■もっとカブトガニであることを利用しまくって、人間の生活に絡めた方が面白かったかもしれません
Contents
■オススメ度
おバカ映画が好きな人(★★★)
特撮が好きな人(★★★)
■公式予告編
https://youtu.be/oakgJ46-_VE
鑑賞日:2023.2.1(京都みなみ会館)
■映画情報
原題:Crabs!
情報:2021年、カナダ、80分、R15+
ジャンル:巨大化したカブトガニに襲われる若いカップルたちを描いたホラーコメディ映画
監督&脚本:ピアース・ペロルゼイマー
キャスト:
ディラン・ライリー・スナイダー/Dylan Riley Snyder(フィル/フィリップ・マカリスター:下半身に障害を持つ高校生)
アリー・ジェニングス/Allie Jennings(マディ・メンラス:フィルの親友)
ブライス・ダーフィー/Bryce Durfee(ハンター・マカリスター:フィルの兄、保安官)
ロバート・クレイグヘッド/Robert Craighead(フラニガン:保安官)
Jessica Morris(アナリス・メンリス:マディの母、高校の理科の教師)
Chase Padgett(ラドゥ:風変わりなフィルたちの同級生)
Dash Pomerantz(セコイア:全裸セックスの男)
Katrina Landa(ウィラ:全裸セックスの女)
Marshall Lucier(ウェスト:露出狂)
Donna Miller(サンディ:バーテンダー)
Justen Overlander(カブトガニの中の人?)
カート・カーリー/Kurt Carley(カブトガニの中の人?)
■映画の舞台
アメリカ:カリフォルニア州
メンダミーノ(架空?)
ロケ地:
Fort Bragg, California, USA
https://goo.gl/maps/7aMdsvL7pmTwF5Hd7
■簡単なあらすじ
カリフォルニアの閑静な海辺の街にいて、奇妙なクジラの死体とバラバラに食いちぎられた全裸の死体が発見される
事件に向かうことになった保安官たちだったが、手掛かりが掴めないまま、徐々に被害が広がっていく
そんな街で暮らす高校生のフィルは、付随の下半身を動かそうと、あるものを仕入れて補助義足の開発に取り組んでいた
フィルの友人マディも彼をサポートし、フィルの兄ハンターも支えようと懸命になっていた
フィルの夢は歩いてプラムに向かうことで、動力源を得た補助義足で会場に向かうことに成功する
だが、その会場に巨大化し、凶暴化したカブトガニの群れが雪崩れ込み、街は混沌の渦に巻き込まれてしまうのである
テーマ:カブトガニには危害を加えていません
裏テーマ:カブトガニは人を襲いません
■ひとこと感想
間違いなくC級のおバカ作品であることは重々承知で参戦
いつの間にか会員期限が切れていて、サービスデイに合わせて赴くことになりました
内容は「原発事故の放射能で巨大化したカブトガニ」が、人間並の知性を持ち、人類を襲うというもので、リアリティというものはどこにもありません
主人公は下半身付随のフィルで、彼が開発した義足がパワーアップして、最終的には怪獣VSウルトラマンみたいな戦いに発展していきます
物語性はほとんど皆無で、これまで役に立たないと思われた人々が、未曾有の危機で活躍するというわかりやすいものでした
フィルはまだしも、おそらく障害者として登場しているラドゥの豹変もすごいものがありますが、各団体からクレームが来ないのかヒヤヒヤしてしまいますね
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
冒頭の「まるで某メーカーの掃除機」のような軽やかなスラロームを見て、作品のテイストはすぐにわかります
そこから無駄にお金のかかそうなドローン遠撮があって、肝心なところを見せない惨劇で突き進んでいましたね
最後は着ぐるみを着た巨大な物体がくんずほぐれつを繰り返し、スペシウム光線みたいなビームで倒すところは、色々と問題がありそうに思えました
楽しめるかどうかはわかりませんが、ひっそりミニシアター系の自主制作ホラーを観にくる層は限られていると思うので、無駄に評価が高い作品なのかなと思いました
