■裏切られる捨て駒を請け負った、除隊軍人の悲劇
Contents
■オススメ度
クリス・パインさんのファンの人(★★★)
地味なアクションが好きな人(★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2022.10.11(T・JOY京都)
■映画情報
原題:The Contractor
情報:2022年、アメリカ、104分、G
ジャンル:海兵隊を不名誉除隊になった男が金のために民間会社に就職しトラブルに巻き込まれてしまうアクション映画
監督:タリク・サレ
脚本:J・P・デイビス
キャスト:
クリス・パイン/Chris Pine(ジェームズ・ハーパー:海兵隊を除隊され、民間の軍事会社に移籍する男)
(幼少期:Tobu Dixon)
ベン・フォスター/Ben Foster(マイク・ホーキンス:ラスティの元で働くジェームズの旧友)
Tynen Rushing(クリスティン;マイクの妻)
Niclas Noblitt(マイクJr:体の悪いマイクの息子)
Eva Ursescu(ケリー:マイクの娘)
キーファー・サザーランド/Kiefer Sutherland(ラスティ・ヘインズ:ジェームズを雇う民間の軍事会社の社長)
ニーナ・ホス/Nina Hoss(カティア:ラスティの部下、女性工作員)
J・D・パルド/J. D. Pardo(エリック:ラスティの部下)
フロリアン・モンテアヌ/Florian Munteanu(カウフマン:ラスティの部下)
Nico Wouland(デイブ:ラスティの部下)
Tait Flecher(ダルトン:ラスティの部下)
ギリアン・ジェイコブス/Gillian Jacobs(ブリアン・ハーパー:ジェームズの妻)
Sander Thomas(ジャック:ジェームズの息子)
Dean Ashton(メイソン:ジェームズの父)
エディ・マーサン/Eddie Marsan(ヴァージル:隠れ家にいる軍医)
ファレス・ファレス/Fares Fares(サリム・モハメド・モーシン:ジェームズたちが監視する科学者)
アミラ・カサール/Amira Casar(シルヴィー:サリムの妻)
Aristou Meehar(ヤニス:サリムの息子)
Tuder Velio(オリビア:サリムの娘)
Andrads Corlat(マギー:サリムの部下)
Antal Kalik(幼少期のジェームズにタトゥを入れる男)
Cony Scott Allen(ロバーツ中佐:新しく赴任してジェームズを不名誉除隊にする上官)
Brian Latontaine(ジェームズの元上官)
Regina Ting Chen(軍医)
■映画の舞台
ポーランド
ドイツ:ベルリン
ロケ地:
ルーマニア:ブカレスト
https://maps.app.goo.gl/B6v9JWoykXYjjZkg9?g_st=ic
ドイツ:クロイツベルク
https://maps.app.goo.gl/KwMSndHh2ZZrKp5n7?g_st=ic
■簡単なあらすじ
海兵隊に尽くしてきたジェームズは、ある日新しく赴任してきたロバーツ中佐からいきなり不名誉除隊を言い渡されてしまう
理由は痛み止めに使っていたステロイドで、ロバーツは厳格に処罰を言いわたす
ジェームズの家は金銭的に猶予がなく、日々の支払いも滞って困窮していた
ある日、旧友のマイクと再開したジェームズは、そこで彼が民間の軍事会社に所属していることを知る
ジェームズはマイクを通じてラスティという人物に会い、彼に見初められてあるミッションに参加することになった
それはサリムという科学者の行動を監視するというもので、彼は研究していたウイルスを闇取引しようと目論んでいるというのである
ジェームズはマイク、カティア、デイヴたちとサリムの監視をはじめ、そして彼を拉致することに成功した
だが、その動きは何者かに察知されていて、彼らは思わぬ銃撃を受けて負傷してしまうのであった
テーマ:退役軍人の悲哀
裏テーマ:家族愛なら許される?
■ひとこと感想
とりあえずスケジュールが空いていたので、評価低いのを覚悟の上で参戦
うーん、アクション映画の悪いところが凝縮されたような内容になっていました
裏切りの連鎖見たいなところが売りなのかもしれませんが、あまりにも動きが地味すぎて、何が起こっているのかを把握するのに苦労します
謎解き要素があるにはありますし、銃撃戦もそれなりにあります
でも、なんとなく「会話劇」のように話をしているシーンが多く、無駄に台詞が長い印象がありましたね
映画は家族のためになりふり構わない人たちが描かれていて、ジェームズ、マイク、サリムのそれぞれの妻は大変だなあと感じてしまいます
それぞれの家庭にある問題がそれぞれを縛っていますが、最終的には暴力で生き残りをかけるというだけの単純な話に終わってしまっていましたね
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
ざっくりと「マイクにダシに使われたジェームズが反撃する」みたいなイメージで捉えていますが、実のところ同日に鑑賞した『愛する人に伝える言葉』の余韻が過ぎすぎて、作り物感のある本作の評価が想定以上に下がってしまっています
ルーマニア(ベルリンかも)に行ってからの展開もよくわらんまま進んでしまい、様々な組織が絡みまくっていて、途中から混乱してしまいます
ラストはシンプルなのですが、道中の回り道が無駄に長くて、白昼の銃撃戦のクオリティも低いし、暗いシーンが多すぎて人物の識別にとても苦労する映画でしたね
サリムの研究の意味を追っていく中で、自分自身が利用されていることを知るのですが、そのシーンに至るまでの流れが思ったよりも雑だったりします
テーマとしては、退役軍人たちのその後の生活の苦しみを描いていて、溜まったヘイトが爆発して暗躍を始めていきます
それでも、冒頭でジェームズが不名誉除隊になるあたりの流れが突然すぎて、退役軍人たちの扱いがここまで無茶であるとは思えないのですね
ステロイド使ってたからクビとか、退職金も何も上げませんの件はヘイトが生まれる土壌を描いているのでしょうが、やはりおかしなことばかりが目立ってしまいました
■不名誉除隊とは何か
公式HPのあらすじには「軍事任務の怪我によって特殊部隊から強制除隊になった」と書かれていましたが、正確には「不名誉除隊(Dishonorable)になった」ということになります
これは懲戒処分の一種で、日本で言う「懲戒免職」に相当します
不名誉除隊処分になると、除隊に際して「最下層の二等兵」に降格となり、退職金・軍人恩給については支払われず、再就職時には「不名誉除隊にされた」と言う記載が必要になってきます
また、州によっては、不名誉除隊は「裁判で重罪を受けたのと同じ」と見做されて、「選挙権・被選挙権の剥奪」「武器の所持の禁止」などが課せられてしまいます
今回のジェームズの行為がここまで酷いものとは思えないので、新しく赴任してきたロバーツ中佐の処分は重すぎると言えます
なにせ、古傷の痛みの緩和にステロイドを使っていただけで、それで禁止薬物の使用になるのはどうなの?と思ってしまいました
彼が違法な禁止薬物を使うに至っているのは、軍事行動の一環の負傷なわけで、その治療に関して軍部がどこまで面倒を見てきたのかは分かりません
でも、この不名誉除隊に対して、ジェームズが何も声を上げないのは、幼少期の父との約束があったからなのかなと思っています
父は息子に星条旗のタトゥーを彫らせるような男でしたし、ジェームズも単に暴力的な組織で金を稼ぎたいとは思いません
マイクを通じて知ったラスティの軍事会社は、名目上は国のために見えたので、背に腹を変えられない状況も相まってそこに所属することになりました
不名誉除隊を受けたことで、彼の住む州ではどんな扱いになるのかわからないのですが、銃器の所持はセーフで、民間の軍事会社に就職はOKだったりします
このあたりの設定がかなりガバガバになっているのですが、最後まで国に対して何も言わないジェームズというのは少しばかり違和感がありましたね
■民間軍事会社って何?
