■思いっきり前編でしたが、馬陽の戦いに紫夏の回顧が入って、終わると思った人はいないかもしれません
Contents
■オススメ度
シリーズのファンの人(★★★)
原作ファンの人(★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2023.7.29(イオンシネマ京都桂川)
■映画情報
情報:2023年、日本、130分、G
ジャンル:中華統一を目指す嬴政とそれを支える兵士・信の成長を描いたアクション映画
監督:佐藤信介
脚本:黒岩勉&原泰久
原作:原泰久『キングダム(「馬陽の戦い」「紫夏編」)』
前々作『キングダム』→
前作『キングダム2 遥かなる大地へ』→
キャスト:
山﨑賢人(信:天下の大将軍を夢見る奴隷の少年、最弱の伍に配属される)
吉沢亮(嬴政 / 漂:秦国の若き王、第31代秦王)
【山の民】
橋本環奈(河了貂:山民族の末裔、信と嬴政の盟友、王宮に配属)
長澤まさみ(楊端和:山の民の王)
阿部進之介(バジオウ:山の民の将軍)
【信の飛信隊】
清野菜名(羌瘣:信が道中で出会う少女、蚩尤の一人、最弱の伍)
岡山天音(尾平:信と同郷のチンピラ兄弟の兄、飛信隊、伍長)
三浦貴大(尾到:信と同郷のチンピラ兄弟の弟、飛信隊、伍長)
濱津隆之(澤圭:秦国の頼りない伍長、飛信隊)
真壁刀義(沛浪:伍長、飛信隊)
田中美央(渕:飛信隊の副長)
やべきょうすけ(有義:飛信隊)
町田大和(有カク:飛信隊)
栄信(輝蓮:飛信隊)
佳久創(竜川:力自慢の飛信隊)
青木健(爽悦:飛信隊)
久保勝史(章:飛信隊)
竜二(丹:飛信隊)
渡辺邦斗(尚鹿:飛信隊)
【秦】
髙嶋政宏(昌文君:嬴政の側近の文官)
加藤雅也(肆氏:嬴政の側近の武官)
満島真之介(壁:秦国の千人将)
佐藤浩市(呂不韋:秦国の丞相)
平山祐介(蒙武:秦軍の総司令、攻撃強い天才軍師)
萩原莉久(蒙毅:蒙武の息子、軍師学校の学生)
玉木宏(昌平君:秦軍の猛将)
大沢たかお(王騎:六大将軍最後の一人)
要潤(騰:王騎の副官)
【城戸村の住人】
村川絵梨(友里:城戸村の住人)
桜井日奈子(東美:城戸村の住人)
【趙】
山本耕史(趙荘:趙軍の総大将)
片岡愛之助(馮忌:頭脳派の知将)
山田裕貴(万極:秦に恨みを持つ将軍)
小栗旬(李牧:宰相)
佐久間由衣(カイネ:李牧の護衛)
吉川晃司(龐煖:趙の大将)
【回想パート(7年前)】
杏(紫夏:趙の闇商人)
(幼少期:浅田芭路)
はまさきけんたろう(紫夏の父)
浅利陽介(亜門:紫夏の幼馴染)
杉本哲太(道剣:昭王の家臣、紫夏の協力者)
吉永幸一(ナレーション)
■映画の舞台
紀元前244年
秦国の辺境
ロケ地:
栃木県
■簡単なあらすじ
嬴政と約束を交わした信は、王騎将軍唐修行を言い渡され、辺境の部族たちの闘争を収めるように言い渡されてた
それを成し終えた信は、ひとときの休息を取るために故郷の城戸村を訪れる
皆が家族たちと団欒を楽しんでいると、急遽召集が言い渡されてしまう
それは、趙国が秦国に攻め入り、関水を突破したからだった
趙国はさらに進軍を進め、馬陽へと向かう
秦国では軍議が開かれ、秦国の総大将を誰にするかを決め兼ねていた
呂不韋は蒙武を立てるものの、昌平君は王騎を呼び寄せていた
王騎は嬴政と二人の場を設け、「なぜ、中華統一を目指すのか?」と訊く
嬴政は「ある人と約束した」と言い、かつて趙国で奴隷扱いになっていたこと、秦国の情勢が変わり、自身が秦国に戻らねばならなくなった状況を語りだす
そして、嬴政はいうあの人とは、彼を秦国に命懸けで連れてきた紫夏という闇商人との出会いを紐解き始めた
テーマ:約束
裏テーマ:覚悟と覚醒
■ひとこと感想
シリーズ3作目となる今回は、コミックスで言うと11巻ぐらいからの流れになります
いわゆる「馬陽の戦い」が中心に描かれ、回想にて「紫夏との出会い」が描かれていました
コミックスが未読なので、どうなるのなあと思って観ていましたが、予測を大きく裏切ることなく、王道の展開になっていたと思います