個人的には「呆れてモノが言えない」のですが、それでもガッツリと何かを書くというブログなので、斜め上になることをご承知の上でお付き合いくださいませ
■コメディ・ホラーの目指す先
本作は、冒頭からビーチで全裸でセックスをしているカップルがいて、そこに一匹のカブトガニがやってくるところから始まります
そこで「ムードが台無しになったために、カブトガニとの記念写真撮影に映る」のですが、そこでいきなりカブトガニがセコイヤを襲うと言うシークエンスがありました
オープニングでCG丸出しの原発が爆発し、それによってカブトガニが巨大化した、みたいなノリになっていますが、実際のカブトガニの大きさを知らないので、サイズ感がわかりません
いきなりセコイヤを襲い出して人肉を喰らうと言うシーンになり、人喰いカブトガニの登場となるのですが、あまりにも唐突すぎて笑ってしまいます
本作は海洋生物が何らかの影響を受けて巨大化&凶暴化すると言う、モンスターパニックあるあるの延長線上にあって、サメではなくカブトガニというのが売りになっています
でも甲殻類の裏側がグロすぎて、虫系がダメな人はNGの映画になっていました
斜め上を狙った結果、最後は『パシフィックリム』なのか、見ようによっては『エヴァ』なのか分からない戦いに突入し、最後はスペシウム光線みたいなもので相手を倒すのですね
このあたりが90年代の日本の特撮テイストになっていて、どことなく懐かしい感じがしました
おそらく、もう少しガチのホラーにしようと思えばできたと思うのですが、悪趣味なポップコーンムービーになっていて、広告も悪ノリがすぎる感じに仕上がっていました
クスッと笑うというよりはゲラゲラ笑うという感じなのですが、この手のホラーコメディは「ありえない敵と真面目に戦う」というところに集約されるイメージがありますね
そして、どうやって戦うかという差別化があって、大体は銃火器の登場、巨大化の具合によっては戦闘機の登場みたいな感じになっていきます
本作も相手の巨大化に対してロボット?で戦うのですが、そこで下半身付随の主人公を立てるという、このご時世にその設定を採択するのですか?というテイストになっていました
この設定がちょっと笑いづらい状況を作り出していて、かと言って「応援」ムービーにもなっていないのが辛いところでしょうか
応援系のバトルは「こっちが普通で相手がヤバいパターン」と、「こっちにハンデがあって相手がちょっとヤバいパターン」に分類されがちで、本作は後者側になります
このパターンをコメディにするのは少しデリケートな部分があって、それは「ハンデについて描く必要がある」からなんですね
これによって、瞬間的にテンションが下がってしまうので、本来ならば「行動の低脳さ」をハンデにした方が良かったと思います
あまり過激に描くと各方面から猛烈な講義がきますが、真剣にやっているのに間が抜けた結果を招くというのをうまく配置した方が「突き抜けたかな」と思いました
■勝手にスクリプトドクター
本作をコメディホラーにするか、スプラッターホラーにするかで設定が変わりますが、ありえない生物の凶暴化でグロいホラーを撮るという前提で、このキャラクターを使うならというところで改変を考えてみたいと思います
主人公は下半身付随で車椅子の設定で自分の足を動かすために研究をしている青年でした
兄は保安官で、兄の同僚がいろんな方面に顔が効き、普通なら手に入れらないものを手に入れることができます
主人公をサポートする女性がいて、恋愛に発展するかどうか微妙な腐れ縁となっています
友人の中に「少し距離を置きたい人物」がいて、後半でその人物のサポートが重要になってきます
これらが映画の人物関係の設計図になっていて、文章で読むとめっちゃ真面目な話に思えてきます
これをコメディにする場合、まず第一に考えるのが「配置転換」で、主人公の天才設定をそのままにして、それゆえに近寄りがたいというキャラにします
コメディ要素を加味するために、役に立たない発明をして、周囲(この映画だと学校)に迷惑をかける存在です
そして、彼を理解している女性がいて、彼女は好意を隠していて、その縁が長く続いていることと、主人公が女性に興味を持っていないように見えるために関係が進みません
