■「金手指」を掴むことで、何を得てしまったのだろうか
Contents
■オススメ度
香港で起きた「佳寧集団詐欺事件」に興味のある人(★★★)
■公式予告編
鑑賞日:2025.1.28(TOHOシネマズ二条)
■映画情報
原題:金手指(不正な取引)、英題:The Goldfinger
情報:2023年、中国&香港、126分、G
ジャンル:実際に起きた金融詐欺事件を描いたスリラー映画
監督&脚本:フェリックス・チョン
キャスト:
トニー・レオン/梁朝偉(チン・ヤッイン/程一言:「嘉文世紀<カルメン>」グループの創設者)
アンディ・ラウ/劉德華(ラウ・カイユン/劉啟源:独立汚職防止委員会(ICSC=廉政公署)の上級調査官)
シャーリーン・チョイ/蔡卓妍(チュン・カーマン/張嘉文:ヤッインの秘書)
サイモン・ヤム/任達華(ツァン・ギムキウ/曾劍橋:ヤッインのビジネスパートナー)
カーキ・サム/岑珈其(ジョニー/ツァン・ウィンニン/曾永年:ギムキウの甥っ子)
スン・キムロン/新劍郎(ツァン・キムクォン/曾劍光:ギムキウの兄、ジョニーの父)
マイケル・ニン/白只(ヤム・チュン/任沖:「宋格」の株式市場担当者、ブローカー、ン・レンソンの担当ディーラー)
タイボー/太保(ン・レンソン/吳任松:新松<サンチュン>グループの財閥)
カルロス・チェン/陳家樂(ロバート/ホー・ホウワン/何浩雲:華業銀行の二代目頭取)
クー・チーホア/何启華(レイ/李:北極船運のCEO)
フー・ヅィホー/胡子彤(ロー/羅:南山紡績のCEO)
ヤン・テンユー/楊天宇(ホー/賀:星輝カジノ)
タン・ハオティエン/譚澔天(ラウ/劉:坪山建設のCEO)
アレックス・フォン/方中信(ケルビン/Kelvin:ヤッインの顧問弁護士)
ケン・ハン/洪卓立(ロニー・マー/馬樂賢:ケルビンの後任弁護士)
フィリップ・ケウン/姜皓文(ムシャ・ハファ/穆沙拉哈法:「東マレー海国銀行」の副頭取)
Julius Brian Siswojo/李凱賢(アンウェン/安文:海国銀行の職員)
【司法関連】
アニタ・ユエン/袁詠儀(1996年の裁判官)
Still Graeme John(スミス/Smith:1987年の裁判官、司法書類ミス)
トー・コン/杜港(1987/1989年独立汚職防止委員会検察官)
チャン・チャクイ/陳澤依(1987/1989年腐敗防止独立委員会の検察幹部)
イアン・コンチュクフォ/江卓科(1987/1989年腐敗防止独立委員会の検察幹部)
シェリング・ン/千雪(1987年裁判所書記官)
ウォン・ワイマン/黃惠雯(1987年裁判所書記官)
Difede Mark Adam(1989年裁判官、妻が株式購入)
リウ・カーファイ/廖嘉輝(1989年裁判所書記官)
ソフィー・クォック/郭彥(1989/1996年裁判所のタイピスト)
【ICAC(廉政公署)関連】
ン・シウヒン/吳肇軒(チム・マンワイ/詹文偉:カイユンの右腕、ICAC捜査官)
ウィル・オー/柯煒林(ン・チーファイ/吳志輝:ICACの調査員)
レンシー・ヨン/林耀聲(ツェ・キンミン/謝建明:ICACの調査員)
チョウ・キムイン/朱鑑然(ラムシン/林誠:ICACの調査員)
マック・ツェイ/麥芷誼(リー・チーチン/李芷青:ICACの調査員)
【嘉文(カーマン)世紀グループ】
グラディス・リー/李靖筠(本社案内係)
ジジ・チャン/張蔓姿(本社受付)
サブリナ・チャン/張蔓莎(本社受付)
マク・ウィンナム/麥詠楠(秘書)
カトリーナ・チャン/陳珮欣(秘書)
ラム・ツェユエン/林芷沿(事務員)
チャン・ワイユェン/陳惠源(レストランシェフ)
ラウ・チーキン/劉智堅(レストランマネージャー)
フー・チュンメイ/胡春梅(レストランマネージャー)
【証券会社】
デオン・チャン/張松枝(ブローカー・ラム/經紀林:ヤム・チェンの同僚)
ジェン・ラウ/劉悅(シェリー/雪兒:ブローカー)
【皇家香港警察】
チン・カロク/錢嘉樂(サージ/沙展榮:皇立香港警察の巡査部長、ICACに刃向かう警官)
Jai Day(警察署長)
リー・センヒン/李生衍(警部)
ベンジャミン・ウォン/黄志廣(警部)
Arunkumar lyer(警官)
Ngai Bo Cheung(警官)
Cedric Lecoffre(警官)
Kristopher Long Peter(警官)
