■欲望に従順なほど、活力は維持できるものであると思います
Contents
■オススメ度
夢に向かって邁進する人を応援したい人(★★★)
ボクシング映画が好きな人(★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2024.7.9(イオンシネマ久御山)
■映画情報
原題:熱辣滾燙(ホットでスパイシー)、英題: Yolo(You Only Live Once:人生は一度きり)
情報:2024年、中国、129分、G
ジャンル:引きこもりのアラサー女性が恋を原動力にボクシングを始めるスポーツ映画
監督:ジア・リン
脚本:スン・ジビン
原作:『百円の恋(2014年)』
Amazon Link(リメイク元邦画)→ https://amzn.to/3WhSjc4
キャスト:
ジア・リン/賈玲(ドゥ・ローイン/杜樂瑩:ボクサーに転身する引きこもりの32歳)
【ボクシングジム関連】
ライ・チァイン/雷佳音(ハオ・クン/昊坤:ボクサー、ローインのボクシングのコーチ)
シャー・イー/沙溢(ラオ・リャン/老梁:ボクシングジムのオーナー)
ブ・ユー/卜鈺(ヘクン/何坤:ボクシングのコーチ)
ズゥー・ティエンフー/朱天福(ティエンフー/天福:モテモテのボクシングのコーチ)
リー・ハイイン/李海银(ジムの受付嬢)
リー・グオリン/李國麟(本人役:ジムに来るスーパースター)
ヤン・ミン/闫猛(ウェン・チャン/文强:ハオ・クンの対戦相手)
ジ・ユーチェン/纪聿晨(ウェイ・チャンの父)
ジャン・グゥインリン/張桂玲(リウ・ホンシャ/劉紅霞:ローインの対戦相手)
チャオ・ティンティン/赵婷婷(ジムに参加する女性)
ファ・シンユァン/法志远(ジムに参加する女性の夫)
ジー・チン/姬晴(ジムの生徒)
ジャン・シャンシャン/简珊珊(イベントのコンサルタント)
【家族関係】
チャン・シャオフェイ/張小斐(ローダン/杜樂丹:ローインの妹)
サン・ワンチュー/孙婉竹(ジャオシー/竹子:ローダンの娘)
チャオ・ハイイェン/趙海燕(リー/李女士:ローインの母)
チャン・チー/張琪(ローインの父)
ヤン・ズー/楊紫(ドゥドゥ/豆豆(ローインのいとこ、テレビ局のディレクター)
【テレビ番組関連】
マー・リー/馬麗(マー・チュンリー/馬春麗:番組「自分探し(尋找自己)」の心理学者、ウェイの元妻)
ウェイ・シャン/魏翔(ウェイ・ドンフォン/魏東風:番組「自分探し(尋找自己)」の出演者、マーの元夫、詩人)
シェン・タオ/沈濤(シャンタオ/小濤:番組「自分探し(尋找自己)」の司会者)
【交友関係】
リー・シューチー/李雪琴(リリー/莉莉:ローインの親友)
チャオ・シン/喬杉(シャン・ズー/杉子:ローインの元カレ)
【バイト先関連】
シュ・ジュンコン/許君聰(串焼き店のオーナー)
シェン・チュエンヤン/沈春陽(チャン・チェン・ルオシー/張晨若曦:バイト仲間)
リウ・ディー/刘頔(店員、料理人)
【その他】
リウ・ホンルー/劉宏祿(店の前で物乞いするライダー)
チャン・タイウェイ/张泰维(不動産仲介人)
グオ・ユーフォン/郭宇鹏(ボクシングの試合の司会者)
カオ・フージュン/曹贺军(警察)
ジア・ウェンティアン/贾文田(公園のダンスのインストラクター)
レイ・ミンウー/雷鸣武(公園のダンスのインストラクター)
■映画の舞台
中国:湖北省
襄江
https://maps.app.goo.gl/KCikhBncZ6b344Xk7?g_st=ic
ロケ地:
中国:広東省
東莞/Dongguan
https://maps.app.goo.gl/RycVqbcp5ix4vWM57?g_st=ic
広州/Guangzhou
https://maps.app.goo.gl/ACZDbgvCBUMrZbpY8?g_st=ic
仏山/Foshan
https://maps.app.goo.gl/4P4PzLvkMGJN4tDFA?g_st=ic
■簡単なあらすじ
32歳になっても引きこもりを続けるローインは、親の脛を齧りながら、妹のローダンに悪態をついていた
いとこのドゥドゥはローインを番組に出したいと考えていて、インタビューを試みるものの、撮りたい画は撮れず仕舞いだった
ある日、ローダンと大喧嘩をしたローインは怒りに任せて家を飛び出してしまう
母からの施しでアパートに住むことになり、串焼き屋でアルバイトを始めることになった
セクハラ店長、馴れ馴れしいバイトなどに耐えながら仕事をこなしていたローインだったが、ある日、店の前で立ちションをしていた男と奇妙な出会いを果たす
