■悪魔のほとんどは「◯◯だった」と言う衝撃の事実!


■オススメ度

 

キリスト教と悪魔の関係を学びたい人(★★★★)

エクソシスト系映画が好きな人(★★★)

 


■公式予告編

鑑賞日:2023.7.17(イオンシネマ京都桂川)


■映画情報

 

原題:The Pope‘s Exorcist(教皇のエクソシスト)

情報:2023年、アメリカ、103分、PG12

ジャンル:教皇直属のエクソシストが強力な悪魔祓いをする様子を描いたオカルト系ホラー映画

 

監督:ジュリアス・エイヴァリー

脚本:マイケル・ペトローニ&エヴァン・スピリオトポウロス

原作:ガブリエーレ・アモルト『An Exorcist Tells His Story(エクソシストは語る、1999年)』『An Exorcist More Stories(2002年)』

 

キャスト:

ラッセル・クロウ/Russell Crowe(ガブリアーレ・アモルト/Gabriele Amort:ローマ教皇に仕える神父)

   (若年期:Edward Harper-Jones

ダニエル・ゾバット/Daniel Zovatto(トーマス・エスキベル神父:悪魔祓いに協力するカスティーリャの神父)

 

Peter DeSouza-Feighoney(ヘンリー・バスケス:悪魔に取り憑かれた少年)

アレックス・エッソー/Alex Essoe(ジュリア・バスケス:ヘンリーの母)

Laurel Marsden(エイミー・バスケス:反抗期のヘンリーの姉)

Santi Bayon(ロベルト・バスケス:事故死したヘンリーの父)

 

フランク・ネロ/Franco Nero(ローマ教皇/聖下)

 

Cornell John(ルムンバ司教:公聴会のメンバー、アモルトの友人)

Ryan O’Grady(サリバン:悪魔を信じない枢機卿)

Matthew Sim(アバト枢機卿/猊下:公聴会のリーダー)

Pablo Raybould(公聴会のメンバー)

Gennaro Diana(公聴会のメンバー)

 

Ralph Ineson(アスモデウス/Asmodeus:ヘンリーに取り憑く悪魔の声)

 

Bianca Bardoe(ロザリア:アモルトと因縁のある少女)

Carrie Munro(アデラ:トーマスと因縁のある女性)

 

Alessandro Gruttadauria(ジャンニ:トロペーヤの神父)

River Hawkins(エンツォ/ハルファス:トロペーヤの取り憑かれた男)

Andrea Dugoni(酔っ払いの農夫)

Laila Barwick(農場の娘)

 

Jordi Collet(カルロス:修道院修復のリーダー)

Marc Velaso(修復作業員)

 

Victor Sole(スペインの医者)

Paloma Bloyd(通訳)

Tom Bonington(ヴァチカンの医者)

 

Ed White(ナチスの兵士)

 


■映画の舞台

 

1987年、

スペイン:カスティーリャ

https://maps.app.goo.gl/NL1mGpGY49EiCf757?g_st=ic

 

ロケ地:

アイルランド:ダブリン

Trinity College

https://maps.app.goo.gl/WXGRKuVvDTDRVG4B6?g_st=ic

 

アイルランド:

Limerick/リムリック

https://maps.app.goo.gl/ohNBVXNuW4T35Brn7?g_st=ic

 

イタリア:ローマ

 


■簡単なあらすじ

 

ローマ教皇に任命されたチーフエクソシストのアモルト神父は、数々の悪魔祓いを成功させてきた伝説の神父だった

1987年、イタリアのトロペーヤで起きた憑依を解決したアモルトだったが、キリスト正教会の公聴会に呼ばれてしまう

トロペーヤの一件は無許可の悪魔祓いであると忠告を受け、公聴会のサリバン枢機卿はアモルトをチーフから外すように進言する

だがアモルトは、「文句ならボスに言え」と開き直っていた

 

そんな彼の元に、教皇直々の依頼が舞い込む

それはカスティーリャにあるサン・セバスチャン修道院にて、ある少年が強力な悪魔に取り憑かれているというものだった

 

現地に向かったアモルトは、修道院を修復して売却を考えていたバスケス一家と接見する

父は事故死していて、それから長男は口を聞かなくなったという

そして、悪魔は少年ヘンリーに取り憑き、ある目的を持ってアモルトをこの地に呼び寄せていたのである

 

テーマ:悪魔とキリスト教

裏テーマ:悪魔憑依の因果関係

 


■ひとこと感想

 

ラッセル・クロウさんがエクソシストということで、フィジカルな戦いになるのかと心配していましたが、悪魔の所業は置いておいて、現実的な感じに仕上がっていましたね

悪魔に対して、ひたすら祈るというスタンスで、聖具の力を借りて、悪魔祓いをする様子が描かれています

 

映画の内容は、キリスト教徒が悪魔を怖がる理由が描かれていて、悪魔というものがどのような概念でキリスト教の中に根付いているのかの勉強になります

既知のことから「へえー」と唸るものまであって、これまでのエクソシスト系の映画を見返したくなる含蓄に溢れていました

 

ラテン語最強ということで、お馴染みの祈りが登場したりするので、キリスト教のことを全く知らなくても楽しめる内容になっています

悪魔の階級などの蘊蓄もあったりするので、これまでファンタジー系のゲームなどで馴染みのある人にとっては面白く感じるかもしれません

 


↓ここからネタバレ↓

ネタバレしたくない人は読むのをやめてね


ネタバレ感想

 

キリスト教の異端審問が根幹にあるこの事件ですが、映画の中である程度説明されているし、ビジュアルでわかるので予習はいらないと思います

この見解をどう取るかは微妙なところで、神父の立場なら「そう言わざるを得ない」のかなと思ってしまいます

 

映画は、取り憑かれた少年の演技が凄くて、特殊メイクもありますが、痙攣の演技など本物に見えてしまいます

前半は家族バラバラに寝ていても、悪魔の存在を認知したあたりから、徐々に軋轢がなくなっていいきます

 

そして、真打登場からの戦いは予定調和ではあるものの、その辺のヒーロー映画に負けないほどのVFXの作り込みになっていましたね

とにかく迫力満点なので、ちょいグロが大丈夫なら突撃しても良いと思います

 


異端審問とは何か

 

異端審問Inquisition)」とは、キリスト教内で起こった「異端および疑いのある者を裁判にかける」というもので、異端とは「キリスト教の教義に対する正式な否定や疑い」のことを言います

始まりは12世紀頃のフランスで始まり、カタリ派(キリスト教二元論者)に対する「宗教的逸脱」と戦うことを目的としていました

この時代から15世紀までの異端審問法廷は「中世異端審問」と呼ばれています

 

その後、スペイン王国やポルトガル王国に波及した異端審問は、新キリスト教徒(スペインやポルトガルにおける社会的な宗教呼称のこと)またはコンベルソ(カトリックに改宗したユダヤ人のこと)を対象としていました

この時代にスペイン王国とポルトガル王国はヨーロッパだけではなく、アフリカやアジア、アメリカ大陸にまで異端審問裁判所を設置していました

これらの流れは、ナポレオン戦争、スペイン系アメリカ人の独立戦争などを経て、19世紀頃に廃止されたとされています

 

映画の舞台でもある、サン・セバスチャン修道院はスペインのカスティーリャ地域にあり、当時のスペインはイスラム教とユダヤ教の影響下にありました

14世紀末のスペインの一部では、反ユダヤ主義が大きくなり、セビリアではポグロム(ユダヤ人虐殺のこと)が起こり、生き残ったユダヤ人への改宗運動が激化していきます

アラゴン王フェルナンド2世とカスティーリャ女王イザベラ1世は、1478年にスペイン異端審問所を設立し、この審問所は教皇庁から独立していたとされています

劇中で、1495年のセゴヴィアと言う台詞があり、イザベラ女王の名前も出ていたので、映画における異端審問はこの時期のことを指すと思われます

 


ガブリエーレ・アモルト神父あれこれ

 

主人公のガブリエーレ・アモルト(Gabriele Amorth)神父は実在の人物で、映画の原作は彼の著作のいくつかを組み合わせたものになります

アモルト神父は1925年生まれのイタリアのカトリック教ポーリーヌ家の司祭であり、ローマ教区の悪魔祓い師でもありました

アモルト神父は5人の司祭とともに「国際エクソシスト協会International Association of Exoricists)」を立ち上げています

彼は「キャリアを通じて数万回の悪魔祓いをした」と主張し、カトリック教会で最も著名で物議を醸している人物でした

 

エクソシストに任命されたのは、1986年のことで、2000年の段階で「5万回以上の悪魔祓いをした」と報告をあげています

14年で5万回なので、1年で3570回、1日あたり9回ということになり、流石にそれは無茶だろうという感じになっています

さらに2010年には70000回になったと言い、2016年には16万件にまで膨れ上がっています

ちなみに最初の9年間で3万件の悪魔祓いを行いましたが、本当の悪魔祓いは94件だったと報告を上げています

この数字でも、3週間に1回は本当の悪魔祓いをしていた、という計算になるのですね

 

これに対して、一人に複数の悪魔が取り憑いたとか、その数が数千に及んだなどと主張しています

アモルト神父は「人々は信仰を失い、迷信、魔術、悪魔崇拝、ウィジャボード(ラテン語のアルファベット、数字、はい、いいえなどが書かれた木の板のこと=交霊会などに使用される、日本で言うところのコックリさんみたいなもの)がその代わりになり、悪魔のためのあらゆる扉が開かれている」とも言っています

この主張に関しては映画内でも少しだけ言及があって、「信仰が薄れた今、悪魔が付け入る隙がある」みたいなニュアンスで使われ、その入り口として「罪悪感」が強調されていました

 


120分で人生を少しだけ良くするヒント

 

映画は、オカルト系ホラーですが、ファンタジー系アクションのようにも見えてきます

ポルターガイスト現象がファンタジックで、魔法合戦はありませんが、天使祝詞や悪魔儀式の文言などによって苦しむ悪魔というのは見応えのあるシーンでした

どの悪魔祓いが引用されていたのかはわかりませんが、劇中でエスキベル神父が唱えていたのは、以下のような感じになっていました(多分、後半の一部分になると思います)

Deus hesterna nostra semper est.
Focus in orando.
Ubi colliges duos in nomine meo, ibi sum
Kyrie eleison.
Sit Deus vobiscum.
Oro te in nomine Agni immaculati.
imperat tibi verbum caro factum!
Imperat tibi Jesus Nazarenus!
Et nunc adjuro te in nomine eius.
Dómine, exáudi oratiónem meam.
peccata tua te quaerunt.
Domine, virtutem mihi da!
in sacrosancte matris dei nomine.
Sub Deo te respice.
Infra te vide Deum.
in nomine Patris et Filii et Spiritus Sancti, te vidente sub deo.

 

グーグル翻訳さんによる日本語訳は、

神はいつも私たちの中にいます。
祈ることに集中してください。
あなたが私の名のもとに集まるところ、そこには私がいます
主よ、憐れんでください。
神があなたとともにおられますように。
汚れのない子羊の御名において祈ります。
肉体となった言葉があなたに命じる!
ナザレのイエスがあなたに命じます!
そして今、私は彼の名においてあなたに告訴します。
主よ、私の祈りを聞いてください。
あなたの罪はあなたを求めています。
主よ、私に力を与えてください!
母なる神の聖なる御名において。
神の下で自分自身を見つめてください。
神の下に自分自身を見てください。
父と子と聖霊の名において、神の下にいるあなたを見てください!

と言う感じになります

合っているかどうかは何とも言えないのですが、英語字幕の抽出ページがあったので、ネタの代わりにラテン語に翻訳してみました

 

映画では、この最後の祈りが馴染みのある感じになっていて、アスモデウスが消えるシーンも圧巻でしたね

この悪魔祓いが「実話」かどうかは置いておいて、憑いたものを取ると言うのはこれぐらい激しい抵抗があるのかなと思います

本作で興味深かったのは、悪魔に憑かれたと思われた多くの人は「精神疾患だった」と言う「身も蓋もない結論」でしたね

このシーンには、妙な説得力がありましたが、公言してOKなのかは微妙な感じになっています

実際に「装う人もいた」と思うので、このあたりの見極めをアモルト神父はできたと言うことなのでしょう

悪魔祓いが本当にできるのかとか、悪魔に取り憑かれた人は実在するのか、などの疑問は残りますが、「罪悪感から精神的な異常をきたす」と言うのは無きにしも非ずと言う感じなので、医学的な診断が生まれる前は「まとめて悪魔」と言う括りにしていたのかもしれません

 

「もし、悪魔に取り憑かれたら」と思ってもどうしようもないのですが、無神教の人に取り憑くのかとか、仏教徒は悪魔に取り憑かれるのかなどはわからない部分が多いですね

悪魔よりも怖いのが人間と言う存在なのですが、本作では「悪魔の方が怖い」になっていたのは良かったと思います

 


■関連リンク

Yahoo!映画レビューリンク(投稿したレビュー:ネタバレあり)

https://movies.yahoo.co.jp/movie/389362/review/38153d57-eb09-4dce-b887-7751d2eeabd9/

 

公式HP:

https://www.vatican-exorcist.jp/

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投稿者 Hiroshi_Takata

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