映画に何を求めるかですが、前半は嬴政の過去編で、馬陽の戦いは解説付きのわかりやすいものになっていましたね
普通に観ていればわかることをわざわざ解説するのはどうかと思いますが、その説明が絶望的にうまくないところはツボでしたね
冒頭のナレーションも直前の映像を言葉にしているだけだし、その分テンポが非常に悪い作品になっていました
戦闘シーンはある程度迫力はありますが、オチがちょっとあっけなくてびっくりしてしまいましたね
ギャグのように頭がもげたらどうしようかと思いましたが、それはなかったのは幸いでしたね
とは言え、一撃で終わってしまうのはどうなんだろうかと思ってしまいます
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
前作までをほぼ忘れていましたが、ほとんど問題ない感じになっていて、飛信隊が生まれるまでとその活躍がメインになっています
それでも、岩山登ってるだけとか、平地で入り乱れた中で致命傷を負わない「最弱の伍」とか、漫画っぽさが随時に残っていました
嬴政の約束話を信が盗み聞きしているのですが、それによって彼がどう変わったのかと言うのはあまりなかったですね
とにかく画面に出しとかないと主人公感が失われる感じで、どこにでも出没しているような感じになっていました
ラストは良いところを持っていくのですが、信が強いのか相手が弱いのかわからない感じになっています
ともかく、あの信の剣には毒でも盛っているのかと疑うぐらいに、首元一撃で相手が死んだのには笑いを堪えるのに必死になってしまいます
常に無愛想な羌瘣とか、ワンカット登場で笑いの全てを持っていく李牧とか、ワンカットで主人公は私よ感を出す楊端和とか、本当に「日本にいる名のある俳優を全部持ってきた」みたいなキャスティングになっているところはすごいことだなあと思いました
■信が人を寄せ付ける理由
映画では、信が率いる百人隊に命名がなされ、それは「飛信隊」と名付けられていました
信の名前が入っていること、飛び石的な活躍を期待されているのか、「飛」という字が使われています
信は奴隷の身分から成り上がっていく人物で、その胆力というものが人を惹きつける要素になっていました
映画では、飛信隊に加わることになった有義と有カクが彼を疑う役割を担っていて、そんな彼らは「信を慕う人々に感化されて」信を支持する側に変化していきます
本作では、特攻作戦の前にメンバーを鼓舞するシーンが描かれていて、そこで行われたのは「状況認識」でした
戦いを怖がる竜川を鼓舞する信は、この戦いの目的とそれによってもたらされる報償について話します
それは、彼らの戦う原点につながっていて、その想いというものが嬴政が感じているものと繋がっているように描かれていました
人が人を惹きつける様子は色々とありますが、一番大切だと思うのは「視野の広さ」であると思います
本作では、陣形を解説する河了貂と蒙毅が登場し、王騎の戦略も馮忌を上回る総合的な視点の広さとして描かれています
王騎はそれを理論的に行い、信は感覚的に行うという違いがあり、それは経験値の差であるように思えます
信の胆力は無鉄砲さが牽引していますが、彼が有する独特な危機回避能力というものが、ウィークポイントを瞬時に見つけ出しているように思えました
■紫夏が嬴政に与えたもの
本作の前半は、嬴政が王騎に過去を語るシーンになっていて、それは嬴政が中華統一を目指す理由語りになっていました
嬴政は趙の首都・邯鄲で生まれ、父は秦国の荘襄王の宜仁の長男でした
宜仁は、秦と趙の休戦のための人質として趙の宮廷に滞在していたのですね
宜仁は魏の商人・呂不韋の側室に一目惚れし、のちの趙太后となる女性と結婚し、鄭という名の息子を授かります
この史実に準える形で物語は進み、宜仁が王位を継承した際に跡取りとなった嬴政を秦へ脱出させる計画が浮上します
この際に尽力したのが、趙の闇商人の紫夏と彼女の幼馴染・亜門でした
命懸けで嬴政を秦国に送り届けた紫夏は非業の死を遂げ、その臨終の際に約束を交わします