彼は近くのボクシングジムでボクサー兼トレーナーをしているハオ・クンと言う男で、ローインは彼に心を奪われてしまう
ハオはジムの勧誘の仕事に前向きではなかったが、強引にローインを引き込むことで面目を保つことができたのである
テーマ:邁進する原動力
裏テーマ:探し物は自分の中にある
■ひとこと感想
オリジナルを観たかどうかを覚えていなかったのですが、急遽地元の映画館で公開が決まり、予習せぬままに突撃することになりました
運動神経のなさそうな引きこもりがボクササイズを始めるのですが、トレーナーのボクシングへのこだわりから自分自身も試合をしてみたくなる様子が描かれていました
恋は盲目と言う感じですが、それにしても100キロから50キロまで減量をして撮影に臨んだのが、監督自らというのは驚きました
女優に求めるのが酷だと考えたのか、単にダイエットをしたかったのかはわかりませんが、ともかく変わりようが別人のようになっていましたね
それでも、太っちょの時から痩せたらキレイになる系の顔をしていたので、徐々に精悍になりつつも、美しさが滲み出てくるのは良かったと思います
エンドロールはメイキングになっていて、体重日誌のようなものも登場します
そして、ラストショットは圧巻の!なので、最後まで席を立たないことをオススメいたします
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
恋愛が原動力なので、どんなイケメンに恋をしたのかと思ったら、まさかのおっさんで困惑してしまいました
元カレの顔の系統を考えると趣味なのかなと思いましたが、てっきりイケメンボクサーに良いようにやられて奮起するのかと思っていました
映画は、減量が話題になっていますが、それ以上に体の作り方が凄いと思います
過酷なトレーニングをして、単にウェイトを落としただけじゃないのですね
メイキングでは指導してくれたプロボクサーのボディに一発当てることができていて、そこに至るまでの努力は相当なものがあったと思います
物語としては、人は意思一つで何でもできるんだなあと思わせてくれるし、年齢も目標も関係ないということを証明してくれました
フィクションではあるものの、この過程が綿密に描かれていることで、荒唐無稽な物語に思えないところが凄いことだと思います
■リメイク元について
リメイク元は邦画の『百円の恋』で、日本で2007年に公開された映画でした
監督は武正晴、脚本は足立紳で、プロデューサーの佐藤現も含めた3人が本作にて監修を務めています
物語は、32歳の引きこもりの主人公が変化するというもので、タイトルの100円は彼女が働き出したのが100円ショップだったというところが由来になっていました
物語は、32歳の引きこもり一子は自堕落な生活をしているという導入から始まります
彼女の母は弁当屋で、父は役立たず、離婚して出戻っている妹の二三子が店を手伝っていました
妹が戻ってから1週間目のこと、二人は大喧嘩をしてしまい、妹に追い出されてしまいます
そこで一子は100円ショップの面接に行き、そこで採用されることになりました
その店はうつ病の店長、ギャンブル好き店員、口うるさい店員、廃棄を盗む店員など、かなりの個性派が揃っていました
ある日、一子がよく覗き見するボクシングジムの狩野という青年が買い物に訪れます
彼は買ったものを忘れてしまい、一子がそれを届けに行くのですが、そこでデートに誘われてしまいます
その後、紆余曲折を経て、一緒に暮らすようになるも、そんな日々は長くは続きませんでした
一子は次第にボクシングに没頭するようになり、テストを受けて合格します
そんな折、弁当屋に狩野がやってきて、試合を見にきて欲しいと伝えます
でも、狩野は頑張っている奴は嫌いだと言い、一子はさらにボクシングにのめり込むことになりました
そして、最後の試合を迎える、という流れになっています
エンディングはリメイク元とリメイク作品では違いますが、個人的には本作の方が好みでしたね
リメイク元の主演・安藤サクラのボクシングに打ち込む姿も凄いのですが、本作はさらにえげつないことになっていましたね
約100キロから55キロまで体重を絞り、しかも練習ではプロボクサー相手にスパーリングなどを行っていました
違う良さがあると思いますが、目的があるとは言え、こんなことまでできるのだなあと、人間の底力を改めて感じさせてくれる内容になっていたと感じました
■意思を通す力の源
本作は、妹との喧嘩の果てに仕事を始め、そこで出会いがあるという流れになっていました
