■別方向からの「からかい」があれば、二人はもっと早くに付き合っていたのかもしれません


■オススメ度

 

ドラマ版のファンの人(★★★)

 


■公式予告編

鑑賞日:2024.6.1(イオンシネマ京都桂川)


■映画情報

 

情報:2024年、日本、120分、G

ジャンル:10年ぶりに再会を果たした「からかい関係」のその後を描いた青春映画

 

監督:今泉力哉

脚本:金沢知樹&萩森淳&今泉力哉

原作:山本崇一朗『からかい上手の高木さん』

Amazon Link(原作コミック:Kindle版)→ https://amzn.to/4bYiNUM

 

キャスト:

永野芽郁(高木さん:フランスから帰国した西片の友人)

   (中学時代:月島琉衣

高橋文哉(西片:地元の中学校の体育教師)

   (中学時代:黒川想矢

 

鈴木仁(中井:西片の同僚教師)

平祐奈(真野:中井の婚約者)

 

前田旺志郎(浜口:西片の同級生)

志田彩良(北条:浜口の元恋人)

 

白鳥玉季(大関みき:西片の生徒、学級委員)

齋藤潤(町田涼:西片の生徒、不登校)

 

江口洋介(田辺:教頭先生)

 

春本ヒロ(絵の指導を受ける生徒)

竹下優名(北田真美:付き合っている女子生徒)

森本陸斗(板垣陽介:付き合ってる男子生徒)

 

禾本珠彩(横田樹里:絵の指導を受ける生徒)

大森愛莉(石田麻友子:生徒)

高平凛人(相川響:生徒)

蒼乃珊瑚(岡崎美音:生徒)

海津陽(生徒)

金恒那(澤井はな:高木に絵を頼む女子生徒)

山下光琉(長嶋光一:生徒)

高橋海翔(生徒)

安藤治真(安川真治:生徒)

山口侑人(米田慶太:生徒)

赤澤葵(生徒)

石井楓大(生徒)

泉琉蒼(生徒)

大森香実(生徒)

坂本宝愛(松永心愛:生徒)

佐藤琉音(生徒)

佐藤珀心(生徒)

田中瑛貴(生徒)

中田凱仁(生徒)

濱中優花(生徒)

三木葉優心(生徒)

大町悠介(生徒)

桃児(生徒)

 

長澤優花(橘ゆみ:結婚式の参加者?)

橋本佳奈(佐伯恭子:結婚式の参加者?)

小出優子(美術の先生)

高橋玲香( ?)

ジェームズ・ペーカー(神父)

 


■映画の舞台

 

香川県:小豆島

 

ロケ地:

香川県:小豆島

香川県:小豆群

土庄中学校

https://maps.app.goo.gl/fGCWeRz9xKqhJs4N7?g_st=ic

 

MINORI GELATO

https://maps.app.goo.gl/C4bcNe2Fpi4Pe2k89?g_st=ic

 

居酒屋南国

https://maps.app.goo.gl/LhGjH9MzoVSj63pd6?g_st=ic

 

居酒屋味彩

https://maps.app.goo.gl/ZhXtZRwARbzRJiHv8?g_st=ic

 

亀山八幡宮

https://maps.app.goo.gl/TLACNZhCUKkdCN7Y7?g_st=ic

 


■簡単なあらすじ

 

中学時代の同級生で、からかわれてばかりだった高木さんがパリに旅たって10年、西片は母校にて体育教師になり、それなりの日々を過ごしてきた

同僚の中井が10年来の付き合いの真野と結婚するようになり、月日の流れを感じていた西片だったが、ある日、サプライズに巻き込まれてしまう

それは、教育実習を任された相手がパリから帰国した高木さんだったからである

 

高木さんは西片には内緒にしてほしいと手回しをしていて、放課後の掃除用具から飛び出してきてしまう

驚きを隠せない西片に対して、「ヒントは出したのに」と高木さんは相変わらず西片をからかう

 

