■リアルと白昼夢の間にある余白こそが、デヴィッド・ボウイがデヴィッド・ボウイである所以なのかもしれません
Contents
■オススメ度
デヴィッド・ボウイのファンの人(★★★)
哲学が好きな人(★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2023.4.1(TOHOシネマズ二条 IMAX)
■映画情報
原題:Moonage Daydream(月世界の白昼夢)
情報:2022年、ドイツ&アメリカ、135分、PG12
ジャンル:デヴィッド・ボウイの活動を振り返る人生哲学を抽出したドキュメンタリー
監督&脚本:ブレット・モーゲン
キャスト:
デヴィッド・ボウイ/David Bowie
■映画の舞台
イギリス:ロンドン
アメリカ:ニューヨーク
ドイツ:西ベルリン
モンゴルetc
■簡単なあらすじ
2002年にデヴィッド・ボウイが語るニーチェの引用にて、映画は紡がれる
「20世紀は終わり、フリードリヒ・ニーチェは「神は死んだ」と言った」
映画は「ロンドンにおける音楽の追求」「ニューヨークに刺激を求める」「ベルリンでの新境地」「アジア歴訪」「ロンドンに舞い戻る」と言う感じの流れで、デヴィッド・ボウイのナレーションで紡いでいく流れになっている
『ジギー・スターダスト』『スペース・オデッセイ』『英雄夢語り』『レッツ・ダンス』などをはじめ、映画『地球に降りてきた男』などの引用が多数登場
時系列が錯綜する構成になっていて、その随所にデヴィッド・ボウイの生の声が反映されている
テーマ:人生とは何か
裏テーマ:人生を愛するための方法
■ひとこと感想
デヴィッド・ボウイのことを知らない人が観たらどう思うのかと言うチャレンジの元、おそらくは「前に座っていた小学生よりも知らない私」が鑑賞してまいりました
せっかくなのでIMAXで、ファーストディだったので半数近くの座席が埋まっていましたね
いきなり「ニーチェの引用」から始まり、観念的な哲学が随所に登場します
何を言っているのかわからないと言う感じの「抽象さ」はありますが、そこまで難しい話をしているわけではありません
率直な感想としては、「人生に対してどう向き合うか」と言うことを常に考えていて、とにかく時間を無駄にすることが嫌いだったことは伝わりました
彼の生家は田舎町のようで、「郊外」にいることは人生をダメにすると考えていたようですね
イギリスで成功すると、そこが郊外のような感じに思えて、アメリカに行ったり、ドイツに行ったり、モンゴルに行ったりといろんな場所を転々とすることで、常に「郊外ではないどこか」に居続けたことで、自分の人生と向き合ってきたように思えます
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
ネタバレと言うのがあるのか分かりませんが、クレジットによると映画の引用とコンサートが2つ、その他はテレビ番組のトークなどの映像が使用されていたようですね
残念ながら、パンフレットの発売はなく、解説はホームページにサラッと載ってあるくらいでしたね
おそらくは権利関係がクリアできず、映画以外のコンテンツへの波及にストップがかかっているのでしょう
楽曲もサウンドトラックは40曲以上ありますが、効果的に使用されていたのは6曲ぐらいでしょうか
デヴィッド・ボウイは名前ぐらいしか知りませんでしたが、この音楽性は聞き馴染みのあるものでしたね
ロックと言うのは「確たる自分がある」と言う前提のもと、社会の中でもそれを維持し続けると言うイメージがありますが、この観点からすると「デヴィッド・ボウイはロックだったのか?」と言う疑問が浮かんできますね
このあたりの音楽談義は色んな見解があると思いますが、この映画では「自己中心的な自分の音楽」から、「エンタメを肯定する最戦線のスター」に至るまで、さまざまなデヴィッド・ボウイが堪能できる映画だったように思えました
■デヴィッド・ボウイのあれこれ
デヴィッド・ボウイ(David Bowie)は、1947年のイギリス生まれのロックミュージシャンで、2016年に69歳の若さで亡くなっています
1972年、「ジギー・スターダスト」というキャラでグラムロック界に登場し、シングル『Starman』、アルバム『The Rise and Fall of Ziggy Stardust and the Spiders from Mars』似てセンセーショナルな成功を収めました
1975年頃に「Plastic Soul」という呼び名で自身の楽曲を表現し、『Yong Americans』にて、アメリカでも成功を収めました
1976年には、映画でも引用される映画『地球に落ちた男(The ManWhoFell toEarth)』に出演し、主人公の人型エイリアンであるトーマス・ジェローム・ニュートンを演じました
1977年に『Heroes』を発表し、イギリスのトップ5に名乗りを上げます