シー・ロクマン/佘樂文(サージの部下)
チャン・チョン/陳翀(サージの部下)
チャウ・カホー/周嘉豪(1977の私服警官)
ウォン・ワイロク/黃偉樂(1977の私服警官)
【カイユンの親族関連】
キャサリン・チャウ/周家怡(スン・ウェイ/孫慧:カイユンの妻)
レンシー・ユン/楊偲泳(ラウ・ウィン/劉詠:カイユンの娘)
ウー・ツェトン/胡子彤(カイユンの息子、幼児期)
チャン・タクウェン/陳德元(カイユンの息子、少年期)
モク・チャムクォン/莫湛光(カイユンの父)
チョ・フクファン/蔡馥芬(カイユンの母)
ライ・チークー/黎志強(スンウェイの父)
リー・インフォン/李燕芳(スンウェイの母)
ロ・フィンファイ/盧顯輝(カイユンのいとこ)
【ヤーディン社関連】
Londiwe Ngubeni (Ms.Lolo:ジャズシンガー)
Oliver Williams(ジャーディーン・タイクーン/Jardine Tycoon:ヤーディン社の社長)
Brian T Burrell(マーティン・ケアー・イーヴス/Martin Kear Eaves:ヤーディン社の投資部門)
David MC(ジョーイ・D・カーソン/Joey D. Carson:ヤーディン社の財務管理)
Nick Ford(イアン・ブリジット・ブラウン/lan Birgitte Brown:ヤーディン社の経理部主管)
【その他の取引関連】
Christopher Price(テリー・グラハム/Terry Graham:香港銀行頭取)
Todd Everts(「Ballroom」の銀行家)
Arzoony Ezekiel(「Ballroom」の銀行家)
Alberto Calvet(「Ballroom」の銀行家)
Kaymen Anthony Sese Wellham(「Ballroom」の銀行家)
【フィリピンパート】
クォク・イークワン/郭爾君(「嘉文旅行社」のツアーガイド)
リン・ヒウワー/凌曉樺(フィリピンの大統領)
Pearly Taneo Baliguat(大統領夫人)
ヤン・ワイギ/楊偉基(大統領の護衛)
ング・ティンチー/伍庭熾(大統領の護衛)
チャン・ワンチョウ/張宏洲(大統領の護衛)
【モスクワパート】
ロバート・チェン/陳俊利(CIAのエージェント)
Stevic-Rankovic Dragutin(KGBのエージェント)
Taptsou Aliaksandr(KGBのエージェント)
ジェフ・リー/李志強(KGBのエージェント)
Joly Philippe(KGBのオフィサー)
Birkun Andriy(ソ連のアコーディオン奏者)
Yegor Korotenko(ソ連のアコーディオン奏者)
Mysko Bohdan(ソ連のアコーディオン奏者)
Viktor Nadtochiy(ソ連のアコーディオン奏者)
【日本パート】
岩田慎平(日本の俳優)
フン・スイクォン/洪瑞琪(日本人監督)
イップ・イーカー/葉漪嘉(日本の女優)
リョン・マンイー/梁敏儀(日本の女優)
リョン・キンイー/梁健怡(日本の女優)
張拓朗(日本の俳優)
クァク・ホンファン/郭海楓(日本の俳優)
ジン・ホ/吳浩(日本のスチール写真家)
【その他】
ヒミー・ウォン/黃定謙(パク・ユー/白羽:殺し屋)
Smith Maria(アンティークルームの女優)
ジャコ・クォクツルン/郭子龍(ICACのニュース特派員)
Suez Francis(ニュースアンカー)
チョン・マンホン/莊文康(ン・レンソンのボディガード)
ジョニー・ラム/林瑞慶(ン・レンソンのボディガード)
ダニース・ロー/羅展凰(ン・レンソンのボディガード)
サム・ン・クワイラプ/伍簽立(ン・レンソンのボディガード)
ロー・キンシン/盧勁成(ン・レンソンのボディガード)
ロイ・トシクチャン/杜錫棕(ン・レンソンのボディガード)
チョン・キンハン/鍾健恒(建設現場監督)
ン・チーパン/吳智斌(「Peninsula Hotel」のバーのマネージャー)
トニー・ンワイ/吳偉傑(「Peninsula Hotel」のレストランのウェイター)
Ngalani Pierre Alain(ボクシングの王者)
Sunday Blessing(チャンピオンの彼女)
タム・ヨクユン/譚若欣(リノベーションワーカー)
Dhillon Harjit Singh(ペタグ・S/Petag S:?)