それが「戦争のない世を作るために、中華を統一する」というもので、それを果たすための決意が描かれています
この時の嬴政には「憑き物」がいたと描かれていて、それによって痛みを感じていないという状況になっていました
壊れているから王にはなれないと考えていましたが、紫夏は「痛みを感じてきたからこそ王になれる」と諭します
嬴政が痛みを感じなくなったのは、ある種の防衛反応のようなもので、それは彼を守る盾だったとも言えます
紫夏が嬴政に与えたのは命だけではなく、ある信念を完遂する意思の力であると言えます
彼女が嬴政を守ると決めた経緯は映画では描かれていませんが、嬴政が王になれば世界は変わると感じていました
彼女は闇商人として、趙から他国に荷物を運ぶ役割を担っていて、それは秦国にいる誰かに届けるべきものがあったことを意味します
国交が正常に戻れば闇商人としてリスクを犯す必要もなくなるのですが、彼女にとって闇商人として物資を届ける必要性というものを両国の間で感じていたのだと思います
このあたりが描かれていれば彼女のルーツがわかるのですが、映画では見事にカットされていました
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
本作は、長編漫画の実写化で、ようやく3作目の公開にたどり着いています
噂レベルでは4作目の撮影は終わっているとのことで、近日中に発表があるのではないかと言われています
思いっきり「馬陽の戦い・前編」だったので、映画の後に「後編の予告編」が流れるのかと思いましたが、それがなかったのは諸事情があったからだと推測されます
後半は王騎の回想録が入る流れで、そこに登場するのは摎(きょう)という女性です
映画では、その摎が龐煖に殺されたという過去が仄めかされていて、それによって馬陽は王騎にとって特別な地であることがわかります
龐煖はラストで飛信隊を襲う武神ですが、趙には李牧もいて、その対決というものも描かれていきます
これ以上描くとネタバレになりますが、馬陽の戦いが終わったかのような描かれ方になっていましたが、実はこれからが本番だ!という感じになっています
映画は、この王騎の章で一旦キリが良くなると思われ、その後どうなるのかは想像もつきません
今回はコミックスで言えば11〜15巻の間ぐらいで、現在進行形で69巻まで出版されています
映画一本が5巻分という感じになっていて、現在の最新刊に追いつくのに映画があと10本はいる計算になりますね
映画は2年ごとぐらいのペースになるので、このペースで作れば20年後ぐらいに現在の最近巻に到達しますが、20年あれば原作の刊行数も伸びていくので、どうなるかわかりません
俳優も年を重ねていくので無理が生じます
なので、いずれかの段階でキャストを変えるか、CG技術でなんとかするという感じになるのでしょう
日本のCGレベルがそこまで達していないので、現時点での実現可能性は限りなくゼロに近いと思います
ちなみに嬴政こと始皇帝は49歳で亡くなっています
嬴政の現在の年齢は実は14歳前後(秦王になった年齢が13歳くらい?)なので、この時点で結構無茶な感じになっています
年齢が高くなるのは問題ないと思いますが、映画の現在軸となる流れが実際の時間の流れと相当乖離があるので、数年後には演じるのは難しくなってくるでしょう
その時を踏まえて今後の映画化というものが考えられていくのだと思いますが、気にしたら負けという感じで、無理やりこのメンバーで突き進んでも良いのかなと思います
羌瘣、河了貂、楊端和の女性陣をどう維持するかが一番大変だとは思いますが、そこはメイクさんとCG部隊に頑張ってもらって、抗ってみても良いのかもしれません
■関連リンク
Yahoo!映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://movies.yahoo.co.jp/movie/386132/review/83fb6950-9e89-416f-bda9-b67372f88df8/
公式HP: