■120分で楽しめない映画の今後はどうなるのか?
Contents
■オススメ度
MCUシリーズをドラマまで観ている人(★★★)
それ以外の人(★★)
■公式予告編
https://youtu.be/xqcrv2u3wAk?si=1UrfXaFnIT73o56d
鑑賞日:2023.11.10(イオンシネマ京都桂川)
■映画情報
原題:The Marvels
情報:2023年、アメリカ、105分、G
ジャンル:特殊能力を武器にして、宇宙を牛耳る悪意と戦う3人の女性を描いたSFアクション映画
監督:ニア・ダコスタ
脚本:ニア・ダコスタ&ミーガン・マクドネル&エリッサ・カラシク
キャスト:
ブリー・ラーソン/Brie Larson(キャロル・ダンバース/キャプテン・マーベル:元アメリカ空軍パイロット、事故によってパワーを手に入れる超人)
テヨナ・パリス/Teyonah Parris(モニカ・ランボー:「 S.A.B.E.R.」の宇宙飛行士、ニック・フィリーの部下、キャロルの親友マリアの娘)
(幼少期:Kenedy McCallam-Martin)
イマン・ヴェラーニ/Iman Vellani(カマラ・カーン/ミズ・マーベル:ダンバースを信奉するオタクのティーンネージャー、バングルの所有者)
ザウェ・ワシントン/Zawe Ashton(ダー・ベン:クリー一族の革命家、もう一つのバングルを探す司令官)
ダニエル・イングス/Daniel Ings(タイ・ローン:ダー・ベンの腹心、クリー人)
コリン・ストーリー/Colin Stoneley(パップ・トン:クリー族の科学者)
Alex Hughes(クリー人のアナウンサー)
Kya Garwood(クリー人の戦士)
Shereen Walker(マスクを着けたクリー人)
Hansen Burton(マスクを着けたクリー人)
Kamara Benjamin Barnett(クリー人の戦士)
Kenny-Lee Mbanefo(クリー人の戦士)
Michael Oladele(アラドナの戦士/クリー人の戦士)
Anastasia Zabarchuk(クリー人の妊婦)
キャロライン・シモネット/Caroline Simonnet(クリー人の兵士)
ゲイリー・ルイス/Gary Lewis(ドロゲ皇帝:スクラル人のリーダー)
フィオン・ジョリー/Ffion Jolly(スクラル人の女性)
Shardiah Ssagala(スクラル人の若者)
Cecily Cleeve(スクラル人の少女)
Remi Dabiri-McQuaid(スクラル人の少年)
パク・ソジュン/Park Seo-joon(ヤン王子:惑星アラドナのカリスマ王子、ダンバースの法的な夫)
ザノビア・シュロフ/Zenobia Shroff(ムニーバ・カーン:カマラの母)
モハン・カプール/Mohan Kapur(ユスフ・カーン:カマラの父)
サーガル・シェイク/Saagar Shaikh(アミール・カーン:カマラの兄)
サミュエル・L・ジャクソン/Samuel L. Jackson(ニック・フューリー:「S.H.I.E.L.D.」を率いる責任者、「S.A.B.E.R.」にて深宇宙の探索に従事中)
シャミア・アンダーソン/Shamier Anderson(「S.A.B.E.R.」の科学者)
エイブラハム・ポプーラ/Abraham Popoola(ダグ:「S.A.B.E.R.」のエージェント)
レイラ・ファルザド/Leila Farzad(タリア:「S.A.B.E.R.」のエージェント)
ラシャーナ・リンチ/Lashana Lynch(マリア・ランボー:モニカの母、キャロルの親友)
テッサ・トンプソン/Tessa Thompson(ヴァルキリー:アスガルドの女戦士)
ヘイリー・スタインフェルド/Hailee Steinfeld(ケイト・ビショップ:ホークアイの後継者)
ケルシー・グラマー/Kelsey Grammer(ハンク・マッコイ/ビースト:「X-MEN」に登場するミュータント)
ジェシカ・チョウ/Jessica Zhou(ピンクレディー/スクラル人)
Savannah Skinner-Henry(アラドナの子ども)
Rachel John(アラドナの陽気な海の女)
Daniel Monteiro(王室武官)
Fikayo Ifarajimi(惑星ハラの住人)
Tony McCarthy(宮廷の廷臣)
■映画の舞台
深宇宙のどこか
地球
惑星ハラ
惑星ターナックス
惑星アラドナ
ロケ地:
パインウッドスタジオ(イギリス)
■簡単なあらすじ
「Project Insight」によって影響を受けた惑星ハラでは、クリー族の間で内戦を引き起こしてしまう
そして、紛争によって、惑星は不毛の土地となってしまった
クリー人を率いるダー・ベンは、バンドルを回収するものの、片方しか見つからなかった
その頃、「S.A.B.R.E.」の宇宙ステーションにいたニック・フューリーは、クリー人とスクラル帝国の和平交渉に向けた動きを加速していた