サイモン・ポン/龐浩然(ポーター)
ユー・タトチー/余達志(オークションの競売者)
Richard Van Der Veen(オークションの競売者)
ベニー・シェク/石永康(レストランのマネージャー)
ツァン・ロクトゥン/曾樂彤(ゴールデントライアングルのツーリストガイド)
ヌグ・クォクミン/伍國明(中華料理店のマネージャー)
キャンディ・ラム/林靄瑩(中華料理レストランの受付係)
Stephen Duddridge(「世紀航運/Century Shipping」の社長)
Castanheira Fiche Rogerio(カナダ政府関係者)
トミー・ツァン/曾志榮(スタジオスチールフォトグラファー)
Logvinchuk Iryna(テリーの部下たち)
King Bernard Joseph(テリーの部下たち)
David Lee Adam(テリーの部下たち)
Assath Mohamed Hilmy(ハファの部下)
シン・インジダート/潘文星(ハファの部下)
シムソン・ウォン/王惠森(カイユンを狙うドライバー)
チャン・ヒンチュン/張慶宗(カイユンを狙うドライバー)
ライアン・チャン/張海傑(ERの医師)
リー・ヒウワイ/李曉慧(ERの看護師)
ホー・ホウルン/何浩源(ERの警察検査官)
ツァイ・カムユェン/徐錦源(ERの警察)
Gordiyenko Mikhail(ロンドン刑務所の看守)
Zubov Vitaly(ロンドン刑務所の看守)
Afanas’ev Igor(ロンドン刑務所の看守)
Ekeh Felix Okechukwu(ロンドン刑務所の看守)
■映画の舞台
1980年、
中国:香港
ロケ地:
中国:香港
ザ・ペニンシュラ香港
https://maps.app.goo.gl/y7JaDLyA122LGxZh9?g_st=ic
Foxglove(カーマンレストラン)
https://maps.app.goo.gl/UvFWPSHq89HhDeQm7?g_st=ic
Far East Finance Centre(金山大廈)
https://maps.app.goo.gl/rvgPeTzx85yGaa9v6?g_st=ic
■簡単なあらすじ
1970年代、香港に密入国したヤッインは、同郷のよしみでツァンの元を訪ねた
だが、全く相手にされず、ツァンの弟・ギムキウに拾われたギムキウはある不動産売買のサクラを演じさせることになったが、買い手のレンソンはその手には乗らなかった
ギムキウのビジネスパートナー・ジョニーと帰途に着く途中、レンソンはヤッインに接触する
ヤッインは高級レストラン「ペニンシア」に誘い込み、そこで金持ちのふりをしながら、不動産の中間マージンを得るという約束を取り付けて、ギムキウの不動産売買を成功させた
それからヤッインはギムキウと組むようになり、様々な仕掛けを施していく
そんな折、ギムキウに嵌められたレンソンが物件で儲けた話を聞きつけたヤッインは、彼と接触を図ることになった
ヤッインは、株式取引に興味を示し、ブローカーのヤム・チェンとのつながりを深めていく
それからヤッインは、事業を一気に拡大させ、アシスタントとしてチュン・カーマンを雇うことになった
会社名を彼女の名前から取り、名実ともに成長していくのだが、そこには黒いカラクリがあった
それから11年後、世界的企業に発展したカーマングループに、独立汚職防止委員会の調査官カイユンが立ちはだかる
だが、ヤッインを何度捕まえ、起訴に至っても、彼を有罪にすることはできなかったのである
テーマ:株の価値
裏テーマ:道具として割り切ること
■ひとこと感想
かつて香港で実際に起こった金融事件をモチーフにした作品で、いわゆる「佳寧集団」が起こした金融事件を取り扱っていました
金融関連に少し詳しいと何となくついていけますが、ほぼ無知だと「詰む映画」だと思います
かなり、素人向けに噛み砕いてはいますが、これ以上噛み砕くのは難しいのではないかと感じました
今では禁止されている方法ですが、簡単に言えば「会社の価値を水増しして株価を釣り上げる」というもので、そこにいろんな人がぶら下がって下りれなくなった、という感じでしょう
なので、ヤッインが捕まって株価が暴落すると自分も損するので、それを避けるための運命共同体というものが出来上がっていたことになります
ヤバい橋を渡り過ぎて引き返せなくというもので、事情聴取した5人を法的に釈放させて、それぞれの意思に見せかけて香港を去らせるというのは鬼の所業だったように思います
映画は、金融事件を追う追われるという内容なので、ほとんどが会話劇になっています
何が起こっているかを把握するためには人物相関を頭に入れる必要があるので、不安な人はパンフレットの人物相関図だけでも目を通しておけば置いていかれることはないでしょう