1980年に入ってから『Ashes to Ashes』、QUEENとのコラボ『Under Pressure』、『Let‘s Dance』を発表しました
トム少佐が好きなんだなあと思っていたら、どうやら彼の作品の中に登場する人物のようですね
何かしらの思い入れがあるようで、何度も登場してほっこりしてしまいました
1990年代には、リーブス・ガブリエルと出会い「ティン・マシーン」の結成、その後も電子機器を使用したり、生楽器に戻ったりと、色んな方向性に挑戦していました
全部を語るのはボリューム的に無理なので、英語版ウィキなどを追っていただいたら良いかもしれません
次章では、サウンドトラックのリストを参考にYoutubeからピックアップしてきたので、時代の流れを追うのに聴いてみても良いかもしれません
なお、時系列に詳しくないので、サウンドトラックの曲順に合わせております
■サウンドリスト
【Ian Fish U.K. Heir】
【Hallo Spaceboy】
【Wild Eyed Boy from Freecloud】
【All the Young Dudes】
【Oh! You Pretty Things】
【Life on Mars?】
【Moonage Daydream】
【Medley: The Jean Genie / Love Me Do / The Jean 】
【Genie(Live; featuring Jeff Beck)】
【Warszawa】
【Quicksand 】
【Medley: Future Legend / Diamonds Dogs Intro / Cracked Actor】
【Rock ‘n’ Roll with Me】
【Aladdin Sane】
【Subterraneans】
【Space Oddity】
【V-2 Schneider】
【Sound and Vision】
【A New Career in a New Town】
【Word on a Wing】
【Heroes】
【D.J.】
【Ashes to Ashes】
【Move On】
【Moss Garden】
【Cygnet Committee / Lazarus】
【Memory of a Free Festival】
【Modern Love】
【Let’s Dance】
【The Mysteries】
【Rock ‘n’ Roll Suicide】
【Word on a Wing】
【Hallo Spaceboy】
【I Have Not Been to Oxford Town】
【Sons of the Silent Age】
【Blackstar】
【Memory of a Free Festival】
【Starman】
【You’re Aware of a Deeper Existence…】
【Changes】
【Let Me Tell You One Thing…】
【Well, You Know What This Has Been an Incredible Pleasure…】
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
個人的には「名前しか知らない状態」で鑑賞しましたが、デヴィッド・ボウイの世界観はなんとなく掴めました
それが合っているかは置いておいて、彼は行動の人だったのかなと感じました
インタビューなどでは煙に巻くかのような言い換えをしていて、うまく質問を交わしたり、ホストの思いもよらない答えで突き刺すなど多彩なところを見せていました
即興であの答えが出るのは、言葉を多く知り、その組み合わせの無限さに気づいているからなのでしょう
映画内でも、作詞したものを切り剥がして、それを再構築する作詞法が描かれていました
言葉は直接的に結びつかないものでも、文章と文章の間にある余白というものが、一連の文章にしてくれるのですね
描かれている文字に囚われることなく、それを読んでいる人が「文章と文章の繋ぎ目に何を感じるか」を考えることを信じる
これがデヴィッド・ボウイのファンへの向き合い方なのかなと思いました
映画は、かなり奇抜に思える編集方法で理解するのは大変ですが、場面展開はわかりやすいものになっているので、気になる映像を掘っていけば、探したいものが見つかるかもしれません
一時代を築いたアーティストだからこそ、時代の変化の中で、遺っていくものが何かを見極められるのかもしれません
■関連リンク
Yahoo!映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://movies.yahoo.co.jp/movie/385126/review/7652df51-ed80-49e2-8d48-9e1abac75b2a/
公式HP: