■SISU魂を有する者は、地の果てまでも追い詰める!
Contents
■オススメ度
寡黙な主人公が好きな人(★★★)
とにかく無双する映画が好きな人(★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2023.11.1(TOHOシネマズ二条)
■映画情報
原題:Sisu(フィンランド語で「粘り強い」「勇気」「たくましい」などの意味のある言葉)
情報:2023年、フィンランド、91分、R15+
ジャンル:家族を殺された寡黙な元特殊部隊戦闘員が立ち向かうナチスをボコるアクション映画
監督&脚本:ヤルマリ・ヘランダー
キャスト:
ヨルマ・トンミラ/Jorma Tommila(アアタミ・コルピ:金鉱を見つけた老人)
Tinwelindon Belbog「Sulo」(ウッコ:アアタミの愛犬)
アクセル・ヘニー/Aksel Hennie(ブルーノ・ヘルドルフ:ナチス親衛隊の中尉)
ジャック・ドーラン/Jack Doolan(ヴォルフ:ブルーノの右腕)
タトゥ・シニサロ/Tatu Sinisalo(SS兵士:戦車隊)
ヴィルヘイム・エンケル/Wilhelm Enckell(SS兵士:戦車隊)
オンニ・トンミラ/Onni Tommila(シェルツ: SS兵士、戦車隊)
アルトゥ・カプライネン/Arttu Kapulainen(戦車の操縦士)
Tomi Lampinen(砲手)
Vincent Willestand(SS兵士:戦車隊)
Tatu Sinisalo(SS兵士:戦車隊)
Wilhelm Enckell(SS兵士:戦車隊)
ペッカ・フオタリ/Pekka Huotari(パイロット)
イルカ・コイヴィラ/Ilkka Koivula(戦闘機のパイロット)
Max Ovaska(戦闘機のエンジニア)
Kari Parkkinen(戦闘機のパイロット)
Joel Hirvonen(女囚トラックの運転手)
ミモーザ・ウィラモ/Mimosa Willamo(アイノ:親衛隊に拉致られる女性)
Elina Saarela(サーラ:親衛隊に拉致られる女性)
Mila Leppälä(親衛隊に拉致られる女性)
Jasmi Mäenpää(親衛隊に拉致られる女性)
Nora Nevia(親衛隊に拉致られる女性)
Jenna Tyni(親衛隊に拉致られる女性)
セヴェリ・サーリネン/Severi Saarinen(部隊のリーダー)
Aamu Milonoff(銀行の窓口係)
■映画の舞台
第二次世界大戦末期(ラップランド戦争)、
フィンランド:ラップランド
https://maps.app.goo.gl/b2x3hnYr4YY3bSZ77?g_st=ic
ロヴァニエミ
https://maps.app.goo.gl/vFeQwjiihdvYRRVo9?g_st=ic
ロケ地:
フィンランド:
ラップランド/Lapland
https://maps.app.goo.gl/b2x3hnYr4YY3bSZ77?g_st=ic
フィンランド:ヘルシンキ
クラウンハカ/Kruununhaka
https://maps.app.goo.gl/TyndXANhYQgM5GJW8?g_st=ic
フィンランド:ウツヨキ
ヌオダム/Nuorgam
https://maps.app.goo.gl/sLYw6tkA2GvmCfzL9?g_st=ic
フィンランド:イナリ
カーマネン/Kaamanen
https://maps.app.goo.gl/gLoQnJA5RvEgkj357?g_st=ic
フィンランド:イナリ
イヴァロ/Ivalo
https://maps.app.goo.gl/ZWHahQepwttVDNus8?g_st=ic
■簡単なあらすじ
1944年、フィンランドのラップランドにて、ある老兵が金脈を掘り当てていた
男はアアタミと言い、家族を街に残していて、愛犬ウッコと共に最果ての地を訪れていた
戦争は終結に向かい、ナチス親衛隊の残党が国のいたるところに残っていて、アアタミもその残党たちと遭遇する