個人的には、ある程度詳しいので普通に見ていましたが、思いっきりインサイダーだし、株式売買の保証とか無茶なことをしているなあと思いました
それでも、上級には損をさせずにグループを畳んでいるし、何かを失ったようには思えないところがすごいなあと思いました
↓ここからネタバレ↓
ネタバレしたくない人は読むのをやめてね
■ネタバレ感想
金融資金をザックリと説明すると、信用取引をしていく前半と、諸外国(とりわけ東マレー海国銀行経由)から引っ張ってきた後半が描かれていました
その取引が違法ということで裁判は有罪になりますが、カイユンが追っていた証券取引系の詐欺に関しては、ジョニーが全てを被って幕引きになっています
死ぬよりは罪を被って刑務所で安全に暮らしたいというもので、カーマンとヤム・チェンは密出国がバレて船ごと爆破されるし、ロバートはお気に入りの女優の惨殺死体を見せられてビビってしまう、という内容になっていました
さらに、裏で動いていた弁護士ケルビンをも始末し、後任のロニーが裁判を乗り切るという構成になっていました
とにかくたくさんの人物が出てきますが、冒頭の皇家香港警察VS ICACの戦いはいらないような気がしますね
一応、警察を調べる組織ということで、日本でいうところの公安のようなもので、あのデモによって「過去の汚職はセーフ」という特例措置が講じられたと説明されていました
そんな危機を乗り切った調査官カイユンがヤッインを追い詰めるという物語で、彼の背景を説明するために必要だったのでしょう
ICACが調査というだけでは意味がわからないと考えて、あのようなシーンが描かれたのだと思います
映画は、地味な犯罪映画ですが、結構人が死ぬ内容でしたね
次々とわかりやすい不審死が登場し、生き残れたのがロバートとムファだけになっていました
上級に手を出すとヤバいというところで警告だけになっていて、おそらく彼らの負債だけは出さないようにして、一般は無視したのだと考えられます
最後にサラッと描かれていましたが、まあまあえげつない着地になっているなあと思いました
■佳寧集団について
「佳寧集団(Carrian Gropu)」は1980年代の香港にてあった企業で、大規模な犯罪事件の中心となった企業でした
創業者はマレーシア出身の陳松青(Geroge Tan)と言う人物で、1970年代後半に香港で企業を立ち上げ、急速に事業を拡大していきました
主に、不動産、株式投資などで急成長し、株価操作やインサイダー取引にて資金を集めたとされています
1983年に佳寧集団は破綻し、その背後で様々な不正が発覚することになりました
それは会社の株価を不正に吊り上げ、多くの投資家から資金を集めた疑いがありました
さらに不正会計、贈賄などが指摘され、陳松青は逮捕・起訴さて、最終的には詐欺罪にて懲役刑を受けています
元々は、既存の持株会社を買収し、「Carrian Investments ltd」と改名して上場を果たすことになりました
1980年には超高層建築の「Gammon House(現在のBank of America tower)を約9.98億香港ドルにて購入し、それを16.8億で売却したと発表し、驚異的な利益率をアピールしました
この信じられない取引は、実際には契約が完了していない取引だったことがわかります
それでも、1980年11月に17.9香港ドルの歴史的な高値をつけることになりました
1981年になって、多角的な事業拡大をするものの、資金源の不透明さや急拡大の正当性についての疑問符がつき始めます
そして、1982年に起きた世界同時不況、香港経済の低迷などが重なり、資金繰りが悪化していくようになります
そして、1983年1月3日、香港証券取引所は佳寧株の取引を停止し、グループ子会社は清算・破綻を繰り返して行きます
さらに1983年7月18日には、マレーシア銀行の子会社「Bumiputra Malaysia Finance Ltd」の監査役が行方不明になり、死体で発見されると言う事件が起こりました
1984年に入ってから、陳松青らが詐欺・共謀の容疑で起訴され、監査法人幹部や法律事務所なども巻き込まれていきます
187年9月、検察側の証拠不十分として棄却され、主要幹部らに無罪の判決が出ました
それでも、マレーシアの調査委員会(Noodrin Committee)は香港のICAC(独立腐敗防止委員会)に正式な汚職申告を行い、再捜査が始まります(映画はここから)
そして、1996年に「BMFLからの秘密融資に関する共謀罪」にて、懲役3年の判決が言い渡されることになりました
■タイトルの意味
映画のタイトルは、原題が『金手指』と言うもので、英訳されたのが『Gold Finger』と言うものになります