フューリーは、ジャンプポイントの異常調査のためにキャロル・ダンバースとモニカ・ランボーを呼び寄せ、調査に向かわせることになった
さらにその頃、地球では「キャプテン・マーベル」の大ファンのカマラは、漫画を描いたり、バンドルをつけて遊んでいた
そして、モニカがジャンプポイントにふれたのと同時にカマラのバンドルは共鳴してしまい、それによって、それぞれの位置が逆転し、テレポート現象が起こってしまった
キャロルは地球のカマラの部屋に飛ばされ、バンドルの存在を感知して追ってきたクルー人と戦闘態勢に入ってしまう
モニカとカマラがキャロル捜索を開始すうと、再びテレポートが起こり、カミラとキャロルの位置が逆転してしまう
状況が飲み込めないまま、3人は惑星ターナックスのコロニーで合流することになった
だが、ダー・ベンはバンドルの力を利用して、惑星ハラの空気を元に戻そうと目論んでいたのである
テーマ:女たちの共闘
裏テーマ:フリークが戦士になる理由
■ひとこと感想
前作『キャプテン・マーベル』の記憶がほど消え、ドラマ『ミズ・マーベル』の存在すら知らないまま鑑賞
はっきり言って「誰? この人」の連続で、劇中内のセリフで無理やり脳内補完しながら鑑賞することになりました
キャラのこともほとんど分からず、とにかく3人が腕輪(バンドル)を奪おうとするヴィランと戦うという構図はわかったのですが、敵の印象が薄すぎて、ほとんど何も残っていません
映画の印象は増殖する猫と、ノースリーブのキャロルぐらいで、それ以外のインパクトはほとんど感じられませんでした
映画は、とにかくビーム合戦になっているので、画面が眩しすぎて仕方ありません
前から2列目は完全に失敗で、字幕を読まないとダメだけど、眩しすぎて無理というシーンが思った以上にありました
最終的には「脳がストップをかける」感じになっていて、ビジュアルだけを観て、起こっていることを理解するだけに努めることになりましたね
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
予告編で大体話の内容は読めたので、この3人は時空を超えた姉妹とか言い出すのかなとか、余計なことを考えていました
長女キャロル、次女モニカ、末っ子のカマルはわがまま放題と言った感じでしょうか
印象が薄いのはモニカのキャラなのですが、これまでにこんなキャラいたっけ?とずっと考えることになっていましたね
物語は、入れ替わりが何度も何度も起こるので、中身も変わっているのか、単にテレポートしているだけなのかを把握するのに時間を要しました
バンドルのパワーがジャンプポイントの影響で位置移動を起こすようで、そのパワーを使って、不毛の地ハラに新鮮な空気(自然?)を送り込もうと考えていたように思えます
この流れだけを考えると、ダー・ベンがヴィランなのかはなんとも言えないところがあったのですが、その計画の影響が大きすぎるので止めるという流れになっていたのかなと勘繰ってしまいます
最終的にはモニカの自己犠牲のような結末になっていましたが、ラストはマルチバースかパラレルワールドで母と会っていましたね
ぶっちゃけ意味が把握できずに終わってしまいました
■ポリコレに配慮する弊害
ディズニー映画のポリコレ感が目につく昨今ですが、本作もまごうことなきポリコレ感というものが漂っていました
ポリコレとは、ポリティカル・コネクトネスのことで、「社会の特定のグループのメンバーに不快感や不利益を与えないように意図された政策などを表す言葉」のことを言います
わかりやすのが人種で、白人だけではなく、黒人もアジア人も入れようとか、スラッとしたモデル体型がいるならワガママボディも必要だ、みたいな配慮のことを言います
基本的には「政治的な妥当性や正当性」を正す意味合いがあって、エンタメ作品に必要なものではありません
エンタメにポリコレを入れると、本来の目的から逸脱し、とりあえず「不要でも出しておこう」という本末転倒なものになるのですね
でも、抽出される要素が各団体を代表するものだとすると、その扱いというものをどうすべきかということになります
例えば、本作のヒーローのうち一人が死ぬとなると、その役割を担うのが誰かということで揉めることになるのですね
結果として、全員生き残るか全員死ぬかという意味不明な平等性を物語に挿入せざるを得なくなります
ポリコレに関わるグループというのは多様性の数だけ存在します
人種、性向、思想など、様々なものが溢れかえっているのですが、よほどそのグループが出るべき映画(テーマとして扱っている)以外の場合は、無理に配慮する必要はないのですね
10人種に10の性向があったと仮定すると、その総数は100になるのですが、100名ものキャラクターが一緒に活躍して平等であるという映画など存在しないのですね
映画は、ある目的のために物語が作られ、テーマ性を帯びることによって、配役というものが決まっていきます
語るべき物語があるとして、それを誰に語らせるかというのが重要なので、それを無視して配置を行うと、効果というものが薄れてしまいます
昨今の風潮は、この方向性に倣うという日和った状況が続いているので、何を見ても面白くないという感じになっていると思います
