■コントローラー同士の対決は、アナライザーの資質の差で勝敗が決まったようでしたね
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■オススメ度
クライムミステリーが好きな人(★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2024.3.8(イオンシネマ京都桂川)
■映画情報
情報:2023年、日本、129分、PG12
ジャンル:偶然映った映像をもとに訳あり婿養子と若者の邂逅を描いたクライムミステリー
監督:金子修介
脚本:港岳彦
原作:ズー・ジンチェン/紫金陳『悪童たち(早川書房)』
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キャスト:
岡田将生(東昇:義理の両親殺害を目撃される男)
黒木華(安室香:朝陽の母、一平の元妻、ホテル&包装工場勤務)
羽村仁成(安室朝陽:昇の犯行を目撃する男)
北村一輝(打越一平:朝陽の父)
花澄(打越遥:一平の妻、朝陽が晶を殺したと思い込んでいる女)
東恩納瑠花(打越晶:遥の娘)
松井玲奈(東静:昇の妻)
落合モトキ(静の愛人、彫り師)
江口洋介(東巌:静の従兄弟、県警の刑事)
三浦誠己(巌の後輩刑事)
星乃あんな(上間夏月:朝陽と知り合う女の子)
前出燿志(上間浩:朝陽の小学校時代の同級生、夏月の義理の兄)
矢島健一(東啓治:東コーポレーションの総帥)
中村久美(東佐江:啓治の妻)
チャンヒナ(夏月の母?)
グレート・O・カーン(浩の父、夏月の義父)
金子鈴幸(学校の先生)
岸博之(東コーポーレーションの専務?)
崎山一葉(テレビのアナウンサー?)
■映画の舞台
沖縄県:各所
ロケ地:
沖縄県:読谷村
https://maps.app.goo.gl/QkgCqUnt7CuKQRfB6?g_st=ic
沖縄県:中頭郡
HOTEL RYCOM
https://maps.app.goo.gl/Hi9QdEmBikUk9ZHu6?g_st=ic
沖縄県:沖縄市
大衆食堂ミッキー
https://maps.app.goo.gl/GgegZeHPNUC9RJij9?g_st=ic
ガジュマルカフェ
https://maps.app.goo.gl/LGPhpot6Rj9Rsebx6?g_st=ic
■簡単なあらすじ
大企業の東家に婿養子として入った昇は、義父母の思い出の場所に同行し、そこで記念写真を撮ることになった
だが、昇はシャッターを切ることなく二人を崖から突き落とし、そのまま警察を呼んで演技を始めることになった
妻・静は夫を不審に思い、いとこの刑事・巌に訴えるものの、常用薬の副作用にて気を失って転落したと結論づけられてしまった
一方その頃、母子家庭で育った朝陽は、父の再婚相手・遥からストーキングを受けていた
遥は娘の晶を殺したのが朝陽だと思い込んでいて、家の壁中にペンキで落書きをしたり、ビラを貼り付けたりされていた
ある日、朝陽の元に小学校時代の友人・浩がやってきた
浩は義理の妹・夏月が義父を刺したと言い、いくところがなく匿ってくれと言い出す
朝陽は友人の頼みということで彼らを受け入れ、近くの浜辺へと散歩に出かけることになった
カメラ好きの夏月にそれをプレゼントし、いっときの思い出をファインダーに収める
だが、そのデータの中に誤って動画として撮ったものが残っていた
そして、そこには「あるもの」が映っていたのである
テーマ:問題解決の方向性
裏テーマ:知性と策略
■ひとこと感想
中国の小説を原作とした作品で、中国版は『バッド・キッズ 隠秘之罪』というタイトルでドラマ化されていました
本作は、それを沖縄を舞台にした映画化になっていて、犯罪を起こした大人とその証拠を持つ子どもが対決するという内容になっています
冒頭からいきなり崖に突き落とすシーンから始まり、犯人を追う作品ではないことがわかります
婿養子が義父母を始末することになるのですが、このあたりの流れは火曜サスペンス劇場のような感じになっていましたね
物語は、二転三転とする中で、それぞれが向かう道を探りあって、共闘していくという感じになっていて、調子に乗った子どもがどうなるか、という内容になっていました
パンフレットもとても凝っていて、劇中で登場した「新聞」がガッツリと再現されていました
映画には登場しない裏面(番組欄)まで作り込んであるのですが、沖縄の人ならあるあるな番組があったりするのかもしれません
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
タイトルが示す通り、主人公は少年たちになるのですが、映画の展開は大人側がメインに動いていきます
昇の起こした殺人事件が起点となって、そこから多くの事故が起きていくのですが、それを知ることになった少年が脅しにかかるという展開になっています
突っ込んだら負けだと思いますが、あの距離で拡大したものを処理しても、昇だとは断定できないでしょう
でも、状況証拠として、突き落としたようには見えていたので、あとは警察のお仕事という感じになっています
映画では、朝陽のサイコパスっぷりを堪能することになるのですが、彼の目論見が少女の感情で薙ぎ倒されるのは強烈なインパクトがありました
あの手紙を出すかどうか迷っていたようですが、出すことで後悔なく最後の瞬間に望めると感じたのでしょう
青酸カリを一瞬口に含んで吐き出したらセーフなのかはわかりませんが、「犯行を自慢げに語りたがる」という犯人像なども含めて、テレビドラマっぽい感じがありましたね
■青酸カリの扱いについて
劇中で登場する「青酸カリ」とは、シアン化カリウム(Potassium Cyanide)と言われる無機化合物のことを言います
常温では無色で、結晶性塩として水によく溶ける物質になります