中国語の「金手指」の意味は「相場を当て続ける人」「裏情報を握っている人」と言う意味があって、「なぜか必ず儲かる存在」であるとされています
富を生み出す手であるとか、相場の天才のような意味がありますが、何かしら「裏がある」と言う感覚が付随する言葉となっています
その他にも「不正な取引」という意味もあったりしますね
比喩的な意味だと、ギリシャ神話のミダス王(Midas Touch)に由来するものがあって、ミダス王は「ふれるもの全てが金に変わる」と言う能力を得た王様でした
この言葉が転じて、金を生み出すような魔法的な存在として「Gold Finger」と言う言葉が生まれるようになっています
ミダス王は酒の神ディオニュソスから「望みを一つだけ叶えよう」と言われ、「ふれるもの全てが黄金になるように」と答えました
でも、食事をしようとしたらパンは金になり、水も金になってしまいます
金は食べられないし、さらに娘を抱きしめた時に黄金像にしてしまうなどがありました
金に価値があるかどうかは状況によって変わるものであり、現在でも単なる共通認識のある記号のようなものだと言えます
また、世界で掘り起こせる金の量は決まっているので、金そのものの価値というものを下落させることにもつながっています
有限だから価値があるというものが一般化すること、これはすなわち「大衆の金に対する価値基準」も変わっていくことになります
そういった意味も含めて、人を幸せにしないものを産み続け、自らの価値をも下げてしまう人のことを「Gold Finger」と呼ぶのかもしれません
■120分で人生を少しだけ良くするヒント
本作は、犯罪者集団に立ち向かう捜査員を描いていますが、実質的な主人公はヤッインであると言えます
彼がどのようにして会社を大きくし、どのような綻びの中で逃げ切ろうと画策したのかが描かれていました
金融系のドラマだとあんまり人は死なないのですが、本作の場合はバンバンと人が死んでいき、運命共同体的な人々もあっさりと切り捨てられていきました
彼らはヤッインの保守的な動きに翻弄された結果でありますが、彼の行動から学び取るものはあると思います
映画のタイトル『金手指』が示す通り、彼は「全てを黄金に変える力」を有していて、まるでミダス王のような存在となっていました
ミダス王と違うのは、彼は最後まで自分が生み出すものの価値を信じていて、反省もなく、他者を切り捨てることで生き延びようとしたことだと言えます
そして、彼が作り上げた王国に加担した人々は、様々な形でヤッインを守る形で命を失っていきました
彼らもまた、ヤッインが作り出した価値というものを自らの価値のように感じていて、その延命に躍起になっていたことがわかります
ヤッインがどこまで人を操れたのかはわかりませんが、成功を見せることによって人心を掌握し、引けないラインまで導いたところまでは既定路線だったと思います
そこから、人々が「価値を手放す恐怖」を駆り立てて、さらに信じてきたものを疑いたくないという心理に付け込んで行ったように思えます
その結果、どっぷりと浸かった自身の成功とその生活を捨てることはできず、人生の幕引きを悟ることの方が有益であると考えたのだと言えるのでしょう
この映画から読み取れるのは、何かしら価値を創造している人物を特別視したりして、さらにその影響で自身の価値を引き上げた人の末路を描いている部分だと思います
それらは、実社会においても巻き込まれる懸念のあるリスクであり、世の中には自身の欺瞞に気づきながらも、平気で人命を踏み躙ることができる人間がいるという教訓にもなります
実際の事件でも金融詐欺で大した実刑は喰らっておらず、あらゆる方策を持って金を隠しているだろうし、生きていれば何度でも同じことが行えると思っていたのでしょう
そして、それが可能なのが「人は何もないことよりも、何かを失うことに恐れを抱く生き物だから」という言葉に集約されるのですね
それゆえに、特に貧富に直結しやすい金融関連の事件というものは実態以上に恐ろしさが潜んでいるのではないか、と考えることができます
この映画は、特別な犯罪者を描いたものではなく、価値を信じて、それに賭けた人々の群像劇でもあったと言えます
もしも、あなたの周囲に「何でもお金に変える人」がいたら、距離を取った方が良いのかもしれません
それは「Gold Finger」という能力そのものが、豊さをもたらすものではなく、疑うことを忘れさせてしまうものだから、のように思えますね
■関連リンク
映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)
https://eiga.com/movie/102615/review/04714252/
公式HP:
https://www.culture-pub.jp/goldfinger/index.html