戦車隊は彼を無視するものの、ジープ隊は彼に難癖をつけ、金塊を持っていることを把握する
だが、アアタミは一瞬で3人の兵士を殺し、その音を聞きつけた戦車隊の隊長ブルーノ中尉は、アアタミを追うことになった
戦車隊はフィンランド人の女性を拉致していて、アアタミの金塊も強奪しようと考えていた
だが、アアタミは持ち前の能力を駆使して彼らの攻撃を交わし、何とか街に戻ろうと考える
だが、戦車隊以外にも多くの親衛隊の残党がいて、その度に窮地に陥ってしまうのである
テーマ:不屈
裏テーマ:信念と執着
■ひとこと感想
フィンランドのランボーのようなポスタービジュアルで、意外な評価になっていたので鑑賞
映画の公開規模も思ったよりも多く、昭和の任侠映画を感じさせるパンフレットとか、なぜかガルパンとコラボしていたりして、よくわからない方向性の宣伝になっていました
映画は、金鉱を見つけた老兵が故郷を爆撃されたことで復讐を誓い、そして立ちはだかるナチス親衛隊をボッコボコにするというもの
とは言え、特殊能力を駆使してとか、圧倒的な武力差などではなく、ツルハシとその辺に転がっている道具や武器を使って戦っていきます
ワンコ(名前はウッコ)が付かず離れずにアアタミを追っていくのですが、このワンコの生命力と運も相当なものだと思います
それにしても寡黙な男ですね
それ以外のキャラもほとんど会話しないので、驚くぐらい淡々と物語が進んでいきました
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
映画は全7編から構成され、「THE GOLD」から始まって、「FINAL CHAPTER」まですっきりと構成されています
綺麗な章立てになっていて、鑑賞後に章題を観るだけで内容を思い出せてしまいます
「THE GOLD」では金鉱の発見、「THE NAZIS」で親衛隊との遭遇、「MINE FIELD」で地雷原、「THE LEGEND」でアアタミの過去、「SCORCHED EARTH」で故郷の様子、「KILL ‘EM ALL」にて報復、そして「FINAL CHAPTER」にてラストのオチが描かれています
物語は、ひとつずつ丁寧に積み重ねられていき、溜まり溜まった鬱憤というものが、「KILL ‘EM ALL」にてスッキリする感じになっていますね
「SISU」という言葉の意味もこの章で明らかになっていて、一言で表すなら「不屈」ということになるのかなと思いました
■タイトルの意味
タイトルの「SISU」はフィンランド語で様々な意味がある単語となっています
直接英語に訳せる言葉はなく、ファンランディア大学の説明によれば、「つかの間の勇敢さではなく、勇敢であり続ける能力」ということだそうで、これがフィンランド人の哲学であると言われています
ウィキペディアの説明だと、「フィンランドの概念でストイックな決意、目的を有する粘り強さ」「勇気」「回復力」「たくましさ」などが挙げられています
個人的には「不屈」という意味が映画においては一番近いのかなと思いました
極度の逆境に直面した時の並外れた決断力を指し、成功の可能性が低い状況で示される勇気という意味合いもあります
その歴史は古く、フィンランド文化を理解するために不可欠な要素とされています
この概念によって、精神的かつ身体的能力の限界を超えるとされていて、フィンランドの文化と集団的議論の中央に位置すると言われています
なんとなくだと、日本の「侍魂」みたいな感じでしょうか
「サムライ」と言えば日本人を言い表しているように、国を現る言葉として定着しているように思えます
この「SISU」は、ポジティブに使われることもあれば、ネガティブな意味に使われることもあります
これを言い換えると「無謀」「自己中心的」「頑固」というものになってしまいますね
言葉には常に二面性があるもので、侍魂も戦時中では悪い意味で飛躍していたと思います
■アアタミの不死身性について
主人公のアアタミは、SISUの概念によって不屈の闘志を燃やし、貫徹するために肉体を痛めつけても怯むことはありません
ナチスには理解できない哲学で、肉体の損傷よりも優先すべき課題のために突き進んでいく様子が描かれています