この二人に割って入るのが、映画のラドゥのような見た目がコミカルなキャラクターで、二人の関係を茶化すキャラとなります
女の子は迷惑がりますが、関係が認知されることは嬉しいので本気では怒りません
主人公の兄は警察関係でOKで、その友人をぶっ飛んだ人にします
拾得物の横領が趣味で、それを横流ししているような人物で、時折おかしなものを持ってきますが、主人公はそれらのガジェットに興味を示して喜びます
家族設定としては、本作のように不在もOKですが、その場合は「過去に町で悲劇があった」という設定にして、それが主人公たちを襲うカブトガニに通じるというのが理想的でしょう
カブトガニの覚醒に関しては、主人公の発明というラインが作品の規模に合致するのですが、少し規模を大きくするならば、発明の影響で発電所などの設備、もしくはカブトガニを展示している水族館などに悪影響を及ぼすというパターンになります
これらの設定を加味した上で「ラストはプラムで大騒動」にしてみましょう
【オープニングイメージ】
ビーチで全裸カップルがセックスをしていて、カブトガニが近づいてくるものの、気づかないまま「カブトガニ視点」で惨劇の予感を仄めかします(直接的な描写はなし)
【起】
プラムの準備をする高校、車椅子で登校する主人公
みんなが変な目で見てきて、避けていく様子を描きます
クラスメイトの行動に怒りを見せるヒロイン、そこにラドゥが来て、「もう、やった?」みたいな下品なことを聞きます
そこで主人公は勘違いして「やった」と言い、周囲を驚かせますが、「やった内容はみんなが想像していたものとは違う」ためにヒロインが恥をかいてしまいます
見回りに兄と同僚が来て、同僚は空気を読まずに拾得物の盗難物を主人公に渡します
【承】
盗難品はどこかのサラリーマンが落としたスーツケースの中身で、それが何かはわかりません
主人公はそれを受け取って、日課である水族館に向かいます
そこはヒロインのアルバイト先で、裏から入れてもらい、そこで今度水族館で展示が始まる「生きた化石・カブトガニ」と遭遇します
そこに再びラドゥが乱入し、騒動になって、主人公はその盗難品の液体をカブトガニにぶちまけてしまいます
深夜、ヒロインと二人きりになった主人公がいて、ここでサービスタイムの突入になります
主人公は戸惑いますが、いつもと違うヒロインに反応してしまいます(この場合、ヒロインの姉が登場し、ヒロインに火をつける役を担っても良いかもしれません)
取り繕うもののさらに硬化し、そして背後でカブトガニたちの異変が始まります
【転】
カブトガニたちが町に流出を始めます
カップルの匂いに引き寄せられて、情事の場所に登場しまくります
そこでカブトガニが人を襲いますが、深夜であり表面化しないまま夜が明けてしまいます
栄養を蓄えたカブトガニは少しずつ巨大化し、繁殖のために浜辺にやってきます
(このシーンが冒頭のシーンにつながります)
カップルが無惨に殺され、そこを訪れた人の通報によって発覚、同時に町で至る所で犠牲者がいることが判明して町はパニックになってしまいます
主人公は例の液体の瓶をまだ持っていて、それの分析をはじめます
それは強力なパワーを生み出す動力源になると同時に、かつて繁殖していたキラーカブトガニのエキスを凝縮したものであることが判明します
カブトガニの巨大化と凶暴化は「その液体に眠る先祖のDNAと記憶がもたらしたもの」で、それによって人類が標的となっていました
カップルばかり襲うのは、カブトガニの知能が優れていて、生殖行為を妨げるためだとわかります
【結】
主人公は秘密裏に開発していた義足補助器具の動力源としてその液体を使います
強力な力を得て、巨大化したカブトガニと戦い始めます
その戦いの最中で、ラドゥがカブトガニの体液を浴びて巨大化します
ラドゥの意識がカブトガニに乗っ取られ、主人公はラドゥを殺すことを躊躇ってしまいます
町を壊していくラドゥ、そこで主人公は本体を倒せば止まるのではないかと考えます
見事、カブトガニを倒し、ラドゥは意識を失って町を破壊しながら倒れてしまいます