■勝手にスクリプトドクター
本作は、3人の女性がスーパーパワーを得て戦うというもので、男性との対立構造にしたくないという配慮の結果、敵も女性ということになっていました
一人の強大な女性敵を3人がかりで倒すという物語になっていて、さてその需要はどこにあるのかという問題が起こっています
強い女性ヒーローを観たい層がどれぐらいいるのかというマーケティングの観点だと、マーベルズが無双する映画というのはウケると思います
でも、興行収入は残酷なもので、本作の成績は散々たるものになっていくと考えられています
その原因は「ポリコレに配慮」ではなく、単純に「飽きられている」ということなのだと思います
「ギフト的なスーパーパワー」「強大な的に結束して戦う」というこれまでに100回以上観てきた設定に面白みがあるわけではないので、この映画のオリジナリティを生み出さなくては難しいと思います
キャラクターの造形が特殊というパターン(ハルク、ヴルヴァリン)も使えないし、スーパーパワーを物理的に生み出す(アイアンマン)のようなものもありません
魔法(ドクター・ストレンジ)、マルチバース(スパイダーマン)などの世界観を広げる方策も尽きているので、本当に新しい土台というものを作り上げるのは難しくなっています
本作の特徴は「強い女性グループ」で、それが三姉妹感があるというものなのですが、姉妹にありがちな兄弟喧嘩みたいなシーンもなく、とりあえず謎の力で入れ替わりがあってという、半分コメディのような設定になっています
キャプテン・マーベルの強さはこれまでに見せつけてきたので、このパターンだと「どれだけ巨大な敵を作るか」「どれだけ苦戦させるか」という方向にしか向かいません
本作は後者を選択しましたが、本来は「どちらも同時進行」というのが最適解なのですね
敵は強大になり、足枷によって力が出せないという状況は、それぞれのメーターが50だと100の負荷が掛かっていることになります
なので、わずかな負荷でも、効果は倍増することになります
本作では、敵の弱さが悪目立ちしている感じになっていて、最悪だったのは「敵がバンドルで強大になる」というシナリオにしなかった点でしょう
さらにその武器を使えるのが味方側にいるという、どう転んでも緊張感ゼロのシナリオに向かわざるを得ないので、どうしようもないのですね
敵が使えない=勝利みたいなもので、そこで一捻りして「中立にいたキャラが暴走する」ぐらいの変化球がないと、そこで物語が終わってしまいます
MCUでは「指パッチン」という、これ以上ない絶望というものがあったので、それを超えていく何かがないと何も残らないと思います
本作は、キャプテン・マーベルの足枷を作ることの躍起になっていましたが、それがうまく機能していません(というかわかりにくい)
なので、敵からバンドルを奪ったミズ・マーベルが力を得て暴走し、憧れ超えを果たしたことで闇落ちする、というぐらいの転換が必要だったでしょう
本作は、本当に捻りのない作品だったので、途中で寝ても話がわかるくらい単純で味気のないものだったように感じました
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
本作は、MCUの33作目ですが、ドラマと映画の混合になっていて、どちらも観ていないとわからないシーンが多い作品だったように思いました
前作『キャプテン・マーベル』の記憶がほぼ消えかかった状態で観ることになりましたが、持ち前の補完能力でなんとかなるだろうと考えていました
でも、さすがにここまでドラマ版や他の作品が絡んでくると、補完能力だけでは太刀打ちできない感じになっていました
脳内補完をしながら、モニカが前作の友人の娘で、カマラがドラマ版のキャラだということはわかったのですが、キャロルが歳取らないので、モニカとの年齢差がほとんどなくて混乱していましたね
友人の娘設定だと、キャロルから見ても娘の世代になるはずなのですが、どう見てもほぼ友人の年齢にしか見えないのですね
なので、設定を知らないと「ああ、前作の友人がキャストを変えて再登場したのかな」ぐらいで流してしまえます
カマラという新キャラは良かったと思いますが、ドラマ版の延長線上で説明皆無だったので、なんで彼女がバンドルを持っているのかとかはほとんどわかりませんでした
ダー・ベンがようやく掘り当てたものが片方しかなくて、それがなぜか地球の少女が持っていて、みたいな流れだったのですが、調べると彼女のルーツに関係があるようで、映画だけを観てもわからない設定は禁じ手のように思います
尺的にもテレビスペシャルぐらいのものだったので、いっそのことスペシャル配信にして、公開映画にしなければ、ここまで酷評されることもなかったし、赤字にもならなかったのではないでしょうか
■関連リンク
映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
公式HP:
https://marvel.disney.co.jp/movie/marvels