その後、教育実習が始まり、高木さんは西片のクラスの子どもたちに絵を教えることになった

そんな彼のクラスには絵が大好きな生徒・町田がいたが、彼は不登校状態になっていて、週に一度、西片は授業に遅れないようにと、プリントなどを持っていき、彼の様子を伺っていた

 

テーマ:からかうの意味

裏テーマ:好きの正体

 


■ひとこと感想

 

映画を観る直前まで「ドラマの続き」というのを知らずに鑑賞

知らなくても楽しめる感じですが、後半の「回想映像」はドラマ版のものなんだろうなあと思って観ていました

個人的には今泉作品を追いかけていて、Aimerの主題歌も好きなので観ましたが、ドラマ版の続きと知っても観ていたように思います

 

映画は、中学時代の同級生が大人になって帰省するというもので、中学生時代の役者が面影があって驚きました

その他のキャラも中学校時代があると思いますが、それはドラマ版を観てのお楽しみなのかもしれません

 

物語は、初恋の相手同士の疎通のなさがあって、それが現在軸の生徒たちの恋愛で動いていくのは良かったですね

自分の存在が誰に影響を与えていると嬉しいと言った生徒の言葉は意味深で、後半における高木さんと西片の会話も、噛み合わないけれど愛おしさというものが感じられるようになっていました

 

ドラマ版はネトフリで観られるようなので、会員の方は観てからの方か良いかもしれません

 


↓ここからネタバレ↓

ネタバレしたくない人は読むのをやめてね


ネタバレ感想

 

普段はドラマの続きは観ないのですが、知らなかったのでセーフという謎ルールで押し通しておきます

とは言え、ドラマ版を全く観ていなくても問題ない感じに仕上がっていて、人間関係も状況もさらっと紹介されていました

物語の導入として分かりやすく、お手本のようなシナリオになっていたと思います

 

物語は、どうみても両思いのカップルが先に進まないという流れになっていて、それでも周りはそこまで強く押し付けたりしません

2人の性格と関係性を知っているからこそ、本人たちの気持ちを優先しているのですが、誰しもが他人の恋愛の行く末に興味があるわけではないので当たり前のことのように思えます

 

映画は、生徒の恋愛や価値観に翻弄される大人を描き、そんな中で自分が抱えていた思いというものを共有するに至ります

好きという感情がはっきりわからない西片ですが、俯瞰して観ていると、半分高木さんのせいじゃねと思ってしまいますね

見た目天使の中身・小悪魔系女子の怖さここにあり、と言った感じになっていたのは笑ってしまいました

 


「からかい」は蛙化現象を恐れての防衛策?

 

本作は、「好き」という感情をうまく表現できない人々を描いていて、高木さんも「何百回もの好き」が「からかう」という行為に変わっていました

いわゆる、小さい男の子がちょっかいを出すというものの女の子バージョンのようなもので、高木さんの好きという感情は、言葉には出せないものになっていました

それは、どこかで「この関係が続いてほしい」というものがあって、蛙化現象を恐れるあまりに無意識で行っていたようにも思えてしまいます

 

この蛙化現象というのは最近流行りの心理学の言葉で、「好きな相手が自分に対しても好意があるとわかった時に、その相手に対して罪悪感を抱く現象」のことを言います

女性の場合だと、好きだった男性が自分に好意を持っているとわかった途端に「気持ち悪い」と感じてしまうもので、このような現象は女性に多いとされています

両思いになったのに相手を嫌いになってしまうという不思議な現象なのですが、これが男性の場合だと「自分のものになった感覚から興味が薄れてしまう」というものに変換されてしまいます

これらは、追いかけ合っている時の心理状態に幸福感を覚えているからで、それが終わりになってしまうことで生じるものだと思います

 

ちなみに、この蛙化現象の由来は「グリム童話の『かえるの王さま』」なのですが、現在では「交際相手の嫌な部分を見て幻滅する」という意味でも用いられるようになっています