彼は不死身に見える男ですが、地雷で気を失ったり、首を絞められて殺されそうになったりします
タフネスが彼を支えていますが、それ以上に戦闘能力が高い人物だったと言えます
アアタミは敵兵を盾にして銃弾の海を掻い潜りますが、同胞の死体をそのようには使ったりしません
また、自分の武器はツルハシ一本で、それ以外は現地調達でナチスの武器を使用していました
もともと金鉱を掘るために出かけてきたので、武器という武器を持ち合わせていないのですね
それ故に、身を守るために、使えるものはなんでも使うというスタンスになっています
人を盾にすると書けばなんとなくできそうに思いますが、敵兵は装備を含めた重量なので、普通に100キロ近くあると思います
それを抱えたまま銃弾の中を全力疾走できる体力があり、それは驚異的なものであることがわかります
また、地雷にピンポイントで手榴弾をぶち当てるとか、水中で敵の気道を切り裂いて、そこから酸素を得たりもします
なるほどなと思っても真似できないものがたくさんあって、戦地でタガが外れても真似ができる自信はありません
このあたりのサバイバル能力と機転も凄まじく、歴戦の経験値と伝説とまで呼ばれる所以が隠されていました
ナチスの戦車隊はほぼ残党なので戦力は低めですが、それでも生身の人間一人という状況は絶望的でしょう
そんな中でも、冷静に対処し、卑怯な手はほとんど使わないという戦闘の美学がそこにあって、それゆえにブチ上がるのだと思います
最後の方は、相手がかわいそうになってしまいますね
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
本作は、ほぼマニア向けの一品で、ここまで拡大規模が大きくなるような作品ではないと思います
それでも配給の力の入れ具合は強く、パンフレットも実に凝った作りになっていました
その辺を掘っていたら金脈が見つかってという無茶な導入にも関わらず、そこからナチスとの交戦が描かれるのですが、相手も老人一人だからと舐めプをしたために痛い目に遭うことになっていました
映画内では、アアタミはほぼ喋らず、冒頭の「黄金キター(とは言っていません)」という叫びと、故郷が燃やされた時の「てめえら許さん(とは言ってません)」という叫びがあるくらいでした
でも、ラストでは「高額紙幣で、運びやすいから」とはっきりと言っていました
この映画では、敵もそこまで喋りまくらないのですが、ビジュアルで何が起こっているかわかるように示されていて、字幕がなくても何が起こっているかわかるくらいに編集が上手くなされていました
邦画が死ぬほど喋りまくるのに対して、それに辟易している層にとっては痛快な作品だと思います
また、章ごとにタイトルが出るのですが、これがうまく展開を現していたように思います
冒頭の「THE GOLD」にて物語の状況と主人公を明示し、「THE NAZIS」において本作のヴィランを示し、「MINE FILED」にてアアタミとナチスの戦力差を見せつけます
そして、「THE LEGEND」にてアアタミの過去が描かれ、「SCORCHED EARTH」にて物語の方向性が定められ、「KILL ‘EM ALL」にてその帰結へと向かいます
最後の「FINAL CHAPTER」は余興のようなもので、物語の着地点が描かれ、ようやく重荷が下されることになりました
映画は男ばかりの泥臭い感じに思えますが、道中で囚われの女性たちが立ち上がるシーンもあり、SISU魂は男だけのものではないことを示しています
彼女たちが荒野を歩くシーンは最高で、SISU魂は戦争で劣勢になっても、国民の中で感化され、引き継がれていくものだということがわかるようになっています
不屈というのは目的が完遂するまで終わらないもので、この感覚は日本人の持つ哲学に近いところがあります
それ故に、本作は日本でも徐々に広がりを見せていくのではないかなと思いました
■関連リンク
映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
公式HP:
https://happinet-phantom.com/sisu/