町の被害は甚大で、巨大化したラドゥをどうするか問題に発展しますが、町の人たちは放置したままプラムを始めてしまいます
【エンディングイメージ】
無事、プラムに参加した主人公とヒロインはそこで結ばれます
町の英雄となってみんなに受け入れられますが、その裏側で「気絶していたラドゥ」の鼻の穴からカブトガニが出てきます
うーん、勢いに任せて書いてみましたが、多分駄作になりそうですね
イヤミス系を少し加味して、最後のバトルを盛り上げる感じで仕上げてみましたが、素人レベルのシナリオになっています
奇特な人がいれば、映像化のネタに使ってみてくださいませ
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
映画はおバカ系ですが、設定が少しシュールなので笑えきれない部分があります
笑いのポイントは「見た目*行動」になっていて、そのギャップをどっちに振るかにかかっています
真面目そうに見えて行動が無茶苦茶とか、頭良さそうに見えて方向性が間違っているとか、ものすごい見た目なのに物凄く優秀なんていう逆パターンもあります
また、見た目で全てを持っていくパターンもあって、その佇まいだけで笑わせてくれるものもあります
このパターンは「出オチ」と呼ばれますが、ひとたび笑いをつかんだら、その後は何をやっても笑えてしまうというご褒美があったりします
本作はコメディなのですが、笑うポイントが「笑っていいのか悩む」というコンプライアンス的にどうなの?という案件が多かったですね
特にラドゥの知的障害っぽい描き方は、「見た目に対して行動がすごい」というパターンではあるものの、笑いを抑えてしまう何かが漂っているレベルでした
いわゆる「これ、大丈夫なん?」という無駄な心配が起こるパターンなのですね
頭がぶっ飛んでいるコメディアンのように演出していればまだマシだったのかもしれませんが、スクールカーストの最底辺として描いているのも微妙だと思います
映画は、スクールカースト最底辺が奮闘するというものですが、その方法が若干ぶっ飛んでいたところに救いがありました
ランボーの格好をして暴れたり、メカに乗って戦ったりと、普段学校では見せない姿を見せることで、カースト自体が解消されていくのは良かったと思います
スクールカーストとパニックはよくセットで使われますが、本作ではそれがなくても成立しているストーリーだったのでノイズになっている印象がありました
コメディパートを人間っぽく動くカブトガニに特化して、人間が油断していると次々に襲われていくという緩急に特化した方が良かったと思います
カブトガニという人を襲いそうにもない、あるいは襲われても生命の危機があるとは思えないというものが、おかしな動きをして人々を「まずは笑わせる行動」に出る
カブトガニには人間の笑いのポイントはわかりませんので、「見た目と行動が違う」をカブトガニに多用していく
映画ではDJくらいでしたけど、例えば床の掃除機のような動きを利用して、部屋掃除をしている主婦のところに来て「まあ、便利」みたいなところからいきなり襲うなどもありでしょう
フリスビーで遊んでいる少年がそれと間違ってカブトガニをフリスビーにして投げてしまって相手が食われるなども有効かなと思います
カブトガニの見た目、習性などを利用して、それを人間の行動に落とし込んでいくことで、一般的な人々の普通の動きがコメディになってしまう
それと同時に気持ち悪さとスプラッターで事態は悪化していくという中間のシーンのエグ味というのももっと欲しかったかなと思いました
真面目に語る映画ではないという声もあるかと思いますが、こういうワンアイデアと遊び心に満ちた作品の中で、時折ものすごいものが出てくるのが映画界なので、真剣に観て、真剣に考えたいと思いました
■関連リンク
Yahoo!映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://movies.yahoo.co.jp/movie/385646/review/1c25b097-cccf-4175-b1c8-89585e0cf23c/
公式HP:
https://killer-kabutogani.com/