通りすがりで気になるので見てしまうのですが、その時点では自分がボクシングをするなどとは夢にも思っていません
ハオ・クンとの出会いによって、彼が勝利に拘っている姿を見て感化されるのですが、リメイク元の場合は自然と始めて、彼氏との関係が拗れて傾倒していくようになっていました
どちらも、その先に何があるのかを見ようとしていて、たまたま目の前にボクシングがあった、という感じになっています
自然と始められるものは何にしろ、実は潜在的にやりたかったことに通じていくと思います
何かに打ち込む姿を見る中で、自分自身の自堕落さを痛感することになるのですが、ここで恋愛が大きな原動力になっているのが良いと思います
そして、その恋愛の破綻が更なるパワーアップに繋がっていくというのも面白くて、特に敵がいるスポーツだと、その怒りを相手にぶつけることができます
でも、それがいつしか過去の自分への怒りへと変わっていくのですね
そして、自分自身が随分と遠くに来たことを知って、その成果がさらに自分を奮い立たせることになっていました
このやる気スイッチというものは奇妙なものになっていて、初動と軌道では目的が違っていることが多かったりします
本作の場合は、恋愛が初動、面白くなって軌道になるというもので、恋愛のために試合に勝ちたいとかではないのですね
純粋にボクシングが面白くなって、そして欲が出てきてしまう
このケース以外でも、継続することで目的が変わることがよくあるのですが、根底には「自分自身を違う場所に立たせたい」という欲求があります
なので、「ここではないどこかへ向かう」のなら、最初の一歩を踏み出す必要があります
そこから先は一直線に向かうこともあれば、遠回りをすることもあります
でも、近道はなくて、ずっと歩き続けているという事実が、振り返ると近道だったと思えるようになると言えるのだと思います
最初の一歩は「すべての道程の半分をゆく」とも言われるので、何かしらの理由を拝借して体重移動を行うことで、勝手に進んでいくものではないでしょうか
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
本作は、過酷な撮影を監督自らが行うというプロジェクトになっていて、エンドロールでは制作過程のドキュメンタリーがまとめられていました
いかにしてこの撮影ができたのかがわかる内容で、映画は完全に順撮りでないとできないという難しさがありました
素材がなければ演出もできないわけで、太っているシーンを追加したいというのは無理であることがわかります
それゆえに、シナリオを途中で加筆修正することも難易度が上がり、撮影と同時にダイエット&ボクシングのトレーニングをする必要があると言えます
単純にウェイトは絞れてくると思いますが、それと同時にボクシングも上達させなければならないので、実際にボクサーになる過程を追っていくことになります
ボクサー体型になるためには、ボクサーと同じように体を鍛える必要があって、ボクシングに必要な筋肉を増やしていくことになります
スポーツの専門家がアドバイスに入っても、実際にそれを行うのは監督自身で、スケジュール調整なども彼女がしなくてはなりません
ダイエット&筋トレが1日遅れることでスタッフの時間を無駄にすることになり、さらに映画制作に対するコストも上がってしまいます
それを考えると、潤沢な資金があれば、逆にストイックさが無くなってしまい、撮影を追い込めないようにも思えてきます
人は不思議なもので、逆境になればなるほどにポテンシャルを発揮することになっていて、スタート時には見えない景色が見えることもあります
その視点の移動は映画制作にも密接に関わっていて、その視点の移動すらも「神様の視点」で見透かしてプランを立てなければならないのですね
その目標値は緩すぎてもダメで、キツすぎても難しくなるので、ギリギリのラインを見極める必要があります
これが第三者視点で修正を加えるのと、自分自身を客観視して修正を加えるのとでは天と地ほどの難易度の違いがあるのですね
それを考えると、未曾有のものを作りたいという根源的な欲求があって、この映画における使命感というものが付随しないとできなかったように思います
本作は、そういったメタ的な視点も込めて後学に遺すものを作ったと思うので、別次元の凄さがあるのではないでしょうか
■関連リンク
映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://eiga.com/movie/101396/review/04019463/
公式HP: