴッドマザーの力を見た娘のどちらかがエラである可能性が高いのですが、エラの父はダイアー夫人の言葉通りなら「街に行ったまま帰ってこない」ということになります

なので、あのエピソードとの繋がりはないはずで、これが物語の構成を薄くさせていると考えられます

 

映画は、この1点を結ぶだけでOKで、生き残った娘の一人がエラにするだけで良いと思います

この時の記憶を失っているという状況でダイアー夫人に拾われて雇われているという流れになって、不遇を感じたエラがフェアリーゴッドマザーを呼ぶことになります

エラはフェアリーゴッドマザーの力を利用してダイアー夫人たちに仕返しをするのですが、その力の利用によって生まれるリスクというものを知っています

それゆえに母と同じ結末を辿らないために、フェアリーゴッドマザーをエラが殺し、名実ともに完全勝利を手に入れようと考えます

 

でも、実際にはフェアリーゴッドマザーは霊体のようなもので、実体は借り物だったのですね

なので、フェアリーゴッドマザーを殺したと思っていたけど、実際には殺されておらず、魔女の霊体が別の実体に憑依するというところでイヤミス的な展開を迎えることになります(実体として使われたのがもう一人の娘、エラの妹とかの方が因果を組みやすいですね)

その対象をエラにして、エラがフェアリーゴッドマザーと一体となって支配されるという展開が一番わかりやすいのですが、続編ありきでエラVSフェアリーゴッドマザーという構図を残すのなら別の誰かということになります

ダイアー一家は全滅しているので、わかりやすいところならレヴィン王子の母ミレドレッド女王とか、実は彼に妹がいるみたいな感じになるのでしょう

このあたりは、本作の位置付けによって、エンディングを考えることになるのではないでしょうか

 


120分で人生を少しだけ良くするヒント

 

本作は、版権が切れた有名な童話をホラー映画にリメイクするシリーズの一環なのですが、どうしてホラーにしてしまうのかはわからない部分があります

解釈を変えるとか、男女逆転とか、ジェンダーフリーに挑戦するみたいなのはなくて、とにかく低予算でシナリオが破綻しつつも、スプラッシャーで押し切るみたいな映画ばかりのような気がします

本当は怖い⚪︎⚪︎童話を映像化している気になっていますが、心理的なホラーには挑戦せずに、ともかく血が流れればOKみたいな風潮になっているのはどうなのかなあと思いました

 

この流れが日本で起きないのが不思議で、桃太郎などの童話がホラーになっているというのはあまり起きていません

桃太郎がサイコパスで鬼をいじめ抜いて殺しまくるとか、浦島太郎が竜宮城の女性たちにひたすら暴力を続けるみたいな映画ってないのですね

このあたりは国民性のような感じで、ノリノリで作って受け入れられる下地がないようにも思えます

 

それでも、有名どころの童話のホラー化は一巡した感じになっていて、世界的に有名なところは出尽くした感がありますね

日本国内で作らなくても、日本の童話に手を出すという可能性はなきにしもあらずですが、それが制作国でウケるのかは未知数であるように思います

結局のところ、ストーリーや設定のネタが枯渇し、キャラ映画に邁進するか、既存の知名度を利用するしかないのが現状で、原作のないオリジナル映画というのはほぼ死滅しつつあるように思います

 

日本ではそれが顕著で、ドラマの映画化、小説の実写化、漫画の実写化という作品を除けば、どの映画がランキング1位になるのかわからないくらいなのですね

引用のないオリジナルというのは難しい時代になっていて、それを打破するには「構図と視点を変える」というのが時代の流れになっています

なので「ある視点部門」のような映画賞が生まれていて、それに向かうような作品も生まれてきているように思います

 

シンデレラは貧乏人が貴族になり変わるというものですが、この構図に「現実はそんなに甘くない」というエッセンスを加えたのが本作なのですが、このエッセンスと元々の構図を破壊するまでには至っていないのですね

貧乏人が復讐して貴族を殺しても、貧乏人は貴族にはなれません

ここに「現実は甘くない」というエッセンスを加味しつつ、それらを覆すのためには「貴族の罪を暴いて支配下に置く」とか、暴力で構図を変えるというものになります

シンデレラがフェアリーゴッドマザーの力を使って何をするかというのが問題で、その力を単なる復讐の道具にしては面白みがないのですね

なので、貴族を牛耳るという社会構造の変化を促す意味でも、フェアリーゴッドマザーの力を奪って、貴族をコントロールする存在になり変わるという物語を作る方が深みがあるように思います

 

ダイアー一家の惨殺はデフォで行いつつ、レヴィンは生かしておいて妻になるというのは安直で、それよりはミレドレッド女王になりすますとか、レヴィン系統と対立する貴族と婚姻を結び、その潮流を変えるというものもあると思います

ここまで複雑な話にするとホラーっぽくはないのですが、既存の童話の続きをサスペンスやミステリーで描くという手法もアリなのだと思います

実際にそのような作品もあることにはありますが、ホラー改変ブームほどのムーブメントは起きていないので、作ること自体が難しいのかなあと思ってしまいますね

 


■関連リンク

映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)

https://eiga.com/movie/102225/review/04423849/

 

公式HP:

https://hark3.com/cinderella/

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投稿者 Hiroshi_Takata

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