民間軍事会社とは、直接戦闘や要人警護、施設警備、軍事教育などを行う企業のことで、1980年くらいから台頭し、2000年代の対テロ戦争で急躍進を果たしています
顧客は国家で、人員を派遣し、正規軍の業務を代行したり、支援したりする企業とされています
2004年にPMSCsコントラクターが民衆に惨殺される事件が勃発、これが原因で武装勢力と多国籍軍が軍事衝突(ファルージャの戦い)などが起こったり、日本で関連深いのは「カルロス・ゴーンの国外逃亡に手を貸した」と言うものもあります
お金で動くので、それ次第では何でもすると言う企業もあるとされています
2009年にはスイスの国際会議において、アメリカ、欧州諸国をはじめとした17カ国は「軍事会社に国際法を守らせるためにモントール文書を採択」することになりました
ちなみに報酬面では元有名特殊部隊出身で1日1000ドルなんて言われていますね
2001年にアメリカでは民間軍事会社の管理組織として「International Peace Operations Associlation」が発足、2006年にはイギリスにも「British Association Of Private Security Companies」が発足しています
無法地帯化している場所で台頭し、今では私設軍事会社なんてのもあり、企業が国家に頼らずに自衛をすると言う時代が始まっていますね
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
本作は陰謀に巻き込まれたジェームズが自身のスキルで戦うと言うもので、物語はかなり単純に作られています
今更ながら「生物兵器のデータを奪う」みたいな展開で、キッチリとハメられ、それによって全滅へと向かうエンドになっていました
国家の仕事と偽っているのは、上にあるIPOAなどの管理下にあるからだと推測され、それによって国家機密的な情報にアクセスできるようになっていました
でも、その情報を元にひと儲けしようとしたのがラスティという人物でしたね
映画はミッションが終わってからいきなり襲われると言う展開で、さらにそこから指定されたところに行ったら襲われると言う流れになっていて、よほどのアホでない限り「身内に裏切り者がいる」と思うのは明白でしょう
友人のマイクは子どものために動いていて、有能なジェームズを引き入れますが、ラスティにうまく利用されていただけでしたね
相打ちになっていましたが、これらのシーン以外にも「画面的には非常にわかりづらい」ので、途中で誰が誰かわからない感じになっていました
睡眠不足で鑑賞すると、銃撃音が心地よくて眠くなってしまいます
映画は退役軍人のラスティが予後を案じて大胆な行動に出たり、不名誉除隊の憂き目にあったジェームズが巻き込まれたり、マイクの理由も同じようなものでした
国に奉仕してきたのにその補償はとても手薄いのが問題になっていますが、軍隊は永久就職できる人の方が少ないので、すべての補償をしていくのも限界があるのだと言えます
ちなみにジェームズは不名誉除隊になっていますが、名誉除隊には条件があって、「20年勤務、大尉で定年を迎える、傷痍除隊(勤続年数問わず)」などがあります
ジェームズは傷痍除隊になってもおかしくないとは思うのですが、膝の怪我だけでは不適合だったと言うことなのでしょう
不名誉除隊は基本的には軍法会議で有罪とか、犯罪で逮捕などの処分なのですが、彼は軍法会議にかけられてはいない(あの呼び出しがまさかの軍法会議扱いだったりするのかな)し、逮捕もないので、かなり理不尽な感じで強制除隊になっていますね
除隊後に退職金が出ないなどの中佐からの言葉があったので、不名誉除隊扱いのはずなのですが、中佐が赴任して方針転換でと言うのはかなり無茶じゃないかなあと思ったりもします
これまでは見逃してきたけど、みたいな感じなのでしょうが、あの流れでジェームズが軍に対して最後まで敬意を表しているのがさらに理不尽さを加速させています
てっきり、最後は国に対して反撃じゃーとかにいくのかと思ったら、裏切りから逃げ延びてエンドになっていたのはどうなのかなと思います
そもそも不思議だったのは、IPOAの管理下にあるラスティの会社に不名誉除隊のジェームズが就職できたことでしょうか
場合によっては、医療保険の停止、市民権の剥奪にまで至る不名誉除隊なので、それが民間とは言え普通に就職できたのは驚きでした
でも、よくよく考えると、サリムからデータを奪えたら即殺す予定だったのですよね
なので、「妻子にお金を残させてやるから、駒になって死ね」と言う思惑が最初からラスティにはあったことになります
このあたりの事情に詳しい人なら、ジェームズが引き入れられた瞬間に「ああ、これは裏切られるパターン」だとわかるのだと思います
とは言え、この手の話は「裏切られて狙われる」のがテンプレなので、あれこれ考えずに「キター!」でOKなのだと思います
ラストの展開が結構グダグダだったのはアレですが、あまり爽快感は感じないのは微妙だったと感じました
■関連リンク
Yahoo!映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://movies.yahoo.co.jp/movie/383976/review/cfa2210f-7a30-4d88-8ece-0244e127ece3/
公式HP:
https://klockworx-v.com/contractor/