この現象についての研究はなされていないようですが、個人的な感覚だと、「交際する前に理想像を作り上げてしまっているから」のように思います

その理想とのギャップが起こることで生理的な嫌悪感を持つという感じなのですが、それは同時に「恋愛中は相手の良いところしか見ていない」からとも言えるのですね

なので、その時間が幸せであればあるほど、その時間を終わらせたくないという感情が湧き起こってしまいます

そう言ったところから、自主防衛的な感じで、先に進まないように仕向けていたのかな、と感じました

 

 


「からかい」の先に待っている理想と現実

 

幼少期には、異性に対する関心があっても、うまく言語化するができません

好きという感情を理解していなかったり、好きの概念が周囲と違う場合もあったりします

無論、好きと感じるレベルもそれぞれ違っているのですが、最終的には「他の誰かとの関係の方が濃くなること」を恐れたり嫌になったりする段階で、「これが好きという感情なのか」と理解することになります

これは、自分が積極的に相手に好意を持っているというものとは違っていて、喪失感がベースで間接的でもあるので、「好き」という言葉に置き換えるのは抵抗があると思います

 

高木さんの「からかい」は好きの裏返しなのですが、それは「西片の感情を独り占めしたい」というところが起点になっています

常に私のことを考えていてほしいというものがあって、この段階の高木さんは「西片のことばかり考えている」のですね

なので、彼女は「からかい」を「好き」だと自覚していて、西片はそれに気づいて来なかったということになっています

彼が鈍感だと言えばそれまでなのですが、西片に冷静に分析させる間もないほどに、「からかい」は連続的で波状的なものだったのだと思います

 

西片が冷静になることで、彼自身が高木さんとの関係を考えるきっかけになってしまいます

そうなった時に、西片は自分に対して好意を持つかどうかはわからないのですね

また、両思いになったとして、それからどうしたら良いのかがわからなかったりします

よくある恋愛でも、告白の次のステップは意外と難しく、その感情があることで余計なことを考えたりもします

恋人だったらこんなことをするのではと一般論に自分たちを嵌めていくことにも繋がってしまうのですが、その変化を望むかどうかによっても、進むべきかどうかの一時停止が起こってしまう

それゆえに「からかい関係のままでいたい」と思うのも不思議ではないように思います

 


120分で人生を少しだけ良くするヒント

 

「からかい」であるとか、蛙化現象などを見ていると、恋愛に対する男女の違いが明確にあるように見えてきます

それは、相手を好きになるという感情の中で、相手と性交したいというものが付随するかどうかなのですね

男女に限らず、結ばれるというゴールが設定されている恋愛と、状態を維持したいと考える恋愛と、特定の相手を得たことによる衆目認知を求める恋愛など、さまざまなものがあります

これらの思惑が一致すると、両思い後の出来事はスムーズなものになりますが、そうでない場合は、衝突になってしまう場合があります

 

からだの関係をゴールだと思っている男と、そうでない女が特別な関係になっても、「初めから体だけが目的だったの?」みたいなことになりがちなのですね

なので、相手がその後どう思っているのかというものを探る期間があって、そこを阿吽の呼吸で突破できるケースだとうまく行くような感じがします

この場合は、元からそういった関係を望みつつ、それを隠しながらアプローチを繰り返してきているので、双方の思惑が一致すると、その世界に入っていけます

これは、からだの関係というものを特別視しがちな日本人特有のアプローチで、海外などでは「まずはからだの相性」というところもあるし、「告白が存在しない国の方が多い」という現実もあります

 

本作は、傍から見ると相思相愛だけど、という恋愛を描いていて、そんな二人が「そのままでも良いのでは?」という空気感がありました

誰もが二人は想い合っていると感じているので、それを壊そうとしたり、中に入ろうとする人もいなかったりします

それぞれの自己肯定感の低さも拍車を掛けている部分はありますが、横槍がないからこそ自覚が促されないのですね

それを思えば、恋愛を動かすのは他力であり、その影響によって成熟や執着が生まれるのかな、と感じました

 


■関連リンク

映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)

https://eiga.com/movie/100787/review/03891540/

 

公式HP:

https://takagi3-movie.jp/

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投稿者 Hiroshi_Takata

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