強い毒性を持っているため、毒物の代名詞のようになっていますね
でも、工業的に重要な物質とされています
経口摂取すると、胃酸によって青酸ガスを出すことになり、毒性が強まってしまいます
青酸は細胞の呼吸を止める効果を持ち、これが毒性とされる理由になっています
細胞はミトコンドリアにて、電子伝達系の電子の流れで酸化を起こし、その時に作られるプロトコル(H+)を介した動きを利用して、生体に使われるエネルギー源であるATPを作ることになります
この電子伝達系の酵素の中にシトロクロームオキシダーゼという酵素があり、この中に酵素活性を出すための鉄が含まれています
青酸の成分はこの鉄と結合し、酵素の動きを止めてしまうのですね
これによって、細胞が呼吸できなくなる、とされています
青酸カリが体内に入り、胃酸と混じることで青酸ガスが発生するので、飲み込まなければガスは発生しないことになります
ガスが肺に到達して拡散されてしまうので、それまでに処置をすればと思えますが、胃のなかに入った段階ではどうしようもないのが実情です
なので、朝陽がやったように、口に含んですぐに出す(胃には入れない)ことで、ガスの発生を防ぐことができます
とは言え、飲み込んで死んだ二人に近づくと逆流してきたガスを吸い込む恐れもあるので、近づくことすら危険であると言えます
■少年を犯罪に駆り立てるもの
本作は、様々な犯罪が絡んでいて、最終的には「13歳だからセーフ」ということをわかって、朝陽は様々な犯行に及んでいることになります
彼は根っからのサイコパスなのだと思いますが、彼は犯罪だと認識しつつも、そこに快楽というものを感じているように思えます
この気質がどこから出ているかと言えば、自分の思い通りにならないものを是正しようとしてする性格からきていると言えるでしょう
彼の家族の中で唯一自分の思い通りになるのが母親で、その環境を守るために父親を殺すという選択をしていました
晶にフラれたことも彼の思い通りにならなかったことの一つで、コントロールできないものを消すということをやってのけます
晶を殺したことで、その母・遥からの執拗なストーキングを受けることになりますが、母親には自殺ではないことがわかったのですね
それが何なのかは映画では示されませんが、娘の自殺現場に不可解なものを感じ取ったのでしょう
警察でもわからない何かということになりますが、映画の警察はあんまり仕事をしない感じに描かれていたので、そこまで詳しく調べなかったということもあるのかもしれません
朝陽が行なっていることは犯罪で、彼自身もそれを認知はしています
それが罪になるかどうかを気にしているフリをしていました
彼の中では、犯罪とその他の行動の違いというものがなく、社会がそれを犯罪だと規定しているだけだという感覚なのだと思います
この気質は昇にもあって、自分の思い通りにことを運ぶことを第一に考えていました
不幸なのは、このコントローラー(支配者気質)がぶつかりあったことで、その壮絶なマウント合戦というものが描かれていたと言えます
人間の性格は大きく分けて4つに分けられるのですが、コントローラーは文字通りに自分の思った通りに事が進むことを好む性格のことを言います
この他には「アイデアを大切にしてムードメーカーとなり得るプロモーター」「他人の援助を好み、協力関係を構築したがるサポーター」「情報分析を主体として、計画を立てることを好むアナライザー」というののがあります
映画の登場人物だと、夏月はサポーター、浩はプロモーターとなり、静もコントローラーの気質がありました
これらの気質は縦軸が「感情」、横軸が「自己主張」というマトリクスに当てはめられるものなのですが、自分のタイプを知っておくと、いろんな役に立ちます
ちなみにどれか一色ということはなく、アナライザー寄りのコントトーラーなどのグレイゾーンというものも存在します
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
本作は、中国の小説の映画化で、舞台を沖縄に設定していました
風景以外は沖縄っぽさを感じませんが、小さな県を牛耳っている大企業が暗躍しているという構図がリアルに感じられるようになっていました
東コーポレーションの関連企業への天下りで支えられている公僕などが加担し、一族のスキャンダルは徹底的に出さないスタンスになっていて、それが一因でやりたい放題できるという構造になっています
朝陽がこの土地の特性まで利用していたというテイストになっていて、法律の抜け穴や地域情勢まで理解して計画に落とし込んでいたのはすごいことだと思います
でも、彼には「自分本位」というコントローラーの負の側面が出ていて、それによって身近にいる人の心が読めていない状況が続いています
夏月の気持ちにも気づけていないし、母親の本性も見抜くことができず、それによって彼は逮捕されることになります
ラストシーンは自分の運命を悟っている顔をしていましたが、この事件が表に出ることはないのでしょう
結局のところ、計画が完璧でも「人間の心までは操れない」のですが、それを補完できるだけの能力があれば完全犯罪も成し得たと思います
昇も自分の計画性に自信を持っていますが、青酸カリがどのように致死に至るかを見誤った結果、その報いを受けているのですね
彼の計画がもっと慎重で、相手に対して驕ることもなければ、彼は逃げ切れたのかもしれません
映画は、悪人は許すまじという感じで大団円を迎えますが、朝陽は母親に裏切られたことを知らないままなのですね
もし続編があるならば、自分を売った母親に対する復讐というものが描かれるのでしょうか
エンドロール後にはおふざけのような『ゴールドボーイ2→?』というタイトルコールがあったのですが、これだけまとまった物語の続編はナンセンス以外の何物でもありません
でも、ワンチャンあるとしたら、朝陽がレクター博士のような存在になるパターンなのかな、と勘繰ってしまいました
